~ネージュ 惑星ウォパル 海底エリア~
「う、うぅん・・・。」
目が覚めると、青い天井が見える。
ああ、そうか。
確かダーカーに襲われて、崖から落ちたんじゃっけ・・・。
「気がついた?」
「!」
隣から人の声がする。
見てみると声の主はわしが横になっている隣に座っていた。
「お主は・・・?」
「通りすがりのアークスよ。」
黒い防寒用のコートを来た少女だ。
わしより年はそう変わらなさそうじゃが、辛うじて年上ってとこじゃろうか。
特徴と言ったら紫の髪に、ちょっとつり目気味、瞳が赤い。
「えっと、これ、何がどうなってこんな状況なのじゃ?」
「あんた本当に何も分かってないのね。いいわ、教えてあげる。」
「ふむ。」
「あたしも別の任務でこっちに来てたんだけど、遠くから強い光があったから見に行ったら気を失ったあんたが水の上に浮いてたのよ。」
「光?」
「あんた何かしてたんじゃないの?」
「いやいや全然なのじゃ。何せ崖から落ちた所以降の記憶が無くての。」
「はぁ?ますます意味分かんないんだけど。しかも上層から落ちてきたっての?いくら水があるからって普通死んでるでしょ?」
「そんなこと言われてものぅ。」
「ハァ・・・あんた任務はなに?」
「原生民から救難信号あったらしくての、そのポイントに向かってるとこなのじゃ!」
「それって結構急ぎじゃない!しょうがないわね。あたし急ぎじゃないから手伝うわよ。」
「おお!助かるのじゃ!!」
「ほら、行くわよ。」
そう言うと少女は立ち上がる。
「おう!」
立ち上がり、着いていく。
「・・・あれ?」
「? どうしたの?」
わし、なんかしなきゃいけないこと忘れてるような・・・。
なんじゃろう、思い出せん。
「まぁいいか。」
「?」
わしは少女についてくことにした。
~ロイド 民間居住区 孤児院~
「う、うぅん・・・。」
ラパンはゆっくりと瞼を開ける。
「ラパン・・・!」
良かった、目を覚ましてくれた。
「先・・・生・・・?」
私の名を呼んだあと、キョロキョロとして此処が孤児院の寝室だと理解する。
「ラパン・・・。」
「先生・・・ッ!?」
私は思いっきりラパンの頬を引っ叩く。
「どれだけ心配したと思ってるんだッ!!」
「先生・・・ごめんなさ・・・!?」
ラパンは謝ろうとしたが、堪らず抱き締める。
「怖かったんだぞ・・・このまま目を覚まさないんじゃないかって・・・!」
「先生・・・痛い・・・。」
「本当に・・・本当に良かった・・・無事で良かった・・・!」
涙が押さえきれなかった。
ラパンを見つけるまでも、悪い人間に捕まっていないか、事故にあってしまってはいないかと言う不安があった。
見つけてみれば命が危険な状態で見つかった。
何日も何日も続いた恐怖がやっと終わった。
ラパンは無事に帰って来れた。
これが泣かずに居られる物か・・・!
「先生・・・そうだ・・・ルナールは・・・?」
「ラパンッ!!」
ルナールは勢い良く入ってきた。
「大丈夫!?痛いところとかない!?」
「うん、平気・・・ルナールは・・・?」
「ルナールはラパンより一日早く治ったよ。」
「私・・・どれだけ寝てたの・・・?」
「三日だよ。」
「三日!?」
「ラパン、ルナールにも教えたけど、これ見てみな。」
「え・・・?」
取り出したのは『フォトンの扱い方初級編』。
ラパンが持ち出していた本だ。
その最初のページの注意事項を見せる。
「『一般人のフォトンの扱いは身体に多大な負担をかけるため、もし本書の事が出来ても適度に休憩を挟み、過度な使用は控えてください』。一番最初に書いてるじゃないか。」
「あ・・・本当だ、見落としてた・・・。」
「ラパンでもうっかりすることがあるんだね。」
「ご、ごめんなさい・・・。」
「本来なら、二人にはフォトンの扱いを禁止するところだけど・・・。」
