THE LORD OF ELEMENTAL 偏見の男   作:幽霊少女

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ハーメルンで初めて投稿させて頂きます幽霊少女と申します。
若輩ながら宜しくお願い致します。


第1話 終わりと始まり

 

第1話 終わりと始まり

 

 

 

 

赤茶けた土と砂に覆われた荒野に響き渡る轟音。

それは荒野の中心に立ち並ぶ人工的な建造物の真上で繰り広げられている、大小一対、4本の腕を持つ比類なき耐久性と攻撃力を兼ね備えた上半身だけしかない緑色の機械巨人と、同じく機械で形作られた蒼い魔神の戦いにより発せられた激突の音。

いや、蒼の魔神だけではない。その他にも鞭のような武装と女性型のフォルムを持つ紅い人型機動兵器に、刺々しい外観の黄金色の機動兵器。

そして最後に緑色のまるでスカートを履いた女性のような外見をした機動兵器の計4機が、緑色の巨人を取り囲んで激闘を繰り広げていた。

 

戦闘開始より1時間、終始押されっぱなしであったのは緑の巨人の方であった。

4対1なのだから緑色の巨人には分が悪い、見方によってはたった一人に対し四人がかりで攻撃するという卑怯極まりないとも思える構図であったが、如何せんそのような言い訳が通用する程緑の巨人が弱い訳ではなかった。

それどころか、もしこの巨人に乗っているのが腕の立つエースパイロットであったならば、互角の戦いになっていたかも知れないくらい非常に強力な機動兵器なのだ。

つまりは、全てがこの兵器を操っている人物の腕が悪すぎる処に問題があったと言えるだろう。

 

「お……おのれ……貴様ら如きに……!」

 

傷付き煙を上げる緑の巨人の内部では白髪をオールバックに撫でつけた50代と見られる中年の男が、モニター画面に映し出されている殆ど無傷な状態の蒼い魔神を睨み付けながら憎しみに顔を歪めていた。

 

 

男の名はテイニクェット・ゼゼーナン。

共和連合と呼ばれる恒星間国家を二分する雄でゲストという巨大な勢力を率いて『地球文明抑止計画』と名付けられた計画を発案・利用し、あわよくば高度に発展した地球の軍事技術を接収・独占して国内での権力強化、

そして何れは全宇宙の支配者となる事を目論んでいた男であった。

 

計画は順調だった。共和連合統合軍太陽系方面司令官となる今よりもずっと以前、技術提供として秘密裏に地球と接触した際、開発中であった蒼い魔神グランゾンの心臓部になるブラックホール機関内部に仕掛けを施し、

地球上に戦乱が多発するように細工していた彼の思惑通り、幾度となく戦乱に見舞われた地球は内部で対立し続け、自分たちの付け入る隙を作り出す事に成功。

偶然を多発させるその装置と仕組みは上手く機能し続け、後一歩で地球の軍事技術を己が手に握るという処まで来ていたのだ。

 

だが、ここで大きな誤算が発生した。彼が下等種族と見下す地球人の手によってその仕掛けが解析され、完全に破壊されてしまったのである。

その仕掛けを破壊した張本人こそ、今彼が戦っている蒼き魔神グランゾンの開発者であり、操縦者でもある地球人シュウ・シラカワであった。

このシュウという男は自由をこよなく愛している。何者にも縛られない自由を求めて生きているのだ。その為、自身が誰かに利用される事を何よりも嫌い憎悪するという性質を持っている。

シュウを利用しようとした者全てが彼の逆鱗に触れてこの世から跡形もなく消されてしまい、地獄に叩き落とされているのが何よりの証拠であり真実。

翻ってグランゾンに仕掛けを施し己の利になるよう細工されていたというのが何を意味するか?

