この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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この話からアンケートを取っていた外伝となります。


外伝 かすみの『THE GEARS OF DESTINY』
プロローグ ~再会、そして蘇る過去。しかして世界を滅ぼせる存在は割と君の近くにいる~


ジャイアントトード――駆け出しの冒険者の街アクセル周辺に生息する、山の様な体躯のカエルである。その分厚い脂肪から打撃は無効化されるが、金属が苦手で剣、または魔法で攻撃すれば討伐自体はそう難しくはない。正に初心者向けのモンスターと言える。

その巨大なカエルが例年よりも大量発生しているので、今年の討伐はアクセルの街の冒険者が総出で……と思いきや、魔王城前のかすみとの一戦で国からいくらかの報奨金が出たらしく、大多数の冒険者はその金が尽きるまで酒場に入り浸り、クエストがほとんど消化されないといった事態に陥っていた。

 

「……そ、それで俺らに、わざわざ要請しに来たわけですか……。ルナさん、お疲れ様です……」

 

本日、俺は休日。アクセルに戻りゆったりと過ごしていると、少々涙目になってる冒険者ギルド受付嬢のルナさんが屋敷を訪れて、カエル討伐の懇願をされてしまった。

 

「この街の冒険者は、小金持ちが多くなってしまいまして……。ペナルティを科そうとしても、無理がありますし、魔王を討伐したカズマさん達なら、もしかしたら……と」

 

「つーかさ。俺が仕事の間、クエストとか行ってなかったのか?」

 

俺がみんなの方を向き、冒険者としての質問を投げかけると、

 

「私は特典を調べるので忙しいの。なんとかカリバーの他に、なんちゃらダイトとか、ほにゃららティーンも誰かに持たせた気がするのよ……。誰だったかしら?」

 

ちゃんと名前は憶えていないが、アクアが寝転がって読んでいる漫画本は英国辺りの丸いテーブルの騎士達がモチーフになっているものだ。

 

「ブリュー的な槍とか、ヤドリギの何かとか、ロンゴなんとかはどうだ?」

 

「あったような、無かったような……」

 

カズマも同じく漫画本を読みながら、アクアを手伝っているらしい。ロンゴなんとかはともかく、他は物語的には違う系統の筈だ。この際、二人は後回しだ。

 

「めぐみんは……爆裂に行ってなかったのか?」

 

「勿論、毎日行っていましたよ。しかし、一発撃つごとにまた大量のカエルが出現するのです。そこはゆんゆんが相手をしていましたが……」

 

確かに爆裂は一日一回なので、そうなるだろうが……、

 

「ダクネスは……一人だと無理なのか……。攻撃当たらないし」

 

「そろそろ粘液まみれも良いかと思ったが、カスミもいるのでは好きにはできまい」

 

一応、ダクネスもかすみの前では自分の性癖を見せるのは自重してくれているらしい。しかし、

 

「おい⁉ かすみも連れてったのか⁉ 何かあったらどうするつもりだ⁉」

 

意外や意外といった会話だったが、俺以外の他のメンバーは特に悪びれる様子も無く、めぐみんから、

 

「ユウ、カスミに魔法を使わせる練習なら、外の方が良いですよ? 何せ、中級魔法ですらあの巨大ガエルを氷漬けにしたり、丸焼きにしたりできますから」

 

「……訓練はお願いしてるけど、実戦形式ってのは聞いて無かったなあ……!」

 

「子供はもっと伸び伸びとさせるべきです! 少し心配性過ぎます‼ カスミほどの能力なら問題はありません!」

 

「実力云々じゃないんだよ! 別にかすみには戦わせるために訓練させてるんじゃない。あくまで魔力の制御を教えるための物だ!」

 

俺とめぐみんがお互い睨み合い、口論を交わしていた。このままでは埒が明かないと双方考えてしまったらしい。もう一人の紅魔族、ゆんゆんの方を向き、

 

「「ゆんゆんはどう思う(いますか)!」」

 

捲し立てる様に言い放ってしまった。

 

「えっ……⁉ ええっ……⁉」

 

まさか自分に振られるとは思っていなかったのだろう。オロオロしながら俺達を相互に困ったように見詰めていた。

 

「あの……」

 

そこで口論を遮ったのは、先ほどから話の輪に入れずに、困惑しているルナさん。カエル討伐の要請がおかしな方向に行ってしまったので、どうしたらいいか分からなくなってしまったらしい。俺がコホンと咳払いし、

