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二日目 一一:四五 海軍省軍令部 元帥執務室
「ふむ。よく似合っている」
「そうですかね?まあ島風はいい感じだと思うけど」
「上条提督も学生服が白くなったようなものだから、似合わないということはないと思うが」
「まあ、そうですね。あ、勝手に島風の制服変えちゃいましたけど、良かったですか?」
「君の麾下なのだから問題ない。島風も喜んでおるようだしな」
元帥が目を細めて島風を見る。島風は大淀の前で笑顔を浮かべて踊るようにくるくると体を回転させていた。
「ああ、こら島風、そんなにくるくる回るとパンツ見えるぞ。今度は水着じゃないんだから気を付けなさい」
「てーとくのスケベ」
「上条さんは注意しただけだっつーの」
「にひひ。注意するよ」
笑顔で上条に返事をする島風。そんな島風を見て、元帥は思わず頬を緩ませた。
「上条提督の制服姿と島風のお披露目も兼ねて、昼食を麾下の皆で食べるのはどうかな?私と大淀も同席させてもらうが」
「構いませんよ。そういえば俺、朝から何も食べてなかった」
「大淀、ヒトフタマルマルに食堂集合」
「了解。軍令部作戦本部付上条提督麾下の艦娘はヒトフタマルマルに食堂に集合してください」
「よし。では食堂へ向かおうか。上条提督は午後、鎮守府運営の基礎を教えるからこのまま私と行動を共にしてくれ」
「わかりました」
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二日目 一二:〇〇 海軍省軍令部 食堂
「摩耶さーん」
「島風!?その恰好は?」
「にひひ。てーとくが新しい制服作ってくれたんだ」
「よく似合ってますよ。島風さん」
「ありがとう比叡さん」
艦娘たちがきゃいきゃいと話しているのを横目に、上条は真剣な表情で入り口に置かれたメニューを見つめていた。A定食が生姜焼き定食でB定食がカツ丼定食、C定食がハンバーグ定食とある。
「私はA定食にしよう」
「私も提督と同じものにします。注文してきますね」
大淀はそう言うとカウンターの方へと歩いて行った。
「上条さんはB定食にしよう。大盛りとかあるのかな…」
「てーとくはB定食?私はC定食にしようかな」
「アタシはA定食の重巡盛にするぜ」
「私はB定食の戦艦盛をいただきます」
「重巡盛?戦艦盛?」
「アタシたち艦娘は艦種によって食べる量が違うんだよ。島風みたいな駆逐艦は提督と同じ量でも大丈夫だけどな。さ、注文しに行こうぜ」
摩耶に促されてカウンターへと歩いていく。そうすると左手に普通の生姜焼き定食、右手にその三倍はある生姜焼き定食を持った大淀とすれ違った。
「大淀さんが持ってたのって?」
「あれは普通盛と軽巡盛だな」
「軽巡盛であれ!?重巡盛とか戦艦盛ってどんなのなんだ…」
「まあ、じきにわかるさ」
摩耶に肩を叩かれ、上条はカウンターへと近づいて中に向かって声をかける。
「すみませーん。B定食大盛りで」
「間宮さんB大盛りなのです?」
「はーい。B大盛り一丁」
「妖精さんも手伝ってくれるのかー。ありがとうな」
「提督さんに褒められたのです?」
「B定食大盛おまちどうなのです?」
「早っ!」
「うふふ。みんないい子ですから」
「じゃあいただいていきます。ありがとう間宮さん。妖精さん」
上条の目の前にカツ丼とみそ汁、きゅうりの漬物に緑茶の入った湯呑が乗ったお盆が置かれた。それを持って元帥たちの居るテーブルへと戻っていく。
「提督からお礼を貰ったのは初めてです?」
「私も提督から声をかけられたのは久しぶりです。なんか嬉しいですね」
「C定食くださーい」
「A定食の重巡盛」
「B定食の戦艦盛をお願いします」
「はーい。C一丁、A重巡盛一丁、B戦艦盛一丁入りまーす」
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「上条提督は元帥の横にどうぞ」
「失礼します」
「私、てーとくの前」
「アタシは島風の横だな」
「私は摩耶の横ですね」
「………凄いな戦艦盛」
カツ丼大盛りがどんぶりなのに対し、カツ丼戦艦盛はお櫃に山盛りのご飯という凡そ五倍はありそうな量だった。みそ汁がどんぶりで、漬物は小さな壺に入っている。湯呑は寿司屋にある魚編の漢字がたくさん書きこまれた大きなものだった。
「空母盛の方が大きいですよ」
「え、それよりもでかいのがあるんだ。まあいいや。いただきます」
朝から何も食べていなかった上条は、比叡の言葉を聞き流すと、両手を合わせてから箸を取った。
「うん。旨い。……あれ、食べないの?」
「えーっと、てーとくが食べる前にやったのって何なのかなって?」
「え、いただきます、だけど…」
上条がきょとんとして元帥を見ると、元帥も何と言っていいかわからない表情で上条を見ていた。
「よし、じゃあ上条提督心得、食事の時は必ずいただきますをすること。食材、生産者、料理をしてくれた人への感謝を込めて、手を合わせて「いただきます」だ」
上条はそう言って、再び胸の前で手を合わせて麾下の艦娘に目で促す。艦娘たちは比叡、島風、摩耶の順で胸の前で手を合わせた。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
「はい、よくできました」
上条はそう言うと、艦娘たちに微笑んだ。