この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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エピローグ

魔王軍まで巻き込んだ事件から一か月後。アクセルに戻ったカズマ達はいつも通りの日常を過ごしていた。カズマは単身で魔王を倒した功労者としてもてはやされ、アクア達もそのパーティーのメンバーという事で、その功績を称えられていた。特にアクアはほぼ毎日パーティーに出席し、良い酒でご満悦だったそうだ。

ただし……、

 

「今日も連絡はありませんか……」

 

「手紙くらい寄越しても良いと思うのだが……」

 

屋敷からはユウとかすみの姿だけが消えていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件の翌々日。

 

「ゆーくーん!」

 

「お邪魔します」

 

「おーい! 来たよー」

 

屋敷の玄関に顔を見せたのは、なのは、フェイト、はやてであった。法務的な手続きを相談したかったフェイトはともかく、なんで他の二人が……と疑問を持ってしまったが。

 

「秘匿級ロストロギア相手にするかもしれへんから、戦力寄越せって言うてたよね?」

 

……それでオーバーSが三人来るとか思わねえよ! 

 

とはいえ、ツッコんでも仕方がない。要件を……、

 

「この娘なんだが、ちょっと事情が複雑でな。危険性については、まあ何とかなったけど、今度は身の振り方とかを相談したくて。一応、俺もミッドに戻る手配は済ませてある」

 

かすみを三人に紹介しながら、今後の事を相談するべくミッドチルダへと戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもいるはずの人間がいないのは、ここまで雰囲気が変わるものかとアクセルの屋敷のカズマ達も感じてしまったのだろう。ただしそれに呑まれてしまうのは良くないと、アクアから。

 

「しっかし驚いたわね。あの新しい魔王。少しずつでも人間と交流して行きたいとか言い出すなんて……」

 

何とか話題を変えようとしたらしい。あの事件から変わってきていた状勢について語りだしていた。

 

「うむ。昔話の勇者が魔王を倒した後の出来事について、普通なら信じられんだろうが、カスミという実例を目の当たりにしまったからな。王家としても各国に働きかける気になったようだ。魔王軍としても無駄な争いはするつもりがないらしいので、現在は停戦へと向かって動いている」

 

「けどさ。その交流先ってのがアルカンレティアなのはどうなんだ? 魔族がアクシズ教徒になったらどうするんだよ?」

 

半ば信じられない事ではあるが、これは事実である。何せ……、

 

「何よ! アクシズ教は全てが許されるの! 犯罪じゃなきゃ良いんだから、魔族と交流したって問題なんて無いの。そういった差別が争いを生むのよ! まあ、悪魔とアンデッドは倒すけどね」

 

そのアクシズ教の御神体のお墨付きである。

 

「それよりもカズマの方こそ驚きよ? 魔王倒したから、日本に帰りたいとか言い出すと思ったのに……」

 

「俺が望んだのは、異世界を自由に渡航できる許可だからな。魔王しばいたから神様連中も文句言えなかったみたいだし。これで日本でもどこでも行き放題だ! むしろ世界間で行商をやって大金持ちになれるかもな。他の世界の珍しいアイテムをバニルに売ったりしてさ」

 

「けど、肝心のその方法は分からないんでしょ? そこはユウ頼みだったから」

 

アクアのツッコミに無言となってしまったカズマであった。

 

「めぐみん……、こっちの術式はどうかな?」

 

「テレポートとはまた違う気がしますが、試してみましょうか……」

 

「お前らは何やってるんだ?」

 

何やら魔法研究しているらしい紅魔族の二人にカズマが怪訝な表情で問いかけると。

 

「異世界へ渡る方法を研究中です。ええ、このままでは終わらせませんとも! 逃げようものなら追いかけると宣言しましたから!!」

 

紅魔族随一の天才と族長の娘は自力で世界を渡る気でいるらしい。最近ではゆんゆんまで屋敷に泊まり込み、研究を進めていた。

 

「……ユウさんも大変ね。本当にやっちゃたらどうしましょうか? 特典渡せなくなっちゃうわよ……」

 

「つーか、お前はもうちょっと考えてチート渡せ! あれだって、そのせいみたいなもんだろうが! しかもお前は正式に特典を回収しろって命令されたんだろ?」

 

「良いのよ。天界は行き来できるようになったから。むしろ出勤時間も退勤時間も決まってないこっちの方が、気に入ってるわよ」

 

