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二日目 〇九:〇五 海軍省軍令部 宿舎の一室
ドン、ドン、ドン
遠くから聞こえてくる砲撃音が何かを思い起こさせるのか、上条当麻はベッドの上でうなされていた。
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「それ、当たったら上条さん死んでるからな!!」
「へ?アンタ、打ち消しちゃうでしょ」
「普通の雷撃ならなんとかなるけど、超電磁砲はコインがあるからヤバいの!!鉄砲の弾と変わんねえから」
「そうなの?ゴメン、じゃあアンタには当てない」
「そうしてくれると助かる」
「そうするとこういうのもダメかな?」
そう言って右手に黒い棒状のものを持った少女が上条に尋ねる。
「なんだそれ?」
「砂鉄を電磁力でまとめてチェーンソーみたいに使うんだけど」
「高速で動かしてるならヤスリに手を突っ込むのと変わらないような気がする」
「ふーん、そうなると最終的には肉弾戦になるのね」
「いや待て、そもそもなんでお前と戦わなきゃならないんだよ」
「アンタがわたしをさんざん弄んでくれたからでしょうが!」
「は!?何言ってんのオマエ」(弄んだって、上条さん何しちゃったの!?)
「今までアンタと戦って全戦全敗!なのにアンタはあくまでも無能力者って言うし、超能力者の立場ないじゃないの!」
「無能力者相手にむきになるなお馬鹿」(よかった!変なことしていなくてよかった!)
「ほんとムカつくわねアンタ」
「少しは年長者を敬え中学生」
「年長者、ねえ?」
常盤台の超電磁砲こと御坂美琴はそう呟くと、ニヤリと口元を歪める。
「中学生に勉強を教わる高校生を敬えって言われても、ねえ?」
「すみませんでした」
「いや、そんなきれいに土下座しなくてもいいんだけど」
「………短パンか」
「なっ!何見てんじゃゴラァ」ビリビリ
「不幸だああああ」パキーン
―――――
「…………はっ!」
跳ねるように飛び起きてそれからあたりを見回す。
「……あー。家じゃねえんだった。島風のせいで眠れなかったんだよな」
ドン、ドン、ドン
遠くから聞こえてきた砲撃音に反応して、上条はベッドから飛び降りて素早く制服に着替え、部屋を飛び出していく。
(砲撃音、ってことは敵襲か?)
廊下を駆け抜け外に出ると、先ほどよりも大きくなる砲撃音のする方へと駆けていき、海の見える開けた場所に出て沖合を見る。
「……敵じゃない、のか?」
「はい、射撃演習です」
「うおっ!?びっくりした。…ええと、どちら様?」
「脅かしてしまってすみません。軍令部所属軽巡洋艦、夕張です。貴方は元帥様のゲストですよね?」
「あ、はい。上条と申します」
「上条様、ですね」
「様付けはやめてもらえると嬉しいかも」
「ふふ。では上条さんで」
「はい、それでお願いします」
ドン、ドン、ドン
『一番、命中。二番、命中。三番、命中なのです?』
「命中率高いなあ。…次、標的、距離二〇〇〇〇」
『了解。標的、移動するのです?』
「距離二〇〇〇〇って、二十キロ?」
「そうですね。金剛型戦艦の主砲の射程距離は二八六〇〇メートルですからまだ当ててきそうですけど」
「標的ってどのくらいの大きさなの?」
「艦娘くらいですね。ああ、そこにあるのが標的です」
そう言って夕張が指さした場所には、ボーリングのピンのような形をした高さが一五〇センチメートルほどのブイが浮かんでいた。
「二十キロなんていったら見えねえよな…」
「艦娘は基本的に視力いいですよ。電探もありますし、制空権を確保していれば弾着観測射撃も可能です」
「凄いな」
『標的、距離二〇〇〇〇に展開完了なのです?』
「了解。信号弾発射」
夕張はそう言うと、右手に持っていた大ぶりな拳銃を前方へ七〇度くらい上に向け、引き金を引いた。
ポン、ヒュルルルルルルルル、ポン
なんとなく間抜けな音で発射された弾は、物悲しい風切り音を残して上空で青白く弾けた。
「合図が出てからすぐ撃つわけじゃないんだな」
「距離がありますし、実戦形式なので標的も動いていますからね。それを予測して撃つわけですから」
「標的ってどうやって動かしてるんだ?」
「ブイの下に潜航艇があって、妖精さんが操作しています」
「命中させちゃうとヤバいんじゃないの?」
「演習弾ですから命中してもペイントが付くだけですよ。より実践的な対抗演習では艦娘同士で撃ち合いますから」
ドン、ドン、ドン
『一番、命中。二番、命中。三番、命中なのです?』
「次、標的、距離二二〇〇〇」
『了解。標的、移動するのです?』
目を細めて沖合を見ると、風邪薬のカプセルくらいの大きさの白っぽい服装の艦娘の姿がかろうじて見て取れた。
「比叡さんまでここから何キロ?」
「大体一キロってところですね」
「一キロであれか。二十キロとか想像もつかないな」
「艦娘も一五キロ以上離れているときは、目視ではなく情報を優先しますから」
「それって一五キロまでは見えてるってこと!?」
「そうですね」
「艦娘さんって凄い」
そんな上条の驚嘆を、夕張は静かに微笑んで聞き流すのであった。