PSO2 ~創造主の遺産~   作:野良犬タロ

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第十六章 ~疑惑と信頼~

~ラパン アルクトゥス市街地(七年前)~

 

「ルナールッ!!」

倒れたルナールに駆け寄り、頭を抱き抱える。

「待ってて・・・すぐ手当てを・・・!」

レスタをルナールにかけるが、ルナールは全然元気になる様子はない。

「どうして・・・!」

私のフォトンがもう尽きかけてるから?

処置を間違ってるから?

今なんらかの異常があってレスタが効かないから?

理由を考えても分からない。

いや、分からない振りをしているだけ。

「いや・・・・!」

頭を掻きむしって思考を紛らわす。

いや・・・考えたくない・・・!

考えたくない、やだやだやだやだやだ!!

「『手遅れ』な訳ない・・・助かるから・・・ルナールは絶対助ける方法が・・・!」

「ラ・・・パン・・・!」

ルナールは意識を取り戻す。

「ルナールッ!大丈夫!?」

「・・・。」

「ルナールッ!?」

「はは・・・ちょっと・・・頑張りすぎた・・・かな・・・。」

「ルナール・・・無茶しないで・・・こんなの・・・!」

「ラパン・・・。」

「・・・?」

ルナールは私の手を掴む。

「!?」

手が冷たい。

しかも掴む力も弱々しい。

「やっぱり・・・駄目だった・・・。」

「ぇ・・・?」

何を・・・急に・・・?

「だって・・・無理なんだ・・・私・・・ラパンを死なせ・・・ るの・・・。」

「なんでよ・・・!」

「最初はね・・・ただ『アークスになりたい』って・・・思ってた・・・。」

「なによ、それ・・・。」

「でも・・・ラパンと一緒に・・・ アークス・・・目指してたら・・・ね・・・いつの・・間にか・・・『ラパンと一緒に・・・アークスになりたい』・・・に・・・なってた・・・。」

「そんなの・・・ 。」

そんなの・・・!

「私だって同じだよルナールッ!私だって・・・ルナールと一緒にアークスになりたいよッ!」

「ラ・・・パン・・・へ・・・えへへ・・・。」

ルナールは力のない声で笑う。

「嬉しいな・・・!」

するとうつ伏せから首を動かしてかろうじて顔が見えるようにしてくる。

笑っていた、精一杯の力で笑っていた。

私の手を握っていた手も震え始める。

「あり・・・ が・・・・と・・・・ラ・・・・・・パ・・・・・・!」

ルナールは手を降ろし、ぐったりと脱力した。

「ルナール・・・?」

揺らしたが起きない。

「やだ・・・やだよ・・・!ルナールッ!」

ルナールは起きなかった。

「ルナール・・・ルナールッ・・・う、うぁ・・・ぁ・・・!!」

起きてよ!

冗談やめてよ!

寝ちゃっただけだよね!?

やだよ、やだよ!

