やはり俺がフェンリル極東支部にいるのは間違っている。   作:水無月ゲンシュウ

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第八話 別れ

 初任務からもだいぶたち、アラガミとの戦闘にもだいぶ慣れつつあった今日、ついに俺にも大型アラガミとの交戦を命じられる日が来た。

 

 『ヴァジュラ』

 

 ここ極東支部ではこれを一人で倒せて初めて一人前といわれるアラガミ。気になって少し調べてみたのだが、ほかの支部ではヴァジュラが出た場合支部壊滅の危機ともいわれ神機使い総出で討伐に出るとかなんとか。

 

 加えて極東は個体的にほかの地域よりも数段強いのが出てくるというのにそれを一人で倒せて一前って……おかしくね?逆説的にここの一人前=他支部総出ってことになるんじゃ……あ、だからほかの支部から研修にその支部のベテランが来るのか。

 

 そんなことはさておき、今回のミッションは『蒼穹の月』というものでメンバーは俺、サクヤさん、ソーマ、コウタという編成だ。さすがに最初から一人なんていうことはないようだ。

 

 初の大型アラガミということもあり、コウタはかなり緊張していたが、残りの二人は普段と変わらなかった。おそらく討伐経験もあるのだろう。かくいう俺も神機を少し更新した。端的に言えばすべて一段階だけ強化しておいた。さすがに初期装備のままではこの先厳しいと思い強化した。基本的にサポート優先の俺が正面からやりあうことは少ないと思うが、念には念をだ。

 

 ミッション開始から数分俺は大型アラガミとの初のご対面をしていた……一人で。開始早々ほかのメンバーにおいてかれ……別ルートで偵察に出たら出会ってしまったのだ。

 

 奴が咆哮をあげる。今まで対峙したどのアラガミよりものしかかる重圧がすごい。相手は俺に向かって突進をしてくる。とっさにガードはしたがさすがにノーダメージとはいかず、威力に押し負け吹き飛ばされてしまう。

 

「くっ!」

 

 さすがにここまでに対峙したどのアラガミよりも強い。隙をついて攻撃を仕掛けるが、強化した武器にも関わらず効きが今一つよくない。俺は柄にもなく焦りはじめ思わず攻撃に意識を向けすぎて、敵の攻撃の予備動作を見過ごした。

 

「グアァァァ!!!」

 

 その咆哮を合図にヴァジュラを中心に放電が放たれる。攻撃に集中していた俺はガードすらできず、攻撃をもろに受けてしまった。

 

「がっ!」

 

 あまりの痛みに声をあげてしまったが、それは声とは呼べるものではなかった。とっさに体を起こそうとするが体がいうことを聞かない。

 

スタン。

 

 雷系統や麻痺系統の攻撃を受けることによる一時的な行動不能。しばらくすれば元に戻るが命のやり取りをしている戦場では、その数舜が命取りになる。

 

 ヴァジュラがこちらに近づいてくる。

 

 俺の背中を冷たい汗が流れる。死をも覚悟したが、タイミングがいいことに援護が来た。

 

 サクヤさんとコウタの射撃によりヴァジュラの姿勢が崩れる。ヴァジュラの意識が二人に向く。

 

「大丈夫!?」

 

 サクヤさんが声をかけてくる。

 

「まぁ何とか」

 

「なに一人で突っ走ってんだ」

 

 ソーマがぶっきらぼうに、そしてどこか心配してるような口ぶりをしながら、俺に肩を貸してくれる。

 

「そーだよ、信号弾で場所教えてくれればよかったじゃん」

 

「いや信号弾って、何?」

 

「「「………………」」」

 

 三人が無言になる。いやだってボッチには無縁の代物だと思ってろくに講義聞いてなかったから存在すら忘れてた。てか中二ボッチのソーマも無言になるのはおかしい。こんな会話を続けながらも三人は着々とダメージを与えていった。特にソーマの放つ一撃一撃はすさまじく顔面を殴られているヴァジュラがちょっとだけかわいそうに思えてきた。

 

 このメンバーでの戦闘経験は少ないがだいぶ形にはなっていると思う。

 

 ソーマは前衛。

 

 コウタは後衛とけん制。

 

 サクヤさんは後衛と回復。

 

 俺は前衛と後衛と遊撃と陽動と回復とけん制と支援……あれ?俺だけ役割多くね?

