提督と利根さん、とか。   作:zero-45
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本編
いちにちめ


「のぅ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「報告書はそれで(しま)いか?」

 

「ああ、後はこれをFAXで送れば取り敢えず今日の事務は終了だな」

 

「……のぅ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「その、いつも思うのじゃが報告書が日に二枚とか正直どうかと我輩は思うのじゃが」

 

「仕方ないだろう、天気と気温と所見でこれ以上のボリュームにするのは不可能だ」

 

「まだ我輩が大本営の第一艦隊から着任して二週間、その間毎日鎮守府の事務仕事が小学生の日記みたいな物と言うのは正直どうかと思うのだが大丈夫なのか?」

 

「そりゃお前、ウチみたいななんも無い鎮守府で事務つったってなぁ……」

 

「むしろ何でウチの鎮守府はこんな人里離れた山の上に建っておるんじゃ?」

 

「バッカお前、人里離れたつってもな、ここは一応住所は町内だから人里から離れたとかいう人外魔境じゃねーし!」

 

「確かにのぅ、有視界範囲には集落はあるし、直線距離で言えば2キロも離れない場所には海がある」

 

「だろ?」

 

「……しかしな提督よ、そもそも距離が2キロというだけで、高低差が数百mは近所とは言わんのではないか?」

 

「……」

 

「おい、提督我輩から目を逸らすでない」

 

「いやあのその」

 

「そもそも何でこんな山の上で海軍の防衛拠点があるのじゃ?」

 

「ああそれね、それにはちょっとした事情があってな」

 

「何じゃその事情とは」

 

「えっとほら、ここに鎮守府を設置する時に大本営の事務方でゴタゴタがあってだな、土地購入の手続きとか諸々する人員が居ないからって俺が契約してこいって言われたんだ」

 

「ふむ? そうか、しかし大本営の事務方ともあろう所が素人にそれを任すとは、一体何を考えておるんじゃ」

 

「何でもちょっと前に事務方の大淀がどこぞの鎮守府に移動したらしくてな、色々大騒ぎになったんだがその時期とここの設置時期が重なっちまって手が足りなくなったとか」

 

「あ~……」

 

「で、土地購入の手配やら諸々済ました後に現地を確認しに来たらお前、場所が山の中だったっつーか」

 

「電話だけで契約したのかお主は」

 

「いや住所だけ見たら街中と連番だったし、業者は海が見える場所だっつってたし!」

 

「で買った土地を確認したら山の中だったじゃと? 何で海軍の提督ともあろう者が原野商法に引っ掛かっとるんじゃぁ!」

 

「仕方ないだろぉぉぉ! こっちだって急な転任で引継ぎとか手ぇ離せなかったんだよ!」

 

「むしろこんな利用価値も無い土地に鎮守府をおっ建てる必要性は無かろ! 何でキャンセルして他の場所を確保せんかったんじゃ!」

 

「いや普通ならそうしたかも知れんけど、ほらちょっと前どこぞの鎮守府が深海棲艦と仲良くなって近海が安全って事になっただろ? それでここの利用価値が無くなったんだよ」

 

「あ~…… いやしかしそうなら何で今ここに鎮守府があるんじゃ? おかしいじゃろ?」

 

「それはな、一旦降りた予算を返納しちまうと、次年度はその分の予算削減されちまうからキャンセルは不可って事になってな」

 

「何と言うお役所仕事…… しかし幾ら飾りとはいえここは鎮守府じゃ、何かあった時に出撃はどうするんじゃ? まさか艤装担いで山道をえっちらほっちら歩いて海までいくのか?」

 

「いや、それは大丈夫だ」

 

「何がじゃ?」

 

「そこのほら、裏手に斜面があるだろ?」

 

「……何だか我輩嫌な予感がしてきたのだが」

 

「んでこの俺がその斜面を下る為のトロッコを作って……」

 

「トロッコ!? あの裏に転がっている子連れの刺客がガラガラ押してるみたいなアレがトロッコ!?」

 

「仕方ねーだろ! 資材はその辺に自生してる木とかしかねーんだからよ!」

 

「って言うかこの鎮守府が無茶苦茶歪なログハウスなのはもしや……」

 

「俺の自作」

 

「やっぱりか! 何か丸太のサイズが妙にちぐはぐだと思ったら自分で木こって建てたと言うのか!? 何をしとるのだお主は!」

 

「何をとか言うがな、俺がここを建ててなかったら鎮守府は未だにテント生活だったんだぞ!」

 

「大本営からどんな扱いを受けとるんじゃウチは! 何で軍の防衛活動ががサバイバル生活に変貌しとるんじゃ!」

 

「知らねーよそんな事! てかあんまりカリカリしてるとハゲるぞ、落ち着け、な、ほら昼飯でも食って落ち着け」

 

「オナゴに禿げるとか言うなバカモンが、むう……今日の昼食はヤマメの塩焼きにキノコ汁か、薄々おかしいと思っておったが食料まで自給自足なのはそんな訳が……」

 

「まぁ暫くは我慢してくれ、今裏に畑を作ってる最中だから、春には野菜とか食えると思うし」

 

「何気に提督は自活力が高いのぅ、しかしキノコとか素人では食える物とそうでない物の見分けが難しいと聞いておったが……どこぞで勉強でもしてきたのか?」

 

「いや、食って判断した」

 

「……何じゃと?」

 

「ん? 食って毒かどうか判断した、で、ヤバいブツだけ後で携帯で撮影してチェックする様にしている」

 

「待て、待て待て、食ったって……毒に当たった時はどうしてたのじゃ?」

 

「ん、それに付いては問題ない、大本営時代の先輩からエリクサーを譲って貰ってな」

 

「エリクサー?」

 

「これだ」

 

「……提督よ」

 

「何だ?」

 

「お主この黄色の箱に書いてある正露○って文字が読めんのか?」

 

「ん? 何かおかしいか? 先輩から譲ってもらったそのてエリクサーは解毒だけじゃなくて、打ち身に捻挫、風邪に歯痛と万病に効く軍が秘密裏に開発した薬らしくてな」

 

「待て、待て待てお主それを本気で信じておるのか?」

 

「いや実際ログハウス建ててる時に骨折っちまったけどそれ飲んだら3日で完治したし、この前お前が誤射して当たった傷もこれですっかり回復したし」

 

「あの傷がいつの間にか完治しておると思ったら、正○丸で直したとな!?」

 

「いやぁ持つべきものは人脈だな、こんな凄い薬回して貰えるなんてなぁ」

 

「お主その先輩とやらに騙されておるぞ? プラシーボと言う言葉を知っておるか?」

 

「なんだそりゃ? プ……プラうん?」

 

「ああもういい、提督がそれでいいなら我輩は何も言わん、して、その先輩というのは今も大本営に?」

 

「いや? ちょっと前拠点の司令長官として異動してったな、大阪に」

 

「サブロォォォォォォォォォォォ!!」



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