「あああああああああああああああッ!!」

もう耐えられなかった。

心が折れて号泣した。

その声に呼ばれたのか、またダーカーが現れて私を取り囲む。

「なによ・・・なによ・・・!」

恐怖よりも自分を塗りつぶす感情があった。

黒く、ひたすら黒い何かが私の胸のなかを塗り潰した。

「お前たちがやったんだ・・・!お前たちが・・・!お前・・・タちガ・・・!」

目の前が真っ赤になって見えなくなった。

いつの間にか手に持っていた『何か』をがむしゃらに振り回す。

手応えがあればそこを何度も切り裂き、見えなかったが物体を掴んだら、それに『何か』を突き立てた。

とにかく、周りにあるものを壊すつもりで振るった。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

次第に手応えがなくなってくると、視界がハッキリしてくる。

「・・・?」

手に持っていた物に気づく。

それは黒い剣だった。

片手で持てる程度の大きさだが、確かな大きさで禍々しさのある不気味な剣だった。

「・・・。」

周りを見てみると死んだばかりのダーカー『だった』腕や足や頭が転がっていた。

中には片目を抉られた物もある。

「あんたらにお似合いの姿だよ・・・バーカ。」

死体に皮肉を吐くとルナールの方を向く。

あまりに錯乱して暴れまわったが、ルナールには傷をつけていなかったようだ。

「・・・。」

このままルナールを此処に放って置いたら可哀想だ。

運ぼうと思って歩を進めるが・・・。

「え・・・?」

何かにつまづいた訳でもないのに転んでしまう。

「・・・。」

起き上がれない。

力が入らない。

ああ、そっか・・・ 私も『限界』なんだ・・・。

「・・・。」

『まぁ、いっか。』と言おうとしたが、口も動かない。

もう、いいよね・・・。

思えば泣いてばかりの人生だった。

親に捨てられたかと思えば知りたくもなかった自分の正体を知り、それでも幸せな居場所を得られたかと思えばダーカーに奪われる。

こんな人生・・・もう疲れちゃったな。

「・・・!」

ルナールの姿が目に留まる。

「ッ・・・!」

這いずりながら傍まで近づき、すっかり冷たくなった手を握る。

ルナール・・・先に行っちゃったけど、すぐ会えるよね。

死んだあとの世界なんて想像出来ないけど、ルナールと一緒に行けるなら怖くない・・・。

ずっと、一緒だよ・・・。

「・・・。」

でもひとつだけ心残りはあった。

先生だ。

私を最初に受け入れてくれた先生・・・。

いつも頭を撫でてくれた優しい先生・・・。

私に友達が出来るように色々教えてくれた先生・・・。

孤児院が貧しいながらも頑張って美味しい料理を作ってくれた暖かい先生。

大好きだった。

そんな先生にお礼も何も言わずに逝くことだけが心残りだった。

でも・・・ 仕方ないよね・・・。

「・・・?」

誰かが繋いだ私達の手に触れる。

「・・・!!・・・!」

何か言ってるけど、うまく聞き取れない。

身体を揺すられるが、私は言葉を発する事も身体を動かす事も出来なかった。

次第にその人物は諦めたのか、私から手を放し、ゆっくりと足音を遠ざけていく。

あーあ・・・もしかしたら助かるかも知れなかったけどいっか・・・。

もう・・・眠いや・・・。

 

 

~ネージュ アークスシップ ショップエリア~

 

「うえぇ・・・。」

医務室に運ばれたみたいじゃが、まだ頭がガンガンするのじゃ・・・。

エスカは報告に行くとかでどっか行っとるし、気晴らしに散歩しようかと思ったけど、部屋に戻ろうかのう・・・。

「それにしても・・・。」

訓練は失敗じゃったんじゃろうか。

あのあと何が起こったか誰も教えてくれんし・・・。

「・・・。」

なんでわし、こんなに弱いんじゃろうか。

いつもそうじゃ、エスカに守られて・・・ノワールに助けられて・・・二人共居なかったら、危ない目に遭って結局助けられて・・・。

「おい、聞いたか?」

「ノワールってあの『暴食の幽霊』だよな?」

「・・・?」

ノワールの話?

男二人が近くで話しとるようじゃ。

「あぁ、ついに人にまで手ぇ出しやがったってよ。」

「・・・?」

人?

なんのことじゃ?

「大規模作戦に紛れてアークス殺したんだろ?」

「!!」

ノワールが人を殺した・・・?