それはグランゾンを利用した、シュウ・シラカワが利用されたという事に他ならず、仕掛けを施した人物テイニクェット・ゼゼーナンが彼の怒りを買うのに充分すぎる程の理由となっていた。

その結果、偶然を起こす仕掛けを目の前で破壊され、有利な偶然が発生しなくなった事により敗退を重ねたゼゼーナンは、地球侵攻の拠点であった火星基地にまで追い詰められてしまう。

それも、最後のとどめは自身の手で行わなくては気が済まないシュウと、彼の仲間達によって満身創痍の身に陥るという皮肉な結果に。

 

「さて、ではそろそろおしまいにしましょうか、ゼゼーナン卿」

 

余裕たっぷりに見下しながらも、その瞳に宿る憎悪の色を隠そうとしないシュウはこれで終わりだと言い放つ。

その不敵な笑みを浮かべるシュウを画面越しに見たゼゼーナンの心に去来するのは、皮肉な事にシュウが抱く物と同じ感情、即ち憎悪である。

自分を見下しているのは誰だ? シュウ・シラカワだ。

シュウ・シラカワとは何者か? 地球人だ。

では地球人とは何だ? 決まっている、下等生物だ。

その下等生物が見下しているのは誰だ? それは――全宇宙の支配者となるべく定められたこのテイニクェット・ゼゼーナンだ!

 

「ぐ……ッ! この下等なサルがッ! 私を見下すなどあってはならんのだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――――――ッッッッ!!!」

 

下等なサルである筈の地球人に全ての計画を破壊され、追い詰められ、見下されてしまった彼は、一瞬にして頭に血が上り、怒りという感情に心を支配されてしまった。

彼とて一軍を率いる将である以上、決して愚鈍な人間という訳ではない。

いつもの冷静な彼ならば理解できていた筈なのだ。自身が操る機動兵器――バラン=シュナイルが傷だらけなのに対して、シュウのグランゾンが無傷である時点で最早勝ち目など無いという事を。

 

「くらえッ!」

 

だが、下等なサルに見下されて冷静さを失ってしまった彼は、怒りのままに斬りかかってしまった。

 

「ふ、愚かな……」

 

まるでゼゼーナン自身が見下すサルのような行動を、自分自身で行うという滑稽な姿。

無論、それはシュウからすればただ無謀な突撃をする愚者にしか見えない。

もし此処でゼゼーナンに勝てる可能性があるとしたら、彼自身がゲスト軍のエース級の操縦技術を駆使して戦うか、シュウがまだ隠し持っている奥の手と同クラスの機体にバラン=シュナイルを変形させるしかなかった。

彼がこれら二つとも持ち合わせていない以上、命乞いをするか尻尾を巻いて逃げ出すかの二択しか生き残る道は無い。

といって、そのような行動に出ていたとしても逃がしてくれるような男ではないのだが。

つまり、ゼゼーナンに残された道は“死”以外に無かったのである……。

 

「これでもくらえ下等生物がァァ!!」

 

突進するバラン=シュナイルは長大な高熱の大剣――ロングレーザーソードをその手に発現させて、グランゾンに斬りかかる。

それが見えていても蒼き魔神は微動だにせずその身を持って高熱の刃を受け止めた。

 

「やったか!?」

 

やはり愚かな下等生物だ。攻撃されるのが見えていて逃げないどころか斬り払いも防御もせず無防備なまま受け止めるとは。

如何にグランゾンといえどバラン=シュナイルのロングレーザーソードをまともに喰らって無事でいられる筈がない。

そう確信するゼゼーナンは、しかし次の瞬間思い知る事になる。

 

「いま、何かされましたか?」

 

「ば、バカなッ、無傷だと!?」

 

確かに斬りつけた部位、グランゾンの機体中央部には傷一つ付いてはいなかったのだ。

 

「さて、それではいきますよ」

 

そして今度はお返し、いや、引導を渡すために蒼き魔神が手を掲げると掲げた先の空間に穴が開き、穴の中から巨大な剣が取り出される。

その剣を手に持ったまま、一気に距離を詰めバラン=シュナイルの胴体、丁度コックピットのある部位をすり抜けざまに斬り付けた。

金属がぶつかり拉げる甲高くも鈍い音が荒野に響き渡る。

直後、緑色の巨人は機体全体から火を噴き崩壊を始めた。

たったの一振り、その剣撃だけであっけなく付いてしまった決着。

 

「バ……バカな……なぜだ!? そんなバカな……」

 

火を噴き爆発を繰り返す87メートル越えの巨大な機体の中で、ゼゼーナンは驚愕の声を上げていた。

 

「下等種族に、この私が敗れるだとッッ……!」

 

信じられなかった。下等なサルに自分が敗れるなどと。

全宇宙を支配するべく定められた最優等種、いや、神その物と言ってもいい選ばれし存在である自分が敗れるなどあってはならない……あってはならないのだ!

