PSO2 ~創造主の遺産~   作:野良犬タロ

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第十七章 ~幻想の英雄~

 

~ノワール 惑星ウォパル 海底エリア~

 

夜になって集落の住民が寝静まった頃だ。

「・・・。」

集落の片隅、僅かなライトの明かりの側、寝袋の上で俺は腕を押さえていた。

腕の震えは治まっていない。

ラパンの事をあんな風に言ってはいたが、実は俺も人の事が言えない。

俺は本来殺生が苦手な体質だ。

ダーカーに関しては過去からの恨みからか、殺す事に何の躊躇いはないが、原生エネミーを殺すのには身体がかなり拒絶し、腕が震え、酷いときには昼のように過去のトラウマの映像が見えたりする。

度合いもあり、惑星リリーパの機工種ならまだ『殺す』と言うよりは『壊す』と言った感じなので症状は軽いが、惑星ナベリウスや惑星ウォパルのような生身の生物に至っては今日のようにかなり症状が重い。

ましてや人を殺そう物なら、どうなるか分かったものじゃない。

「・・・!」

僅かに少し離れた所から小石が何かに当たって水に落ちた音がした。

「誰だッ!」

気配のする岩を銃を転移させて撃つ。

「へひゃッ!?」

案の定ビビって声を出したので、即座に突っ込んでいき、岩の前で銃を構える。

「・・・出てこい。」

「ご、ごめ・・・なさ・・・!」

「・・・?」

聞き覚えのある声がして見てみると・・・。

「お前は・・・!」

「ぁ・・・あぅ・・・!」

「・・・。」

ルナールだ。

「・・・見たな?」

「え、えっと・・・ひゃいッ!?」

ルナールに銃を突きつける。

「・・・他言無用だ。分かるな?」

「ひ・・・ぃぅ・・・!」

「・・・?」

何か臭う・・・?

「ッ!」

徐々にルナールの太もも辺りから液体らしき物が拡がっている。

どうやら恐怖のあまり失禁したようだ。

「・・・。」

呆れとどう対処しようかの面倒くささで言葉が出ない。

『マスター、その辺で許してあげて下さい。』

「あぁ。」

アオから通信が来て俺は銃をルナールから放し、転送させる。

まぁ、『あれ』を他言されないためとは言え、アオが初めて作った友達相手にやり過ぎたかもしれない。

「・・・何の用だ。」

「・・・へ?」

「わざわざただ覗きに来た訳じゃないだろ?」

「あ、うん・・・!」

「・・・立ち話も疲れるな、こっちだ。」

ルナールを明かりまで案内する。

 

 

「・・・ほら。」

互いに座ると、持っていたブロック状の携帯食料をひと切れルナールに渡す。

「え、いいの?」

ルナールは受けとると、一口かじる。

「・・・さっきは悪かったな。」

「あ、ううん。いいよ、それよりも・・・。」

「ああ、なんだ?」

「マスターの『アレ』について話そうと思って・・・。」

「・・・。」

「・・・ノワールさん?」

「マスターのプライバシーに関わることを、サポートパートナーが簡単に喋っていいのか?」

「知りたく・・・ないの?」

「軽率な行動でマスターと仲違いしたらサポートパートナーとして本末転倒だって言ってんだ。」

「そ、そうかも・・・。」

核心を突かれてルナールは俯く。

「分かったら帰れ。あんまり長居すると、お前のマスターが・・・。」

「で、でもね・・・!」

「?」

ルナールは立ち上がる。

「やっぱり、ノワールさんには知って貰いたい!」

「・・・。」

「マスターね?誰にも分からないように、チームにも入らないで一人でアークスやって来たけど、それでも知った上で理解してくれる人が居ないと苦しいと思うの。なんでか分からないけど・・・私、マスターが苦しんでるの分かるんだ・・・。」

「・・・それで俺が理解者に?」

「うん。」

「馬鹿言うな、あれを見て俺はあいつに『アークスをやめろ』って言ったんだぞ?そんな俺にか?」

「・・・ それでも、見られちゃった以上、ノワールさんには知って貰いたい。」

「・・・。」

ルナールの目は真っ直ぐに俺を見ていた。

こいつは・・・サポートパートナーにしては出来すぎているようだ。

「そうか・・・意地の悪いことを言ったな。まぁ、俺もあれに関してはずっと気になってた。話してくれ。」

「うん。」

ルナールは再び座り込む。

 

 

