ソードアート・オンライン Escape from Real   作:日昇 光

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大晦日ですよー

でも話は全く関係ありません。


第5話 色々あって、彼らは協力者を得る。

「それじゃあ、6人1組でパーティーを組んでくれ」

 

ディアベルの言葉を受けて、広場にいたプレイヤー達がわらわらと動き出す。ここでも出たよ…あの悪魔の言葉。小学校とかで「二人組作って」って言われると必ず余ったんだよなぁ俺。クラスの人数偶数だったのに。よく見ると三人組のところがこれみよがしにあるんだよなぁ。お前は絶対に入れないって空気で訴えてくるんだよなぁ。あれ、なんだろう、目から汗が出てきた。

 

「オクトさん、早くしないと入るとこなくなっちゃいますよ?」

 

おう…だからなんでこの子は無意識に毒を吐くのかなぁ。自覚してね?君知らず知らずに俺のメンタル抉ってるから。とは言え、実際急がないとまずい。ランはボス戦には出ないから今の俺は正真正銘のぼっちだ。日常生活でぼっちなのは構わないが、ボス戦でそれは御免だ。空いてるとこないかな…

 

ランから視線を外して辺りを見渡す。なんかもう手遅れな感じがするぜ…と思っていたところ、金髪イケメンがこちらに向かって歩いてきた。おいおい待てよ来ちゃうよせっかく忘れようとしてたのに相手にしないようにしてたのに。

 

「…君もこの世界に来てたんだな」

 

金髪イケメン、もとい葉山が困ったような顔をして言った。そんな顔するならこっち来なきゃいいじゃん…

 

「そりゃこっちのセリフだ。どうしたんだお前。意外すぎて信じられないんだが」

 

「はは…まあ、色々あってね」

 

「……」

 

相変わらず肝心なとこだと曖昧な返事しか帰ってこないな、こいつは。その色々というのが気になるのだが、聞いたところでどうせ満足な答えは得られないだろう。

 

「で、何しに俺のとこに来たんだ?」

 

「ああ、パーティー組めって言われただろ?知り合いの方がいいかと思ってね。君だって、二人だけで挑むのはきついだろ?」

 

「…他は?」

 

「いや、まだだよ」

 

「まだってお前…」 

 

マジかよ俺こいつと二人なの?いや現状仕方ないのかもしれないけどさ…えぇ…おい、他に余ってるやついないのか?おーい。…ん?そういえばこいつ今おかしなこと言ってなかったか?

 

「おい、お前今俺が"二人"だって言わなかったか?」

 

「え?その子は違うのかい?」

 

そう言って葉山は視線を俺の斜め後ろに向けた。そこには俺たちのやり取りをぽけーっと見ているランがいた。なんだ、まだ帰ってなかったのか。

 

「こいつは違う。ちょっと成り行きで俺が人探しを手伝ってるだけだ。ボス戦には参加しない」

 

「あ、すみません挨拶もしないで。えっと、さっき発言してたハルトさんですよね?オクトさんのお知り合いだったんですか。私はランといいます。オクトさんには色々お世話になってて…」

 

「ランちゃんか、よろしく。人探しっていうのはお友達か誰かかな」

 

「いえ、妹です。この街に来てると思って探してるところなんですが…」

 

「そうなのか。俺にも何か手伝えることが合ったら言ってね。協力するよ」

 

「本当ですか?ありがとうございます!」

 

なんだこいつらコミュ力高ぇ…。相変わらず葉山は葉山だし、ランはこのイケメン野郎に対して随分と落ち着いた応答をするもんだ…

 

蚊帳の外になった俺は再び広場を見回した。すると、さっきは気づかなかったが端の方に明らかに人数が足りないパーティーがあった。足りないというか、俺たちと同じで二人しかいない。だが、この際ちょうどいいか。

 

「おいはや…えっと、なんだっけ」

 

「え?ああ、名前かい?さっきも言っただろ?こっちでの名前は"ハルト"だ。君はオクトでいいんだよな?なるほど、八から付けたのか」

 

そういうお前は、と言おうとしたが、何となくやめておいた。予想がつかないでもないし、それが当たりならこいつ自身あまり聞かれたくないだろう。それに今話したいのはそれじゃない。

 

「由来はどうでもいいだろ。それよりあれ見ろよ。あいつらも余ってるみたいだから、あそこと組めばとりあえず四人だし、何とかなるんじゃないか?」

 