「それにしても・・・。」

「あぁ、ついにやりやがったってやつだよな。」

「元々帰還命令無視の常習犯だしな、見た目もやべぇ感じだったし。」

「『暴食』ってつくぐらいの戦闘狂だしな、もうダーカーぐらいじゃ食い足りなくなったんじゃね?」

「ホントサイコ野郎だよな、いい迷惑だわ。マッド野郎の考えとかマジわかんねぇわ!」

「ハッハッハ!マジそれだわ!」

「ッ!!」

「ぶぇ!?」

堪らず男の片方を突き飛ばす。

「あぁ!?なにすんだよ!!」

「貴様ら・・・今の話もういっぺんしてみろ・・・!」

「あ?『暴食の幽霊』ちゃんの話?」

「噂広がってるよな!まぁ、あんなことすりゃ自業自得だろ!」

「わしはノワールのことよく知っとるぞッ!!」

「は?」

「確かにあやつは、ダーカー倒す事に没頭しすぎて、帰還命令無視するようなアンポンタンじゃ・・・じゃがあやつは、助けられる奴にならどんな奴にでも手を差し出す奴じゃッ!!わしは奴に何度も助けられたのじゃッ!!」

「は?ありえないだろ、噂と違いすぎ・・・。」

「貴様らは噂があったらダガン一匹が一秒で跡形もなく惑星を消し去るって信じるのかッ!!」

「何が言いたいんだよ。」

「ノワールのこと何も知らんくせに・・・噂だけでノワールの事を悪く言うなッ!!貴様らは、噂に踊らされてるだけのピエロじゃッ!人形劇みたいに操られてる間抜け面な人形じゃッ!!」

「おい・・・。」

「お嬢ちゃん俺らのこと舐めてない?」

「いっぺん痛い目見た方がいいよね?ほら、ちょっとこっち来いよ。」

「ッ!!」

男が肩をガッと掴むとぞっとした感覚がする。

じゃがその瞬間・・・。

「いで・・・ いででででッ!!」

男は間抜けな顔で苦しみだす。

「すまないな、うちの連れが迷惑をかけてるようだ。」

「!!」

エスカが男の片腕を後ろから絞め上げていた。

「ッのやろ!!」

もう一人の男がエスカに殴りかかるが、エスカは拳を片手で止める。

かと思えば、そこから手を滑り込ませて男の手首を掴んで捻り上げる。

「いたたたたッ!やめ、いで!痛い痛い痛いッ!!」

男二人はエスカに完全に絞め上げられていつ腕を折られてもおかしくない状態になっておった。

「迷惑をかけたなら謝るさ。ここは私に免じて穏便に退いてくれると嬉しいんだが。」

「てめっ!言ってることとやってることが逆だろうがッ!!」

「なぁ、頼むよ。」

エスカは少し艷の入った優しい声で前にいる男の耳元に顔を近づける。

「私もこんな所で『殺し』なんかしたくないんだ・・・。」

「ッ!!」

エスカの声は優しかったが、見ているわしさえ恐怖するほど危険な響きが耳に残った。

直接言われた男に至っては冷や汗を流して脚が震えておった。

「わ、分かったよ、分かったっての!だ、だから、放せって・・・!」

男は逆ギレしながら言ってるつもりのようじゃが、声が震えてて全く言葉に威力がなかった。

「そうか、あんたがいい奴で助かるよ。」

エスカは男二人を解放する。

「チッ、気分最悪だ。」

「飯食い行こうぜ?」

「あぁ・・・。」

男二人は皮肉混じりに捨て台詞を吐いて去って行った。

「エスカ・・・。」

怒られるかのう・・・。

「・・・気持ちは分かるが無茶するな。」

「!」

エスカはわしの頭を撫でる。

・・・『無茶するな』、か。

「・・・? ネージュ?」

「ぅ・・・ひぐっ・・・。」

涙が止まらなくて泣いてしまう。

「お、おい、こんな所で泣くな!」

エスカは周りを見ながら慌てる。

「なんだ、怖かったのか?」

「違うのじゃぁ・・・!」

情けなかった。

あんな状況になって結局誰かが助けてくれないとどうにもならない自分が情けなかった。

「よく分からんが、部屋に戻ろう!な?」

エスカはわしの手を引いて二人で部屋に向かって行く。

 

