ちょっと短め。
にじゅうはちにちめ
「のう提督よ、ちょっと良いかの」
「あ? なんだ利根」
「何だと言うかその台詞は我輩の方が言いたいのじゃがの、何でお主はこんな何もない山のテッペンでそんな戦国武将染みた
「ん? ああこれか、こんな格好してんのはアレだ、ちょっとした事情があってだな」
「……一体どんな事情があったら人里離れた原野で海軍士官がそんな落ち武者染みた格好で佇む事になるかをじっくりと聞かせて貰おうではないか、ほれ言うてみい」
「なぁ利根よ、今日は何月何日だ?」
「む? 今日は令和元年五月五日じゃがそれがどうした……って言うか、我輩極最近似たようなやり取りをした記憶があるぞ?」
「あーそっか、今月から元号が変わったんだったな、ならこの
「いやいやいや我が鎮守府のって、その色からしてまたイ級アーマーを流用したブツになるのじゃろ? て言うかデザインが古風と言うか和風になってるとか、腰の二本差しとか、相変わらず気合が斜め上に突き抜けすぎじゃ、それで? それはまた例の漁師共の依頼でこさえた物なのか?」
「いやだから今日は五月五日で何の日だって話なんだがな」
「……最早答える事に何ら意味を成さぬゆぇスルーしようとした我輩に対し更に答えを求めるのはどうかと思うが……そうじゃの、五月五日は子供の日で、今日は日曜日で、ついでに言うとゴールデンウィークの終盤だと答えておこうかの」
「前にセッツブーンで煮え湯を飲まされたからな、ゴールデンウィークを利用して気合の入ったブツを拵えて、例の幼稚園にサプライズイベントをって思ったんだが、鎧が完成してから超重要な事に気がついてしまった」
「……のう提督よ、もしや今回も先方にはそのゲリラ何某の事は伝えておらんかったのか」
「ゲリライベントじゃねぇよ、ってかバッカお前、先に伝えちまったらサプライズになんねーだろうが」
「そんな怪しげな覇気を垂れ流す鎧武者が幼稚園へ突然現れたらサプライズどころか事案待ったなしじゃぞ!? お主はアレか? そこの園児達に恐怖を植え付ける事に何か使命感でも感じておるというのか!」
「子に過ぎたる宝なし、季節のイベントを仕掛けるなら全力かつ魂の篭った物をしてやんなきゃだろ?」
「だからその気合を入れる方向が間違っておると言うのじゃ! 寧ろそんなゴテゴテとした格好したままでは車にも乗れんじゃろ、どうやって幼稚園へ移動するつもりじゃったのじゃ」
「ああそれな、ほら村の外れに林野庁の出張所があるだろ?」
「……久々に狂ったニューフェイスが登場しそうな前置きがきたの、林野庁て確か国有林とかあの辺りの管理をしておる農林水産省関係の外局じゃったかの。して、そ奴らがどうしたと言うのじゃ」
「いや前から猪だの熊だの相手にしつつ仕事をするのは色々ヤバいってぼやいてたらしくてな」
「まぁこの辺りは人も獣も猛獣パラダイスになっておるからの、山に分け入るとなれば確かに危険が付きまとう事になるじゃろうな。それで?」
「んでヨシゾウってオッサンがその出張所のカシラをやってんだけどよ、このオッサンってゲンさんの飲み仲間らしくてよ」
「……あの黒騎士漁師が絡んだ時点で我輩話の方向性が見えた気がするが、その騎士の飲み仲間が一体どういう形で園児を襲撃する武者のイベントに繋がるのかの理由を聞こうではないか」
「いやさっき言っただろ? 仕事すんのに熊とかと殺り合う事があるって、今までは鉈とかサバイバルナイフで対抗してきたけどそれも中々面倒らしいんだよな、仕留めるまでに時間を食っちまうとかで仕事にならんっつーか」
「待つのじゃ! 役所の人間共が熊を相手に鉈やナイフで殺り合ってたじゃと!? 寧ろそんな物で熊を仕留めるとかどんな修羅じゃと言うのじゃそ奴らは!?」
「まぁ所属は林野庁って事になってっけどよ、元々そこの出張所の人間って代々役所から指名された村出身のヤツらばっかだし」
「役所から指名て……いや、まぁあの村の関係者でなければあんな還らずの森に分け入るのは無理じゃろうな」
「で、ゲンさんにヨシゾウさんがよ、その鎧みたいなの俺らも欲しいって飲みの席で頼んだらしくてな」
「……それでその鎧に繋がるのか」
「で、フルプレートじゃ山に入るには適さないって事で、和風の鎧帷子をイ級アーマーから作り出した訳だ」
