この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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決戦と終焉

 緊急アナウンスを聞き、街の正門前に急ぐと、一週間前に街に現れた魔王軍幹部――デュラハンがアンデッドと思しき部下を引き連れ、待ち構えていた。

 その姿は静かながらも、先日以上の威圧感を感じ取れる。

 デュラハンは俺たちの姿を見るなり、我慢ならないといった雰囲気で。

 

「なぜ城に来ないのだ、この人でなしどもがああ!!」

 

 ……人でなし? 何を怒っているんだ? というか……、そこまで言われる筋合いは……。

 

「もう爆裂魔法撃ちこんでもいないのに、何怒ってるんだよ」

 

 カズマの疑問はもっともだ。少なくとも俺達は、めぐみんの爆裂魔法に付き合ってはいないので城に爆裂は撃ち込んでいない筈。

 

「何を抜かす白々しいっ! そこの頭のおかしい紅魔の娘が、あれからも毎日欠かさず通っておるわ!」

 

 ……な……に? 俺の耳がおかしくなった……か!?

 

「……お前、行ったのか。もう行くなって言ったのに、あれからまた行ったのか!」

 

 カズマに頬を引っ張られながら、めぐみんが……。

 

「聞いて下さい。これは私は悪くありません。以前ユウが”平野に撃ち込むよりも目標物に撃ちこむ方が成果が出る。”と言っていました。ユウの指導は的確ですから、それに従ったまでです。……それに城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いモノじゃないと我慢できない体に……」

 

「屁理屈言ってんじゃねぇぇ! こないだダクネスが『死の宣告』受けて、相当懲りたと思ったのは勘違いだったのか!」

 

今度は俺がめぐみんの頬を引っ張り、大声を上げていた。このめぐみんほっぺ、中々触り心地が良い。

 

「大体な……ただ爆裂魔法撃ち込むだけで帰ってくるから、こんな風に状況が悪化するんだよ! どうせやるなら俺も連れて行けばよかったんだ! そうすれば、結界破った上で、城に爆裂魔法撃ち込ちこませて、あいつら瓦礫で生き埋め……、アンデッドだから埋葬かも知れないが、そうしてやれたんだからな!!」

 

「……そうでしたか。確かに中途半端は良くありませんでした。勉強になります……」

 

「……おい、何危ないこと口走ってんだ……!? お前ら……」

 

 カズマが半ば呆れながら俺とめぐみんの会話にツッコンでいた。

 

 とりあえず、めぐみんにはこの位でいいだろう。

 さて、爆裂撃つと動けなくなるめぐみんには共犯者がいるはずなんだ。俺でもカズマでもない。容疑者は後二人に絞られるはずだ。

 

 そんなのを考えながら俺とカズマがアクアの方を向くと、彼女は顔を背けて吹けもしない口笛を吹いていた。

 

「お前かああああああ!」

 

カズマに頬を引っ張られながらアクアは。

 

「あのデュラハンに碌にクエスト請けられない腹いせがしたかったんだもの!」

 

 俺達がめぐみんやアクアにお仕置きしている様子を黙って見ていたデュラハンだったが……、落胆したように。

 

「俺が真に頭にきているのは、爆裂魔法の件だけではない。貴様らには仲間を助けようという気はないのか? 仲間を庇って呪いを受けた、騎士の鑑のようなクルセイダーを見捨てるなど……」

 

「……や、やあ……」

 

 武装を整えるために、遅れてやってきたダクネスを見たデュラハンは、

 

「あ、あれぇ……」

 

素っ頓狂な声を上げて困惑していた。

 ……そういえば、ダクネスの呪いを解いたこと知らなかったんだっけか。

 死んだと思ってる人間が生きてれば、そりゃあ驚くだろうな……。

 

「このデュラハン、ずっと私達を待ち続けていたの? あっさり呪い解かれちゃったとも知らずに? プークスクス! ちょーうけるんですけど!」

 

「俺がその気になれば、この街の冒険者を一人残らず斬り捨てて、街の住人を皆殺しにすることだって出来るのだ。いつまでも見逃してもらえると思うなよ」

 

