やはり俺がフェンリル極東支部にいるのは間違っている。   作:水無月ゲンシュウ

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第十一話 見え隠れする陰謀

 雨宮リンドウの捜索打ち切りを伝えられてからしばらくたったある日、サクヤはツバキとエレベーター前で会うのであった。

 

「……私、やっぱり捜索の打ち切りだなんて納得できません」

 

「またその話か……上層部の決定だ。もう覆ることは無い」

 

「腕輪どころか、神機だって見つからないなんて……神機使いが任務中に行方不明になった場合、神機が回収されるまで捜索されるのが通例じゃないですか!」

 

「……もうアイツが姿を消してから一週間以上になるんだな。生存の可能性は限りなく0に近い……ましてや深手を負っていては……」

 

「……でも……でも……ツバキさん……」

 

 さらに言葉をつづけようとするサクヤを無視し、エレベーターへと乗り込むツバキ。

 

「うう……リンドウ……」

 

 ツバキはエレベーターの中で泣いていた。むしろツバキこそ声をあげて泣きたいはずだ。何せ唯一の肉親なのだから。しかし立場がそれを許さない。

 

 そのころ比企谷はリンドウがいなくなった穴を埋めるため昼夜問わず戦場へと駆り立てられていた。新たに任務を受けさせられた(受けようとしたのではない)とき、一度アリサのお見舞いに行ってきたらどうでしょうかといわれ、行くこととなった。

 

(また薬で眠ってるのか。うらやましい限りだ。俺も本来なら休日はゆっくりとした生活を送れたはずなのに……)

 

 そう思いつつもしっかりと任務を受けるあたり彼もだいぶ社畜として板についてきたのかもしれない。彼はアリサの手が布団からはみ出ていたのでそれを戻そうとして手に触れた。すると彼の脳内にまた何かが流れ込んできた。

 

「もう いいかい」

 

「まあだだよ」

 

「もう いいかい」

 

「まあだだよ」

 

「もう いいかい」

 

「もう いいよ」

 

「もう いいかい」

 

 突如現れる黒い影。襲われる大人二人。

 

「パパ……!?ママ……!?……やめて……食べないで……いやあああああああ!やめてぇぇぇぇえええ……!」

 

 こちらを覗く不気味な顔。場面が変わる。

 

「……幼い君は……さぞかし自分の無力さを呪ったことだろう……その苦しみに打ち勝てば、君は親の敵を討つための力を得るのだ!そうだ!戦え!打ち勝て!」

 

 また場面が変わる。

 

「こいつらが君たちの敵、アラガミだよ」

 

「アラ……ガミ?」

 

「そうだよ こわーいこわーいアラガミだ。そして最後に、こいつが……君のパパとママを食べちゃった アラガミだ」

 

 映し出されるリンドウの顔

 

「パパ…ママ…」

 

「でも……もう君は戦えるだろう?」カンタンなことさ。こいつに向かって引き金を引けばいいんだよ」

 

「引き金を引く…」

 

「そうさ、こう唱えて引き金を引くんだ。アジン・ドゥヴァ・トゥリー!」

 

「アジン…ドゥヴァ…トゥリー…」

 

「そうだよ、そう唱えるだけで君は強い子になれるんだ」

 

「アジン…ドゥヴァ…トゥリー…」

 

 そこで景色は途切れた。

 

 しかし今のはいったい?そもそも何故アラガミの中にリンドウさんが混じっていたんだ?それにさっきの会話、あれは完全な催眠療法だった。いくら精神面に問題があるからと言って、普通そこまでするのか?もしかして今回の事故、裏で誰かが糸を……

 

「何…?今の…今、頭の中に、あなたの気持ちが流れてきて……まさか…あなたの方にも…?」

 

「あぁ…」

 

 それを聞きアリサは何かを考えているようだった。

 

「…あの日のこと…ずっと、忘れてたはずだった…パパとママを少し困らせてやろうって…かくれんぼのつもりで、近くの建物の中に隠れてたんです…もういいかい 

まあだだよ、って、そしたら…突然、アラガミだ!アラガミが来たぞ!って叫び声に変わって、早く出ていけばよかったのに…私、怖くて動けなくて…パパとママが…私を探しに来たけど…っ…唸り声が聞こえて…目の前でっ…パパと…ママが…!…私が、もっと早く気づいて逃げていれば…2人とも…私のせいで…!!」

 

 それは違う、と言ってやるのが本当はいいのだろうが俺はそんな無責任なことは言わない。

 

「…だから…私が『新型』の神機使いの候補だって聞かされたときは、これでパパとママの敵が討てるって、思ったんです…そう、2人を殺した『あの』アラガミを…」

 

 そのアラガミを思い出したのか頭を抱えるアリサ。そんな彼女に俺はどんな言葉を投げかければいいのかわからず、ただ彼女の頭を撫でた。

 

「…ごめんなさい…自分でもわからないの…!」

 

 彼女が落ち着くまでずっと…

 

「ありがとう、この前もこうして慰めてくれたの、あなただったんですね。ひねくれていて…そして温かい気持ちが流れ込んでくるの分かったから…」

 

「…別に俺は温かい気持ちなんて持ってないぞ」

 

「ふふっ、そうですね」

 

 俺は病室を後にした…

 

 ここで話が終われば実にいいんですけどね、ここ、ブラック支部にそんな甘い話はなく、早速任務ですはい…

 

「対象はボルグ・カムランです!ここ極東での第一例ですね!」

 

 …帰っていいですか? 

 




ずいぶん久しぶりの投稿ですね…すみません、次回からはもう少しペースあげてくつもりです…
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