アクアの発言にこんな神がいて良いのかと口に出してしまいそうになってしまったが、そこは堪えて、

 

「けどまあ……。確かに連絡の一つでも寄越せ――」

 

とカズマが言いかけたその時、

 

「すいませーん! お荷物のお届けに参りました。お邪魔しまーす!!」

 

玄関から宅配業者らしき男の声が響き渡ったのであった。カズマ達がそこに向かうと、

 

「何だこれ!?」

 

そこには山の様な家財が積み重ねられており、引っ越しでもするかのような様相を呈していた。

 

「ではお荷物はここに置いておきます」

 

何かの間違いかと思われたが、住所は間違いなくアクセルの屋敷となっている。これは何故かと全員で首を捻っていたところ……、

 

「……どうしたんだ? みんなして変な顔して?」

 

「「「「!!!?」」」」

 

突然現れた目の前の二人に固まってしまったカズマ達であった。

 

「「「「ユウ(さん)、カスミ(ちゃん)!!!」」」」

 

今度は名前を呼んで驚いていたが……二人は。

 

「お兄ちゃん……。ちゃんと前もって連絡してたの?」

 

「手続きやら何やらで忙しくてな。説明は後で良いかなって」

 

兄の受け答えに、ちょっとだけ困った顔をしていたかすみさんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「かすみの希望でな……。”自分の生まれた世界をちゃんと見てみたい”って。とはいえ、この娘を一人でここに居させるわけにも行かないから、俺が保護者としてついて来た」

 

そうして、これまでの経緯を説明していた。かすみについては魔力やその学習能力は高いが、主だった危険性は無いとの判断が下った。だが、ある意味『歩くロストロギア2号』となってしまったため、経過観察という処置で落ち着いたのだった。魔力に関しては、ある程度は封印措置を行い、そこそこ強いくらいの状態になっている。

そして、身の振り方を相談した際、この世界で暮らしたいとの希望だったので、保護者を俺、後見人はリンディさんにお願いして、こちらに引っ越してきたというわけだ。

 

「……じ、事情は分かりましたが、仕事の方は?」

 

「うん。ここから通う。ここの調査については、引き継ぎも終わって他のヤツがやるよ。丁度停戦状態になったらしいし、危険度は減るだろ?」

 

そう、俺はめでたく本局勤務へ戻るのだが、毎日帰れるとは限らない。なのでここならもしかしたらと思い、俺がいない間かすみの面倒見て欲しいのもあったりする。

ちなみにアクアについては、こっそり回収していた髪の毛を解析してもらった結果、『解析不能』となってしまったため、後任の調査員へはロストロギアみたいなもんだから、あまり近づかない様にとの話を通している。本局もさして脅威にはならないであろう存在に手間をかける余裕もないらしく、それで納得していた。

 

「……というわけで、しばらくここで世話になるけど良いかな?」

 

その答えを聞く前に……、

 

「イタッ……!? い、いきなり何を……」

 

「良いだけ心配させておいて何を言いますか! ええ、構いませんとも。けど簡単には離しませんよ?」

 

猪の如く突撃してきためぐみんに力一杯抱き締められてしまいました。

 

「めぐみん狡い! 私もしたかったのに……」

 

「魔王だって言っていたではありませんか。早い者勝ちだと」

 

……そういえばそうだった。この問題はどうしよう? 後で誰かに相談を……。

 

「……お兄ちゃん。ここで逃げたりしたら、『ヘタレ童貞』の称号を得るって……はやてさんも言ってたよ?」

 

あのたぬき……、腹黒さだけじゃなくて、セクハラまで極まって来たか……。かすみにそんな言葉教えやがって。後で覚悟しとけよ!

 

「ま、まあ……。そんなわけだけど……? これからもよろしくな?」

 

「「「「勿論!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――三年後、新暦75年3月。機動六課本部隊舎にて……。

 

「姐さんと……ヴァイスさんもお久しぶりです!」

 

「おいおい、”さん”付けはよせって。お前さんの方が入局の早い先輩で、階級も魔導師ランクもずっと上だろうが。しかも部隊長補佐だろ? ロングアーチなら俺の直属の上司みてえなもんだ。なあ三尉?」

 

「いや……ほら! ヴァイスさんには色々とお世話になりましたし」

 

機動六課――レリック問題専門部隊として発足した機動部隊である。その駐機場で懐かしい人に会ったので雑談をしていたところ。

 

「……ところで、さっきから気になっていたんだが……」

 