「・・・!」
ラパンの頭に手を乗せて撫でる。
「将来の目標を持って努力する事は良いことだ。だから訓練はしていいけど、ちゃんと私の許可を取って、私の見てる所でする事!いいね?」
「・・・はい。」
注意しているのだが、なんだかラパンは嬉しそうだった。
本当にこの子は、頭を撫でてると幸せそうな顔するな。
「それと・・・。」
私は部屋の出入口に目をやる。
「ほらみんな、おいで!」
そう言うと孤児院の子供たちが入ってきた。
「・・・!」
ラパンは急に顔を強張らせる。
「・・・大丈夫だよ。もうみんなラパンを怖がってない。」
「・・・え?」
「あのあと、イドが助けを呼びに来たんだ。それでイドが此処の子達にラパンがやったこと全てを話してくれた。そしたらみんな、君をみる目が変わってね。」
「え?」
ラパンはイドを見る。
「・・・。」
イドは照れくさそうに目をそらす。
「あのさ・・・。」
一人女の子が前に出る。
彼女はエル、ルナールの親友でルナールがラパンに近づいていたことを一番注意してた子だ。
「ごめん・・・怖がったりして・・・。」
「あ、えと・・・その・・・。」
お互い気まずそうだ。
「ラパン姉ちゃん!」
「ふぇ!?」
小さい子達数人がラパンに飛び付く。
「イド兄助けてくれてありがと!」
「テクニックって言うの使って助けたんでしょ!?」
「私もテクニックやってみたい!」
「え・・・えっと・・・。」
ラパンは助けて欲しそうに私を見る。
「良かったな、弟子が出来たじゃないか。」
「そ、そんな、弟子なんて・・・!」
「ししょー!」
「師匠!?そ、そんな、私、そんなんじゃ・・・!」
「ふふ。」
そうだ・・・これだ。
この光景が見たかった。
こうやってラパンが皆に受け入れられている光景。
これが見たかった。
「ラパン。」
またラパンの頭に手を置く。
「お帰り、そして改めてようこそ、我が家に。」
「おかえり、ラパン!」
「おかえりなさい!」
「おかえり!」
皆がラパンに歓迎の言葉を贈る。
「みんな・・・。」
ラパンは涙ぐんで泣きそうになったが、すぐに拭って顔を見せる。
「ただいま・・・!」
ラパンは笑った。
その笑顔は、今まで見た彼女の顔の中で一番輝いて見えた。
~ネージュ 惑星ウォパル 海底エリア~
「あかん、あかんてぇ!!」
救難信号があったところに向かうと原生民が怪物に食われかけておった。
「あんたぁ!アークスの人ら来てくれはったで!もう少しふんばりぃや!!」
近くでその奥さんらしき奴が旦那に激を飛ばしておった。
「せやかてもう限界や!はよ助けてぇな!!」
「おう!任せるのじゃ!!」
わしは怪物に向かってイルグランツを飛ばす。
怪物は原生民を食うことに夢中なのか、避けようともせず直撃する。
しかし、身体が大きい事もあるのか中々タフで、傷が少し着いたぐらいであまり威力がない。
「んぬっ、効かんか、ならば!」
ラグランツの方が良さそうじゃ。
フォトンを練りながら怪物に近づく。
「むっ!?」
なんじゃ!?
奴から水流が起こって押し戻される。
じゃが奴が攻撃らしき行動もとってないんじゃからこのまま押し進んでも・・・。
「待ちなさい!ちょっと離れて!」
「へ?」
少女に注意された瞬間・・・。
「ふぎゃ!!」
突然怪物から強力な水噴射が起こり、吹き飛ばされる。
「痛た・・・なんなのじゃこいつ・・・!」
「補食中のガラムアネモネは食事の邪魔をさせないために、近づくやつを水噴射で妨害するの。」
「じゃあどうやって倒すのじゃ!あいつ結構タフじゃぞ!?」
「下がってて。」
少女は手を前に翳す。
すると黒い剣が出現する。
「お、お主ハンターなのか!?」
「違うわよ、まぁ見てなさい。」
そう言うと少女は剣を逆手にもち、剣の柄の部分を怪物に向ける。
すると柄の先から真っ黒い球体が現れる。