 

~エスカ マイルーム~

 

「・・・落ち着いたか?」

「・・・うん。」

好物のハチミツ入りのホットミルクを飲ませると、一先ず落ち着いたようだ。

道中で話は聞いた。

なんともネージュらしい理由だ。

「なぁ、ずっと気になってたんだが・・・。」

「なんじゃ?」

「お前ってどうやってその年でアークスになったんだ?」

ずっと気になってはいた。

ネージュぐらいの年齢ならあと二、三年はまだ候補生であってもおかしくはないのだ。

特別に頭がいい訳でもなく、戦闘に特化していた訳でもない。

「・・・候補生時代に適性検査があっての、フォトンの適性が異様に高かったらしいのじゃ、それで色々パス出来る科目があったとかで、飛び級でアークスになったのじゃ。」

「フォトンの適性、か・・・そんな事でお前みたいな年の子を戦場に送るとか、アークスも酷だな。」

「わしは悪くは思わんぞ!元々アークスになりたかったし、早くなれるなら願ったり叶ったりじゃ!でも・・・。」

「でも・・・なんだ?」

「それもきっと・・・『神託のフォトン』を受け継いだからじゃろうし、結局、わし自身の力なんて・・・。」

「・・・。」

「エスカ・・・?」

「てぃ!」

「ふにゃッ!?」

ネージュの脳天に指先だけのチョップをかます。

加減はしたつもりだがそれでも痛そうにネージュは頭を両手で押さえる。

「何するんじゃエスカァ!」

「ネージュ、ひとつ聞くぞ?」

「な、なんじゃ?」

「強さって頭の良さや戦闘力で決まることか?」

「え?」

私の質問にネージュは考え込む。

「違う・・・のか?」

「ああ、私は違うと思ってる。それも、お前を見て思ったことだ。」

「わしを・・・?」

「お前、最初に私を助けた時のこと覚えてるか?」

「え?んーと・・・。」

「・・・忘れたんだな?」

「うぐぐ・・・!」

ネージュは悔しそうに声をくぐもらせる。

「市街地がダーカーに襲撃された時だ。私はあの時瀕死の重症で動けなかった。そこにお前が現れて安全な場所まで運んだんだよ。」

「あぁ!」

ネージュは思い出したようで、手をポンと叩く。

「あれこそ、お前の強さだよ。」

「そ、そんなの、普通に出来る事じゃろ?」

「あの戦場は最前線で敵も多かった。お前がもし薄情な奴なら私を見捨てて逃げてただろう。私もあの時、散々お前に『捨てて逃げろ』って言ってたしな。」

「そ、そんなこと出来るわけないじゃろ!わしだってアークスじゃ!助けられる奴は助けるのじゃ!」

「そう言うところだよ、お前の強さは。」

「・・・?」

ネージュは私の言葉が理解出来ないようで考え込む。

「つまり・・・どういうことじゃ?」

「ふふ。」

私はネージュの頭を撫でる。

「?」

「分からなくていい、けど、私はお前の良いところも知ってるってことだ。それだけ分かってくれればいい。」

「うぬぅ・・・誤魔化された気がするのじゃ・・・。」

ネージュは不満そうだが、私は別にそれでもいい。

「それよりエスカ・・・。」

「なんだ?」

「ノワールの事じゃけど・・・。」

「ああ、噂は聞いてる。アークスを殺したとかだったな。」

「エスカはどう思うのじゃ?」

「・・・あいつをフォローするのは気にくわないけどな、私もお前と同じ考えだ。」

「ほ、本当か!?」

ネージュは目を輝かせる。

「大方また変な事に首突っ込んだとかで何かに巻き込まれたんじゃないか?」

「そ、そうか!そうじゃそうじゃ!あやつなら充分有り得るぞ!」

「それに、お前と違うが私も私なりにあいつを理解してるところはある。」

「え、なんじゃ?」

「あいつはダーカー以外殺せない。」

 

