ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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今回は早く投稿できました。
ご都合主義満載です(笑)


第71話 オモイデ

 ~天駒高原(てんくこうげん)、丘の上~

 

 俺と春ちゃん、羽姉は荷造りをしてから、天駒高原(てんくこうげん)に向かい施設の跡地にやって来た。施設の造りは、頑丈な木造建築だ。まあ、木造建築でも冬は暖かったし、夏もそれなりに涼しかった記憶がある。

 

「懐かしいね」

 

 羽姉がそう呟く。

 施設から高原までほぼ追い駆けっこをしたからなぁ。だからまあ、かなり焼き付いてる記憶でもある。

 

「まあな。いつもって言っていい程、追い駆けっこをしてたし」

 

 追い駆けって言っても、ガチな追い駆けっこでもあったんだが……。んで、俺と羽姉はよく傷を作って施設の先生が『元気があるのは良いけど、元気がありすぎね』って苦笑してた。

 ともあれ、小咲が施設を眺めながら、

 

「そっか。この施設が、蓮君と羽さんの出会いの場所なんだね……何か、私にも懐かしい場所って感じなんだ」

 

 小咲がそう呟く。てか、懐かしいってことは、小咲も施設に来たことがあるんだろうか?でも確かに、春ちゃんの迎えに女の子が来て、その子とも遊んだような気もしないでもないが……。

 小咲が言うには、施設から数キロの先の場所で約束が交わされたらしい。

 

「私は、積み木遊びとお絵かき、かくれんぼで遊んだ記憶が薄っすらと残ってる」

 

 と、春ちゃん。

 確かに、俺も薄っすらだがその記憶はある。で、あの時の春ちゃんの髪はストレートに流していたが、今はサイドポニーである。

 

「ま、そうなるな。なんつーか、運命みたい出会いだよなぁ」

 

 俺は現実主義であるが、この時は運命を信じてたということにしておこう。……巧い話だが、良しとしよう。

 また、集からの電話によると、姉貴、橘、楽、集、るりも天駒高原に来てるらしい……てか姉貴、天駒高原(てんくこうげん)に来てたのね。ということはだ、クロードと鶫も来てるだろうなぁ。

 その時――、

 

 ――――“ドカァァン!!”

 

 と、爆発音……これは、クロードと鶫の戦闘の爆発だろう(たぶん)。高原に、観光客が居なくて幸いである。……そして、鶫の師匠はクロードである。ということは、十中八九、勝てないだろう。てか、爆発で雰囲気が壊された感じだ。

 俺は溜息を吐き、

 

「悪い。ちょっと、行ってくるわ」

 

 「き、気を付けてね」と、羽姉たちの言葉をもらい、俺は「おう!」と言い、この場を後にしたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 side小咲

 

 私、春、羽さんは、蓮君を見送り施設の裏側に移動し、裏側には小さな石が1つ鎮座していた。かなり重量があり、風にも飛ばされない石だ。その石の表面には、相々傘で“羽、蓮。ずっと一緒”。と彫り込まれていた。

 

「あ、あはは。私、ここまでは覚えてなかったかなぁ」

 

 羽さんはそう言って苦笑した。

 そして、その隣大き目の箱には、“小咲、春、蓮の宝物”。と書かれた画用紙が入っていた。中を画用紙は取り出すが、かなり汚れていた。だけど、雨からは守られていた為内容が読めない程ではない。

 その画用紙には、4人の絵が描かれていた。4人ということは“春、私、施設の先生、蓮君”なのだろう。

 

「(……やっぱり、私も施設に来たことがあったんだ)」

 

 確かに、この場所に来た時に懐かしさを感じたが、その内容までわからなかった。でも、私と春は蓮君と一緒に遊んだことがあるのだ。

 おそらく、私が春を迎えに来た時に一緒に遊んでお絵描きをして、この場所に思い出の品として隠したのだろう……何で外の箱に隠したのかは不明のままなんだけど。

 

「何か、蓮さんが言ってたように運命を感じるね」

 

 確かに、春の言う通り、高校生時で再び再会できるなんて奇跡に近いだろう。そして、その4人が将来を共にする。まるで、ご都合主義の漫画見たい。

 

「来てよかったよ、天駒高原(てんくこうげん)

 

「私もです」

 

「ですね。私たち4人は、これからもずっと一緒です」

 

 私たちは想いを再確認し、今より絆を深めたのだった。

 ともあれ、蓮君大丈夫かな?

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「どうしてだ、誠士郎。どうして、あの小僧の肩を持つ!」

 

「いえ、肩を持ったりはしていません。ですが、今のお嬢たち(・・)と一条楽は会うべきなんです」

 

「さっき言っただろう、あの小僧は他の女に目移りするクズだと!誠士郎、お前はお嬢が傷付いてもいいというのか!」

 

「確かに、お嬢は傷つく可能性も否めませんが、ここで逃げてしまったら、一生後悔すると思います!だからこそ、もし傷つくとしても、会うべきなんです!」

 

「……そうか。ならば言葉は不要だ!全力で叩き潰す!」

 

 クロードと鶫の戦闘が始まったが、鶫が押され気味だ。そう、鶫の戦術はクロードの手に取るように解るのだ。

 闇社会に於いては、弟子が師匠を超すことは、かなり難しい。

 

「(……くッ。予想がしてたが、ここまでとは)」

 

 その時、気だるげな声が丘の下から聞こえてきた。

 蓮は、頭を右手で掻きながら、

 

「おーす。随分派手にやってるなぁ」

 

「若ッ!なぜここに!?」

 

「蓮、坊ちゃん……」

 

 鶫は声を上げ、クロードは呆気に取られる。まあ確かに、この場に蓮が居るなどと予想もできないだろう。

 

「んで、お前らは何やってんの?」

 

 蓮の予想では、クロードは楽を戦闘不能にすることで、鶫はそれをさせない足止めだろう。

 クロードと鶫は口を開こうとするが、蓮が先に口を開く。

 

「まあ、楽と姉貴たち(・・)の恋愛関連だろ?」

 

 ええ。と頷くクロードと鶫。蓮は、やっぱりな。頷く。

 それから、蓮は鶫の隣に立つ。

 

「悪いなクロード。この場では、俺は鶫に協力する。楽は、姉貴と橘に会って答えを言うべきだからな」

 

 そうすると、片方が振られてしまう……こればっかりは仕方がないとしか言えない。

 だが蓮は、楽に2人を選んで欲しかったなぁ。と思ってしまうのは我儘なのだろうか……。

 

「な、なぜですか!そんなことをすれば、お嬢は癒えない傷を残すかも知れません!」

 

 蓮は、右頬を右手人差し指で描き、

 

「まあ、その時はその時だな。だけど、クロードも姉貴の強さを知ってるだろ?」

 

 蓮は、懐に隠してある鞘からナイフを抜き取って右手で持ち、ナイフを逆手に構え、蓮は鶫に話し掛ける。

 

「行くぞ、鶫」

 

「了解です、若」

 

 鶫と蓮、クロードとの戦闘が始まったが、結果は目に見えていた。鶫と蓮の連携は完璧であり、クロードは不意をつかれて戦闘不能になったのだった。




は?とか思うかも知れないけど、戦闘とかは大目見てね(^_^;)
それにしても、羽姉たちは凄い偶然ですね。4人が施設に訪れていたとは\(◎o◎)/!
ともあれ、予定では残り1話で完結です。
ではでは、次回もよろしくですm(__)m


追記。
施設はそのまま残されていました。まあ、色々な意味で思い出の場所ですからね。
後、小咲や羽姉の屋敷での思い出の場所も書けたら描きます。

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