「マスターはね、ホントにタマになんだけど、幻覚を見ることがあるの。」

「幻覚?」

「うーん、どっちかと言うと、『白昼夢』?に近いのかな?場所全体がアークスシップの市街地みたいな場所に見えて、アークスに囲まれてるような状態になるの。」

「アークスに・・・。」

「しかも自分は何かに持たれてて、滅茶苦茶に振り回されてるんだって。」

「何か・・・?」

その『何か』は分からない。

だが、アークスに対して友好な奴とは到底思えない事だけは分かる。

「それで振り回されてるうちにアークスの身体に当たったらそのアークスが血を流して倒れちゃうって。」

「・・・明らかに人間じゃない物になったってことか、そのとき、自分の姿とかに変化は無かったのか?」

「それが・・・身動きも取れなくて、目も動かせなくなるんだって・・・。」

「確かめられないってことか・・・。」

ホントに妙な話だ。

奇妙な状況で気になることが確かめられないってのはなんとももどかしい。

「・・・。」

 

『やだ・・・やだよ・・・もう・・・殺したくない・・・いやぁ・・・!』

 

あの時あいつが言ったことはそう言うことか。

「あと・・・最後に明らかに三人の強そうな三人のアークスに睨まれた所でいつも終わるって・・・。」

「三人・・・。」

「うん、一人はカタナを持ったキャストの男、二人目はタリスを持ったニューマンの男、三人目はロッドを持ったヒューマンの女だって。」

「キャストとニューマンとヒューマン・・・。」

「何か、分かる?」

「『三英雄』・・・!」

「三英雄って・・・。」

「あぁ。」

「なに?」

「ッ!」

思わずずっこけそうになった。

てっきりサポートパートナーはオラクル船団に関する知識もインプットされている物かと思ったが案外そうでもなさそうだ。

「『三英雄』ってのは、四十年前だったか?アークスの前に現れたダークファルスに勝った三人の英雄のことだ。今はもう解体されたが、六芒均衡の中の内の三人はその名前を襲名することで、今も『三英雄』は存在してるってわけだ。」