 

~ノワール 惑星ウォパル 海底エリア~

 

「そっち行ったわよ!」

「分かってる・・・!」

ラパンの炎から逃れたソルダ種の親玉に一気に距離を詰め、俺は零距離から銃をぶっ放す。

「ふぃー、助かるわぁー。」

原生民は安堵の溜め息を着く。

俺達はしばらく泊めて貰う代わりに集落から遠出する住民の護衛を買って出た。

住民には遠慮されていたが、ただで泊めて貰うのは症に合わないからだ。

「それにしても、お前らよく狙われるな。」

「当たり前や!あんたらのとこがどんなところか知らんけど、この惑星は弱肉強食や!ちっこくて弱いもんが真っ先に餌と見なされるんや!」

「ちっこくて弱いって・・・自分で言ってて悲しくない・・・?」

「事実や!でもな、俺らやからこそ生き残る手段かてあるんや!狭い隙間に逃げ込んだり、小さい穴に入り込んで敵が諦めてどっかいくまでやり過ごしたりな!」

「小さい穴・・・。」

ラパンはじっと一点の場所を見る。

「・・・。」

こいつと同じ場所を見て納得した。

僅かに周りの地面が盛り上がった岩穴がある。

だがあれは海底エリアの原生エネミーであるガラムアネモネの巣穴だ。

なんの変鉄もない穴にみせて近づく獲物を吸い込んで補食することを得意とする生物だ。

「ちょっとあんた!足下にある穴に逃げ込むのだけはやめなさいよ!?」

ラパンは慌てて原生民に注意換気する。

「は?何言うてんねや?追い詰められたらそない選んでられへ・・・。」

「いい!?絶対よ!?」

「急にどないしたんやこの嬢ちゃん・・・。」

原生民は俺に助け船を要求してくるが・・・。

「悪いことは言わん、やめとけ・・・。」

「ノワールはんまで!意味分からんで・・・。」

「待て・・・お客さんのお出ましみたいだな。」

すぐそこからの気配を感じとり、構える。

物陰に潜んでいた『それ』は、隠れても無駄と悟ったのか、姿を表す。

「チッ・・・。」

鮫のような身体に手足が生えた、狼にも似たエネミー。

『タグアクルプス』だ。

しかも一体ではなく、五体の群れのようだ。

「まぁ、いずれこうなるとは思ってたけどな・・・。」

「・・・何?」

俺の独り言にラパンは反応する。

「・・・なんでもねぇよ。」

「ふん、まぁいいわ。」

ラパンと一緒に構える。

タグアクルプスが襲いかかって来ると、ラパンはフォイエを放って一体仕留める。

「・・・。」

俺は一体に向かってデッドアプローチによって体当たりを喰らわせ、スタンさせて銃を構える。

「・・・。」

だが、撃たずに蹴り飛ばす。

「え、なんで・・・やめてよ・・・こんなときに・・・!」

「・・・?」

不意に変な声が聞こえてラパンの方を向くと、ラパンは頭を抱えていた。

「来ないで・・・なんでよ・・・やめてよぉ・・・!」

意味のわからない言葉を並べて怯えている。

「やばっ、こんな時に・・・!」

「・・・。」

ルナール・・・なにか知ってるな?

「やだ・・・やだよぉ・・・もう・・・殺したくない・・・いやぁ・・・!」

相変わらず訳の分からない事を言って頭を抱えるラパンに、敵は待ってくれる筈もなく、遠くで地面に潜っていたタグアクルプスが地面から勢いよく出てくる。

「!」

あの動きはまずい!

