「のぉ提督よ」
「何だ利根」
「ちょっと聞いても良いかの?」
「ん? 何かあったか?」
「いや何かあったかじゃ無くてな、お主のその……肩に乗っかっとるヤツなんじゃが」
「バイトだ」
「……なんじゃと?」
「何かウチの前で行き倒れててよ、助けた後事情聞いたら行く宛てがねーって困ってたから追い出すのもアレだし、三食と寝る場所を提供するって条件で雇う事にした」
「いやいやいや行き倒れって、むしろそヤツは妖精さんじゃから雇うとかそんな感じの雇用形態はおかしくは無いかの」
「あ? 妖精さんん? まぁたお前はそんな夢見るアリスちゃんみたいな事言いやがって、いい加減現実ってヤツをちゃんと直視しろっての」
「現実を直視するのはお主の方じゃバカモンが! どこの世界にそんな手乗りサイズの三頭身な人間がおると言うのじゃ!」
「ここに居るじゃねーか」
「だーかーらぁぁ、居る居ないではのーて! その見た目的な部分にお主は何も感じんのかっ! と言うかそこの妖精も提督の言葉にコクコク頷くでないわっ」
「おい利根よ……」
「……何じゃ」
「人を見た目だけで判断すんなってお母ちゃんから言われた事無いのか? そんな狭量な心がイジメって負の連鎖を生み出すんだぞ」
「何でお主はこんな時だけやたらとズレた正論をぶちかますんじゃ! 大体お母ちゃんって何じゃ! 艦娘にそんなモンはおらんわっ!」
「あ? 何言ってんだお前、そんな事聞いたら鳳翔が泣くぞおい」
「あのオカンはママンとかじゃのーてあだ名じゃ! そんな事本人の前で言ったら逆にぶっ飛ばされるぞお主!」
「何だお前は遅れてきた反抗期か? まぁ取り敢えずだ、コイツは機械イジリが得意らしいからな、主に工廠でバイトさせる事にしたから」
「もぅ何でも良いわ…… 朝一番から我輩何か疲れたぞ」
「んじゃ顔合わせも済んだ事だしちょっくら仕事してくるわ」
「うむ、判った、で? その妖精さんと一緒にお主は何をするつもりなのじゃ」
「まぁだそんなファンタジーな事言ってんのかお前は、第一コイツにはピエトロってちゃんとした名前があんだぞ、何だその妖精さんて」
「随分とハイカラな名前しとるの、見た目工事現場のオッサンみたいな格好しとるのに」
「お前な……ほら、子供は親を選べないんだぞ、
「何でそこでキラキラネームの者に気遣う感じの微妙な触り方をしとるのじゃお主は、と言うかこんな所で油を売っとらんで早く仕事に取り掛からんか」
「あーそうだな、すっかり忘れてたわ、今日はちょっと色々と危険なブツを触るから準備が忙しいんだった」
「ちょっと待つのじゃ」
「何だよまだ何かあんのか?」
「今危険なブツと言ったか?」
「おう、それが?」
「今回は何を作るつもりなのじゃ」
「ん? いや火薬をちょっとな」
「火薬ぅ? 火薬をどうするのじゃ」
「ん、いやほら色々材料集まったし黒色火薬を調合して、それで対空兵装を改修するつもりなんだが」
「待て待て、黒色火薬を作るとな? 色々突っ込みたい所はあるが先ずそれは犯罪なのでは無いか?」
「あん? いや俺危険物取り扱いの一種持ってるし、火薬類製造保安責任者の甲種持ってるし」
「提督は妙に資格関係だけは揃えておるの…… しかし我輩も火器を扱う者じゃからのその辺りは素人では無いぞ、お主が今言った資格だけでは対空兵装の製造はできんからな、残念ながらそのプランは諦めるが良いぞ」
「ああそれな、それなら問題は無い」
「……何じゃと?」
「俺とピエトロが組んで設計した武装なら火薬と建材さえあれば対空火器は作れる」
「って既に妖精とタッグを組んでおったのか…… して、その妙に限定的と言うか偏った素材で一体何を作ると言うのじゃ……」