 

「そんな……バカなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

ほんの一撃で終わってしまった戦い。優等種である自分が下等生物に敗れるなどと有り得るはずがないと、未だ起こった現実を否定し続ける偏見に満ちた男の野望は、驚愕に彩られた断末魔と共に機体の爆発と閃光の中へと消えてゆくのであった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故こんな事になった? 一体何が間違っていたというのだろうか?

南極の会談も、特異点の仕掛けも、筆頭書記官から太陽系本面軍司令官へと昇進するのも全てが思うように進んでいた筈だ。

特異点による偶発的な事件、異世界の軍事勢力が地球に侵攻、共和連合以外の外宇宙勢力の侵攻も全て想定の範囲であり、己が有利に働いていた。

それが何故自身の破滅へと収束していったというのだ。

 

全ては地球人を下等なサルと侮り偏見を持ち続けていたが故に曇ってしまった洞察力と、油断から来る自らの失敗であったが、事この様な末路を迎えても尚それに気付くことはなかった。

それが出来るような男ならばこの様な最後を迎えていなかったであろう。

しかし、それがこのテイニクェット・ゼゼーナンという男なのだ。

 

自問自答を心の中で繰り返す彼ではあったが、どれだけ考えても望むような答えに結びつく事がない。

そんな時間が幾ばくか流れた頃、ふと彼は気付く。どうして死んだ筈の自分がこうして物を考えるという行為が出来ているのであろうかと。

故郷である共和連合にも超自然的な考え方というのは勿論あった。人は死んだらどうなるのかにその答えの一つとして、魂と死後の世界を信じている者も一定数存在していたし、その種の宗教や学問も当然の事ながらある。

だが、彼、ゼゼーナンはそのような非科学的な話を信じてはいない。

人生とは一度きりであり、死んだらそれで終わりなのだと断じている。

だからこそ、生きている間に自身の手で全宇宙を掌握するといった無謀とも思える壮大な夢を実現させようと躍起になっていたのだ。

チャンスは一度、ならば遮二無二動いて野望の道へと突き進むのみと心に決めて。

 

であるというのに死んだ筈の自分に意識がある。

 

これは彼が考えていた死後を根底から覆すような衝撃であった。

つまり死後は存在していたという事か?

それを意識し始めると、今度は眠っていたような暗闇に光が差し込んでくるかのような感覚を覚えて、閉じていた世界が開かれた。

 

 

 

 

「ん……う……」

 

意識を取り戻したゼゼーナンの目に飛び込んできた景色は、見慣れたコックピットの内部。

バラン=シュナイルの巨体に見合う広々とした空間は、乗る気があれば三人くらいは平気で乗れそうなくらいに余裕がある。

 

「ここ……は……何所だ……?」

 

その広いコックピットで目を覚ました彼は、前面に広がる緑豊かな大地を見て呆然としていた。

自分が先ほどまでいた赤茶けた荒野が広がる火星の大地とは似ても似つかない、木々と花々に囲まれ自然その物を体現しているかのような大地の光景。

 

「まさかこれが……死後の世界という物なのか?」

 

天国という言葉がある。そこは花や草木が生い茂る、自然豊かな世界として伝え聞いていたが、この光景は正にその伝聞の通りなのではないか?

しかし、それにしてはおかしい。死んでいるとは思えない程、精神・肉体共、しっかりとした感覚があった。

更に木っ端微塵に爆散した筈の自機バラン=シュナイルまでもがどうやら無傷の様子。

念のためと自分の頬や脚を抓ってみると当たり前の事ながら痛みが走る。これがもし死んでいるのならば肉体的な痛みなど感じない筈だ。

そう考えつつも、死んだことなど無い自分が死後どういった感じになるのか分かる筈が無いではないかと自嘲した彼は、取り敢えず現状を把握する為バラン=シュナイルの操縦桿を握り、その巨体を空高く舞い上がらせた。

 

機体の上昇と共に大地が見る見る内に遠ざかっていく。

 

「ふむ、本当に自然豊かな処だな」

 

