この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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奇跡の(つぶ)

「ここは……?」

 

目を開けると神殿の様な真っ白で、向かい合った二脚の椅子のある部屋の中にいた。そこには……、

 

「ようこそ死後の世界へ。私は、あなたに新たな道を案内する女神エリス。この世界でのあなたの人生は――」

 

目の前にはアクシズ教徒とは違う、青い法衣の様な服を着ているシスターの様な長い銀髪の女性。初めて見るはずなのに、どこかで感じた様な雰囲気の人間であった。

 

……この部屋、どこかで……。これって確か……撃墜された時の……。

 

ポクポクポクチーン……といった効果音が頭の中に鳴り響き、怒涛の勢いであの時――十一歳冬の意識不明時の記憶を思い出したのであった。

 

あ、あの時に会ってたのって……アクア!? さっき死後の世界とか言ってたけど、意識不明になってた時って……臨死体験って奴か!? だとしたら、アクアは本当に女神様だけど……、俺がいつも考えてた女神様とかけ離れ過ぎている気が……。確か、ポテチ食べながら寝転がって漫画本読んでたはず……。

 

「あの……」

 

困ったようにこちらを見ていた、エリスと名乗った目の前の女性も女神様だろうか? その確認をするべく、

 

「俺って……ここに来たことあります?」

 

「えっ!? ええっと……、”ここ”ではありません。おそらく日本の方ではないかと思いますが……」

 

律儀に答えて下さった女神様であった。あちらも俺に説明があるらしく、

 

「本来であれば、死した魂は転生させる決まりですが……。もう少しだけお待ち下さい。カズマさんとは違って、あなたは、ここでもあちらでもまだ一回しか死んでいません。もしかしたら、いえ、絶対にアクア先輩があなたに『リザレクション』を掛けてくれるはずです!」

 

そういえば……俺、あの娘の攻撃で……死!?

 

「みんなはどうしましたか!? アクア待ってるよりも早く蘇生させてください! 神様なら出来ますよね! アクアの説明だと魂ってのがあれば肉体が作れるんだから!」

 

「わ、私には……というより、この世界の担当でいるうちは、それはできません! 大丈夫ですから! アクア先輩もダクネスもめぐみんさんもカズマさんも頑張っていますので、少し落ち着いてください!」

 

エリス様に掴みかかる勢いで捲し立ててしまったが、本人曰く地上の方でリザレクションを掛けて貰わないと無理らしい。本当かどうかは分からないが。

 

「本当ですよね! もし嘘だったら、エリス様の昔の肖像画を公開して、パッド入りだって大々的にばらしますよ! 別に貧乳でも堂々と胸を張れば良いじゃないですか!」

 

「だから何でそんな肖像画を見つけたのですか!? それこそ百年単位の昔ですよ!?」

 

「王城で適当に探索したら出て来ましたよ! そんなに都合の悪い事実なら最初っからパッド入れてください!」

 

もう口喧嘩なのか、脅迫なのか分からないような会話になっていた、この場の二名。疲れたように息を切らせながら、双方椅子に座り込んでしまったのであった。

 

「はあ……。最初見かけた時には、もっとしっかり者の紳士だと思っていましたが、勘違いだったでしょうか……」

 

「初対面の筈ですが?」

 

「こう見えても、私は地上に遊びに行くこともあります。あなたとも何度かお会いしていますよ」

 

はて? 俺の知り合いで、こんな上品な女性は知らないのだが?

 

俺が首を捻って該当人物を脳内検索していると、エリス様は伏し目がちに……。

 

「今回の件は、この世界の隠された暗闇の部分が表に現れた結果と言えます。そんなものにあなたを巻き込んでしまい、本当に申し訳なく思っています……」

 

「……職業上、よくある事ですから」

 

「それを言えるユウさんも相当だとは思いますが、あなたに伝えておかなければならない事があります」

 

何だろう? 真剣な顔をしているが……。

 

「あなたが戦っていた女の子については、調べた通りです。しかし、腕輪に関しては調査しきれていなかったのではないですか?」

 