「その三人って?」

「『レギアス』、『カスラ』、『クラリスクレイス』、クラリスクレイスは今は三代目、カスラは二代目、レギアスは初代のままだ。」

「へぇ、ノワールさんって物知りだね!」

「こんなのオラクル船団の常識だ。多分お前のマスターだって知ってる。」

「そうかな?」

「・・・話を戻すぞ、問題はなんであいつが三英雄の幻覚なんか見るかだ。いや、まだ三英雄って決まった訳じゃないが・・・。」

「うーん、分かんない。」

「・・・いつからだ?」

「なにが?」

「あいつの『あれ』が起こるようになったのは。」

「うーん、私がサポートパートナーになってからも普通に起こってたみたいだし、元からなのかな?」

「・・・お前も正確には分からないってことか。」

「うん。」

「そうか・・・そこから原因突き止めれば治る方法も見つかるかもしれんがな・・・。」

「うん、マスターに聞いてみる!」

「・・・俺が言ったとか言うなよ?」

「あ、うん。ノワールさんにこの話したのバレちゃうもんね!」

「あぁ。」

「んふふ♪」

「?」

ルナールは急に楽しそうに笑い出す。

「・・・なんだ?」

「アオが話してた通りだったなぁって思った!」

「アオが?」

「優しい人だって言ってた!なんだかんだでマスターのこと気遣ってくれてるし、見た目怖いけど優しいなって!」

「あいつ、余計なことを・・・ 。」

「アオね、ノワールさんの話になるとすっごく楽しそうに話すよ!だから、いい人だって思ってた!」

「やめろッ!!」

「・・・!」

俺が怒鳴ると、ルナールはビクリとして固まる。

「・・・アオもお前も誤解してるぞ。俺は最低なクズ野郎だ。お前らの考えているような出来た人間じゃない。」

「ご、ごめん・・・なんか、気分悪くしちゃった?」

「・・・もういいだろ。お前のマスターもお前がいなくなって探してるかもしれない。早く帰れ。」

「う、うん・・・じゃあね。」

「・・・。」

ルナールは立ち上がると少し重い足取りで帰って行った。

「・・・。」

通信機に手を添える。

「アオ・・・。」

『はい。』

アオはいつもの調子で淡々と返事をする。

「お前・・・あいつにわざと見せたな?」

俺が言っているのはあの発作を押さえている光景だ。

『申し訳ありません・・・。』

寝る前に俺はアオを見張りに着けていた。

アオは俺に近付く敵をいつでも狙撃出来る様に見ていたのでルナールの接近には気づいていたはずだ。

流石に狙撃しないだろうが、近づかないよう警告ぐらいは出来たはずだ。

『弁解は致しません。罰があれば如何様にでも・・・。』

「・・・お前もあいつと同じだろ?」

『マスター?質問の意図が・・・。』

「知って欲しかったんだろ?」

『・・・。』

「・・・責めはしない。元はと言えば俺のミスだ。」

そう、あの時反射的に原生エネミーを殺さなければ上手くいってたことだ。

『その、手はもう大丈夫でしょうか?』

「ああ。もうほとんど治まったさ。」

俺の発作は治るものではないかもしれない。

だが別に困りはしない。

俺はダーカーを狩れればそれでいいからだ。

 

 

~セト アークスシップ 訓練施設~

 

室内に何度も刃の交わる音が聞こえる。

だが、やがてひとつのカタナが空を舞った。

「・・・!」

僕の喉元の前でカタナが止まる。

「詰みだ。」

レギアスの言葉と同時に僕のカタナは後方に落ちる。

「・・・。」

相変わらず化け物染みている人だ。

振るっていたのはヴィタカタナ。

ショップで手に入るごく一般的な武器で、僕が振るうユキガラスよりも遥かに性能が劣る武器だ。

そんなカタナで意図も簡単に勝ててしまうのだから実力が遥かに違うことを痛いほど思い知らされる。

勿論、本来使っている武器は僕が使うカタナよりも遥かに性能が高いので、どれだけ恐ろしいことか。

「腕が鈍っているようだな、セトよ。」

「最近鍛練する暇もなかったからですかね、この頃警らの任務多かったですし・・・。」

「・・・。」

レギアスは黙ったままカタナを鞘に納める。

「打ち合って分かった。鍛練をしたところで補える綻びではない。」

「・・・。」

「貴様の剣には迷いがある。一手一手の一撃に心が入っていなかった。」

「迷い・・・。」

なんとなく分かる。

見抜かれてもなにも言えない。

「・・・何があったのかは敢えて聞かん。だが何か思い詰めている事があるなら早目に解消させておくことだ。隊を率いる者がそれでは、隊の士気に関わる。」

レギアスは踵を返す。

「セトよ。貴様の本来の剣は真っ直ぐだ、ひとつの思いに向かって真っ直ぐに伸びる剣だ。だからこそ、隊を任せている。その真っ直ぐな剣が隊を導くのだ、努々忘れるな。」

「ひとつの思い・・・。」

「ではな、また時間が空けば手合わせ願う。」

「はい、御指南ありがとうございます。」

レギアスは去っていった。

「・・・。」

『迷う理由』、それは分かっている。

けど僕の剣が向かう『ひとつの思い』。

それは分からない。

だがレギアスの言う通り、僕がこんな調子では士気に関わる。

切り替えて行かないと・・・。

「『ノワール』。」

「!」

突如後ろから声がするので見てみると・・・。

「それが『迷い』の原因でしょう。」

「・・・!」

『げ!』と言う言葉が喉まで出かかってなんとか留まる。

カスラ、僕の苦手上司ナンバーワンの男。

「えぇ、そうですよ・・・。」

「隠しもしないとは、貴方は少しひねくれた性格だと思っていたのですが・・・。」

「どうせ調べ挙げて全部筒抜けなんでしょう?」

「ご明察、ですが貴方が作戦後に現場捜査を行ってくれたおかげで手早く情報が集まりました。此方としても欲しかった情報も得られて、願ったり叶ったり。」

「・・・。」

そう、あれから色々調べて見て分かった。

あの死体からは僅かだが妙なダーカー因子が発見されたし、ナメギドで臓器を破壊された形跡はあったが、直接的な死因はそれではなかったのだ。

 

死体には既に心臓を貫かれたような穴があったのだ。

それも銃弾でもなく、槍のような鋭い武器によるものだ。

 

恐らくそれが死因だろう。

到底あの二人が殺した様には思えない。

なによりあいつは人なんか殺せる訳がない。

それは長い付き合いだったからこそ分かることだ。

 

『緊急連絡!』

 

「!」

なんだ!?

 

 

~ラパン ???(七年前)~

 

「・・・?」

アークスシップの市街地・・・。

そっか・・・確か私・・・。

「・・・!」

たくさんのアークスの人達が周りにいた。

そっか、助けに来てくれた!

