ソードアート・オンライン Escape from Real 作:日昇 光
みんな、ここで俺が言うことは
NA☆I
ランのHPゲージがレッドゾーンに突入した。無我夢中で走る。もうすぐそこだ。どうした比企谷八幡。もっと速く、もっと速く走れ。この林を抜ければ、そこにいるんだ。
そして視界が開ける───
「せー…」
あぁ………もう届かない………
「よせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
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雪ノ下の返答を確認してから一ヶ月半ほど経った今日。現在の最前線は二十五層だ。俺とランは、相変わらず迷宮区に潜ったりユウキの情報を集めたりしている。攻略の方は順調だが、ユウキに関してはこれといって新情報が得られない。今相手をしている二体の《スカルナイト》を倒したら街へ帰って例の情報屋と接触する予定だが、それもあまり期待できなさそうだ。
「やあッ!」
ランが《スカルナイト》の背後に回って肋骨の隙間からそれに包まれている妙な球体を突き刺す。あれが急所なのだが、狙うのが案外難しい。相手が盾持ちというのもあるが、普段は剣を地面に水平にしたまま突き刺すなんて動きをしないため、照準が鈍るのだ。仕方ないので俺は地道に骨を叩きつつたまに練習がてら急所を狙っているが、ランの急所命中率が凄い。刺突攻撃を俺より頻繁に使うから、精度が優れているのだろう。俺がこの骨野郎のHPを半分削る間に、ランは一体倒してしまった。俺そろそろ剣士としてのレベル完全に抜かれるんじゃないかな…
「手伝いますか?」
「いや、いい。特訓しとかないと、ボス戦で取り巻きだった時に苦労するからな」
本音半分、見栄半分でそう返して、急所を狙う。ここだ…!
ガイィン!
ちくしょう!骨に当てやがった!お前はいつもそうだ!
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誰からも愛されない俺はなんとか《スカルナイト》を倒し、ランと共に街へ帰還した。夕食と調査報告確認のため、今は主街区のとあるレストランにいる。しかし約束の時間になってもなかなかあの女が来ないので、とりあえず先に食事を取ることになった。ここのおすすめだという海鮮系(といっても淡水魚類)のパスタを頬張る。塩味が効いていて美味い。
「ゾンネさん遅いですね…。今まで時間通りに来ないことなんて無かったのに」
「ゾンネさん?え?あの女そういう名前なの?」
「知らなかったんですか!?」
今まで気にしていなかったが、そういえばあの女の名前聞いてなかった。フレンド登録しているのが元々の依頼者であるランなので、今までそれなりに付き合いがあったが名前を知る機会がこれといってなかった。ランも基本は「あの人」とか「情報屋さん」とかしか言わなかったから、俺の耳に入るはずもない。
「知らなかったよ…大発見だな」
しかし、よくよく考えてみると"ゾンネ"なんて名前は街ですら聞いたことがない。あれだけいい仕事をするのだから、アルゴと同じくらい有名になってもいいはずだ。ますますあの女の素性が分からなくなってきた。まあ、知る必要もないけど。でもここまで素性の知れないプレイヤーなんて今まで見た事がない。やっぱりちょっと気になる…
深まる謎に頭を悩ませていると、噂をすれば、というやつだろうか。"情報屋ゾンネ"が店に現れた。
「ごめんね~、お待たせ。お、美味しそうなもの食べてるねぇ。一口ちょうだい」
相変わらず馴れ馴れしい女だ。誰が貴様などに飯を分けるものか!