その通りだ。あの娘が暴走したのは、あくまで改造手術のせいだと思っていたし、腕輪に関しては記述すらなかったのだから。エリス様の質問に首を縦に振り、肯定を示すと、

 

「神器というのは知っていますね? 『魔剣グラム』や『体を入れ替える魔道具』を実際に目にしましたから」

 

「じゃあ、あの腕輪も?」

 

それに対して首を横に振るエリス様であった。そして。

 

「かつて、ノイズ上層部はこう考えていました。いつ現れるかも分からない能力や神器を授かった人間を待って自分達に引き込むより、その能力や神器を自分達で造ってしまえば良いと……」

 

「確かアクアは、神器の中には魔力を無限供給する杖があると言っていました。ならあの腕輪は劣化とはいえ、それと同じ効果を持つ、人間が造った神器のレプリカですか?」

 

「はい……。神から授かった能力を受け継ぎ、それを強化され、ついには人造神器で厄災とまで成り果ててしまったのが、今戦っている彼女です」

 

闇深いどころじゃないです。いや古代ベルカなんてもっとヤバかったらしいが……。

 

「ですが、”人造”ゆえに欠点もあります。一つは知っての通り、即座に魔力の回復が出来ない事。もう一つは――」

 

エリス様の説明に耳を傾けて、その欠点から対処法を想定する。だとしても、今の自分だけの力では足りていないのが、良く分かってしまっただけであった。

 

「そういえば……、こんなゆっくり話してて良いんですか!? カズマ達は……!?」

 

「ですから、もう少しだけ待っていてください! 確かにカズマさん達はピンチですが、どうにかできます! 信じてあげてください!!」

 

そうして力強く俺の手を握り、その時を待っている様にと説得をしてくれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めぐみんが爆裂魔法を展開させながら思い出していたのは、アクセルでのバニルの言葉であった。

”何の代償も払わずに双方は救えない”……。確かにその通りだと。事実カズマだって何回か死亡している。アクア程のアークプリーストが傍にいたからこそ、回避できていた別れであった。自分の爆裂魔法で粉微塵にすれば遺体など残るはずもなく蘇生も不可能。それは自身の手で一つの人命を完全に奪ってしまう事を意味する。しかし、

 

「ごめんなさい。あなたを守ってあげられませんでした」

 

今の自分にできる事はこれだけだと言い聞かせて、目の前の(こめっこ)よりも少しだけ年上だろう女の子に、この世界で並ぶ者の無い爆裂魔法を撃とうと、最後の言霊を。

 

「エクス……むぐっ!?」

 

めぐみんの真後ろから突如、口を塞ぐ何者かの手。その感じから若い女性なのは分かるが、誰なのかまでは見当がつかなかったのであった。

 

「めぐみんさん、静かに魔法を解除してね? そうしないとセシリーお姉ちゃんが、目一杯抱き締めて頬ずりしちゃいそうになるわ! それにあんなに可愛らしいロリっ娘をこの世から消し去ろうなんて、世界に対する侮辱になります!」

 

どうやら自分の後ろにいるのはセシリーらしい。アクセルにいるはずの彼女がどうやって……。それを考える暇もなく、

 

「『クリエイト・アースゴーレム』……」

 

女の子は魔力が回復してきたのだろう、またしてもゴーレムの大軍を造り出し、布陣を敷いていたのであった。しかし、そのゴーレム達は……。

 

「おい、さっさとそのバカ叩き起こせ! ……ったく、一人でアクセルの冒険者全員相手した奴が情けねえな!」

 

またしても聞き覚えのある声だった。その声の主に襲い掛かる敵兵ではあったが、

 

「こんな木偶なんざなあ……!」

 

その手に握った槍でゴーレムの片足を貫くと、相手はバランスを崩して瓦解。簡単な様に見えるが、ただの槍の一撃でそれを行うのは卓越した技量が必須となる。そして今度は、

 

「さあ……。アクア様、お早く」

 

壮年の男性と思しき声。アクシズ教徒であることを示す青い法衣のアークプリーストであった。その男性は……。

 

「お嬢さん、お人形遊びはもっと楽しい物ですよ。是非とも私をお人形代わりにして、いや……ここはおままごとでも構いません。それとも私もお兄ちゃんと呼んで頂ければ……」