「一発で仕留めるから。」
そう言うと少女の身体から黒いオーラが涌き出てくる。
しかも少しすると怪物から黒と紫が混じったような禍々しい魔方陣が現れる。
「ハッ!!」
少女が剣に力を込めると、化け物は内部から爆破されたかのように四散する。
「あぃた!!」
食われかけておった原生民は、急に化け物が爆破したお陰で足場を失い、下の水面に落ちて転ぶ。
「お、お主・・・。」
「そう、あんたと同じフォース。最も私は闇のテクニックの方が得意だけどね。」
「あんたぁ!!」
「お前ぇ!!」
奥さんが駆け寄り、旦那の方も駆け寄り、今にも抱き合うかと思った瞬間・・・。
「ふぬぁ!!」
「ぶふぉ!?」
奥さんが旦那を掴み、そのまま見事なバックドロップをかます。
「何すんねんアホ!!」
「アホはあんたや、アークスの人らに迷惑かけ腐って!!」
「お前がさっさと逃げるからわしが敵に囲まれたんやろ!!」
「あんたがトロいのが悪いねん!!それに救難信号もちゃんとアークスの人らのとこ送ったで!『うちの旦那御愁傷様』ってな!」
「勝手に殺すな!!それ救難信号ちゃうやろ!!」
「救難信号なってますー!アークスの人ら来てくれはったのが証拠ですー!結果がもの言うんや結果が!!」
「それアークスの人らが察し良すぎんねん!!なんでそんなんで来てくれんねん!すげぇなアークス!」
「それにあんたが死んだらもっとええ人旦那にしたるねん!サクラ貝ヘッドのヘブラカスさんとか、アサリヘッドのナラブカンさんとかホラ貝ヘッドの・・・。」
「どいつもこいつも頭貝やないかい!!わしと大して変わらんやろ!!」
「あんたには美意識が足らんねん!少なくともあんたの糞みたいな巻き貝ヘッドよりマシや!!」
「なんやと!」
「ぷくく・・・。」
「なんや嬢ちゃん?腹痛いんか?」
駄目じゃ・・・もう限界・・・!
「ぷはははッ!お主らッ、面白過ぎるのじゃ!!」
「人の喧嘩みてそない面白いんか!気分わるい奴っちゃな!」
「いや・・・あんたらのそれ完全に漫才だから。」
少女の方も顔がひきつっている。
割とわしと同じでキツそうじゃったかな?
「これが漫才に見えるんか!失礼な奴っちゃな!」
「これ以上はツッコまないわよ。それに此処も安全じゃないんだから、さっさと住処に帰って喧嘩なり漫才なりやってなさい。」
「フン、なんか納得いかんけど嬢ちゃんの言うことはもっともや!とにかく、助けてくれた事には感謝しとるで!ほなな!」
「ほななー!」
原生民の真似をしてワシは見送った。
「ところであんた・・・。」
「へ?」
少女は急に話しかけてくる。
「あんまり一人で任務行ってないでしょ。」
「ギクッ!」
な、なんでバレてるのじゃ!?
「な、ななな、なんのことじゃ?」
「目がクジラみたいに泳ぎすぎ、あんなの見たら誰だって気づくっての。」
「うぐぐぅ・・・!」
「あんた仲間は?」
「それがのぅ・・・。」
「ネージュ様!!」
「へ?」
なんじゃ?
声のする方を見てみると・・・。
「・・・!」
見覚えのある執事服。
年老いたその姿・・・。
「じ、じいや・・・!」
「ネージュ様、お会いしとうございました!」
「じ、じいや!!」
今にもじいやにかけ寄ろうとした瞬間・・・。
「待って!!」
少女が手を突き出して制止をかけてくる。
「な、なんじゃ・・・。」
「・・・。」
少女は先程の剣を目の前に翳す。
「え、なんじゃ!?」
剣は黒い霧の様なオーラを放っておった。
「この剣はダーカーに反応するんだけどこんなに反応したのは初めて・・・あんた、何者なの?」
「ふっふっふ。」
少女の言葉にじいやは急に笑い出す。
「こうも度々騙し討ちに失敗してはいささかプライドが傷つきますな。」
「じいや!?」
なんじゃ?
どういうことじゃ?
わしには全然分からん!
