1 書き換えられた世界
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漆黒の世界
「オティヌスゥゥゥゥ!!」
漆黒の世界で咆哮を上げる上条を上空から見下ろし、オティヌスは小さく溜息をつく。
(まだ折れぬか。存外しぶといな)
幾度となく上条の存在を否定する世界を繰り返し、戦い、殺してきた。―――上条の精神をへし折るために。
(…さて。次はまったく毛色の違う世界にしてみるか。誰もが上条当麻を知らない世界で、上条当麻が誰も、何も知らない、悲惨な世界にな)
薄い笑みを浮かべると、右手を挙げ、親指と人差し指を打ち鳴らす。
その瞬間、上条当麻を中心にして世界が書き換えられていった。
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世界_version_艦これ
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一日目 一四:〇〇 鎮守府正面海域
「もしかして、もしかしなくても、いやこれ絶対に落下していますよねえええええええっっ!?」
眼下に広がるのが青い海原であることが唯一の救いかもしれない――。
そんなことを考えながらかなりの速度で落下していく。
「…あれ、なんだ?」
海面に小さな黒い点がいくつか見える。それらからは煙が上がっていたり、赤い炎とともに轟音が上がったりしていた。
「砲撃音、ってことは船同士の戦闘か?それにしては船が小さい気がするけど…。って、船に当たらないように落ちないと…」
自分が落下していく地点を見て、撃ち合いをしている白っぽい色をした船の手前に落ちそうだなと判断する。それから大きく息を吸い込んで目を閉じた。
ドッパアアアアアアアアアンッッ!!
ど派手な水柱を上げて海に落ち、海中5mくらいまで一気に沈むのに任せ、それから目を開けて上を見上げると、何かが浮かんでいるのが目に入る。
(思ったより痛くなかった、なんか落下慣れしちまったな。…とりあえず掴まらせてもらおう)
そう決めると、上条は大きく水を搔いて浮上をはじめ、ほどなくして浮かんでいたものの真下にたどり着いた。そのまま手を伸ばして掴み海上に出る。
「ぶはぁっ!!死ぬかと思った。…ん?なんだこれ柔らかい…」ムニュ パリーン
右手が何か柔らかいものを掴んだかと思うと、幻想殺しが発動して掴んでいたものが霧散する。
「魔術関係かよおおおおおっ!!」ドボーン
海中に沈む前上条の目に映ったのは、白髪、蒼眼の女性のような姿の何かが海面に浮いている姿だった。
すぐにその近くまで泳いでいき、海上に顔を出して眺める。
そこには、金属質なブーツのようなものを履き、身体も部分的に金属質な物質で覆っている白髪、蒼眼で青白い肌の女性が海面に立っていた。
「ハ、ハロー?ハウアーユー?」
一目見て日本人だと思えない容姿の相手に、とりあえず英語でコミュニケーションを図る。
だが、青白い肌の女性は無表情のまま、身体中に着いている砲を一斉に上条に向ける。
「それって、銃とかそういうものですよね?いやいやいや、上条さん死んでしまいます!!やめてくださいお願いします!!」パリーン
慌てて縋り付いた上条の右手が触れた瞬間、青白い肌の女性は先ほど掴んだものと同じように霧散した。
「あ、もしかしてさっきのもお仲間…ですか?」
ひきつった笑みを浮かべながら斜め前に立っている黒髪、蒼眼の青白い肌の女性に尋ねるが、彼女も無表情のまま砲を向けてくるので、慌てて海中に潜り、彼女の真下へと進んでその足元に右手を伸ばすと、他に漏れず霧散した。
それから海面に顔を出し、ため息をつく。
「いったいなんだったんだ?あれは…」
「あの…」
「ホムンクルス…みたいなもんか?感情も無い様子だったし…」ウーム
「もし?」
「人間ではないことは確かだよな。跡形もなく消えちまったし…」
「そこの御方?聞こえていますか?」
「誰だ!?」
振り返りながら上条は声をかけてきた相手を見上げる。
そこには破れた巫女服っぽい上着に赤いミニスカート姿の、金属製の大きな砲門なんかを背負った黒髪の女性が立っていた。
上条の位置からは必然的にミニスカートの奥が見えてしまっている。
(白…じゃなくて!!)
慌てて視線を上に向け、声をかけてきた女性の顔を見る。
「さ、さっきの奴らの仲間か?」
「いえ、貴方が倒したのは深海棲艦で、私は扶桑型戦艦二番艦、山城。艦娘です」
「………は?」
(深海棲艦?戦艦?艦娘?一体何なんだ?)
「ともかくここは危険です。早急にここを離脱します。話は安全な場所へ着いてからということでよろしいでしょうか?」
「あ、ああ」
「では、失礼します」
そう言うと山城は上条の学ランの詰襟を掴んで軽々と引き上げ、そのままお姫様抱っこの状態で上条を抱き上げる。
「え、ちょ、ちょっと!?」
「山城、蒼龍を中央に輪形陣。川内は
「殿了解」
「了解なのです」
「了解です」
「了解しました」
「了解」
いつの間にか山城の周りに5人の女性が集まり、山城の指示に答える。みんなどこかしら破れた服を着て、金属製の何かを背負っていたり装着している。表情も一様に暗い。
(みんな疲れてるな…。あんな小さい子たちまで戦っているのか?)
「こちら第一艦隊。任務完了。敵部隊殲滅、山城、蒼龍大破、川内、電が中破、榛名、雷が小破。なれど航行に支障なし。救助者一名あり。これより帰還します」
「了解。こちらは本日ヒトサンフタマルをもって私、大淀が提督代理となりました。帰還後、山城、蒼龍、川内、電は直ちに入渠、高速修復材を使用してください。そのあと榛名も高速修復材を使って入渠、雷は通常入渠。山城は入渠後、救助者を伴い司令室へ報告に来てください」
「了解しました。みんな、帰還後は破損状態の酷い順から入渠が許可されたわ。電以外は高速修復材の使用も認められたわ」
「へえ。ってことは大淀提督、かな」
「きっとそうなのです!」
「榛名、感激です」
「とりあえず一息つけそうね」
「金剛さんも赤城さんも入渠できたかな?ひとまず安心だね」
「さあ、帰りましょう」
「「「「「了解!」」」」」
先ほどまでと違い、明るい表情で6人は海上を航行し始める。そんな中、山城の身体に右手を触れさせないように注意しながら、上条は周りを見る。幸い左側が山城の身体に向いていたので、よほどのことがない限りは大丈夫そうだ。
(さっきの奴らとは違うけど、似たようなものか?海の上に立ってるし…。ってか、なんだこの速度!?)
徐々に強くなっていく風に、上条は目を細める。ぐんぐんと上がっていく速度に比例して強くなっていく風に、右手は自身の太ももを掴んで離さなかったため大丈夫だったが、顔は必死に抗ったものの、確実に山城の方へと押されていった。
ぽふん。
そして柔らかい感触が上条の顔を包み込む。いわゆる胸枕である。
「わあああああああっっ、風に押されてしまって、すみませんすみません」///
「…20ノットほど出ているから仕方ありません。でも…不幸だわ」
なるべく動かないようにしながら、上条は一刻も早くこの状況から抜け出せることを祈るのであった。