マナケミア テオフラトゥスの娘   作:シャケ@シャム猫亭

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第一章 第八節

「せんせー! 言われた材料、全部持ってきたよ」

 

 学園に帰った私たちは、早速ゼップル先生の教員室を訪れていた。

 ノックもそこそこに、ニケが部屋へと入っていく。

 

「お、どれどれ………」

 

 それを特に叱るでもなく、ゼップル先生は渡された材料の確認に入る。

 その間、私は先生の部屋を見回した。

 何というか、乱雑な部屋だ。

 先生のアトリエとしても使っているのだろう、錬金釜や器具が色んな所に置いてある。

 また、天井まで届きそうな大きな本棚が二つあるのにも関わらず、収めきれなかった本が机や床に山積みにされている。

 大型の薬棚もあるが、いくつかの引き出しは大量に詰められた材料のため閉められなくなり、開けっ放しである。

 極めつけに、様々な書類がそこかしこに散らばっている。

 まさに、片づけられない人の部屋だった。

 唯一の救いは、先ほど挙げたものは部屋の脇に避けられており、足の踏み場があることくらいだろう。

 

「うん、ちゃんとあるね。次の段階に進んでもらおうかな」

 

 そういうとゼップル先生は、山積みの書類の中から一枚取り、ヴェインに渡した。

 

「これは………?」

「錬金術のレシピだよ。わかりやすくいうと、設計図だね」

 

 その言葉に、残りのメンバーもヴェインに渡された紙をのぞき込む。

 確かに、そこにはアイテムを作るのに必要な材料や手順が書かれていた。

 これは、比較的簡単なものだ。

 複雑な手順は無く、順番に錬金釜で煮込んでいれば作れる。

 

「今はレシピを知らないと、どんな簡単なものでも作ることは出来ないだろうけど、ゆくゆくはオリジナルのレシピを作れるようになるよ」

 

 レシピを見ながらじゃないと作れないのは素人。

 レシピが無くても作れるようになって半人前。

 そして、オリジナルのレシピを作れるようになって、ようやく一人前とゼップル先生は言う。

 

「それじゃ、持ってきた材料を使って調合してみようか。こればっかりは、習うより慣れよだしね。見ててあげるから、そこの錬金釜で作ってごらん」

「は、はい」

 

 ヴェインが行う初めての錬金術。

 今まで私がやっているのを見ていたことはあるが、やったことは一度もない。

 緊張からか、ヴェインの返事は少し震えていた。

 

「まずは、そのレシピを読んで、何を調合するのか理解してね」

「えっと………『リフュールポット』、飲むことで傷を癒す、回復薬………です」

「そうだね、これからよく使うことになるだろうから、しっかり覚えるように」

 

 か、回復薬を常備しなきゃいけないって。

 それって暗に危険な目に合うって言ってるんですよね?

 

「あとは、手順通りに調合するだけだ。さ、やってごらん」

 

 ゼップル先生は錬金釜から一歩引き、見守る態勢に入った。

 ヴェインは緊張しながらも、刻んだハウレン草を錬金釜にいれ、混ぜ棒を使って円を描くように混ぜると、淡く発光しだした。

 うん、良い調子だ。

 エーテル値、簡単に言えば品質、が上昇したのがわかる。

 続いて、発光が終わると同時に青い花びらを入れ、今度は8の字に混ぜる。

 またもや淡く発光し、エーテル値が上昇する。

 初めての調合で、連続してエーテル値を上昇させるとは思っても見なかった。

 もしかしたら、ヴェインには凄い錬金術の才能があるのかもしれない。

 最後にきよ水を加え、火を止めれば完成である。

 流石に今回は発光しなかった。

 でも、出来上がった『リフュールポット』は、品質が良くてさらさらしており、何だかよく効きそう。

 

「できた……」

「やったね、ヴェイン!」

「ヴェインくん、初めての調合なのに、すごいよ!」

「おめでとうございます、ヴェイン」

 

 各々はヴェインに歓声を上げると、ヴェインは照れくさそうに笑った。

 ゼップル先生は出来上がったリフュールポットを検分する。

 

「うん、完璧だ。本当に初めてなのかい?」

「ディナが調合しているところを見たことがあるので……真似しました」

「それでも十分スゴイことだよ。よし、ヴェイン君には『優』を上げよう、文句なしの満点だ」

 

 アルレビス学園の成績は、良い順に『優』、『良』、『可』、『不可』となっており、『不可』では単位を貰えない。

 大体の生徒は『良』か『可』であり、『優』はよっぽど優秀な生徒でないと取れない。

 それとね、ヴェイン。

 私の真似をしたと言ったが、私はあんなに品質が良いものを作れたこと無いよ?

 

「次はうちがやる!」

 

 ヴェインに触発されたのか、ニケが勢いよく手を挙げた。

 ヴェインからレシピを受け取ると、ニケはフンフン~♪ と鼻歌を歌いながら錬金釜をかき混ぜる。

 あ、今、目分量で入れましたね。大丈夫……じゃありませんね、黒い煙が上がってます。あれはエーテル値が下がってますね。

 どうでも良いことかもしれないが、ニケの鼻歌はやたら上手かった。

 

「できたー!」

 

 そうして程なくしてニケの調合が終わった。

 ゼップル先生は釜の中身を試験管に入れて検分する。

 

「うーん、ドロドロしてるし、味もあまり良くないね」

 

 先生はヴェインの物とニケの物を少量ずつ小分けして、私たちに配り飲むように言う。

 ……確かに、ヴェインの物と比べると、ニケのはドロドロして飲みにくし、味もヴェインのはミントのようにさわやかなのに、ニケのは青臭い。

 

「エーテル値による品質の違いも分かる良い機会だったね。ニケ君の成績は『可』だ」

「そんなー……」

 

 続いて、フィロが調合に挑む。

 結果は、『良』。

 ヴェインほどではないが、良いものが出来た。

 その結果にフィロは胸をなで下ろし、何かを呟いた。

 爆発とか、10回に4回とか言ってた気がするが、よく聞き取れなかった。

 最後は私の番だ。

 ヴェインと同じようにぐるぐるかき混ぜるが、発光することはない。

 出来上がったものも、特徴がないのが特徴というくらい普通だった。

 でも、まあ、悪い物というわけではないのでゼップル先生は『良』をくれた。

 

「それじゃ、今日の授業はここまで。今日はここの錬金釜を使ったけど、普段は自分たちのアトリエか、共用室の錬金釜を使うようにね。えっと、君たちはたしか………」

「グンちゃんと同じアトリエだよ」

「ああ、そうだった。グンナルか……うーん………」

 

 ゼップル先生は困ったように考え込んだ。

 

「まあ、むしろ大丈夫かな。あいつは錬金釜なんて、めったに使わないだろうし……」

 

 ああ、うん、やっぱりか。

 グンナル先輩がちまちま材料を計って調合するところなんて、想像できないし。

 

「明日からの授業は座学が中心になるけど、ちゃんと出席するようにね。おつかれさま」

「「「「ありがとうございました」」」」

 

 全員で声をそろえ、一礼ののちゼップル先生の教員室を後にした。

 

「グンナル先輩って、やっぱり有名なのかな?」

「そうみたいだね。それも悪い意味で………」

 

 帰り際、フィロの呟きにニケが答え、みんなそろってため息を吐いた。

 




ディナは錬金の時にサポートカードとして使うと、エーテル値を維持します。
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