「では正体をお教えしましょう。」
じいやは礼儀正しく礼をする。
「ダークファルス・・・ダークファルス【従者(ヴァレット)】。」
「ヴァレット・・・!」
その名前には聞き覚えがあった。
「ヴァレットって・・・あのヴァレットか・・・!」
「なに、あんた知ってるの・・・?」
「ああ、じゃがヴァレットはじいやではない・・・あやつはメイドだったはずじゃ!!」
「ふふふ・・・。」
じいやは急に笑い出すと黒い霧に包まれる。
そして霧が晴れると、見覚えのあるショートヘアのメイド服の女になっていた。
「お久しぶりですわ、ネージュ様。」
ヴァレットはスカートを両手で摘まんで一礼する。
「ヴァレット・・・貴様・・・なんでじいやの姿に・・・!」
「わたくしは元よりダークファルス・・・肉体を乗り換える事など造作もございませんわ。あぁ、因みに、今のこの姿はわたくしの能力でこう見せているだけで、実体は執事長の物ですわ。」
「そのじいやって人の身体が、今のあんたの『依り代』ってわけ?」
「な、どういうことじゃ!?」
わしには分からんが少女は理解しとるようじゃった。
「知らないの?ダークファルスは本来実体がないの。だから実体を得るために人間の身体を乗っ取るのよ。」
「そちらの方は中々博識ですわね。説明の手間が省けて助かりますわ。」
「許さん・・・許さんぞ・・・この裏切り者め!!」
「『裏切る』?」
そう言うとヴァレットはじいやの姿に戻る。
「それは違いますな。わたくしは最初から貴方たちの敵だった・・・ということでございます。」
「黙れ!!じいやの姿で話すな!!じいやを汚すな!!」
「まぁ、色々と話したいことはあるでしょうが、これ以上話が脱線しても仕方がないでしょう。本題に入らせて頂きます。」
【従者】は礼をしたあと、顔を上げ、わしを睨む。
「ネージュ様、貴方様が『神託のフォトン』を既に継承されていることが判明致しました・・・よって即刻排除させて頂きます。」
「『神託のフォトン』・・・!」
少女は目を見開く。
「え、なんじゃ知っとるのか・・・?」
「知ってる・・・アークスシップ第23番艦『アルクトゥス』にのみ存在する『テンプルエリア』。そこにとある一族が一子相伝で受け継いでいる強力なフォトン・・・それが、『神託のフォトン』。」
「なんで知っとるんじゃ!?『神託のフォトン』は秘密裏に管理されとるから、他のシップには知られとらんはずなのに・・・!」
「私も『アルクトゥス』にいたのよ。」
「ほお、『あの襲撃』を生き残っていたのですか。確か七年前だったはず。貴女も流石にその年でアークスにはなってはおられないでしょうに・・・。」
「お喋りはここまでよ。あんたがあの艦を襲撃したっていうならあんたはあたしの家族を奪った『仇』ってことになるわ!!」
少女は剣を先程の様に逆手で構える。
「わしだって戦うぞ!!貴様は許せんのは変わらんからな!!」
「ほう、勇ましいですな。ですが・・・。」
【従者】は二丁の銃を出して構える。
「貴方がたはフォース。であればわたくしが銃でこの間合いに立っていることがどういうかお分かりですな?」
わしらと【従者】の間合いは歩く歩幅六歩分。
銃で撃つにも充分射程内じゃ。
「・・・テクニックのチャージ中にいくらでも撃ち抜けるってわけ。」
「はい、テクニックを練った瞬間に攻撃に移らせて頂きます。」
「舐められたもん・・・ね!!」
「!!」
少女は意外な行動に出る。
剣を更にひっくり返し、元の剣の様に持って【従者】に斬りかかった。
【従者】は意表を突かれたものの、なんとかそれを銃で止める。
「ほう・・・!」
「これがあんたには『杖』に見えるの?」
少女は【従者】に容赦なく連撃をかける。
「くっ・・・!」
流石に押され気味と思ったのか、【従者】は後方に宙返りしながら銃を構えるが少女はテクニックを練っている。
「マズイ!狙われ・・・!」
銃を構えている相手にテクニックを練り始めたら無防備じゃ!