「先ずこうやってコンクリブロックを並べるだろ?」
「うむ」
「そして9マス目をちょこっと掘って柵を設置するだろ?」
「……うむ」
「んで一番奥に水ダバーすんだろ」
「……う、うむ?」
「後は脇にもう一段コンクリブロック積んで、赤石とリピータを置いてだな」
「何で深海棲艦相手にTNTキャノンで対抗しようとしておるのじゃお主は! て言うか普通TNTは並べてしまったら誘爆して大惨事じゃからな! 水に触れたら湿気ってダメになるからな! それ以前に何故リアルでレッドストーンリピーターなんぞ存在しとるのじゃ!」
「ん? いやその辺りはピエトロの担当だからな、何でと言われても」
「妖精までマイ○ラに汚染されとるのか!? て言うかサムズアップしてドヤ顔するでないわっ!」
「何お前カリカリしてんだ?」
「お主がゲームとリアルの区別も付けずに謎兵器とかこさえようとしてるからじゃろうが!」
「いや妖精妖精言ってるファンタジー娘にそんな事言われたくねーんだけど」
「じゃからお主がバイトで雇ったそのピエトロが妖精じゃと言うておろーが!」
「ハハハそんなバカな」
「あーもう分かった、お主にその辺り説明しても無駄な事は分かったからもう良いわ……ったく」
「まぁ納得したなら何よりだ、それよりも利根よ」
「何じゃ」
「お前の車な、座席ノーマルに戻しておいたからよ、いつでも乗ってける状態になってっから」
「ふむ? そうなのか? ようやっとこれで我輩も町へお買い物に出掛ける事が出来る様になったのか」
「まぁ色々と改修には苦労したが、何とか部品の合うヤツを見つけ出せたし、やっと肩の荷が降りた感じだぜ」
「……のぉ提督よ」
「あん? どした」
「車の椅子が元に戻っておるのは良いのじゃが、何で後輪が二つ共キャタピラにすげ替わっておるのかの……」
「いやお前車が不安定で横転したらどうすんだーつってたじゃねーか」
「……言うたの」
「でだ、ハンドル周りの構造的に前輪は一本なのはどうしようもないからな、後輪をキャタに変えて横転防止構造にした訳だ」
「アレは座席がポンヨポンヨしてその揺れで車が横転すると言ったのじゃ! 座席が元に戻ったならそれで問題は解決じゃろうが!」
「いや念には念を入れんとな、そういう事はキッチリしとかねーと」
「何でそこで変に気を回して余計な事をするのじゃ! これはアレか? 我輩は町へ買い物へ出る時こんなキャタピラマシンに乗ってガタガタとし○むらとかの駐車場へ入らんといかんのか!?」
「しま○らとかお前色気もクソもねーな、せめてユニ○ロとかにしとけよ」
「人の趣味に口を出すでないわっ! 大体何じゃこのピンクなのに微妙に都市迷彩柄のボディは……っておい、提督よ」
「んだよ、まだ何かあんのか?」
「この……荷台の何と言うか形容のし難いゲタの様な物は一体なんじゃ?」
「ああそれな、お前がカタパルトカタパルトうっさいから、ちゃんと専門家に聞いて現用兵器に対応したカタパルトを製作しておいた」
「……で? これはどう使用する物なのじゃ?」
「あ? そりゃ荷台にお前が乗っかってそのゲタに足を突っ込むだろ」
「……それで?」
「んでボタン押したらそれで射出……」
「ガン○ムか!? モビ○スーツ射出装置式のカタパルトかコレは!? 何でカタパルトの仕様が中世から宇宙世紀にぶっ飛んでおるのじゃ! どうして現代をすっ飛ばしおったのじゃお主はっ!」
「いや先輩のトコに連絡して最新式のカタパルトの資料送ってくれっつったらガ○ダムのDVDが送られてきたからよ」
「サブロオオオォォォォォォ!」