 

ふざけた口調の男性ではあるが、ゴーレムの一撃をメイスの様な武具で受け止め、返す刀でその体を打ち砕く。回復、支援だけではない。おそらく、アクシズ教団でトップクラスともいえるアークプリーストならではの物だろう。

 

「ダストにゼスタさん……。来てくれたのか!」

 

カズマの表情が明るくなり、それに応える様に微笑を浮かべる両名であった。

 

「そこで倒れてるのには、借りがあるからな……! あれで勝ったと思われたら、癪なんだよ! それに……」

 

ダストは思う所があったらしい。続けて、

 

「前にこいつを訪ねて来た竜使いのチビは、言ってみれば俺の後輩みてえなもんでな。先輩としちゃあ、あのチビ泣かせるのはプライドが許さねえんだよ!」

 

一見ツンデレともとられるセリフを発しながら、ゴーレムに槍を突き立てていたのであった。

 

「アクア様。彼がそのままでは、あの少女も救われません。あのような可愛らしいロリっ娘の泣き顔も、それはそれで良い。……しかし、無邪気に笑っている方が似合うというもの。その笑顔を私に向けてくれるのならば、全力を尽くしましょう!」

 

アクシズ教徒というだけで、色々誤解を受けそうな発言ではあるが、おそらくは本気で愛でるつもりなのだろう。

 

「ここに来たのは我々だけではありません。今まで戦っていた皆さんは、回復をなさってください。その間は私達で時間を稼ぎます!」

 

そこにはテレポートで転移されたアクセルの冒険者や、アルカンレティアのアクシズ教徒の面々。その彼らが続々と姿を現したのであった。

 

「ここでアクセル冒険者の意地を見せるぞ!」

 

「デストロイヤーも沈めた俺達だ! やれる! やれるぞ!」

 

「あの時の……アクセルの大魔王の脅威に比べたら……!」

 

気合も十分といった駆け出しの街の冒険者達。だが侮るなかれ。この駆け出しの街には何故かレベル30を超える冒険者もチラホラいるのだ。その原因は男性冒険者だけの秘密であるが。

 

「ロリっ娘……! 我が教団で見つけたロリっ娘だ……!」

 

「あんな娘に抱き締められたり、おやつをあげたり……、夢が広がる……!」

 

「ダメですよ! まずは私が邪悪なるエリス教徒の代わりにお着替えをさせるのですから。皆さんは私の後にしてください!」

 

アクシズ教団の男性を諌めるセシリーではあったが、自身の欲望も他と大差ないのは棚に上げているらしい。援軍はそれだけでは無く、

 

「『ライト・オブ・セイバー』ッ!」

 

「『トルネード』ッ!」

 

「『インフェルノ』ッ!」

 

ローブやライダースーツを纏った一団。服装に差異こそあれ、黒色で統一されたその集団は全員が深紅の瞳を輝かせて、並の魔法使いでは修得する事すら困難な上級魔法でゴーレムをいとも簡単に破壊している。

 

「我が名はぶっころりー! 紅魔族随一の靴屋のせがれ。アークウィザードにして上級魔法を操る者!」

 

ぶっころりー以下、紅魔族の自警団がそれぞれ名乗りを上げ、

 

「今こそ、我らの力を世界が必要とする時! この対魔王軍遊撃部隊(レッドアイ・デットスレイヤー)が世界の危機に即参上!」

 

岩場でそれぞれポーズを取りながら、何故か後方では特撮ヒーローが決めポーズを決める時の爆発まで上がっていた。光学迷彩の魔法で姿を消し、こっそり仕込んで準備をしていたらしい。

 

「めぐみん、ゆんゆん遅れて済まない。いくら紅魔族とはいえ、これだけの人数をテレポートで転送するのは難儀でね」

 

「あるえ……来てくれたのですか!? 誰も来ないからてっきり……」

 

「私だけじゃないよ。あっちを見ると良い」

 

そうして、あるえの指差した方を向くと、

 