「本当だ。そうだね。じゃあ行ってみようか」

 

その言葉に俺は頷き、ランに先に帰るよう伝えた上でもう一つの余り組の方へ向かった。

 

 

 

 

 

 

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さて、余り組パーティーが完成して分かったことがいくつかある。まず、例の二人組のうち一人がキリトだった。で、そのキリトはなんと年下だった。たぶん小町と同じか一個下くらいだろう。初めて会った時のアバターが高身長イケメンだったから、道理で見た目では気づかなかったわけだ。まあ、それは些細な事に過ぎない。

 

問題は、キリトと一緒にいたアスナという女の子プレイヤー(フード被ってるからそれ以外分からない)と葉山がこの手のゲームに疎く、「スイッチ」だの「POTローテ」だのといった用語が分からなかった事だ。おかげで合同練習に参加するわけにもいかず、俺たち四人は基礎基本からの練習をせざるを得なかった。まあ本番は取り巻きの《ルインコボルド・センチネル》を倒すだけだからそこまでの苦労はしないだろうが、共通理解が足りていないと戦闘に支障が出るため、これは仕方ない。その旨を伝えに行った時には、「そんなことも知らんでボス戦参加するんかいな」とキバオウになじられた。

 

 

 

 

「よし、じゃあ基本事項の確認は終わりだ。お疲れ様。明日はフィールドに出て実践練習するから、今日はみんなゆっくり休んでくれ」

 

指導教官キリト殿にやっと休みを許された。別にハードだったわけじゃない。むしろ武器屋の時と同じでわかりやすく初心者に優しい教え方だった。ただ、何というか葉山と一緒に長時間何かをするのってなかなか無いから気疲れが凄かったのだ。

 

「…休むって言ったって、羽を伸ばせる場所なんてどこにもないじゃない」

 

「はは…確かにね。このへんの宿はただ寝泊まりするだけって感じだし」

 

「一応食事付きの宿もあるみたいだが、金額が異常なんだよな」

 

アスナが呆れたというか諦めたような口調で放った意見に、葉山も俺も同調した。黒パンに替わる食事を探していた分、食事付きの宿に関しての情報量は現時点では俺がトップだろう。いくらでも何でも聞いてくれ。そしてその高額料金に絶望するがいい。あれ?もしかして俺が知ってるのって場所と料金とメニューだけ?肝心の味知らないじゃん。

 

「そうでもないぞ?別に泊まれるのは宿だけじゃない」

 

宿だけじゃない?もしかしてあれか、下宿みたいなのができるのか?何それどこのテレビ番組?懐かしいな…"田舎に泊まろう"。…っておい、アスナさん話聞かないでどっか行こうとしてますけど?いいの?

 

「俺が泊まってる所は農家の一部屋でさ、普通の宿に比べたら少し値段がはるけどその分快適だぞ?ベッドはしっかりしてるし毎日牛乳飲み放題だし風呂もついてるし、あとは…」

 

「なんですって?」

 

もう十五メートルくらい離れてたアスナがもの凄い速さでUターンしてきた。何だよ聞いてたのか。でも何に反応して…ああそうか、女の子だもんな。

 

「え、どうしたの?」

 

「あなた今なんて言った?」

 

「え、ベッドがしっかり…」

 

「それより後!」

 

違うキリトそれじゃない。

 

「…あ、牛乳好きなの?」

 

「違う!」

 

アホ、だから違うって。

 

「………え?風呂?」

 

お前気が付くの遅すぎだろ…

 

 

 

 

 

 

 

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「君は夕飯どうするんだ?」

 

キリト&アスナと別れた後で葉山が聞いてきた。お、何ですかもしかしてナンパですかそういうのイケメンにされると女子はときめくかもしれませんけど俺は正真正銘の男子でそういう趣味はないのでやめてください。ごめんなさい。おおう、これじゃどっかのあざとい女の子ではないですか。あいつちゃんと生徒会長やってるかな…。ごめんね?クリスマスイベント企画中に俺いなくなっちゃって。ていうかもしかして向こうはとっくに年明けてね?始まったばかりだからかこっちの世界はイベントの一つもなくてとてもつまらないです。

 

「…比企谷?」

 

「…あ、ああすまん。ちょっと考え事してた。なんだ?」

 

「比企谷は夕飯どうするのかって聞いたんだ。おっとすまない、リアルネームで呼ぶのはマナー違反だったっけ」

 

「別に、他に人がいないときは構わねぇよ」

 

「いや、でも使い分けるとたぶんボロが出るだろ。それに面倒だ」

 

「そうかよ…じゃあ勝手にしてくれ"ハルト"くん」

 

ハルトくんの部分は嫌味ったらしく言ってやった。ここ重要。

 

「で、飯の話だったな。聞くまでもないだろ。この層で安価で手に入るものは黒パンしか存在しない。今日もまたそれを食うだけだ」

 

「…少しだけ高いが黒パン以外のものが食べられる店があるけど、教えようか?」

 

なん…だと…?

