マナケミア テオフラトゥスの娘   作:シャケ@シャム猫亭

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第一章 第六節

 アルレビス学園では授業の形態に単位制を導入している。

 一週間で一つの授業を受け、その授業の最後に出される課題のできによって成績が決まる。

 一週間受けた授業の総まとめなため、大抵の課題は難しく、補習を受けることになる生徒は珍しくない。

 授業は選択制なので、苦手な授業は必修だけを取り、得意な授業で単位を稼ぐことが大事だと寮にいた先輩は言っていた。

 あ、直接聞いたわけではないです。

 談話室で話しているのを小耳にはさんだんです。

 

「そうは言いますが、一年生の授業は必修が多く、選択肢はあまりないそうです」

 

 アトリエに連れて行かれた、次の日。

 グンナルのアトリエのメンバーは、そろって食堂で朝食を食べていた。

 話の内容は、これからの授業について。

 

「そっか、授業の課題もあるんだね。ニクロ布も作らなきゃいけないし、どうしよう……」

「うーん、まずは課題を片付けちゃおうよ」

 

 ヴェインの言葉に、フィロが提案する。

 

「わたしとニケちゃんとディナちゃん。四人もいるんだから、きっとすぐ終わるよ」

「フィロの言う通り。後ろ向きに考えてもしょうがないよ」

「そう…だね。ねえディナ、今週の授業はなんだっけ?」

「必修の『調合学Ⅰ基礎』ですね。講師はゼップル先生で、内容は調合の基礎基本と実習だそうです」

 

 教室への集合までは、あと一時間くらいある。

 朝食をしっかり取って、のんびり向かっても間に合うだろう。

 

「ねねディナ。前から思ってたんだけどさ、うちらに敬語使わなくてもいいよ」

「あ、それわたしも思った。何か他人行儀で、ちょっと寂しい」

 

 そ、そう言われても…………困る。

 別に一線を引いているわけではなく、この話し方が私の普通なのだ。

 クダけた話し方の方が疲れる。

 そんな事を二人に伝えれば、納得してくれたのか、それ以上は言ってこなかった。

 ………しかし、私はいつ敬語なんて習ったのだろう?

 そんな疑問を抱いたが、すぐにそれもフィロたちとのお喋りで霧散していった。

 

 

 

………………………

…………

 

 

 

 キーンコーンカーンコーンと時計棟に据え付けられた大鐘が、授業の始まりを告げた。

 ガヤガヤと騒がしかった教室も、すぐに静かになり、全員が席に着く。

 

「よし、みんな集まってるね。それじゃ早速、調合学の授業を始めよう」

「「「「「「よろしくおねがいしまーす」」」」」」

 

 教壇に立ったゼップル先生に、生徒一同で挨拶をする。

 そうして、私たちの初めての授業が始まった。

 ゼップル先生は黒板を使いながら授業をしていく。

 先生によれば、調合とは、モノとモノを組み合わせ、新たなアイテムを作り出すこと。

 錬金術における最も基礎であり、錬金術士にとって最も大切な技術だそうだ。

 

「錬金術の材料はただの水から、世界に数個しかない貴重な物までと、とても幅広い。これらの物はお店で買ったり、自分で採取してきたりするわけだけど」

 

 当然、貴重な物は値段が高いし、採取するにしたって危険な場所にある場合が多い。

 だからこそ、この学校には戦闘訓練をする授業がある。

 お金を持っていれば狙われるし、危険な場所というのは、大抵モンスターが住み着いている。

 また、錬金術の技術を悪用されないためにも、自身の身を守る力が必要なのだ。

 そういえば、ゼップル先生が私たちの住む森に来た時も、慣れた様子だった。

 先生も錬金術士。にこやかな雰囲気からは感じさせないが、それなりの腕を持っているのだろう。

 

「今日はみんなに、この材料を集めてもらおうと思う」

 

 その言葉を聞いた途端、教室が騒がしくなる。

 みんな、危険な目に遭うのではないか、大変なのではないかと不安なのだ。

 それを見たゼップル先生は笑って言った。

 

「心配しなくても大丈夫だよ。いきなり危険な所に行けってわけじゃないから。そもそも、この学園では安全のため、学年ごとに入れる場所が決まっているからね。一年生の君たちは、危険な場所には入れないんだ」

 

 それを聞いて安心したのか、ガヤはすぐに静まった。

 ちらりとヴェインを見れば、フィロと一緒に胸をなで下ろしていた。

 隣のニケはといえば、戦闘と聞いてからウズウズしていた。

 もしかして、獣人というのは好戦的なのだろうか?

 それとも、ニケだからなのだろうか。

 

「それじゃ、集めてもらうものだけど………」

 

 黒板に書いたのは、きよ水、青い花びら、ハウレン草。

 きよ水はアトリエの水道で手に入る。アトリエがない人は小川で汲んでくればいいだろう。

 ということは、私たちが採ってこなければならないのは、青い花びらとハウレン草の二つだ。

 

「青い花びらとハウレン草は学園を出てすぐ南にある『生きし森』で採取出来るからね。それと、もし一人で行くのが不安なら、仲間と協力するといいよ。何人でもいいけど、必ず『生きし森』には行ってくること」

 

 こ、これは……初日にフィロに話しかけて貰えなければ、ヴェインと二人でやらなければいけなかったに違いない。

 改めて、フィロとニケには感謝しよう。

 え、グンナル先輩?

 あれは、ちょっと………

 

「材料を集めたら、教員棟にあるボクの部屋まで来ること。時間は日没まで。それじゃ、解散」

 

 そう言って、ゼップル先生は教室を後にした。

 残された生徒たちはグループを組み始め、自信があるのか一人で行ってしまった者も数人いるが、続々と教室を後にしている。

 

「授業を聞いているだけかと思ったら、いきなり本格的なんだね」

 

 フィロの言葉に、三人は肯く。

 不安そうなヴェインに対して、ニケはあっけらかんとしている。

 私はどちらかと言えばニケに近く、特に不安もわくわくもない。

 あの材料なら、住んでいた森でよく採っていたし、そこから作るアイテムも知っている。

 

「取り敢えず……『生きし森』に行ってみよっか」

 

 そう言って歩き出そうとしたニケを、私は引き止める。

 

「フィロさん、ニケさん。武器はお持ちですか?」

「あ、そっか。モンスターが出るんだっけ」

「わたしは、この鞄があるから大丈夫だけど、ニケちゃんは?」

「うちは部屋に置きっぱなしだ。取ってくるから森の入り口で待ち合わせね」

 

 ニケはタッと軽快に走り出し寮へと戻るのを、私たちは見送った。

 

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