「めぐみん、元気にしていたか? 役に立ちそうな魔道具も持ってきた。思う存分使うと良い」

 

「お、お父さんも来たのですか!?」

 

「母さんは家でこめっこと留守番だがな。彼に何かあると、こめっこも泣いてしまうだろう?」

 

そこには役に立つかどうかは分からないが、山の様な魔道具の数々を持って現れたひょいざぶろーの姿があった。

 

「ゆんゆん、これから紅魔族も参戦する。少し休んでいなさい」

 

「お、お父さん!? 族長でしょ? どうして……」

 

「族長たる者、こうして押しかけた紅魔族をまとめ上げる義務があるからな。本当は”世界の危機”と聞いて、是非とも見てみたかっただけだが」

 

紅魔族族長まで、その勢いで来てしまったらしい。里の運営に関しては奥さんに丸投げしてきたとか……。

 

その他には、占い師のそけっとや普段はあまり売れない武器屋の主人、農家さんまでこの場に現れていたのであった。断っておくが、魔王城ピクニックではない。……多分。

 

アクセルの冒険者、アクシズ教徒、そして紅魔族。ここまでの戦力が魔王城を背にして一人の少女と戦っている。まるで魔王城を守護するかのように立ちはだかっているが、相手は神をして『厄災』と言わしめる存在。それは神の恩恵を引き継いだ超常の力を持つ者に他ならないのだから。

これだけの戦力でも時間が経てば経つほど、不利になっていくのは明白。それに対抗するには……、

 

「何だよ、ありゃあ……。次から次へと湧いて来やがる……!?」

 

「ふむ……。ロリっ娘の造ったゴーレムと戯れるのも悪くはありませんが、いつまでもこのままというわけには参りませんな」

 

「壊した傍からすぐさま造り出すか……。あちらは魔力切れが無いからな。厄介ではあるか……」

 

少しばかり文句が出てはいたが、このまま戦況を膠着状態にしておけば、彼の蘇生の時間は稼げる。しかし、それだけでは足りない。そう思われた矢先。

 

「『エクステリオン』ッ!」

 

その裂帛の気合と共に放たれた斬撃は、遠方のゴーレムまで真っ二つにし、大軍の中に一筋の道を作っていたのであった。

 

「ア、アイリス様……、あまり前には出ない様にして頂けますか? 王族たる者、前線での武勲も大事ですが、軍の指揮も重要な役割です」

 

「クレア。元々ベルゼルグは、他国にとって強大な外敵を打倒して名を馳せた王国です。ならば王族たる私が、こうしているのも当然でしょう?」

 

それに頭を抱える白スーツさんことクレアさんと、苦笑いを浮かべるしかなかったレインさんであった。

 

「おい、ダクネス! アイリスが来るなんて聞いてねーぞ! それになんだよ! あの強さは!!」

 

「私が要請したのは、あくまで王都の騎士団だ! まさかアイリス様自ら出陣されるとは、夢にも……」

 

カズマにとっても意外な光景であったらしい。それでも驚き半分、嬉しさ半分と言ったところだろう。アイリスがカズマの方をチラッと見て、

 

「それに……こうしてお兄様に会えるなんて、今度はいつになるか……」

 

ちょっとだけ年相応の顔をしていたのであった。

 

 

 

 

 

「う、嘘でしょ!? 冒険者達だけならまだしも……、アクシズ教徒に紅魔族、それにベルゼルグの騎士団と王族まで揃ったなんて……!?」

 

「……あの戦力であれば……魔王城を攻め落とせるのでは……。結界を解除できればですが……」

 

後方の魔王城前に待機していた、魔王の娘とその部下たちは目の前の光景が信じられなかったらしい。魔王軍の脅威とされる戦力がほとんど揃ってしまったのだから仕方は無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「もう少しです。もう少しでリザレクションできますから。我慢してくださいね」

 

「エリス様? その……さっきの説明が信じられないんですが……?」

 

地上の様子を聞いて、半ば夢の様な気分となっていたのであった。何でそんな大人数がここに……と。

 

「カズマさん達が、各地に散らばって応援を頼んでいましたよ。カズマさんはアクセルの冒険者に、ダクネスは王都、アクア先輩はアルカンレティア、めぐみんさんとゆんゆんさんは紅魔の里で」