 

おいおい冗談だろ。これでもランの妹探しのついでに一ヶ月近く食事に関する調査してたんだぞ俺は。その俺が知らない店が存在するというのか。

 

「教えてもらいたいが…対価は?」

 

「対価?」

 

「あのなハルト、こういったMMORPGにおいて、情報ってのは各々がゲームをプレイする上で必要不可欠なものなんだ。だから情報は場合によっては売り物にもなる。毎回、誰にでもそうしろとは言わんが、他人と情報のやり取りをする時はよく考えろよ」

 

攻略会議で話題に上がった攻略本はとある情報屋からの無償提供のものだったが、おそらくあれは広告の類だろう。もちろん善意も含まれた行動だろうが、あれによってその情報屋の知名度と信頼度が獲得されるのは当然と見ていい。そのツテで客が集まれば、後の商売は安泰になるわけだ。そういえば情報屋にまだ接触してなかったな。今度ランの妹について依頼してみよう。

 

「…そうなのか、覚えておくよ。しかし対価か……まあ、貸し一つって事にでもしておこうか」

 

「お前がそれでいいならそういう事で。で、どこにあるんだその穴場は」

 

「ああ、案内するよ」

 

教えてくれるだけでいいのに…。これ絶対こいつも一緒に食べる流れだよね?それはなんか望ましくないなぁ…でも飯は食べたいしなぁ…仕方ないか。

 

「…んじゃ頼むわ。あ、ちょっと待て。ランも連れてっていいよな?すぐそこの宿だから呼んでくる」

 

「構わないよ。別に時間に縛りはないから、急がなくていいからな」

 

「おう」

 

俺は葉山に背を向け、宿屋に向かった。未踏の場所に行けば何か情報が得られるかもしれないし、何よりついに黒パンの呪縛から解放されるのだ。ランの天使のような笑顔が更新される日が来たのだ。これで俺は攻略頑張れる。そう思いながら足を進めると、背後から僅かに声が聞こえた。

 

「…結局俺は………なんだな…」

 

と、一部聞こえなかったが、何かに落胆したような葉山の冷たい声が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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俺とランは葉山の案内で人気の少ない酒場に辿り着いた。穴場なだけあって見かけは地味だが、廃れているわけではないのでたぶん色々な意味で安全な所だろう。品数は少ないが、葉山の言った通り黒パン以外のメニューがあるようだ。ついにこの日が来た…

 

「…オクトさん。お肉ありますよお肉」

 

「…そうだな。何で今までこの店に気づかなかったんだ…。マジ肉食べようぜ肉。…《フレンジーボア》のだけど」

 

あのイノシシ食えたのか…。結構倒したけど肉のドロップなんてなかったぞ?この層ではプレイヤーが手に入れる事は出来ないってわけか。

 

注文が終わると、妹探し作戦会議が執り行われた。葉山という協力者ができたのはいいが、結局ここに来ても新しい情報は得られなかった。ランは妹のプレイヤーネームを聞いておらず容姿だけで探すしかないのだから、これまた骨が折れる。

 

「やっぱり情報屋を当たってみるのがいいだろうな。つっても居場所が分からんし、どうしたもんか…」

 

「キリトなら分かるんじゃないか?彼、元ベータテスターなんだろ?」

 

「ああ、その手があったか」

 

俺はウィンドウを開き、キリトにフレンドメッセージを打とうとした。その時だ。

 

 

「情報屋ならここにいるよ」

 

 

何だ?どこから喋った?はっ!まさか直接脳内に…

 

「キョロキョロしないの。うしろうしろ」

 

バッと振り返ると、そこにはフードを深く被った女性プレイヤーがいた。アスナより顔が見えない。ていうか何?この世界の女どもはみんなフード被ってんの?流行ってんの?もしかして妹が見つからないのってこの流行のせいじゃね?あ、ランは被ってなかった。

