ネメシスの慟哭   作:緑雲

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お久しぶりです


帰還

「おとーさんっ! たっだいまー!」

「おおっ!? ―――ケイ! おかえり、早かったじゃないか」

 

 十二分に力加減をして、ケイはペイラーの腰回りにつっこんだ。ペイラーは書類をケイに預け、よっこいしょ、と彼女を持ち上げる。重くなったなぁ、と感慨深くなりながら、そのまま自らの研究室へ向かう。帰ったらメディカルチェックのために研究室に寄るようにとメールしておいたので、行先は同じだろうから。

 

「迎えに行こうと思っていたのに」

「驚かせたかったんだもん。あ、お土産は今検品されてるから後でね」

「ハイハイ」

 

 久しぶりのアナグラとその連中、そして自惚れでなければ父親であるペイラーに会えてうれしいのだろう。妙にテンションが高い彼女を腕に廊下を歩いていくと、すぐに見知った顔にはちあった。

 

「シン君!」

「おお、ケイか。おかえり」

 

 ただいまー! とケイはするりと器用にシンジに飛び移る。これが親離れかと途端に寂しくなったが、これも娘の成長である。ペイラーが人知れず娘の成長を偲んでいる間も、シンジとケイの会話はリズムよく弾む。

 

「シン君の次の遠征の予定は?」

「一番近いので三か月後だ。お前も連れてくぞー」

「よかったー! シン君がいるなら運転はシン君だもんね!」

 

 そこから始まったケイの聞いて聞いて攻撃に、シンジは嫌な顔一つせず、むしろ嬉しそうなまである表情で相槌を打つ。これは長くなりそうだと悟ったペイラーが立ち去ろうとしてケイに書類を預けっぱなしな事に気づいた。

 するとそれを感じ取ったらしいケイがあっ、という顔をしてシンジの腕から飛び降りる。

 

「メディカルチェックがまだだった」

「私は後ででも構わないよ?」

「ううん、今行くよ。リンドウにも会いたいし。ばいばい、シン君」

「ああ、またな」

 

 ぐりぐりとケイの頭を手を押し付けるように撫でつけてパッと放す。

 最近の彼女はこれがお気に入りらしく、こうするときゃーっと嬉しそうに悲鳴を上げるので、行く支部行く支部でやられまくったのだった。ただしキヨタカあたりはすると見せかけてゲリツボを押したりするので要注意である。

 廊下で手を振って別れ、ペイラーと手を繋いで研究室へ赴く。

 

「そうだお父さん、ソーマは?」

「ソーマなら今日も今日とて訓練さ。飽きないねぇ」

「なら後で見にいこっかな」

「トラウマらしいからやめてあげなさい」

「えー」

「遠征任務はどうだったんだい?」

「そーそー聞いて! ドイツでの護衛任務の特丸の子が可愛くってー」

 

 それでねとあのねが多用される会話を、いつもなら理論的でなくて纏め切れてないそれなど勘弁なはずのくせに、漠然とした幸福感を感じてペイラーはにこやかに聞いていた。

 だから足を動かす速度が、ひどくゆっくりなものになっていたのは、致し方のないことだろう。

 

 

「それで―――あ、リンドウだ! おかえりーただいまー!」

「おうおう、元気だなお前は。おかえりただいま」

 

 既にサカキの研究室にいたらしい、ソファで寛いでたリンドウとゴツン、と拳を突き合わせて軽く笑う。それから書類をパラパラと斜め読みして手早く棚に分類分けして収納し、リンドウと二人でサカキの机の前に立つ。

 その机の向こう、何やら怪しげな機械がくっついた椅子に座り、ペイラーはにこやかに笑った。

 

「いやはや、とりあえず二人とも、遠征集中期間をお疲れ様。支部長が出張でいないから、代わりに私から伝えておくよ。長期間……と言っても三ヵ月だが、初めて極東以外の地域の気候などに触れて調子が出なくなる、なんて珍しいことじゃないからね。初回だけ簡単なメディカルチェックを受けてもらうことになってるんだ。次回からの長期任務後には基本的に来なくていい。それと、二人は健康診断も逃してるだろう?」

「あぁ」

「ゲッ」

「通常、新人が教育期間中の時期にやっているんだけどね、君たちは予定より二週間も繰り上げられたから、診断を逃してしまったんだ。これは知っていると思うが、支部毎に毎年やっている大事なもので、命にも係わるから、ゴッドイーターの義務であり権利でもある。というわけだからケイ、観念してね」