流石にデュラハンもアクアの挑発には限界が来ていたらしく、一触即発の空気となっている。

 

「見逃してあげる理由がないのはこっちの方よ! 『ターンアンデッド』ッッ!」

 

「この俺を筆頭に、このアンデッド団には魔王様の加護により神聖魔法に対して強い抵抗を……? ぎゃあああああ!!」

 

 ……おー、効いてる効いてる。アクアは効いてないなんて言ってるけど、リッチーにも効いた『ターンアンデッド』だからなぁ。

 デュラハンはアクアの魔法が意外と効いて驚いたのか、下がって部下に戦わせようとしていたが……。

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』ー!」

 

「ひああああああああ!」

 

 おそらく『ターンアンデッド』の上位魔法だと思われるアクアの浄化魔法でデュラハンは、煙を出しながら転げまわっていた。

 

 すっげぇ効いてる……。神聖魔法に対する抵抗とか言ってたけど、これだと生殺しだよな……? かえって気の毒に思える。

 

 デュラハンは、黒い煙を上げながらもやせ我慢しながら右腕を上げ……、

 

「街の連中を皆殺しにせよ」

 

そう命じた……。

 

 

「プリーストを! プリーストを呼べ!」

 

「誰かエリス教会に行って、聖水ありったけ貰ってきてくれえええ!」

 

冒険者達の悲痛な叫びが響く中、

 

「なんで私ばっかり狙われるの!? 私、女神なのに神様だから、日ごろの行いもいいはずなのに」

 

……何故かアクアだけがアンデッドに集中的に狙われていた。俺の方にも何故か何体か来たが、その程度であれば、倒すのは難しくはない。

 

 まずは、あっちをどうにかしないとな……。

 

 そうしてアクアの方に行こうとした時、デュラハンが俺に向かってくるアンデッドの後ろから、剣を振りかぶり、斬りかかってくるのが見えた。咄嗟に魔法陣を展開させ。

 

『Round Shield』

 

 すかさず、シールドを展開し事なきを得たが……、その衝撃で2、3メートル後退ってしまった。

 

「……おい、さっき部下に任せるとか言ってなかったか? 御大将は後ろで、ふんぞり返ってればいいだろ。幹部の癖して余裕がないんじゃないか?」

 

「お前以外はな……。小僧、お前は危険だ。最初から俺が相手をしてやる」

 

「買いかぶりすぎだろ、ダクネスの言じゃないが、アンタを後ろから撃った卑怯者だよ、俺は」

 

 俺の言葉にデュラハンは、なにやら考え込み……、それを否定してきた。

 

「卑怯者か……。笑わせるな! あの時、お前は俺を完全に倒すつもりできていた。こうしている間にも、俺を討伐する算段を考えていたのではないか?」

 

 ……バレてやんの、ふんぞり返ってる隙にもう一度、思い切り撃ち込んでやろうと思ってたんだけどな。それに……。

 

「わかってはいるようだな。ここでお前が仲間の所にいけば、後ろの連中はどうなっても知らんぞ?」

 

 つまり、後ろの冒険者達が人質って訳か……。さっき部下に戦わせるって言ってたばかりなのに……、なりふり構わないできたな……。前の時に仕留められなかったのが、こんな形で返って来るとは……。

 

 ……すまん、みんな。援護は無理そう。そっちはそっちでどうにかしてくれ。

 

「……はあ。……まったく、あいつらといると、何もしなくても泥沼にはまっているような気になるな……。元々運の良い方じゃないけど、”ここ”に来てからはそれが顕著だ」

 

俺のため息交じりの愚痴を聞いたデュラハンから。

 

「あの頭のおかしい娘や聖騎士に苦労しているのなら……、いっそ魔王軍に来ないか? 城にいつも居るわけではないが幹部の中には近くにいるだけで、癒される者もいてな。俺もよく頭を……ゴホン! ……ともかく、お前ほどの使い手なら魔王様も嫌とは言うまい」

 