タグアクルプスは空中で高速に一回転すると、その頭部のヒレによって真空の斬撃が放たれる。

「こんのぉ!」

ルナールがソードを盾にラパンを庇う。

「!!」

予想外の展開が起こる。

左にもう一匹地面に潜っていた。

ルナールが一匹目の斬撃を防いだ瞬間に飛び出して斬撃をラパンに向けて放つ。

今ルナールがいる位置からは完全に無防備だ。

「ぐっ・・・!」

咄嗟にラパンを掴んで位置を替えて背中で斬撃を受ける。

「ノワールさん!?」

「くっ・・・そが・・・!」

なんか最近誰かを庇って怪我ばかりしてる気がするな。

「・・・ったく、俺はお姫様守るナイトとかじゃねぇんだよッ!!」

即座に斬撃を放ったタグアクルプスに距離を詰め、一匹は蹴り飛ばし、もう一匹は銃で殴り飛ばした。

「うわわ!」

「!?」

ルナールの声がして振り向くと、ラパンとルナールは二匹のタグアクルプスに囲まれていた。

まずい、ルナールが止められるのは一匹だけだ。

「・・・!」

気がつくと身体が動いていた。

エルダーリベリオンの弾丸ラッシュでタグアクルプスを次々に撃ち抜き、仕留めた。

「・・・くっ。」

やってしまった。

一瞬だけ嫌な映像がフラッシュバックする。

 

 

一匹の犬が苦しんで死んでいく姿だ。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・。」

映像は直ぐに止んで落ち着く。

「・・・。」

タグアクルプスの残りに向き直る。

敵は勝ち目が無いとみたか、即座に立ち去る。

「・・・。」

身の回りの安全を確認してラパンの元に戻る。

「ぅ・・・あれ・・・?」

「・・・。」

ラパンは正気を取り戻したようだ。

「マスター!良かった!」

「て、敵は!?」

「もう追っ払った。」

「・・・!!」

俺の言葉に、ラパンは自分がどんな状況なのか察し、無言で目を剃らし、悔しそうに歯軋りする。

余程他人に見られたくなかったことのようだ。

親切心があるやつなら見なかったことにしてやるところだが・・・。

「・・・お前のそれ、なんだ?」

敢えて聞く。

「・・・。」

「マスター・・・。」

ルナールは心配そうにラパンに歩み寄る。

「答えろ。」

「・・・なんだっていいでしょ?」

「・・・。」

俺は銃を転送させて手ぶらの状態に戻し、そっぽを向く。

「・・・お前、今回の件が片付いたら、アークスをやめろ。」

「ッ!」

俺の一言にラパンはカチンと来たように向き直る。

「ふざけないでッ!何勝手な事言って・・・ッ!?」

反論するラパンだが、言葉を詰まらせる。

俺が胸ぐらを掴んで目の前まで引き寄せたからだ。

「お前には無理だって言ってんだッ!!」

「ッ!!」

俺が怒鳴ると、ラパンは顔を強張らせて固まる。

「いいか、アークスはいつ、何処で戦場に立たされるか分からない仕事だ。そんな発作だか何だか分からない物を抱えてアークスを続けると・・・お前死ぬぞ?」

「・・・・・・・・・・ッ!!!」

俺の言葉に顔を俯かせたラパンだが、すぐに俺の手を引き剥がす。

「何も知らないくせにッ!あたしには、どうしてもアークスをやらないといけない理由があるのよッ!偉そうに説教すんなッ!!」

散々怒鳴ると、ラパンは何処かへ走り去る。

「あ、待ってよマスター!」

ルナールはラパンの跡を追いかけていった。

「なぁ、ノワールはん・・・。」

原生民が俺に歩み寄る。

「後輩か部下か知らんけど、ちょっと言い過ぎちゃうか・・・?」

「・・・優しくして死なれる方が迷惑だ。」

不意に通信音がして通信機に耳を貸す。

『マスター。』

「アオか、なんだ?」

まさかアオも言い過ぎとか言うんじゃ・・・。

『その、『手』は大丈夫でしょうか。』

「・・・。」

通信機を添えていない俺の左手はカタカタと震えていた。

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