わしが注意を呼び掛けようとした途端・・・。
「残念ね。」
「!!!」
わしが予想していたよりも早く少女はテクニックを練り終わり、炎のテクニック『フォイエ』を【従者】に向かって放つ。
「ぐぁっ!?」
【従者】もこんなに早く撃たれることは予想していなかったようで、フォイエを諸にくらってしまい、すぐ後ろの壁に身体を打ち付けて倒れる。
「クラスカウンターで申請出来るスキル、『フレイムテックSチャージ』。あたしの炎のテクニックはあんたの銃を撃つ早さにだって負けないわよ。」
「ふふ、見事・・・!」
「覚悟しなさい!」
少女はフォイエを放つ。
「ふふ。」
「!?」
【従者】は突然霧のように姿を消す。
「お見事。」
「!!」
【従者】は少女の後ろに回り込んで後頭部に銃を突きつけていた。
「今やったのは『幻覚』だったってわけ。」
「・・・看破されてましたか。」
「あんたが最初にメイドになった時からそうじゃないかって思ってたわ。」
「中々賢い・・・ですが、終わりです。」
【従者】が引き金を引こうとした瞬間・・・。
「む!?」
【従者】は即座に右に向き、銃を突き出す。
するといつの間にか現れた者が何かをその銃にぶつけた。
「お主・・・!」
金髪に白いロングコート。
「ハァッ!!」
ぶつけたのはカタナの鞘で、既に抜いたカタナを【従者】に向かって縦一文字に叩き込む。
「ぬぅッ!」
【従者】は少女から離れて回避する。
「また失敗か・・・訓練は受けてるけど、どうも苦手なんだよな、『不意討ち』って。」
「セト・・・!」
「やぁ、また会ったね!」
相変わらず爽やかな笑顔で気さくに話しかけてくる。
「さて・・・。」
セトはカタナを鞘に納め、【従者】に構え直す。
「ノワールから受けた報告の『新種のダーカー』を狙って張ってたらえらい大物がかかったみたいだね。」
「三人ですか。しかも前衛がつくとなると・・・。」
【従者】は銃を構えるが・・・。
「三人じゃねぇよ。」
「!!」
【従者】の両斜め上から人影が二つ降ってくる。
「『五人』だ。」
ノワールとエスカが【従者】に向かって蹴りを放つ。
「くぅッ!」
【従者】は後方に飛んで更に距離を取る。
「ノワール!エスカ!」
「やっと見つけたぞこのアホ・・・!」
ノワールは忌々しそうにいつもの憎まれ口を叩く。
「エスカ・・・!」
「ネージュ・・・。」
エスカは一瞬だけわしを見て【従者】に視線を移して構える。
「・・・すまない。」
「エスカ・・・。」
「これはこれは・・・。」
【従者】は銃をしまう。
「ネージュ様、わたくしの知らぬ七年の間に、随分と仲間を増やされましたな。いやはや全く・・・。」
【従者】は表情を変える。
「忌々しい・・・!」
その表情は憎しみに満ちたかのように険しい。
じゃが、すぐに元の余裕ある表情に戻る。
「まぁいいでしょう。今回は引きましょう。ですがネージュ様。」
【従者】はうっすらとした細目でわしを睨む。
「わたくしが『殺す』と公言した以上、安眠出来る夜があると思われますな。」
そう言って【従者】は赤黒い霧と共に消えていった。
「・・・行ったか。」
セトが確認するように言うと、一同は構えを解く。
「それにしてもセト、お前なんでこんなところに・・・。」
ノワールが質問を飛ばす。
「君ら第一発見者だろ?『新種のダーカー』の、奴等が一度接触した君らにまた接触してくると思ってつけてたんだ。」
「単独行動かよ。お前確か部隊任されてなかったっけ?仲間はどうしたよ。」
「大人数でゾロゾロ行動したら敵も寄り付かないだろうから、僕一人で監視してたんだよ。」
「じゃあお前一人がずっとネージュの後をつけてたってことか?」
エスカは目元をひくつかせながら聞く。
「そうだよ?って、え?なんでみんな距離取ってんの?」
エスカはわしを庇うように背中に着けながら距離をとり、ノワールも距離をとり、少女までもセトから距離をとる。
「うわぁ・・・!」
少女の顔が嫌悪感に満ちているように見える。
「あぁ、そういうこと?って違うッ!!これはただの敵を釣るための隠密行動ッ!!そういう意味じゃない!!」
「そういう意味ってどういう意味じゃ?」
「ネージュ、お前は知らなくていいぞ。それより、こいつから距離を取れ。」
なんかよくわからんが、エスカに諭される。
「余計なこと言わないで!」
「引くわぁ・・・。」
「ノワール!!お前も男だろ!?なに女の敵を見るような目で見てるんだよ!!」
「俺の方にも密偵着けてたし余計引くわぁ・・・。」
「だから引くなって!!って、え?なんで知ってんの!?」