 ……いきなり斬りかかっておいて、今度はスカウトとか節操なさすぎだろ……。いきなり攻撃した件については、俺の言えることじゃないけど。

 

「……悪いがそれは無理。一応俺、法の番人の側の人間だから。同僚がそっち行った俺を見たら、とんでもない目に遭う。それよりアンタこそ、魔王軍なんか辞めて、どっかで隠居したら? そうすれば愚痴聞いてもらいに遊びに行けるしさ」

 

「それこそありえん。こんな身ではあるが、騎士として魔王様に忠誠を誓っている。魔王城の占い師が言っていた”大きな光”とは、お前のことかもしれんしな。こちら側に来ないというなら、ここで確実に息の根を止める。『死の宣告』も無しだ。お前のような人間は、自分が死ぬ間に俺の喉元に刃を突き立てる……。それで一度痛い目にも遭っていてな……」

 

 お互い警戒しつつ、軽口を叩き合っていた。人間とデュラハンでなければ友人同士に見えたかもしれない。 

 

 ……分かりきっていたことだけど、話し合いで済むわけないよな。

 

「さて、最後に名乗っておこうか……。俺は魔王軍幹部、デュラハンのベルディア!」

 

 ……勝手に殺すなよ。まだ死ぬ気なんて無いんだからな。

 

「時空管理局 魔導師、浅間悠」

 

自らも名乗り返し、魔法陣を展開する。

 

「「勝負!」」

 

 その声と共に、魔法をベルディアに向かって撃ち出した。

 

 

 

 

 

 モンスターとはいえベルディアは騎士……。中距離、長距離では、俺の方に分はあるが、射撃ではあの鎧に阻まれて攻撃が通らない……なら、

 

『Blaze Cannon』

 

 砲撃ならどうだ……?

 

「…クッ!? ……だが、この程度!」

 

 砲撃なら通るが、大したダメージにはならない……か。これだと空に上がって砲撃を撃ったところで、こっちの魔力が持たない。それに砲撃は隙が大きすぎて、多用するものじゃないしな……。

 

 こんな時は、なのはが羨ましくなるな。砲撃戦魔導師のあいつなら射撃と砲撃で押し切ることも出来るんだろうが……。

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

めぐみんの爆裂を放つ声と共に爆音が響き、さっきアクアを追いかけていたアンデッドナイトが全滅しているのが分かった。どうやらあっちはどうにかなったらしい。

 

 ……なら、こっちも頑張らないとな。

 

 デバイスを近接戦用の魔力の刃が伸びた剣の形態にし、ベルディアへと斬りかかる。こちらは生粋の騎士でもないので、それだけで戦う気は無いが……。

 

魔法使い(アークウィザード)が俺に剣で挑むか! 身の程を知れ!!」

 

ベルディアの大剣が俺の頭上目掛けて振り下ろされようとしている。その大剣を持つ右腕をバインドで拘束するが、

 

「小賢しいわ!!」

 

動きを止められたのは、一瞬だけで勢いはそのままに、刃が俺へと迫る。

 そして、その大剣をデバイスから出る魔力刃で受け、衝撃を逃がすように後ろへ飛んだので、俺は軽いダメージで済んでいる。後ろへ下がった瞬間、脳内で情報を整理していた。

 

 アンデッドは肉体的なリミッターが無いから、多少の拘束は関係なく引きちぎれるって事か……。しかも、あの大剣の一撃……。斬撃というより、鉄槌での攻撃に近い。まともに打ち合ったら、こっちが完全に負ける。

 

「……驚いたぞ。確実に倒したと思ったのだがな……」

 

「師匠がいいんでね。それに重い攻撃も受けなれてる」

 

 ベルディアの驚嘆は恐らくは本音だろう。まさか魔法使いで、自分の一撃をいなす者がいるとは思ってはいなかったらしい。

 

「だが、先日の剣の魔法……あれを使うためには、それなりの時間が必要らしいな。そして、その妙な拘束魔法も来ることが分かっていれば、力で引き千切れば良い」

 

 あっちも俺をよく分析してる。一度手の内を見せたのが、まずかったか。まあ……、もう少し剣で打ち合って、相手の分析をするとしようか……。

 