 

 ソーマのチャージクラッシュがとどめとなり、ヴァジュラはその活動を停止した……

 

 舞台は変わり別任務に行ったリンドウとアリサ……

 

「これは、いよいよキナ臭くなってきたな」

 

 アラガミの咆哮が聞こえアリサの脳内にある出来事がフラッシュバックする。

 

「どうかしたか?」

 

「い、いえ、問題ありません。側面、後方共にクリアです」

 

「そうか……進むぞ」

 

 また変わって八幡たち、周囲を警戒しながら帰途に就く。前方のソーマが何かにきづく。

 

「なに?」

 

 目の前にはいるはずのない二人組、リンドウとアリサがいた。

 

「お前ら?」

 

「あれ?リンドウさん、何でここに!?」

 

「どうして同一区画に2つのチームが……どういうこと?」

 

 確かに疑問だがその思考をリンドウが止めた。

 

「考えるのは後にしよう、さっさと仕事を終わらせて帰るぞ。俺たちは中を確認、お前たちは外を警戒、いいな」

 

 その言葉に一同は疑問を抱きながらも従う。中へ進むリンドウチームを待っていたのは新種のアラガミであった。

 

「下がれ!!後方支援を頼む!」

 

 そのアラガミの咆哮を聞いたアリサの脳裏を、一体のアラガミがよぎる。

 

「パパ…!?ママ…!?…やめて…食べないで…」

 

 リンドウは敵の攻撃をかわしながらアリサに声をかける。

 

「アリサぁ!どうしたあ!」

 

 しかしその声はアリサには届いておらず、代わりの声がアリサには聞こえていた。

 

(そうだ!戦え!打ち勝て!)

 

 リンドウが一撃食らうがすぐ立て直す。また別の声がアリサに聞こえる。

 

(こう唱えて引き金を引くんだ。アジン、ドゥヴァ、トゥリー!)

 

「アジン…ドゥヴァ…トゥリー…」

 

(そうだよ、そう唱えるだけで君は強い子になれるんだ)

 

「アジン…ドゥヴァ…トゥリー…」

 

(こいつらが君たちの敵、アラガミだよ!)

 

 その声で示されたアラガミの中にはリンドウの姿があった。アリサは銃口をリンドウに向ける。その時リンドウの言葉が頭をよぎった。

 

(混乱しちまったときはな、空を見るんだ)

 

「いやあああああああ!やめてぇぇぇぇえええ!」

 

 とっさに銃口を天井に向け、弾丸を発射した。しかしそれによりがれきが崩れ道がふさがれてしまう。何事かとサクヤと八幡は駆け付ける。

 

「あなた…!!いったい何を!!」

 

 かえすアリサは話がかみ合わないようなことを返してきていた。

 

「違う…違うの…パパ…ママ…私、そんなつもりじゃ…」

 

 業を煮やしたサクヤさんは瓦礫に向かって弾丸を放つがレーザー系では威力が足りないのか効果はいまひとつであった。

 

 一方外でも新種のアラガミに囲まれていた。

 

「マズイな…こっちも囲まれてやがる…」

 

 ソーマの口調に余裕はなかった。コウタが攻撃を食らい吹っ飛ばされる。八幡たちも戦闘を始める。

 

「早くしろ!囲まれるぞ!」

 

 ソーマの言葉に余裕はなかった。すると閉じ込められているリンドウから声がかかった。

 

「命令だ!アリサを連れて、アナグラに戻れ!」

 

「でも…」

 

 ごねるサクヤに対してリンドウはきつめに繰り返す。

 

「聞こえないのか!アリサを連れて、とっととアナグラに戻れ!サクヤ!全員を統率!ソーマ、退路を開け!!」

 

「パパ…ママ…そんな…つもりじゃ…」

 

 いまだに放心状態のアリサに八幡は近づく。

 

「リンドウも早く!」

 

「わりぃが、俺はちょっとこいつらの相手して帰るわ…配給ビール、とっといてくれよ」

 

「ダメよ!…私も残って戦うわ!!」

 

「サクヤ…これは命令だ!!全員必ず生きて帰れ!!!」

 

「イヤああああ!」

 

 八幡はアリサをおんぶしコウタもサクヤを引っ張る。

 

「サクヤさん!いこうこのままじゃ全員共倒れだよ!」

 

「いやよ!リンドウうううう!!」

 

そ の場を離れる一同その表情はけしていいものとは言えなかった……

 

「行ったか…」

 

 そういう彼の目の前には倒された新種のアラガミがいた。しかしまた別の新種が新たに侵入してくる。

 

「はあ…ちょっとぐらい休憩させてくれよ…体がもたないぜ…」

 

 そういいつつ、一服すると新たな敵へと向かっていった……




今回はリンドウがいなくなってしまう回でしたね。次回はこの時の八幡の心情らへんから入っていければいいと思います。
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