「はい、どうぞ。美味しいですよ」
分けてあげる人いた。
「お、ありがとね。……おお、ほんとに美味しい…」
今度注文してみようかな…などと呟いている。その口調はいつもの妙に高いテンションのものではなく、素の喋り方のように感じられた。
食事を終えた俺たちは席を座り直し、ランと俺がゾンネと向かい合う形になった。
「で、何か新しい情報はあったのか?」
「そう、それなんだけどね。実は、ユウキちゃんと接触した事があるっていうプレイヤーに会ったの」
「本当ですか!?」
ランが目を大きく見開いた。始まりの街から出たという情報以来大した話がなかったため落ち込んでいたが、やっと希望のある話が聞けそうだ。
「ちょうどランちゃんと同じくらいの歳の男の子三人組だったよ。だったんだけど、ちょっとこれがまた怪しくてね」
「怪しい?」
「うん。その情報の信憑性を確認してたんだけど、彼らの素性を探るのに手間取ってね。それで今日は遅れちゃったってわけ」
なるほど、遅刻理由はそれか。言い訳はよく分かった。廊下に立ってなさい。
「…今何か変なこと考えなかった?」
「い、いや別に」
なんで分かった…
「あの、それで怪しいっていうのは?」
「ああ、実はね。その三人組、オレンジプレイヤーだった期間があったらしいの」
「えっ…」
オレンジプレイヤーとは、この世界において犯罪行為を起こしたプレイヤーのことだ。《圏外》でデュエル以外で他のプレイヤーに攻撃したりすると、通常はグリーンであるプレイヤーのカーソルがオレンジになる。そういった犯罪者プレイヤーは街に入ることができず、フィールドで生活をしなければならなくなるのだ。カルマ回復クエストみたいなものがあるらしいが、おそらく、その三人組はこれを受けたのだろう。
「…その、木綿季は…」
「…残念だけど、せっかくの目撃情報があまりいいものじゃなさそうなのよね…」
「…生きますよね…?あの子は…木綿季は、生きてるんですよね!?」
ガタッと音を立てて席を立ち、ランが身を乗り出した。
「安心して、死んではいないから。ただ、何度かその三人組がフードを被った女の子らしきプレイヤー所を執拗にフィールドに連れ出そうとしてるところを目撃したって人が少なくないの」
この話から察するに、ユウキはPKの標的にされていたという事か。確かに、ステータス云々もあるが、殺すなら男より女の方が楽だろう。例外がうちのパーティーにいるが。最近になってオレンジプレイヤーで構成された犯罪者ギルドなどが現れるようになり、PKの被害を耳にする事が多くなった。ひとまず街にいる限りは安全だと思って油断していたプレイヤーもいたらしいが、《催眠PK》と呼ばれる圏内殺人を可能とする技が何者かによって開発された事により、どこにいても安心できなくなった。
しかし、俺にはそれはどこか遠くの出来事のように感じられた。自分の近辺ではそんな話を聞かなかったからだ。犯罪者プレイヤーは、確実に殺れる相手しか標的にしない。そのため、攻略組には被害が及ばなかったのだ。だがユウキは別だ。彼女が今どのくらいのレベルなのか分からないが、襲われるということは大して高くないのだろう。そう思うと、だんだん嫌な予感がしてくる。
「…しかし、ランと同年代で犯罪行為に及ぶとは、相当イカれた奴なのか?」
「いや。私が彼らと接触した時はごく普通のやんちゃな男の子って感じだったよ。精神的におかしいようには見えなかった」
「だとすると、まだゲーム感覚なのかもしれないな。きっと、ここでの死が向こう側での死を意味するって事を認識しきれていないんだろ」
少し考えればわかる話だ。ゲーム開始からもう半年になって、これまで多数の死者が出た。もし実は死にませんでした、なんて事になっているのなら、とっくに全てのナーヴギアはぶっ壊されているはずだ。
「…それで、木綿季は今どうしているんですか…?」
少しばかり落ち着きを取り戻したランが尋ねた。
「…ごめんね。《圏内》での目撃情報が全くと言っていいほどないの。フードを被った女の子ってヒントが新しく出てきたから、その線でも情報を集めてるんだけど、十三層が攻略されたあたりの頃からの情報が出てこないのよ」