 俺がベルディアに接近し横薙ぎを放つと、あちらも大剣で応戦していた。その剣戟が数合続き。

 

「その俺より小柄な体でなかなかどうして……。ライト・オブ・セイバーとも違う魔法のようだが、俺と剣で打ち合える者が駆け出しの街にいるとはな」

 

「何言ってやがる……! 言っとくが、そっちの一撃受けるごとに腕が軋んでんだ! 常時全力で戦えるとか……、ズル過ぎだろうが!」

 

「やはり貴様は危険だ。文句を言いながらも、まだどこか余裕がある……。何か隠し玉を持っていると見るべきか……」

 

 通常、魔導師は体への負担を掛けない様にする為に潜在魔力の6割程度しか使用できない。そのリミッターを外せば、限界に近い出力を出す事も可能だ。

 現在の俺は通常状態での魔力運用を行っているが、ベルディアからしたら、まだ底がある様に感じてしまっていたようだ。

 

「そっちと違って、全力はそうそう出せるもんじゃないんだ。しかも今は、無駄に魔力を使えないと来てるんでな」

 

 何せ、カートリッジだって弾数の制限があり、バカスカ使えるような状態ではないのだ。要所要所で効率よく使って行かなければならない。

 

「……全力を出さない事、死んで後悔してからでは遅いぞ? 俺としてはどの道、貴様を葬る事には変わりないが」

 

 剣を打ち合い、ベルディアの間合いの外に出る様に数歩後ろに下がる。今までの戦闘から得られた情報から、目の前の相手に対する戦術を構築していく。

 

 近接戦闘では間合いも威力も適わない。中距離、長距離の攻撃では決定打に欠ける。

 ……けど、前回ベルディアに俺が魔法を撃ちこんだ時、”この鎧がなければ危なかった”と言っていた。なら、あの鎧をどうにかできれば……、活路はある……か。

 

 作戦を頭の中でまとめ、デバイスを射撃形態へと変化させて、自分の周りに魔力弾を展開する。そして、そのままベルディアへと向けて駆ける。

 

 まずは、直射型射撃魔法での弾幕……。あの鎧の前ではダメージを与えられないだろうが、ベルディアの周りを取り込むように発射し、奴の行動範囲を制限する。

 あちらとしても、大したダメージにはならないだろうが、衝撃で行動が一瞬遅れる。その隙を見せるわけにはいかないようだ。

 

 そして、誘導型射撃魔法で死角から攻撃、これも大したダメージにはならないが、注意を引き付ければそれでいい。

 接近していた俺にベルディアの大剣が再度迫るが、その剣を持つ右腕を拘束……。一瞬動きが止まる。

 

「何度も同じ手が通用すると思うな!」

 

ベルディアが拘束を引きちぎろうとするが、その一瞬動作が遅れた隙に――

 

『Blast Move』

 

 高速移動魔法で、ベルディアが剣を振り下ろす前に、大剣の間合いの安全地帯であるベルディアの懐へと肉薄し、鎧を破壊するための魔法を発動させる。

 

 『ブレイクインパルス』――目標の固有振動数を割り出し、それに合わせた振動エネルギーを送り込み、粉砕する魔法。ただし対象にデバイスか自分の手が触れていないと効果はないのが難点だが……。

 この魔法によって、鎧を破壊することができた。

 

 ……ただし、俺とベルディアの間に割って入ったダクネスの鎧を……だが……。

 

「「……えーとっ!?」」

 

 その光景に俺とベルディアが呆気にとられている中……、

 

「なんだ……!? この……、まるで全身を粉々に砕かれるような痛みは! 新体験だぞ……! これは!」

 

戦闘中だというのにダクネスが、顔を赤らめながら、いつもの困った発言をしだした。

 

「なんで割って入ってんだよ! しかもこんな時まで何言ってんだ! このドMクルセイダー!!」

 

「クルセイダーは守ることが生業の職業だ! 仲間が危ないときは盾になるのが、その役割なのだ! ユウこそ鎧を破壊した上で言葉責めとは、そんなに私を辱めたいのか!!」

 