「森林調査とか剪定をするヤツらが完全武装した鎧武者とか、色んな意味で間違ってはおらんかと我輩は思うのじゃが……」
「でよ、鎧を納入しに出張所に行ったらよ、出来に感動したヨシゾウさんらがな? 丁度子供の日が近いしお披露目も兼ねて幼稚園にサプライズイベントしねーかって言ってきてよ」
「それで良いのか林野庁!? 寧ろ諸悪の根源はそ奴らじゃったのか!?」
「まぁ例の幼稚園って村の子供も世話になってるし、そういう意味では恩返しになんのかな?」
「のう提督よ、余計なお世話と言うか、幾ら善意から出た行動であってもあの村の感性で何かをする時は今一度己の行動を鑑みた方が良いと思うのじゃがの……」
「いやまぁこんな田舎だからな、そういう奉仕っての? そういう物も一種の娯楽になってるっつーか、結局ゲンさんらも参加しようかって事になってだな、現地まではゲンさんトコのコンテナトラックで行こうって事になった訳だ」
「待つのじゃ、あの漁師共も参戦て……もし子供の日に幼稚園が開いておったら、コンテナトラックがそこに突入し、中から黒騎士だの鎧武者だのがわらわら出てくるという地獄が繰り広げられておったと言うのか……」
「んで色々準備してたのはいいんだけどよ、昨日の晩にゲンさんらが用意してる時に気付いちまったらしいんだよな、五月五日って休日じゃね? って」
「気付くも何も毎年五月五日は休日で、ゴールデンウイークにも絡んでおるじゃろうが!」
「しかも今年は日曜日だしな、それで皆「アッ」て思ったらしいぜ」
「という事は日曜が絡んでおらんかったら、提督らは意気揚々と無人の幼稚園へ地獄のゲリライベントを仕掛けておったという事か」
「まぁそんな訳で同時進行でやる筈だった漁協のオバチャン達主催のバザーも中止になっちまったからよ、そこで売る予定だったブツも折角だしって土産で貰ってきたぞ」
「バザーて……待つのじゃ、漁協のオバチャン達て、確かビキニアーマー着たあの?」
「まぁ当日はバタバタするだろうからって出発の時点でビキニアーマーを装着するっつってたな」
「黒騎士と鎧武者に加えビキニアーマーのアマゾネスも参戦とか、いたいけな園児に対し阿鼻叫喚にも程があろ!? なんじゃその地獄絵図は!」
「まぁそういう訳でこれ、おばちゃんから貰った土産な」
「……のう提督よ、これはなんじゃ?」
「あ? お前毛糸のパンツ知らねぇの?」
「いやそれは知っておるがの、この熊柄で何と言うか子供向けのやたらとモコッとしたブツを我輩に履けと?」
「いつも履いてねーんじゃ冷えるだろってオバチャンらも心配してたぜ?」
「だから我輩は履いておるといつも言っておろうが! しかもオバチャン達もそういう誤解をしておるとかどうなっておるのじゃ!?」
「て言うか良く考えたらいつものソレに毛糸のパンツとか、組み合わせ想像したら笑えてくんな」
「ぶっ飛ばされたいのかお主はッ! この制服は軍が定めた正式な装備じゃといつも言うておろ! ソレとかぞんざいな言い方をるでないわッ!」
「まぁその毛糸のパンツ履くならいつものダクトテープは必要ないだろうし、抜け毛の心配もしなくていいんじゃねぇの?」
「いつも我輩がダクトテープを張っつけておるような言い方は止めるのじゃ! 寧ろ心配するのは下の抜け毛か!? それ以外に心配する部分があるじゃろうが!」
「ああそれそれ、幾らなんでも毎回バリバリと剥がしてたらツルンツルンを通り越して毛根が死ぬだろって相談したらよ、サラダ油とか塗ってゆっくりと剥がすとかしたら被害が少なくて済むらしいぜ?」
「なんじゃその物凄く狭い層にしか利用価値の無い豆知識は……て言うかサラダ油じゃと? そんなもの股に塗ったらヌルヌルして気持ち悪いわ、誰がそんな手法を編み出したというのじゃ」
「ん? ああなんか
「我輩はダクトテープを常用しとる訳ではないからそんなテクニックを伝授されても使う事はないのじゃ、寧ろ
「いやだから、その制服でボリボリと股間を掻くのは見栄えっつーか、色々と見え放題でヤバくねーか?」
「なんで毛糸のパンツから我輩が
「いや、送ったダクトテープの総量からそろそろそういう処置も必要なんじゃないかって、センパイとこから注意隆起があってだな」
「サブロオオオオォォォォォォォォォォオオオオオオオオッッ!!!」