「ん。」
ノワールは懐から袋を取り出す。
「むぅう!!うぐうううぅ!!」
袋の中で何かが暴れている。
「プハッ!!」
袋の中身が顔を出す。
兎の耳のついたシルクハットを被った、片目に眼帯のついた少女のようじゃが、人にしては頭だけでもそれが分かるほど小さい。
「サポート・・・パートナー?」
「うぅ・・・。」
サポートパートナーらしき少女の目はみるみるうちに涙ぐむ。
「うわあああぁぁぁん!!セドオオオオ!!だずげでええええぇ!!ごの人たぢごわいよおおおぉ!!」
サポートパートナーは物凄く大声で泣きながら助けを求める。
「ラビ!?なんでこんなことに!?」
「俺らが【従者】の幻覚破ったころに、物陰から連絡取ろうとしてたから銃突きつけて洗いざらい吐かせようとしたんだが逃げた・・・だからふん捕まえて袋に入れた。」
「袋に入れる意味が分かんない!!はぁ・・・だからか・・・途中から連絡取れなくなったのは。」
「セト、よう分からんが、どんまいなのじゃ。」
「哀れみにしか聞こえないけどありがと・・・。」
「よく分かんないけど、仲間と合流出来たみたいだし、あたしはもう用済みみたいね。」
少女は溜め息混じりに両手を挙げて言う。
「んじゃ、あたしも任務あるからいくわ。」
「おう!感謝するぞ!」
「ん。」
少女は振り返らず手を降りながら去っていく。
「ネージュ、あいつは?」
エスカに聞かれる。
「途中で助けてくれた奴なのじゃ。えーと。」
あれ、たしか・・・えっと。
「あ!」
「どうした?」
「名前聞くの忘れてたのじゃ・・・。」
「ハァ・・・お前そうやって抜けてるから一人で任務行くと危ないんだよ。」
「エスカ・・・お主もそんなこと言うのか・・・。」
「は?『も』ってなんだ。他にも言ったやつがいるのか?」
「ノワールなのじゃ・・・。」
「ノワール・・・!」
エスカは少し考え込むとハッとする。
「まさかお前、ネージュをムキにさせたからって私に・・・!」
エスカがノワールの方を向くが・・・。
「いない!?」
「ノワールならさっきどっか行ったよ。」
セトは泣きじゃくるサポートパートナーをあやしながら言う。
「なに!?くっそ、あいつぅ!!・・・!?」
エスカは戸惑う。
「・・・。」
わしが後ろから抱きついたからじゃ。
「・・・!あぁ、僕も今回の件、報告しないとだから、いくね。」
気を効かせてくれたのか、セトも去っていく。
「ネージュ・・・。」
エスカはわしの手を握る。
「すまなかった。お前に刃を向けたこと・・・チームを抜けたこと・・・。」
「どうでもいい・・・。」
「どうでもよくないだろ・・・。」
「どうでもいいのじゃ・・・。」
力を込めてエスカにしがみつく。
「エスカ・・・もう、一人はいやなのじゃ・・・!」
「ネージュ・・・。」
「・・・。」
「私は・・・戻ってきていいのか?」
「駄目なんて・・・わしが言うわけないじゃろ・・・!」
「ネージュ・・・。」
「・・・。」
「ありがとう・・・。」
~紫髪の少女 惑星ウォパル 海底エリア~
目の前の巨大なエネミーは奇妙な声を挙げて動かなくなった。
海底エリアの最深部、そこに潜んでいた原生エネミーである『ビオル・メデューナ』。
こいつがダーカーに侵食されて暴走し、原生民に被害を及ぼしたため、原生民より討伐依頼が来ていた。
「その程度のエネミーなら瞬殺か。」
不意に後ろから声がする。
「覗き見なんて趣味悪いわね。」
さっき会ったばかりなので声を聞いただけで人物は特定できる。
あの黒いコートの男。
確か名前は、『ノワール』だったっけ?
「その剣・・・強いな、何処で手に入れた?」
「・・・色々あって手に入れただけよ。」
「そうか・・・。」
「なにそれ・・・興味があったんじゃないの?」
「まぁ、ないと言えば嘘になるけど、嫌なら別に言わなくていい・・・邪魔したな。」
水の音が混じった足音が遠ざかっていく。
去っていったみたいだ。
「・・・。」
報告の為に通信機を管制に接続する。
「終わったよ。」
『こちらでも確認しました、お疲れ様です!』
「うん・・・。」
『では帰還してください、ラパンさん!』
「うん・・・。」
通信を切る。
管制からのアクセスで自動生成されたテレパイプに足を進める。
「・・・。」
途中で止まり、胸に着けていたロケットを開く。
中には当事九歳の自分と、この世で最も大事な人が一緒に写った写真があった。
「先生・・・。」
ロケットを閉じ、握りしめる。
「何処・・・寂しいよ・・・また・・・頭撫でてよ・・・!」