 割って入ったのはともかく、最後の発言がなければ立派なクルセイダーなんだけどな……。

 

「……おほん。まさか装備破壊の魔法まで持っているとは恐れ入った。だが惜しかったな……? 同じ手は二度通用せんぞ」

 

 ベルディアが話を進めようと語りかけてきた。ヤツも俺もかなり真面目に戦っていたので、それを続行したいのだろう。

 

 ……何気にまずい状況だよな、これ……。

 

 ベルディアの言うとおり、一度見せてしまったらアイツの間合いで同じことはできないだろう。こうなったら……、魔力散布は十分。しかもさっきのめぐみんの爆裂魔法の分の魔力も漂ってる。

 これなら鎧ごしでもベルディアを倒せるだろうが……。

 

「……ダクネス、すまん。今からかなりヤバイ魔法を使う。ベルディアは倒せるだろうが、余波で街に被害が出ると思う。俺の場合、街全体を守る結界ってのはちょっと無理だから……」

 

「……気にするな。どの道ヤツを倒さなければ街ごと全滅させられるのだ……。それに……余波だけで街に被害が出る魔法だと……!? そんなものの直撃を喰らえばどうなるのか試してみたい! ベルディアは私が抑えるから思い切り撃ってくれ!!」

 

 ……どう考えても、自分も喰らう気満々だな……。なんつー怖いもの知らず……。いやドMか。今は、余計な事を考えないで置こう。よし……。

 

「フルドラ――」

 

「『クリエイトウォーター』ッ!」

 

 カズマが魔法を発動する声が聞こえ、俺とダクネスが水浸しになる。ベルディアは大きく飛びのいたようで、濡れてはいなかった。

 

「……おい、カズマ。いきなり何しやがる……!?」

 

「不意打ちで突然こんな仕打ちとは、嫌いではないが、お前とユウは本当に時と場合を考えて欲しい……」

 

ダクネスの発言に困惑しながらも……カズマは、

 

「ち、違う、これは、こうするんだよっ! 『フリーズ』!」

 

 足場を凍らせ、ベルディアの動きを止める。そして……。

 

「『スティール』ッ!」

 

 ……『スティール』か。カズマはこないだミツルギの剣を盗った。ならベルディアの剣も奪えれば、もう一度『ブレイクインパルス』を叩き込んで鎧を破壊できる。

 

 そんな淡い期待は無残にも打ち砕かれていた。

 

「……悪くは無い手だったな。レベル差と言うヤツだ。もう少しお前との力の差が無ければ危なかったかもしれんが」

 

 ベルディアの剣はその手に握られたままであり、先程凍らせた足元も何事も無かったかのように動かしている。

 

「……さて、アークウィザード……続きをしようか……。仲間はお前の後で同じ所へ送ってやる」

 

 ベルディアは一直線にこちらに向かってくる。空に上がって魔法をチャージしようにも、そうすればカズマ達のところに行くのは目に見えてる。ダクネスも必死に俺の前に立って、攻撃を受けてはいるが、決定打が無い状況では……。

 

 ……その時、またしてもカズマの気合の入った声が後ろから響いていた。

 

「『クリエイトウォーター』ッ!」

 

 再度、俺とダクネスが水浸しになる。ベルディアは飛び退いて避けてはいたが……、

 

「カズマ、いい加減にしろ! ふざけてる場合じゃないんだよ」

 

「……カズマ、その……私は今、結構真面目に戦っているのだが……」

 

俺たちの台詞を他所にカズマが叫んだ。

 

「水だあああああーっ!」

 

 ……水? ……そうか! アンデッドは流水でその力が流されるって逸話があったはずだ。アンデッド弱点は何も炎だけじゃなかったのか……。道理で殺傷力の無いはずの『クリエイトウォーター』を大げさに避けるわけだ。

 

 ……だったら、奴を足止めするだけだ!

