前の加賀と瑞鶴のハーレム小説の続きです。
「瑞鶴、もういい加減あの人となんとかならない?」
「翔鶴姉ぇ、そんなことを言ってもあいつが勝手に寄ってくるのよ! 私よりもあいつに言って」
「そうじゃなくって、私が言いたいのは提督のことよ。瑞鶴、あなた本当に提督のことが好きなの?」
「ど、どういうことよ」
立ち止まって姉に聞き返す。
周囲はクリスマス前とあって、商店街はにぎやかだ。商店街とは言っても場所柄からいって飲み屋が多いのだが。
遥か前方の飲み屋では一升瓶を抱えた足柄が店先に座り込んでいる。その隣では妹艦の羽黒が店主に何度も頭を下げている。その脇では我関せずとワンカップを傾けている那智と、そのワンカップを取り上げて額に青筋を立てている妙高がいる。クリスマス前の風物詩の光景だ。
妙高四姉妹の惨状を見て、鶴姉妹は足の向きを変えた。
「違う道、行こうか」
「そうね、瑞鶴」
鶴姉妹の背後から
「男なんてー」という声と妙高の助けを
呼ぶ声が聞こえた気がしたがおそらく気のせいだと思った。
声が聞こえない距離までくると、瑞鶴は話を続けた。
「私は提督のことが好き。それは間違いないわ」
「そうじゃなくって、単にあなたは加賀さんへの、いいえ一航戦への対抗心が原因で提督を独り占めしたいんじゃないの」
図星を突かれた瑞鶴は黙った。だが、提督を好きな気持ちはある。その筈だった。
「私はただ、経験の浅い提督さんを助けたいだけよ」
「助けるって、机の下で千歳飴を舐めることが?」
提督との間の秘め事をこの姉はどこまで知っているのか。それを問いつめようとした時、瑞鶴の視界に看過しかねる光景が入ってきた。
「瑞鶴、私はあなたがしんぱ」
「翔鶴姉ぇ、あの店に入るわよ」
「瑞鶴、まだ話は、あっ、加賀さんと提督?」
洋風のお洒落なバーに入る提督と加賀は瑞鶴たちに気付いていない。
それもそのはず、加賀は頬を赤らめて提督の手を握っていた。しかも普段は全く見せない笑顔を浮かべて。
「あのクソ一航戦、なに笑顔なんか浮かべてるのよ。顔面が神経痛の癖して。翔鶴姉ぇ、止めないでよ」
「あ、瑞鶴!」
翔鶴の制止も無視して提督と加賀の姿が消えたバーに瑞鶴は入り込もうとする。
だがーー。
「あ、瑞鶴ー。どうしたのー?」
北上が間延びした声を掛ける。
北上の腕にはオプションとして大井がすがりついていた。
ふと翔鶴は、今はポリコレ的にアウトな玩具であるダッ×ちゃんを思い出した。
こちらに気付いた大井っちが警戒のうなり声をあげる。大井はもはやネコ科に戻りつつあった。いや、大井の姉妹艦にもネコはいるが。
大井の頭を撫でて警戒を解きながら北上が説明をする。
「やー、提督と加賀さんがバーに入る所を見かけてねー。面白そうだから見物しようと思うんだけど、瑞鶴もそう?」
「え、ええ、そうよ。そうよね、翔鶴姉ぇ」
「え、そうなの?」
哀れ提督は、加賀との甘い時間を物見高い艦娘と嫉妬深い五航戦に奪われることになるのであった。
続く