「・・・!・・・!?」

声を出そうとしたが声が出ない。

「!?」

身体も動かない。

何かに縛られたかのように動けない。

それに何かおかしい。

身体のどこか分からないが物凄く潰されそうな程の圧迫感がある。

「!」

訳も分からないまま身体が勝手にアークスの一人に高速で急接近する。

「ぐあっ!」

私の身体が当たるとアークスは血を撒き散らして悲鳴を挙げた。

見て確認は出来ないが身体に返り血がかかるのが分かる。

「くそっ!よくも俺の仲間を!」

別のアークスが非難するかのように罵声を浴びせてくる。

(わ、私がやったの・・・?)

だとしても違う!

私は自由が効かないの!

「ぐわっ!」

「ぎゃああ!!」

次々にアークスが死んでいく。

「きゃあぁ!」

「くそっ!ぐああ!!」

(やだ!いやだ!なんで止まってくれないの!?)

私の意思も虚しくアークスは惨殺されていく。

「そこまでだ!!」

(・・・?)

声がすると身体の向きが変わり、声のする方角が見える。

「!」

三人のアークスが立っていた。

一人は白いロッドを持った女。

一人はタリスを持った男。

一人はカタナを持ったキャストの男だ。

「・・・!!・・・!」

(違うの!わざとじゃないの!お願い信じて!!)

必死に弁解しようにも声が出ない。

「フ・・・フフ・・・。」

「・・・?」

何か鼻息にも似た声が聞こえる。

目の前の人のものじゃない。

「フフフ・・・ハハ・・・ハハハハハハ!!」

「!?」

笑い声・・・。

私の近くからこの世の物とは思えない、おぞましい笑い声が聞こえてくる。

 

 

(やだ・・・やだ・・・いやああああ!!!)

 

 

「・・・!」

気がつくと目の前は真っ白なライト。

青緑の一色の殺風景な部屋。

私はベッドの上にいた。

服は病院の患者が着けるような袖の無い真っ白なスカート状の服。

腕には点滴用の針が刺さっており、その他にも腕に微細な検査用と思しき装置が付けられていた。

『見てください!意識が戻りました!本当によかった!』

「・・・?」

アナウンスらしき声が何処からか聞こえてくる。

声は若い男の人の声。

『聞こえるかい?聞こえていれば指を動かしてくれ!』

先程の声とは別の、今度は中年染みた低めの声の男の人の声がする。

「・・・。」

言われた通り、私は指を動かした。

『ありがとう。今スタッフが点滴と検査機を外しにくる。安静にしててくれ。』

声が止むと、入り口のドアが開く。

そしてそこから白衣を来て、マスクと防護用の帽子を着けた人達が入ってくる。

そしてそのまま点滴の針を抜き、装置を外す。

『起きれるかい?』

「・・・。」

言われるままに起きた。

「ここは・・・?」

周りの人に聞く。

『ここはアークスシップの研究室、ちょっと医務室が一杯になっちゃってね、こっちで君を治療することになったんだ。』

「『研究室』・・・?」

何か引っ掛かって。

 

 

『いい加減にしてください!あの子は貴方方には渡しません!』

 

 

「!!」

不意に先生の言葉を思い出す。

「『研究室』・・・!」

この人達・・・まさか・・・!

「どうかした?まだ何処か・・・。」

女の人が手を伸ばす。

 

 

「い、いやあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

女の人の手を弾き、部屋の隅に逃げ込む。

「ど、どうした!?」

「わ、私、違うの!!普通の人間だよ!!お願いッ!信じてッ!!」

私、背中に黒い影があるから・・・ダーカーと繋がってると思われてるんだ!

私は関係ない!

必死に弁解する。

『何を・・・言ってるんだ?』

「え・・・?」

白衣の人達も集まって注意深く私を観察する。

「角が生えている訳でもない・・・翼や尻尾が生えている訳でもない・・・何処からどう見ても普通のヒューマンです。」

「え・・・?え?」

なんで?

私の姿を見たひと、皆怯えてた筈なのに・・・!

「見えないの・・・?私、背中に・・・黒い影が・・・!」

「何を訳の分からないことを・・・?」

「恐怖で幻覚でも見たのかしら?」

「ちゃんと検査した方が・・・。」

「だが装置にも異常はないし・・・。」

「え?え?」

白衣の人達の反応が明らかにおかしい。

「どうして!?先生は『私以外にはみんな見える』って・・・。」

『いや、何を言っているのか分からないがモニター越しじゃ、見えないし・・・スタッフにもそんなものは見えないみたいだ。』

「え・・・?」

どういう・・・こと?

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