 

「『チェーンバインド』!」

 

 バインドを発動し、『クリエイトウォーター』を当てやすい状況を作る。しかし、ベルディアはその拘束を全力で引きちぎり、必死に回避を行っている。

 

「ねぇ、一体何の騒ぎなの? なんで魔王の幹部と水遊びやってるの?」

 

 アクアが俺たちのやっている事を理解できないらしく、カズマに質問を投げかけていた。そのうち、喧嘩になっていたのだが……、アクアが何やら詠唱を始めていた。

 

「この世に在る我が眷属よ……。水の女神アクアが命ず」

 

 ……この感じ、アクアの使おうとしているのは、爆裂魔法や俺のアレと同質の危険なものだ。ベルディアもそれを感じ取ったのか素早く逃げようとするが、

 

「させるわけ無いだろうが!」

 

 自分に残ってる魔力を総動員した砲撃を放ち、飛退いたところをダクネスに捕らえられていた。

 

「『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!」

 

アクアの詠唱が終わるとともに、クリエイトウォーターとは比べ物にならない程の洪水が巻き起こっていた。

 

 

 

 

 ……戦技や戦術は突き詰めれば、自分の技術を持ってどうやって相手の想像の上を行くかに集約される。これだけでは詰め将棋の様に思うかもしれないが、例えば”相手を一撃で葬る魔法”や”どんな攻撃にも耐える防御力。” これだけでも相手の想像を超えた戦技になりうる。その意味では、めぐみんやダクネスの能力も十分な力を持っていると言えるのだが……。

 

 ……どこの世界に自分の魔法がもたらす被害を考えず、ぶっ放すヤツがいるなんて想像できるんだ! これだと、テロリストと変わんねーぞ!

 

 アクアが魔法で出した洪水は、確かにベルディアを飲み込んだ……。しかし街にも相当な被害が出ているのが一目で分かった。みんな無事の様だがそれに関しては幸運だったと思う。

 

 ……俺だって、最終手段で同じことやろうとしたよ? けど、アクアは完全にその場のノリでやってたよな……? アイツ馬鹿だろ。分かってたけど馬鹿だろ……。

 

 アクアを見るとベルディアにも同じツッコミを受けていた。アンデッドにバカと言われて、かなりお怒りのアクアだったが、これに関しては俺だって同意見だ。

 

 ベルディアが弱体化したのを見逃さす、カズマが『スティール』を発動したのだが……、大剣は相変わらず握られたままだ。

 カズマの方を見ると、斜め上の光景が広がっていた。

 

「あ、あの……。……首、返してもらえませんかね……?」

 

 ……いつ見てもカズマの幸運は素晴らしいと思う。普通なら剣を盗るところだけど、まさかベルディアの首を盗ってしまうとは。これでヤツは完全に無力化した。そのうちカズマはサッカーしようと言い、首を蹴っていたのだが、その首が俺のところに来た時……。

 

「おい、アークウィザードの小僧、ユウと言ったか……!? お前とはさっきまで剣を交えていた仲だ。お前までこんなことはしないよな?」

 

 俺はにっこりと満面の笑顔を向けると……。

 

「やるに決まってるだろ! 散々手間かけさせやがって!」

 

 射撃魔法を器用に数発当て、ベルディアの首を上空へ跳ね上げた。曲芸の様に見えたのか、周りからは拍手が上がっている。

 

「おし、アクア頼む」

 

 カズマがそう言うと、

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』!」

 

アクアの魔法によってベルディアが消え、浄化させていた。

 

 勝利の歓声に沸く中、ダクネスはベルディアに対して祈りを捧げていた。デュラハンは、不条理な処刑で首を落とされた騎士が恨みでアンデッド化するモンスターらしい。

 

 なら、最後に剣を交えた仲だ……。俺も祈りを捧げよう……。神様……どうか、そのベルディアという騎士にきっつーい罰を与えてやってください。神の許しはそれからでいいですから……。

 

 そんな祈りを捧げ、周りを見渡すと、街の被害は結構なものになったが、誰一人死なずに済んでいたようだ。

 その後、カズマ達とも合流して、そのまま馬小屋へと直行。疲れからすぐさま眠ってしまっていた。

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