「…そんな…」
ランは目に涙を浮かべて肩を落とし、そのまま項垂れてしまった。
「…今回報告できることは以上だよ。じゃあ、私は行くから」
そう言ってゾンネは席を立ったが、代金を払っていないことに気づいた俺はその後を追いかけた。
「おい、まだ報酬払ってないぞ。いくらだ?」
少ない上に希望のない情報だとはいえ足しにならないわけではないし、情報量に見合った報酬は払わなくてはならない。俺は金額を尋ねたが、返答は意外なものだった。
「いいよ。今回は貰わない」
「…別に絶望的な話だったからって気を遣わなくていいんだぞ。働いてくれた人間に金を払うのは委託者の義務だ」
「……君らしいね」
フードの奥に微かに見えるゾンネの顔が、苦笑いを浮かべたように見えた。口元しか見えなかったが、なぜかそう感じた。
「俺らしさを感じ取られるほどお前と絡んでないと思うけどな」
「ふふっ、案外そうでもないかもよ?それと、別に情報の内容がどうとかで気を遣ってるわけじゃないよ。どうしても払うって言うんなら、そのお金を私が全部ランちゃんにあげるから、何か美味しいものでも食べなさいよ。…っていっても、そんな気分じゃないだろうけどね」
「…一人の人間として、あいつの知り合いとして、心配してるってことか?」
「……まあ、解釈は君に任せるよ。それじゃ」
そう言って足速に歩いていき、右手をヒラヒラさせながらゾンネは店から出ていった。はぐらかしていたが、あの女はあれでもランのことを本気で心配しているのだろう。おそらく、俺もまだ見たことの無いユウキのことも。何だよ、いい奴じゃねぇか。
席に戻ると、ランの涙は既に止まっていたようだった。しかし、その表情は依然として暗い。
「大丈夫か」
「…はい。すみません、見苦しい所を見せてしまって…」
「気にすんな。泣きたいなら泣けばいい。我慢する方がよっぽど辛いぞ。これからもユウキの事を探し続けるんだから、溜め込まないで全部出しちまえよ。いざってときに動けなくなるぞ」
「…はい……ッ…」
一応フォローのつもりで言ったのだが、効果的だったのか逆効果だったのか、ランはまた泣き出してしまった。俺には、それをただ見ている事しかできなかった。
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泣き疲れたランを宿屋まで連れて行き、俺は再び外へ出た。今の俺に彼女のためにできる事は、たぶんそう多くない。まずは、とにかく諦めずに探し続ける事だろう。そう決意を新たにして、俺はエギルの店に向かった。なぜあの巨漢の店に行くかというと、レストランでゾンネに言われた「美味しいもの」の心当たりがあるからだ。別にエギルが作ったわけではない。このごろ中層で話題になっているらしいが、料理スキルを700近くまで上げたプレイヤーがいるらしく、そいつが作ったケーキを色々な層の商人プレイヤーの店で売っているらしいのだ。ランが前に言っていたので、とりあえず買って行ってみようと思い、こうして歩いている。
不意にメッセージの受信を知らせる電子音が鳴り、視界の端にアイコンが表示された。メッセージを開くと、ランからだった。「少し一人になりたいので、外に出ています」と、それだけ書かれている。同じ部屋に泊まっているわけではないので別に外に出なくてもいいのだが、そこは気分の問題だろう。
「…気を付けろよ…っと」
返信を済ませて、俺は再びゆっくりと歩き出した。
「…まだやってるか?」
おでんの屋台で親父に声をかけるみたいになってしまった。なんか恥ずかしい。
「おう、オクトか。いらっしゃい」
本当に流暢に日本語喋るよなぁこいつ。どうやらハーフらしいが、育ちは日本の結構な江戸っ子のようだ。
「なあ、例のケーキ売ってるか?」
「ああ、あるぞ。なんだ、ランに買っていくのか?」
「まあな。俺も食べてみたいから、無難なの二つくれ」
「あいよ」
お互いにトレードウィンドウを出し、ケーキがこちらに送られてきたのを確認してから代金を支払った。思ったより安かった。ありがたく使わせてもらうぜ。
「毎度有り!」
よく通る声でエギルが言った。やっぱいい声してんなこいつ…