「ううぅ………ハイ……」

「何、お前まさか………」

「…………………そーだよ! 注射ニガテだよ!!」

「お前…………あんな化物と戦ってて今更針の一本や二本が怖いとか………あ? Oアンプルとかは?」

「自分で刺すなら平気なんだ………他の人からが無理なだけで………」

「私でもギリギリだもんねぇ、だいぶ根が深いよ」

 

 がっくりと項垂れる少女には哀愁が漂っていて、なんだか本気で可哀そうになってくる。昔から何かと精密検査をされる身だと言うのに、未だに慣れる気配を見せない。

 ドナドナのBGMが頭の中で流れる中、ケイはリンドウと共にメディカルチェック及び健康診断へ泣く泣く協力するのだった。

 

 

「ホントに苦手なんだな」

「痛いのもヤだし痛くないのもそれはそれでコワイんだよ………」

 

 検査後、さめざめと泣いてベッドにうずくまるケイに、リンドウが呆れたような哀れっぽい声音で言った。

 皮膚をプツリと破る感覚も、肌の下の細胞を音もなく通り抜ける独特の感覚も、とにかく全部が気に入らないのだ。

 

「二人とも、これで検査は終わりだよ。ご飯でも食べに行って来たらどうだい? 今からじゃ作ろうともできないだろう」

「お父さんは?」

「キリのいいところまで行ったら食堂でなにかつまむさ」

「ちゃんと食べてね?」

「わかってるわかってる」

 

 これはわかってないなと思い、後でサンドイッチでも貰って研究室へ突撃しようと心の中で決めておく。

 ぱしゅん、と閉まるドアを背後に、リンドウと談笑しながら食堂へ足を動かした。

 

「じゃあリンドウはアメリカにずっといたんだ」

「一週だけメキシコにもいたけどな。そっち方面じゃなくてよかったぜ、アラガミじゃなくて言語で死ぬところだった」

「ゆくゆくは覚えさせる、ってツバキちゃんがとっても怖い笑顔だったことを報告しておくね!」

「ハッハッハ、お前は相変わらず聞きたくないことばっか報告してくるナー」

 

 ぐりぐりとこめかみを拳骨の骨張った部分で捻ってくる。いだだだと悲鳴を上げて手を叩き落として、捻られた部分を擦りながら暴力反対! と声を上げるが、うるせーとさらに頬を捻り上げらることになった。

 痛みで潤む視界に映ったのは、廊下の向こう側からこちらへ歩いてくるキンタとアオイの姿だった。

 

「アオイちゃーん! キンちゃん!」

「あらぁ、ケイちゃん。帰ってきたのねぇ、おかえり」

 

 花が綻ぶような笑顔を浮かべたアオイが小走りで駆けてきて、ケイを優しく抱擁する。その向こうからキンタが苦笑しながらやってきてリンドウの背をポンポンと叩いた。

 

「リンドウくんもおかえりなさいッス。アメリカは気楽で良いッスよね~」

「そうなの?」

「あー、個人主義だからなー。つーかこの食糧難でも一向にサイズが小さくならないってどうよ?」

「食べ物が? 人が?」

「どっちもだよ。ハンバーガーのサイズとか、やべぇぞ。お前の頭くらいあるんじゃないか?」

「あれでも小さくなったらしいッスけどね」

「二人とも、これからご飯かしらぁ?」

「うん。流石に今から作るのも、外に食べに行くのもねー」

「だな」

 

 外食はそこそこ好きだけれど、リンドウと行くと十中八九牛丼かラーメンになるので、晩御飯くらいはバランスの良いもの食べようよということで食堂である。常人の比ではない頑丈さを誇るゴッドイーターが病なんぞに罹るのかと問われれば微妙なラインではあるが。

 

「アオイちゃんとキンちゃんは?」

「これから呼び出しよぉ~」

「もう一九〇〇ですよ?」

「それでも命令があれば動かなきゃいけないのがゴッドイーターのツライところッス」

 

 ケイとリンドウの言葉に増々滅入ったようで、二人は揃ってげんなりと肩を落として眉を下げた。

 

「しかも本部から! もう嫌な予感しかしないわぁ~………」

「本部が?」

「そう、なんでも急を要するとかで………シン君もよぉ」

「リーダーも? 何かあるんですか?」

「ないとは言い切れないッスね………二人とも、最近、アラガミが強くなったと思わないッスか?」

「え、うん………」

「多分、それ関連ッス」

 