ヴァイスさん、出来れば気付いて欲しくないのに、気づいてしまったらしい。

 

「なんで、服が生乾きみてえになってんだ?」

 

「何せ一年も家開けますからね。家族に泣きつかれまして……」

 

そんな説明をしていたのだが……、

 

「違います!! 泣きついたのはうちのロードの方です!」

 

「ああっ……! みすてぃ、ばらすな!!」

 

それを真っ向から否定していたのは、俺の右肩辺りで浮いている身長30cmほどの少女であった。

みすてぃ――見た目はアクアの外見年齢を7~8歳程度若くして、髪を肩口辺りまで短くした融合騎の少女である。名前の違和感についてはお察し下さい。

この娘、おそらく初であろう『ミッドチルダ式ユニゾンデバイス』だったりする。普通なら製作される機会すらなかったろうが、リインのノウハウや生まれるまでの紆余曲折等あり、こうして今に至っている。

あの事件で融合適性があるのではないか……という可能性が出て来たので、自身のリンカーコアの一部を用いて生み出されたのである。

 

そのみすてぃが溜め息交じりに経緯を語りだした。

 

 

 

 

 

 

「あいつら揃ってれば大抵の事はどうにかなるって! 俺がいない間にかすみに彼氏とかできたらどうするんだ!?」

 

屋敷の柱にしがみ付き、ミッドチルダへ合流するのを拒んでいる一人の男の姿があった。

 

「ええいっ! 雪解けの後、クエスト行きたくないと駄々捏ねたアクアですか、あなたは!? 良いから柱から手を放してください!」

 

「お兄ちゃん、かっこ悪い! はっきり言って、これはかなりかっこ悪いよ!」

 

「ロード! これはないです! 何歳ですか!?」

 

俺を引っ張る女性三人に負けじと、柱を握る手に力を込めて抵抗してたが……。

 

「こうなったら最後の手段です。カスミ、このシスコン残念ハイスペックの首から下を氷漬けにして、転送陣に放り込んでおきましょう! そうすれば後は、ハヤテがあちらでどうにかしてくれます」

 

「めぐみん、最近ゆいゆいさんに似て来たぞ!? 別に借金こさえたわけじゃねーのに……」

 

「嫌なら大人しく、仕事に向かってください……! みすてぃ、私達の目が届かない間、この男を頼みましたよ!」

 

めぐみんから指令を受けたみすてぃは……、

 

「お任せください!」

 

ビシっと敬礼して、首から下が氷漬けになった俺について来たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ、あんまり家族を困らせるのは良くねえぞ? ちゃんと連絡は取れるんだろ?」

 

「……そりゃまあ。ですが、こう……名残惜しいと言いますか……」

 

「昔のお前さんは、もっとこう……ストイックな感じだったが……丸くなったとも言うのか……」

 

ヴァイスさん、流石は大人である。言葉を選んでいらっしゃる。少々引いてはいるが。すると、今度は姐さんから、

 

「そういえば、八神部隊長が探していたが。お前は交代部隊長も兼任するのだから、その件だろう」

 

「そっちの話で何か懸念でも出来ましたかね? まあ行ってみます」

 

そうして部隊長室に向かいながら、

 

「さて、頑張りますか」

 

三年前から続くレリック事件解決への一歩を踏み出したのだった。

 




とりあえず、ここで完結となります。もしかしたら、思い付いた外伝を投稿する事もあるかもしれませんが……。
ここまでお付き合いして頂いた皆様。本当にありがとうございました。


人物紹介

みすてぃ
作中でもあった通り、主人公のリンカーコアから作られた『ミッド式融合騎』です。ほんとに出来るかどうかはツッコまないで下さい。
アクアの影響を受けているリンカーコアから作られているので、外見は若いアクアです。ただし最大の違いは頭が良いです。
主な役割は回復や結界、防御で主人公は彼女と融合して、本当の意味で『独立汎用型』の魔導師として完成するという設定です。

見た目が小さいアクアなので、カズマからは”ミニアクア”と呼ばれているとか……。
名前に関しては、かすみの妹みたいといった発言から、”かすみ”のかかったという意味の英単語『misty』からです。ひらがななのは……そういうことです。

融合したとしても、アクアの魔力を貰った時には敵いません。そこは神様の超えられない壁って奴ですね。

この娘、StSではゼストさんとの再戦時のアギトに対抗するポジションになる筈です。
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