念のため自分のアイテムストレージを開き、購入したケーキを確認する。
名称:《ショートケーキ(仮)》
作成者:《iora》
「"(仮)"ってなんだよ…」
「はっはっは!最初に見た時は俺も驚いたさ。なんでもまだ試作段階らしくてな。色んな人から感想が欲しいってことでこうやって売り歩いているらしい」
「なるほどね」
道理で値段が評判の割に安いわけだ。美味かったら感想でも書いてやろうかな。いや、やっぱめんどくさい。確認を済ませた俺は、エギルに挨拶して店を出た。
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宿屋に帰り念のためランの部屋を確認したが、まだ外にいるようだ。一人になるのもいいが、あまり遅くなると色々と心配になってくる。PKの話をした後だから、余計に。現在の時刻は午後九時半過ぎだ。あと一時間しても戻らなかったら探しに行くか…
待っている間、これからの事を考えていた。いっその事、しばらく攻略を離れて各層のフィールドや迷宮区を探し回ってみるのもいいかもしれない。ゾンネの話では《圏内》にいないとの事だったから、もしかしたらフィールドにあるNPCの家だったり、ダンジョン内の安全地帯にいたりするのかもしれないからな。そこで、クラインが以前言っていた事を思い出す。確かあいつは、「八層の裏ボスクエストが受注できなくなったらしい」と言っていた。おっと、これは結構脈ありなんじゃないですか…?そのクエストの中で隠れ家になりそうなものが存在するならば、そこに籠城している可能性がある。…行ってみる価値あるかもな。いや待てよ。もしインスタントマップだったら俺たち入れなくね?そこは祈るしかないか。
思考が一段落ついたところで、自分で淹れたコーヒーを飲む。あまり甘くない。思えばもう半年もマッ缶を飲んでいない。茅場ぁ、あのやべぇ飲み物くれよぉ…俺もうあれなしじゃ生きていけねぇよぉ…。あ、もしかしたらあの……イオラだっけ?例の料理スキル高いプレイヤーに頼めば作ってくれるんじゃないか!?よし、やっぱりケーキ食ったら良さげな感想書いて媚び売っとこう。
禁断症状の解決策が見つかったところで、またもランからメッセージが届いた。おお、そろそろ帰るのか。
「たs」
全く言葉になっていないメッセージを見て、俺はそれを頭で理解する前に宿を飛び出した。
敏捷力を全開にして街を走り抜く。そしてまだ上げ始めの《追跡》スキルを使って、ランの足跡を追う。視界の端にあるHPバーを見ると、ランの体力が徐々に減っているのが見て取れた。あのランがモンスター相手にあんなメッセージを送ってくるとは思えない。おそらくプレイヤーだ。また、俺は油断していた。この層にいればPKの被害に遭うことはないだろうと過信していた。理屈で考えれば奴らが来るはずがないのだ。しかし、何らかの理由があって、ランを襲っている。あの時ランを一人で外に出した自分の行いとともに後悔したが、今はそんなことを考えている場合じゃない。
一刻も早く、助けに行かなければ。
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私は今、男の子三人に囲まれている。これだけ言えば聞こえはいいかもしれない。まるでモテてるみたいで。でも現状はそんな嬉しいものじゃない。むしろ逆。この人たちは───
───私を殺そうとしている。
「なあなあ、そろそろ諦めようぜ?」
「HP半分きっちまったぞ?」
「すぐ楽にしてやるからさ、もう大人しくしてろよ」
下卑た笑を浮かべながら男たちが近づいてくる。二人まではなんとか防げるけど、三人目にどうしても斬られてしまう。幸い私の方がレベルは上なので、一度に削られる量はそう多くはない。それでも、頻繁に続けられるとこうして半分もHPを減らされてしまう。
「木綿季を襲ったのもあなたたちなんでしょ?私たち姉妹を殺して何の得があるの?そもそも人殺しなんて…」
「人殺しじゃねぇよ!」
一人が叫んだ。人殺しじゃない?何が違うの?そう思った隙に、いつの間にか後ろに回り込んでいた別な一人に背中を斬られる。
「うおらぁッ!」