 

「い、いや……それにしたって、普通こんなに都合よく……」

 

「確かに半信半疑の方も多かったようですが、あなたは各地で様々な人々をその力で守って来ました。その成果が、今、ここに集まったのです」

 

アクセルではデストロイヤーとエギルの木、アルカンレティアではハンス、紅魔の里ではシルビア、王都ではそこまででは無かったが、作成したスクロールで被害が減ったとか言ってたか。

 

《エリス! 早く門を開けなさい! こっちは『リザレクション』終わったわよ! カズマみたく面倒な手続きなんて無いからすぐでしょ!》

 

部屋の中に響くアクアの声であった。何か……凄く懐かしい物を感じてしまう。

 

「あなたがこのまま戻っても勝機は無いかもしれませんよ? いくら力があると言っても、あなたは神器も能力も無い普通の人間のままここに来ましたから……」

 

エリス様もこれからの行く末を気にしているのだろう。心配そうな表情を浮かべていた。

 

「……それは間違ってますよ。勝機が無いかもしれないんじゃなくて、元から勝機なんてものはありません。そもそも勝つために戦ってはいませんから」

 

それに対し、目を見開いて驚いていたエリス様であった。

 

「あの娘は今、深い闇の中にいます。自分じゃどうしようもできない、そんな状態ですよ。だから俺に出来る事は、そこから引きずり上げて、ここに……この世界で生きてて良いってのを教えてあげるだけです。それが……」

 

「彼女のご両親が託した願い……ですね?」

 

「盗み聞きとか性格悪いですよ。盗賊みたいです」

 

ちょっとした冗談だったのだが、何故かクスクスと笑っていたエリス様であった。

 

「あなたは不思議な人ですね。何故か手を貸したくなります。私も落ち着きましたら、そちらへ向かいますね」

 

すぐには合流しないのだろうか? そんなちょっとした疑問が頭に浮かんだが、

 

「私の勘ですが、カズマさんがもう一度くらいここに来そうな気がするので、まだここで待機します」

 

それって、カズマがもう一回死ぬって事か!? 女神様の勘って……、幸運の女神は勘も良いのだろうか?

 

《エーリースー! 早く門を開きなさいよ! こっちは戦線が少しずつ押されてて……!》

 

アクアの声がまたしても響き渡り、それに応えエリス様は門を開いた後で、俺の手を取り、

 

「では、早く地上へ戻って……!? えっ!? これって……この魔力の感じは……!? アクア先輩の……!」

 

何かに驚いていたエリス様であった。すると今度は大声で。

 

「アクア先輩! ユウさんを戻すまで、アクア先輩の魔力を彼に送ってください! お願いします!」

 

《な、何? 魔力って……!? カズマさん! ドレインでユウさんに私の魔力を送って頂戴!》

 

その指示通りにしているらしいアクアではあるが、今度はエリス様が、

 

「これで、少しは楽に戦えるようになるはずです。それでは……」

 

「あの、俺に結構良くしてくれたような気がしますけど……。そのまま転生でも良かったのに……」

 

この質問に少しばかり、うーんと声を出していたエリス様だった。そして、

 

「そうですね……。色々理由はありますが、一番は私が……、いえ、あたしがキミのファンだからだよ!」

 

銀髪にその口調って……!? クリス……!?

 

そうしてそこから意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

ゴーレムと戦っていた冒険者たちは少しずつ疲労が見え隠れしていた。勇者の子孫である王族や生まれながらにアークウィザードになれる素養を持つ紅魔族とは違い、普通の人間として生を受けたアクセルからの増援が少しずつではあるが、動きを鈍られていき、それを見計らったように、

 

「……インフェル――」

 

女の子はゴーレムで冒険者達を囲み、炎の上級魔法で一気に焼き払おうしていた。その瞬間。

 

「『フレイムブラスト』……!」

 

囲まれていた人員を逃がすために、彼らの周囲に防御フィールドを張りながら熱風を伴った範囲攻撃の魔法でゴーレムを消し飛ばした。その様子を見ていた面々は……。

 