 あーやだやだ、と明け透けに不満を口にして、キンタはケイの頭をぽんぽんと弾むように撫で、留守番はよろしくッス~とアオイを伴って廊下の奥へ消えていった。二人が行ったあと、リンドウとケイは顔を見合わせて同時に同じことを思った。

 これは、嫌な事が起こる予感がするぞ、と。

 

 

 

 

「『第二次フェンリルアジア支部軍部合同アラガミ一掃作戦』、ですか」

「一次は確か去年のアレだよね? ツバキちゃんがおいてかれたやつ」

「アナグラ防衛に務めたと言え」

 

 ビシッと脳天チョップを食らうケイと、その隣のリンドウの手には、辞令書、もとい今回の作戦について事細かに書かれた書類が握られている。斜め読みを手早く終わらせたケイが肩をすくめた。

 

「懲りないよね本部も。前回あんなにひどい目に遭ったって言うのにさ」

「失敗だったのか?」

「シン君達がいたから目標はなんとか倒したけど、被害総数やばかったよね、ツバキちゃん」

「ああ。倒壊した家屋は五千、死者三万、重傷・軽傷者は十二万だったか」

「…………首都直下型地震でも起こったのか?」

「その方がまだマシだっただろうな。ほぼ、軍部の自爆だ」

「で、その後その自爆時のエネルギーを食べたアラガミが急増殖、及び巨大化、強化、って具合で、目的のアラガミは倒したけどその後の多大な影響が残りました、って感じ」

「……………………大失敗じゃねぇか!」

「フェンリルの活動としてはね。でも軍部は成功だったって言い張ってるし、しかも自分の手柄みたいなこと思ってるし。もー散々」

 

 心底呆れかえって今にも書類を丸めてごみ箱にでも捨てそうな表情のケイに、ツバキが同意するように深く頷く。しかし腐っても軍部はキヨタカやゲンの出身であり、そこそこに良い人材もいるのでそう邪険にもし辛いのも事実であった。

 

「でも今はどこの軍部もアラガミに攻撃仕掛けては壊滅してるから、余力なんてないと思ってたけどな…………」

「フェンリルから装備は支援するらしいぞ。ある程度、だがな」

「おいおい、そりゃあ………面倒なことになるんじゃねぇの?」

「十中八九ロクな支援物資はあげらんないだろうね。そもそも適合云々の話もあるし。微量の偏食因子埋め込んだ小型銃火器くらいが精々だよ」

「流石博士の愛娘、見識が適格だ」

「ゲッ、まさかあたってんの?」

「リーダーとタカさんがつけた予想と一致している」

 

 うーわ、とケイとリンドウが揃ってドン引いた声を出した。アラガミと戦った者なら、ゴッドイーターなら誰でも、経験として知っている。

 アラガミはちゃちな拳銃程度で怯むほど、可愛らしい精神構造をしていないことを。

 

「作戦開始は約一か月後。第一部隊は漏れなく全員出撃。他部隊からはタカさん、ナツとウィルも出るが別班だな。教官が総指揮官だから、まぁ、悪いようにはならないだろう」

 

 前回の作戦指揮官がアメリカ軍部のトップだったから、そこに学んだと言える箇所はまだマシと言えるだろう。

 けれどそれは、とケイは深く溜息を吐いた。

 

「軍部の人たちが素直に従ってくれれば、の話でしょ………」

「そんなやつらでも守るのが、俺たちの仕事だ」

「シン君!」

「リーダー、お早いお帰りで」

「爺共が昇進しろって煩いから一足先に帰らせてもらった。それに今回は大規模作戦に新人二人を組み込むしな」

「そう、そこ! なんで私たちも出るの!?」

「俺がそれが良いと判断したからだ。異論は?」

「「………ナイデス」」

 

 あんまりにも綺麗な笑顔のリーダーに、新米二人は肯定以外の行動を許されるはずもなかった。

 

 




ソマ主♀と銘打っておきながらソーマが殆ど名前しか出てこない。まぁソマ主はおまけですしおすし。
それよりもですね、ゴッドイーター3、発売決定ですってよ皆さん。
レイジバーストもやってないのに3か・・・そっか・・・。そして対応機が『家庭用ゲーム機』・・・絶対switchじゃないですかやだーーー!!持ってないってば!!!
いいです・・・私はバーストと2のみを後生大事に抱えて生きていくんです・・・。
・・・・実は友人が終わったらで良かったら貸すよって言ってくれてるので、それにガン期待してます。
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