「ぐぁッ…!」
なんとか振り返って剣を振り払い、距離を取らせる。どうしよう。あと何分持つんだろう。
「お前ら姉妹なんてもう死んだも同然だろうが」
「……ッ!」
今まで必死に張っていた何かが切れた気がした。
「なのによ、何でまだノコノコ生きてんだよ。さっさと死ねよ。被害者が出る前にさ」
「……くっ……」
考えることをやめた。
「…なぁ?紺野」
「……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
怒り任せに剣をブンブンと振る。もうスタイルも何もあったものじゃない。ただ、この人たちが憎い。現実にいた頃から私たちを傷つけてきた、この人たちが。
「私の…!私たちの命を…!馬鹿にするなぁぁぁッ!」
酷い顔をしているだろう。涙をいっぱいに浮かべて、目の前の男たちを切り刻んでやろうと剣を振りまくる。なのに、どんなに振っても当たらない。それどころか、隙だらけの私はさっきまでより早いペースで体力を削られて行く。
「…んぐッ!……くっ…あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
力いっぱい叫ぶ。それでも、なぜかどうにもならない。誰も来ない。
「ジョニーさんに貰った毒が効かなかったのは驚きだったけど、もう終わりだな」
「これで向こうの世界で不幸になる人が減るぜ!」
「そうだ!俺たちは正義だ!」
戯言がボロボロになった私の耳に届く。ふざけないで。私たちは、先の暗い人生を、それでも光を繋いて生きてるのに。必死に、生き抜こうとしているのに。
「…あっ…あ、あぁぁ…」
言いたいことはたくさんあるのに、もう口が動かない。体も動きそうにない。
ああ…
まだやり残した事がたくさんあるのにな…
まだ木綿季に会えていないのに…
まだオクトさんとユキノさんが仲直りしていないのに…
まだ、まだ、まだ…
「誰か近づいてきてるな…。さっさと終わらせようぜ。俺がやる」
「えーっ、ずりぃよ!」
「せーので一斉にやろうぜ!」
「しょうがねぇな…んじゃあ行くぞ」
もう、終わった。倒れ込んでいる私は、泣きながら目を閉じた。
ごめんね…木綿季…
「せー…」
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ランのHPゲージがレッドゾーンに突入した。無我夢中で走る。もうすぐそこだ。どうした比企谷八幡。もっと速く、もっと速く走れ。この林を抜ければ、そこにいるんだ。
そして視界が開ける───
「せー…」
あぁ………もう届かない………
「よせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
ズバァッ
何かが勢いよく切り裂かれる音がした。
結晶が砕け散る音がした。
目の前で、呆気なく命が終わった。
三つの命が。
一秒前に見た光景からは想像できなかった展開に、俺は何が何だか分からなくなった。
「…何が…起きた…?」
違う、そんな事より…!
「ラン…ラン…!!おい!!」
横たわっているランのもとに、倒れ込むように駆け込む。HPゲージは、僅か数ドットの所で動きを止めている。すぐさま回復結晶を取り出し、使用する。
「おい…しっかりしろ!ラン!」
死んでいないのは分かっているが、返事がないとどうにも焦ってしまう。俺は必死に名前を呼んだ。
「気を失っているだけよ。落ち着いて」
「あぁ!?これが落ち着いていられ…」
細い身体。白い肌。黒く長い、後ろで一つに結んだ髪。どこか鋭い目。そして腰には鞘に納まった刀。
雪ノ下雪乃が、そこにいた。
ユウキと再会していないのにまだ死ぬわけないじゃないですか…
全話の内容から一ヶ月半経ち、ついに刀使いユキノ降臨です。
ラストのあたりはババーっと進めてしまいましたが、何があったかは次回書いていけたらな、と思います。
あと、この話も勢いで書いたところがあるので、誤字などありましたら遠慮なく御指摘して頂けると助かります。一応自分でも確認しているつもりなんですが、結構見落としが多いので…
それでは、いつになるか分からない次回でお会いしましょう。