故郷の星は高度に発展した科学力と引き替えに年々緑が少なくなっている。

彼からしてみれば、ここまで緑に覆われた世界というのはある種の感動と新鮮さを覚えるに充分すぎる物であった。

 

「む!? こ、これは!?」

 

そんな感動に浸っていた彼はまたもや信じがたい光景を目にする事になった。

 

「地平線が無いだと!?」

 

そう、本来これだけの高さ、計器類が示す2000メートル級の高度まで上昇すれば、見通しの良い場所なら必ず広がっているであろう筈の地平線が無いのだ。

代わりに遙かな地平の先に見えるのは緩く上に向かって勾配が付いた大地の景色。それはどこまでも続く終わりなき地平。

まるで丸い物体の内側から見ているようなその光景は、此処が自分の知っている世界ではないという事を如実に表していた。

 

「これはまいったな……」

 

いま改めて確認できたのは、此処が火星でも地球でもなく、共和連合に所属しているあらゆる星々とは全く別の未知の世界であるという事実。

こうなってはいかなゼゼーナンと言えど、弱音も吐きたくなってくる。

 

「ふう……。ここで文句を言っていても詮無きことか……」

 

だからと言って弱音や愚痴を零した処でなんの解決にもならないことは、自身が一番よくわかっている。

 

「取り敢えずは情報収集だな。しかし、人間のような知的生命体はいるのだろうか?」

 

彼の言う人間の基準は共和連合に所属するゾヴォーク人が主たる物であったが、この際地球人と同じような下等なサルでも構わない。

ないない尽くしのこの状況ではサルでもいないよりはマシであろうと考え、レーダーやセンサーを起動させて近くに人間がいないかと探索する事にした。

 

「ん?」

 

すると幸いな事に、この近くの地表に熱源を感知したのである。

彼は早速バラン=シュナイルに搭載されている高感度カメラを使い、発見した熱源の方向を探知した。

 

「ふむ、人間のようだな」

 

ズームアップされたのは先ほど飛び立った場所の近くにある開けた場所であり、その大地に栗色の髪の少女が1人座っている様子が映し出されていた。

映像から見るにこの近くに住む子供なのであろう、バスケットのような手荷物を持っている処からして当たりを付けたゼゼーナンは機体を急下降させて少女のいる開けた大地へと飛翔。

 

 

 

 

 

大した距離でもないのでカメラ映像は固定したまま飛行していた彼の目に、またまたおかしな物体の姿が飛び込んでくる。

それもその物体は岩石で出来た巨大な人型をしており、話を聞こうと思っていた少女の側に忽然と姿を現したのだ。

 

「拙いな、早く行かねばあの少女が踏み潰されるかもしれん」

 

別に見ず知らずの子供、それも文明の発達していなさそうなこの世界のサルのような人間が踏み潰された処で何も感じないが、せっかく見つけた貴重な情報源を失うのは面白くない。

 

「飛ばすか」

 

操縦桿を倒し飛行速度を上げたバラン=シュナイルは、自機と子供のいる大地の距離を一瞬で縮める。

すると此方の飛翔音に気付いたのか岩石の怪物が彼の方に向き直り、顔の部分に開いた大きな口から何やら衝撃波のような物を放ってくるではないか。

 

「ふんッ、下等な岩石人形がこの私に戦いを挑もうというのかッ、身の程を弁えろッッ!!」

 

衝撃波の直撃を受けたバラン=シュナイルではあったが、この厚い装甲には傷一つ付くことはない。

まるでグランゾンと自機の逆再生でもしているような錯覚さえ感じて苛ついた彼は、ロングレーザーソードを取り出すと。

 

「くらえいッッ!!」

 

全力で振り抜き一瞬にして岩石巨人の五体をバラバラに切り裂いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

脆くひ弱な岩石人形を破壊したゼゼーナンはコックピットのハッチを開き、昇降用に据え付けられているウインチを作動させて大地へと降り立つ。

彼の目的はただ一つだ。偶然とは言え自分が助けた少女にこの世界、若しくはこの国の情報を聞き出す事。

 

「大丈夫だったかね。怪我は無いか?」

 