「……アレって……ユウだよな!?」

 

「髪と瞳の色と、防護服まで変わっています……」

 

「確か、アルカンレティアでハヤテさんが同じ状態になったはずですけど……」

 

「「「「か、格好良い!」」」」

 

紅魔族はお約束のセリフをハモらせていたが、それもそのはず。今の俺は髪と瞳は灰色。バリアジャケットはアクアの髪と同じ水色、両腕と脛には水晶の様に透き通った小手と脛当てを装着した姿に変わっていたのだから。

 

……この魔力、俺のじゃないけど体に馴染む。ちょっと違うがユニゾンってのはこんな感じなんだろうか……。

 

「すまない。心配をかけた」

 

みんなの所に行ったのは良いものの、全員目を丸くしていたのであった。戦闘中でなきゃ色々検証したいところであるが、そうもさせてくれないらしい。

 

『強大な魔力反応出現。迎撃に移行』

 

相手は俺に狙いを定めたらしい。軍勢を俺に向けて突撃させて来たが、

 

「ファルシオン!」

 

その声に応えて、カートリッジを消費し刀身を展開させるデバイス。その魔力――アクアから受け取った力は氷結と相性が良いらしいのは直感で理解していた。氷結付与の大出力の魔力を横なぎで放つと。

 

「二十体以上のゴーレムをたった一振りで、凍結させた……だと!?」

 

俺の前にあるのは氷像となったゴーレムの群れ。これで少しは時間が稼げたと思い、アクアへ近づくと、

 

「ユウさん。あなたは私の魔力で強くなるから、やっぱりアクシズ教徒に――」

 

アクアがおかしな戯言を言い出したので、即座に頬っぺたを引っ張り、

 

「何言ってんだ? このサボり女神。人にアクシズ教の教義を刷り込みやがって。何か? 俺に恨みでもあるのか?」

 

「ひうふぁん、ひゃへへ!」

 

アクアを喋れなくした状態で、お仕置きをしていたが、カズマから、

 

「……お前、アクアのやった事……、思い出したのか?」

 

「……ん。ああ……。個人的には思い出したくなかった……」

 

俺の哀愁を感じ取ったカズマは、それ以上口を開くのを戸惑ってしまったらしい。そして手を離したアクアが、

 

「サボってないわよ! ちゃんと相談に乗ってあげたでしょ!」

 

「じゃあ駄女神様で。何だよ? 寝転がりながら漫画読んで、迷い込んだ子供に続きを聞くって」

 

「ユウさんまで駄女神って言った!? 謝って! 幼いあなたを導いた、この聡明なる水の女神に謝って! そして私に祈りを捧げなさい!」

 

自称名探偵で名探偵がいない様に、自称聡明にだって聡明な人物は多分いない。泣きそうになっているアクアは放っておくとして。

 

「……カズマ、百年の恋が冷めるってこんな感じかな?」

 

「お前は悪くない。言わばみんな世間(アクア)が悪い。お前は新しい恋に生きろ」

 

ポンポンと肩を叩いて俺を励ましてくれたカズマさんであった。それは今は良い。後で部屋で泣こう。

女の子の方は次から次へと軍勢(ゴーレム)を造り出し、常時魔力を消費している状態なので、爆裂魔法を撃つには魔力が足りない。そしてこちらがこの均衡を破るにはもう一手、押しが必要になる。その為に、

 

「悪い、ちょっと魔王軍の方まで行ってくる。もう少しだけ、時間を稼げますか?」

 

それにちょっと驚いた顔をしながらも、行って来いといった表情で送り出してくれた面々だった。

 

 

 

 

 

 

カズマ達と共に後方で待機していた魔王軍に接近し、その一団のリーダーである魔王の娘さんに、

 

「お姉さん、力を貸してください。ここの魔族達も一緒に」

 

ポカンとするお姉さんであったが、すぐに凛とした表情へと戻り、

 

「……私個人ならともかく、魔族達は本来お父様の配下よ。私は一時的に指揮権があるだけだから、それは――」

 