 

「情報屋…あんたが?」

 

「そ。話は聞かせてもらったよ。いいお姉ちゃんだねー、こんな物騒な世界の中妹を探し回ってるなんて」

 

「いえ、いいお姉ちゃんだなんてそんな…。ただ、物騒だからこそ妹が心配で…」

 

さすが情報屋、コミュ力のまあ高いこと。俺の周りはみんなコミュ力高いのな。すると高コミュ力集団に囲まれた俺もコミュ力高いってことでいいんじゃね?違うか。違うな。

 

「で、情報屋さん。あなたは彼女に協力してくれるという事だったけど、具体的に何をしてもらえるんだい?」

 

そう、それだよ葉山。

 

「言っておくけど私は探偵でもなければ万事屋でもないからね。やるのは情報集め専門だよ。君たちは攻略に出るんでしょ?だから君たちがそれに専念してる間に、私はこの世界を走り回って依頼に関する情報をできる限り集める。まあ、依頼してくる人は他にもいるから、それと並行してって事になるけど」

 

「なるほど…」

 

つまりは業務委託とでも言ったところか。俺たちが中途半端に情報収集をするより、そのほうが効率的だろう。それに、情報屋ともなれば俺たちの知らないルートを持っているに違いない。もちろん俺たちもこれまで通り情報収集は続けるが、幅が広がれば妹を見つけるまでの時間はかなり短縮できるはずだ。あとはいくら払わされるかだな。

 

「お代は私がどれくらい働けるかによるから、あとで結果を渡す時に請求するよ」

 

「え、ああ」

 

こいつ俺の頭の中でも見てるのか…?

 

「で、どうするの?私を使う?」

 

使うって…。何か変な気分だが気にしないでおこう。ランに目を向けると、真剣な顔で力強く頷いた。依頼主の承諾を得た俺は、この情報屋に協力を要請した。

 

「さて、じゃあ私は早速仕事にかかるけど、まずは妹ちゃんについて教えてもらおうかな」

 

「はい。えっと…妹っていっても双子なので、私と背丈はほとんど変わりません。髪は、色を変えてなければ私のを短くした感じだと思います。あと、私と違ってとても活発で…」

 

そこから妹トークが五分くらい続いた。うん。俺も前に聞いたけど妹が好きなのはよく分かった。俺も妹大好き。妹っていうか小町が大好き。言っておくが俺はシスコンではない。妹を大事に思うのは年長者として当然の勤めだ。

 

「OK、妹ちゃんの情報と君の妹愛はよく分かった。でもプレイヤーネームは分からないと」

 

「それは…すみません。ログインするまでに決まらなくて、後から教え合うつもりだったんです。でもログアウトできなかったから…」

 

「そっかー。それは残念。じゃあ悪いけど、妹ちゃんのリアルネーム教えてもらってもいい?」

 

「えっ」

 

前に葉山とも話したが、この世界でリアルの事を聞くのはマナー違反とされている。色々面倒臭いからな。気の知れた友人にでもなれば話は違うだろうが、ついさっき会ったばかりの人間とリアルの話をするのはあまり気持ちのいいものではない。

 

「それがあれば集められる情報も増えると思うんだけどなぁ。妹ちゃんが心配なんでしょ?」

 

痛いところついてくるな…。だが事実だ。本当に心配なら、ここで迷っている暇はない。ランもそう思ったらしく、少し躊躇ったようたが口を開いた。

 

 

「妹は……木綿季…紺野木綿季っていいます」

 

 

ここに来て俺も初めて知ったことだ。ランの妹は"ユウキ"というらしい。

 

 

 

 

 

 

 

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攻略会議から二日経った今日。俺たちは第一層のボス部屋の前にいた。今まさに、攻略への大きな一歩が踏み出されようとしている。

 

「みんな、ここまで来たら俺から言うことは一つだ」

 

先頭に立つディアベルが声を上げ、集まったプレイヤーたちはそちらに目を向ける。

 

「…勝とうぜ!」

 

うおおおおおお、という雄叫びをあげる連中とともに俺たちはボス部屋へ走り込んだ。あれ恥ずかしくないのかな…

 

 

 

 




とりあえず、ボス部屋突入までで一区切りです。

で、一応あと少しでセンター試験なので、しばらく執筆活動をお休みします。二週間くらいしたら再開しますので、お待ちください。

謎の情報屋、どんな話を持ってくるのでしょうか…
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