怪しまれたり警戒されたりしないよう、極力友好的な雰囲気で話し掛けてみる。

唯でさえ軍服を着てこのような巨大機動兵器に乗り回しているのだから、未開の地のサルには刺激が強すぎて悪魔や怪物の類と取られてしまう可能性とて考えられるのだから。

そうなっては何の為にこんな子ザルを助けたのか分からない。

あくまでも自分以外の人間をサルと断じる彼は、犬猫にでも接するような感覚で少女に近付いていく。

すると、長く伸ばした栗色の髪を腰の辺りから一つに纏めて大きな三つ編みにした10歳程の少女は、熱でもあるのか頬を林檎のように紅く染めてゼゼーナンの問いに返事をしてきた。

 

「はっ、はいっ、あの……あ、危ないところをお助けにお為りになりに下さりまして、何とお礼を申し上げて良いのでございますでしょうか……、」

 

「いや、礼には及ばんよ」

 

一応普通に返す事が出来たが、この少女何やら言葉遣いがおかしく、一瞬何を言っているんだと聞き返しそうになってしまった。

これだから下等なサルというのは理解できなくて困る。

しかし、真のサルならば未知の物を見た場合、恐怖を感じて逃げ出す物だというにも拘わらず、この少女はバラン=シュナイルという巨大な機動兵器を目にしても臆した様子が見受けられない。

 

(なるほど、サルよりは多少マシなようだな)

 

その堂々とした立ち振る舞いに少女への評価を多少上方修正した彼は、本来の目的であるこの世界と国について聞いてみる事にした。

 

「処で君に一つ尋ねたいことがあるのだが、構わないかね?」

 

「はい、私にお答えすることが出来るのでございますれば、何なりとお聞きにおなられくださいまし」

 

またも丁寧ながら妙な文法を交えた言葉遣いで話す少女に、思うところを口に出しそうになったがそんな事をしていては話が進まない。

 

「では単刀直入に聞くとしよう、実を言うと私は旅の途中でこの辺りに迷い込んでしまってね。今居るのが何所なのか皆目分からないのだ。もし良ければこの辺りの名前……そうだな、国でも地名でもいい教えてくれないか?」

 

流石のゼゼーナンも子供相手に傲慢な物言いをしたりはしない。

ましてやつい今し方下等種族としては多少マシだと認めたばかりで敵対関係であるわけでもない子供にそのような恥知らずな態度で迫れば、自分まで未開の文明人と同レベルになってしまう。

ただ、バラン=シュナイルに乗っておきながら迷い人というのは些か無理がありすぎたかと思わなくもなかったが。

 

「まあっ、それは大変な事でございますわ!」

 

処が少女の方はというと、あっさり彼の話を信じて居るではないか。

 

「御身のご助力になれるのかは存じ上げませんが、此処はラ・ギアスはエオルド大陸に存在します神聖ラングラン王国でございますわ」

 

ラ・ギアス――聞いた事があるような名前であった。が、如何せん重要事項ではなかったのであろう、ハッキリとは思い出せない。

言い換えれば思い出せないと言うことは、所詮その程度の些事であるという事だ。

 

「そうか、済まんな。助かった」

 

「い、いいえ、あの……その代わり、」

 

何やらもじもじと焦れったい感じでこちらを上目遣いに見てくる少女。

 

「私の方からもご質問させて頂きましても、宜しいでございましょうか……?」

 

何を言うかと思えば聞きたいことがあるというだけの事であった。

別に聞かれてやましい事など何一つ無いゼゼーナンは「言ってみたまえ」とだけ返すと、自分の名前が知りたいと言い出した。

 

(私の名前が知りたいだと?)

 

知ってどうする。この国で自分の名を知る者はいないだろうが気にはなった。

無論それを率直に聞き返すことはないが、まあ名前くらい良かろうと考えた彼は、少女に自分の名を名乗ることにした。

 

「構わんよ。私の名はゼゼーナン、テイニクェット・ゼゼーナンだ」

 

「テイニクェット様……」

 

小さく呟くように自分の名を復唱した少女は、今度は聞いてもいないというのに自分の名を名乗ってきた。

 

「私はモニカ……モニカ・グラニア・ビルセイアと申します。以後お見知りおきくださいましテイニクェット様」

 

 

こうして本来ならば出会う筈のない2人は邂逅を果たした。

 

 

 




このような稚拙な文を読んでくださった方々に感謝の意を込めて

ありがとうございました。
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