「……俺のファーストキス奪った。……一回だけならお願い聞いてくれるって言った。魔族のお姫様が嘘つくのか……」

 

「無理なものは無理よ! 私が魔王になったならともかく……」

 

そっぽ向いて、相手を責める感じでぼそぼそと言ってみたが、個人的ならともかく、集団で力を借りるのは無理らしい。けど……。

 

「だったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「……へっ!?」

 

素っ頓狂な声を上げるお姉さんだったが、俺の方を向き直り、

 

「理屈としては通るわ。けど全軍って訳にはいかない――」

 

充分だ。だったらこのお姉さんを魔王にすればいい。

 

「カズマ、ちょっと魔王しばいて来て。今なら、城の警備も手薄でほとんど一直線で魔王さんのとこまで行けると思うから」

 

「お、おい、待て! お前……いきなり何言って!? お前がやれば……」

 

「俺はあの娘の相手しなきゃならない。この状態なら、そこそこ拮抗できるだろ。あと今の状況を打開するには、お姉さん達の力も必要だから、この人を魔王にしてお願い聞いて貰おう」

 

カズマさんだけではなく、アクアもめぐみんもダクネスも開いた口が塞がらないらしい。当り前だろう。突然ラスボス倒して来いなんて言うのだから。

 

「魔王城の結界はどうするんだよ!? アクアだって一人じゃ破れねーぞ!」

 

そんな事か。だったら……。

 

「カズマ、アクアの魔力を俺の許容量限界まで渡してくれ」

 

ドレインタッチで魔力を受取り、魔力刃を形成すると、

 

「……やっぱり神様の魔力は伊達じゃないな……。紅魔の里で使った抜剣を軽く超えてる」

 

その刃は半実体化しており、振るえば万象を断ち切る剣へと変貌していたのであった。

 

「アクアの結界破りと一緒に使えば、この結界でも人が通るくらいの穴は開けれるだろ。行くぞ!」

 

アクアも準備ができた様で、二人で魔王城の結界を斬り裂き、人が通れる分だけだが破る事には成功した。

 

「い、良いのですか!? 魔王城に侵入するからには我々も戻らなければ……」

 

その様子を見ていた魔族の一人が、お姉さんに対し進言をしていた。

 

「もし、人間達が失敗したら今度は私達が戦わなければならないわ。だからここからは動けないし、それに彼ならともかく、あんな人間達にやられるほど、お父様は弱くはない。どの道、無理な話よ」

 

魔王の娘さんとしては、カズマ達が負けると確信しているらしい。しかし、勝手に話が進んでるために、

 

「だから、俺が魔王倒すとか無理だろうが! ちょっと考えれば分かるだろ!」

 

「大丈夫だいじょーぶ。カズマは俺にも勝ってるし、やればできるから」

 

もう頭を抱えたカズマさんが、覚悟を決めた表情で、

 

「ああもう、しょうがねえなあ! けどぴよぴよ丸貸せ! 時間がねーんだ、早くしろ!」

 

ぴよぴよ丸を何に使う気なのか……。まさかな……。

 

「良いか! こんな無茶聞いてやるのはこれっきりだからな! 後で覚えてろよ!」

 

そうして、カズマ達とゆんゆん、そしてミツルギのパーティーが魔王城への歩を進めていったのだった。

 




主人公、今回パワーアップしてはいますが、伏線自体は結構初期から張ってますね。アクアの魔力と相性良いって奴です。
(紅魔の里ではちょっとだけしか魔力を貰ってないので、身体的な変化は現れていませんが、微強化させています。これは77話です)
これに関してはお手軽そうに見えて、女神様じゃないと彼の魔力の異常さに気付かないので(ウォルバク様も90話で気付いてます)、一度死ななきゃ分からない鬼畜仕様のチートとも言えます。しかもアクアがいて、ドレインで魔力を渡せるカズマさんがいないと成立しません。

テレポートでの転送はアクセルと王都に関しては裏方でウィズが頑張っています。
アルカンレティアの面々は紅魔族と来ています。

ハガレンやうしおととらの最終戦のノリになっちゃったなあ……。これに関しては完全に私の趣味でこうしています。
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