提督と利根さん、とか。   作:zero-45
<< 前の話 次の話 >>

5 / 31
よっかめ

 

 

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「お主はさっきから一体何をしておるのじゃ?」

 

「あ? 見て分かんねーか? 餅をチネってんだよ」

 

「は? 餅をチネるって……わざわざ餅米をこねくり回して作った餅を再び米粒に整形するとかお主は一体何がしたいのじゃ?」

 

「あー、これには色々理由があるんだよ」

 

「……お主の言う色々とか事情という物にまともな物が無かった記憶は置いておくとしてじゃ、その理由というのを聞かせてもらおうかの」

 

「ん、ほら今日の午前にだな、独居老人の安否を確認しつつ年末の挨拶周りをしていたんだけどよ」

 

「なんか書類(絵日記)を済ませた後フラっとどこぞへ出ておったと思っておったら、何でお主が役所の民生員染みた事をしとるのじゃ?」

 

「ばっかお前、このご時勢ご近所さんに睨まれた軍施設って無茶苦茶ヤベーんだぞ、苦情とか大本営にいっちまったら給料の査定に響くんだよ!」

 

「なんか妙に生々しい親切心でお主がご近所付き合いをしているのは分かったが、それがどうしてチネりに繋がるのじゃ?」

 

「いや色々町内を練り歩いてたらな、町内会でやってた餅つきに誘われちまってよ、ほらそれを断るのもアレだと思って手伝ったら土産に餅を貰っちまったんだ」

 

「……それで?」

 

「まぁそれでだな利根よ、今日は何日だ?」

 

「12月30日じゃの」

 

「何曜日?」

 

「金曜日じゃの」

 

「金曜日と言えば?」

 

「……何なのじゃ?」

 

「ばっかお前金曜日って言えば海軍じゃカレーの日って決まってるじゃねーか!」

 

「何じゃそれは! 何で今まで山菜だの川魚とかばかりでカレーのカの字も出なかったウチでいきなりカレーなんぞの話が出てくるのじゃ!」

 

「それだよそれ! ウチは海軍の鎮守府だってーのに今まで一度もカレー食ってねーんだよぉ! でも米がねぇしどうしようも無かっただろーが、しかし今日はコレがある……つきたてホカホカの柔らかい餅がな!」

 

「だから餅をチネっておったのか!? お主はバカか!? 何で海軍の防衛拠点で提督ともあろう者がどこぞのサバイバル芸人みたいな事をしとるのじゃ!」

 

「カレー食わない海兵は海兵とは言わねーんだよ! カレーも食わないヤツに海軍魂は宿らねーんだよぉぉ!」

 

「どんだけカレーに拘っとるんじゃ! むしろ餅を見てカレーに到達するお主のそれは海軍魂とは言わんからな! それはただのバカなだけじゃからな!」

 

「バカとか言うなバカとか、てかそんなカリカリしてたらお前チチがしぼむぞ? 落ち着け、まぁこれでも食って落ち着け、な」

 

「またこのパターンで食い物が出るのか、て言うかチチがしぼむとか訳の分からん風評被害を垂れ流すでないわ! ったく……、む? これは……ちゃんとライスカレーになっておる」

 

「ライスカレーって、お前はどこぞのご老人か」

 

「我輩らが軍艦だった頃はカレーはライスカレーと呼んでおったのじゃ、しかたなかろ」

 

「あーそっか、お前らって軍艦だったんだっけ?」

 

「今更か!? ほんにお主は妙に軍人臭く無いのぉ、しかしこれは……ウチにカレールーなんぞあったかのぅ? もしやコレは買ってきたのか?」

 

「いや、この前お前のエロサンタコスを買ってスカンピンになったから、仕方なくそれは俺がスパイスを調合して作った」

 

「あの衣装に有り金叩くとか気が狂っとるのかお主は、しかし調合って……肝心のスパイスはどうしたんじゃ?」

 

「薬箱に二日酔い用のウコンのアレがあっただろ? あれをベースに山で自生してる諸々をちょちょいとだな、んで具は池で泳いでた鯉とか、裏に生えてたキノコとか」

 

「それでこの完成度か!? むしろこれはあの錦鯉の肉なのか!? 錦鯉カレーとか何を目指しておるのじゃお主は!」

 

「ちなみに夜は餅をミョーンして麺を作ろうと思ってるからカレーうどんな」

 

「なんじゃそのアバウトかつ不安を煽る調理法は、どこまで餅でレパートリーを拡大するつもりなのじゃ……」

 

「とりあえず一人一升分の餅は確保してきた、暫くはこれで色々試して限界を極めてみようと思う」

 

「そんな無駄な労力を注がんでもふっつーに焼いて食えばいいではないか」

 

「それは餅が完全に硬化して加工が困難になった時だな」

 

「まぁ確かに毎日餅餅してたら流石に飽きるじゃろうがのぅ、ところで提督よ」

 

「何だ利根」

 

「あの部屋の隅で鎮座しているあの……妙な塊というか……」

 

「ああ、正月用に仕留めてきたイノシシな、すぐ食うとアレだから室内で熟成してんだよ」

 

「正月に猪肉か、正にサバイバルじゃのぅ、しかし提督よ」

 

「だから何だよ」

 

「アレが猪肉なのは分かったのじゃが、何故形状がギャー○ルズに出てきそうなマンガ肉ちっくになっとるのじゃ?」

 

「ああなんつーか肉って言えばこう、マンガ肉じゃね? だからチョチョイと加工して作ってみたんだが」

 

「何をどうしたらイノシシ肉がマンガ肉に変貌するんじゃ!? て言うか我輩お主の感性が全然理解できんぞ!」

 

「いやほら、諺にもあるじゃねーか、おせちもいいけどカレーもねって」

 

「意味が無茶苦茶な上に順番が前後しとる! 肉がおせちなのか!? そして新年早々またチネるつもりなのか!?」

 

「いや山菜はたっぷり備蓄したし、肉も確保したしちょっと今回は本格的なおせちに挑戦しようと思ってな、カレーはその後で」

 

「いやお主は海軍提督なんじゃから、そんな物に全力を注がずにお国の為に働らかんか!」

 

「ああその件なんだけど、年が明けたら鎮守府を拡張して軍備を整えるからな、お前にも多少は手伝って貰う事になると思うからその時は頼むぜ」

 

「うむ? そうなのか? やっと軍事拠点らしい活動を開始するのか……そうか、まぁそれなら我輩も協力は惜しまんがの」

 

「とりあえず杉の伐採と蔓系植物の加工、それと石材の採掘からかな」

 

「……今ちょっと軍事拠点にあるまじき資源の名称を聞いた気がするのじゃが……一体何を作るつもりなのじゃ?」

 

「ん? とりあえずは手狭になりつつある執務棟(ログハウス)の拡張して、そして対空兵装の設置だな」

 

「対空兵装? 木材とか石材で?」

 

「ああカタパルトを作ろうと思ってな、何かお前そっち系のエキスパートらしいって話だしとりあえずそれで」

 

「お主の言うカタパルトは投石器なのではないのか!? 我輩のカタパルトはそんな原始兵器ではないぞ! なんじゃどうしてそんな話になっておるのじゃ!?」

 

「え? 利根ってカタパルトフェチだから作ってやったら? って先輩が……」

 

「サブロオォォォォォォォォ!」



※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。