ソードアート・オンライン Escape from Real 作:日昇 光
若干のキャラ崩壊にご注意ください。
意識がどこかへ吸い込まれていくような妙な感覚が俺を襲ったのもつかの間、急に目の前が真っ白になった。初期設定を色々と済ませると、ユーザーネームの登録画面が現れた。
名前か…。どうしよう。
基本的にはこういったオンラインゲームで実名を使うのはあまりよろしくないらしい。が、これといって思いつかない。あまり中二チックな名前にはしたくないしなぁ…
日頃俺がなんて呼ばれてるか考えてみる。比企谷、ヒキタニ、八幡、ヒッキー、ヒキガエル、引き立て役ん、ゾンビ、そこの……ほとんど悪口じゃねぇか。
まだまともなのはヒッキーだとしても、傍から見たらただの引き篭もりに思われるだろう。しかもネットゲーマーときたらさらに危ない。やあ、僕はネトゲの国(自宅)の警備員ヒッキーだよ!ハハッ!ないな。
かなり迷った挙句に、ギリシャ語で「八」を表す「オクト」にする事にした。あ、ギリシャ語のスペルわかんねぇ。まあいいか、別にそれっぽく読めればそれでいいんだし。俺は入力フォームに適当に「Oct」と入力する。英語じゃなくてギリシャ語にしたあたり、中二病の後遺症が響いているのだろう。そのくらいは許して欲しい。確認の上で決定ボタンを押すと、目線より少し上に大きく文字が表示された。
Welcome to Sword Art Online!
歓迎の言葉を受けると、そのまま視界が青い光に包まれた。
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目を開くと、そこに広がっていたのは現実とはかけ離れた、それでいて作り物とは思えない世界だった。やけにひろい石畳の地面の上に、一昔前の西洋風の建造物が並ぶ。そして、その中でも一際目立つ、黒光りする大きな建物。ここが、《ソードアート•オンライン》の舞台である《アインクラッド》の最下層に広がる《はじまりの街》だ。名前の通り、全てはここから始まる。俺が今しがたここに現れたように、ゲームに初めてログインしたプレイヤーは、まずここに転移させられる。俺より前にログインしたプレイヤーがうろちょろしているようだが、その後も次々と人が現れる。その全てが美男美女なわけだが、ゲーム内での自分の身体は好みに合わせて生成したアバターなので、それは当たり前だろう。かく言う俺も、現実とは違った容姿である。特に目。腐ってるなんて言わせない。
「…しかしまぁ……すげぇもんだな…」
誰に言ったわけでもないが感想を述べる。実際すごいのだ。仮想世界のアバターのはずなのに、手を握った感覚も何もかも、現実のそれとほとんど何も変わらない。視界の端にHPバーと時計があることを除けば、目に飛び込んで来る景色は本物に値するものだった。天才科学者茅場晶彦……絶対にそのうち教科書に載るな…
さて、いつまでも感嘆していてもしょうがない。まずは初期の所持金で買える武器でも探そう。えっと…どの武器屋にしよう。賑やかな路地には様々な店が並んでおり、結構迷う。やっぱり片手剣だろうか。刀とかにも憧れるが、この辺りの店には売っていないようだ。
そんな事を考えながら歩いていると、突然身体に妙な衝撃が加わり、視界がぐらぐらと揺らいだ。どうやら倒れたようだ。しかも何か、というか誰かにぶつかって。痛みの感覚がないというのには違和感があるな。しかし何だ。道を歩いていた俺。それに突然横からぶつかってきた人。倒れ込む俺。このシュチュエーションは…まさか…伝説の「いっけなーい、遅刻遅刻!」から始まるラブコメか…!?早速俺に出会いが訪れたのか…!?
「ああ、ごめん!ちょっと急いでて気がつかなかった。立てるか?」
「……お、おう」
男だった。スラッとした長身の勇者顔イケメン男だった。なんだ、つまらん。
「その感じだと、ビギナーか?」
俺が無事に立ったのを確認すると、男が尋ねてきた。その感じってどの感じだよ。まあ、実際ビギナーなんだけど。
「ああ、まあ、そうだな。そんで今武器をどうしようか迷ってたとこだ」
驚いた事に、初対面の相手に噛むことなく喋れていた。ネトゲすげぇ。いや、これも茅場晶彦の創り出した世界だからこそ出来るのではないだろうか。違うか。違うな。
「そうか……じゃあ、ぶつかったお詫びにいい武器屋紹介しようか?俺も今行ってきたとこなんだけど、よかったら案内するぜ?」
おお、それは助かる。だけどこいつ、さっき急いでるとか行ってなかったっけ?こんな状況でも相手の心配する俺、超紳士。
「いや、急いでるんだろ?別に案内までしてくれんでもいい。ただ、せっかくだからその店を教えてくれると助かる」
「ああ、じゃあマップ出すから…」
その男は簡潔に、的確にその店を教えてくれた。なんと言うか、手慣れている。正式サービス開始からまだ一時間もたっていないはずなのに、こいつは何者なんだ。いや待てよ、そういえば正式サービス開始前に、抽選で千人を対象にベータテストなんてのをやってたんだっけか。
「…なあ、あんた、もしかしてベータテストに参加してたのか?」
「え、ああ…まあな」
微妙な答えが返ってきたが、そういうものなのだろう。こいつは他者より良い状況にいるのだ。それを良く思わない連中がいてもおかしくはないし、それを恐れるのは理解できる。そういえば、この世界は優秀な人間ほど住みにくいとか、誰かが言っていたな。
「じゃあ、俺は行くよ。いい武器見つけろよ?」
「ああ、助かった。……あ」
「…どうした?」
「ああいや、その、なんだ。フレンド登録?してくれねぇか?今後も何か困ったら聞きたいんだが…」
…何言ってるんだ俺は。葉山か。葉山なのか俺は。クソッ、従来のオンラインゲームなら、強そうな奴にボタン一つでフレンド申請するだけで良かったのに…。まああれだし?俺は話せないんじゃなくて話さないだけだし?このくらい余裕だし?ゲームの中だけだろうけど。
「分かった。じゃあ…」
どうやら向こうから送ってもらえるようだ。良かったー断られなくて。断られてたら自信なくなって今後一切フレンド申請しないまである。
無機質な電子音と共に、白いウィンドウが現れる。
【『Kirito』からフレンド申請されました。承諾しますか?】
俺は丸の描かれたボタンを押す。これでフレンド登録完了だ。
「えっと…キリト…でいいのか?」
「ああ、俺はキリトだ。よろしくな」
変わった名前だな…いや、人のこと言えないか。
「…俺はオクトだ。また何かあったら頼む」
「ああ、それじゃあな」
そう言ってキリトは走り去って行った。それを見た赤髪の男がそのあとを追っていったが、あいつも教えを乞う口だろう。ベータテスト経験者は辛いな…などと思いながら、俺は忘れないうちに教えてもらった店へと足を運んだ。ラブコメ展開はなかったが、この出会いには感謝しておこう。
はい。八幡改めオクトがキリトと遭遇しました。
ただ、これからどれくらいの頻度でこの二人が絡むかどうか、正直謎です。あまり多くないかも…
話は変わりますが、先日「オーディナル・スケール」の前売券買ってきました。クリアファイルゲットです。カレンダーとかも売ってたから、あれも欲しいなぁ…
それでは、また次回お会いしましょう。