 

「とりあえず……、討伐には行きましょう。カエル回収の手配はお願いしますね?」

 

「はい……。本当にありがとうございます……。何故かこの街の冒険者の間……、特に男性冒険者に”働いたら負け”という言葉が流行っているらしく、どうしたら良いかと……」

 

……なんとーなーく出所が分かりそうだが、そこは後で問いただすとしよう。特に漫画本読んでる二人。

 

寝転がっている二人を半ば無理矢理首根っこ引っ張って、アクセル近くの草原へと繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草原へと到着して周りを見渡すと、確かに去年に比べればカエルの数が多い。千里眼を持っていない俺が見えるだけでも二十数匹もその場から見つけてしまった。

これを討伐していなのなら、そりゃあ冒険者ギルドとしても悩み所になってしまうだろう。と納得してしまったが、それよりもカエルをある程度減らしておかないと、家畜や下手すれば人間まで丸呑みで被害が出てしまう。

みんなと出会った頃ならともかく、今ならそこまで討伐には難儀しないだろうと高を括っていた。それは一部例外を除いてはその通りだった。その例外とは……、

 

「このカエル! 私の至福の時間を無にした罪を懺悔なさい! 『ゴッドレクイエム』ッ!」

 

カズマはちゅんちゅん丸による斬撃や弓による狙撃、めぐみんは爆裂、ゆんゆんは上級魔法、ダクネスは囮でそれぞれカエルを順調に倒してはいたが、アクアだけは相変らず打撃が通じないはずのカエル相手に打撃を仕掛けて無効化されていた。カエルの腹がポヨンと揺れるだけで、何のダメージも与えていない。

 

魔王軍幹部であるリッチーのウィズを難なく浄化でき、元幹部のバニルですらそれなりにボロボロになる結界を張り、魔王すら弱体化できる力を持つ、水の女神アクア渾身の打撃を無効化するカエルは実は最強なのではないか……。

 

そんな最強議論を脳内で行ってしまった。その刹那、アクアが当り前のようにパクっとカエルに呑まれてしまう。幸い一気呑みはされずに顔は出ているが……。

 

「いやああああああ! カエルの粘液塗れは、いやあああああ‼」

 

はい。トラウマが蘇ったアクアさんの絶叫が響き渡っておりました。この光景が普通だと思う時点で、どうかとも思うけど。

 

「……どうする?」

 

「まだ呑まれないから囮にするか。倒すだけならすぐだしな」

 

カズマは慣れたものといった感じで、アクアは放って置いて他のカエルを始末するといった提案をしていた。まあ良いかと思いカズマの言う通りにしていると、アクアを呑んだカエルの遥か後方から、どっかで聞いた様な声が響いていた。

 

「砕け散れ!」

 

声は確かにフェイトの物。しかしどちらかと言えば、大人しいというよりは、かなり元気な感じに聞こえる。その声の主は、

 

「雷刃滅殺! 極光斬!」

 

フェイトの『ジェットザンバー』と同系統で水色の魔力で形成された巨大な刃を振り下ろし、アクアの顔を口から出しているカエルを一刀両断した。カエルごと斬られてしまったアクアさんは……、

 

「わああああああん! わ、私の頭のチャームポイントが⁉ もうちょっとで無くなる所だったああああああ⁉」

 

うまい事、掠っただけで済んだらしい。涙目どころか、下手すればちびってるんじゃ……、と考えてしまうくらいの絶叫だったけど……。

 

「あーはっはっはあ! 蒼き雷を携え、ボク参・上‼」

 

ぶった斬ったカエルの上に乗り、バルデッシュに酷似したデバイスを掲げた、9歳フェイトによく似た……というか、色違いの水色髪の双子みたいのが、高笑いをしながら自己主張をしておりました。

 

「……お前の知り合いだな? そうだよな! それ以外考えられねー!」

 

「フェイトの妹でしょうか? よく似ていますが……。それよりも何ですか⁉ あの登場は! 相手を屠って高笑いしながら名乗りを上げるなど、なんと羨ましい……!」

 

カズマ達は、あのいきなり攻撃少女を俺の知り合いだと思ったらしい。そりゃあフェイトによく似てるが、あんなぶっ飛んだ知人なんて覚えがない。なーんか嫌な予感がするなと、ちょっとだけ後退ってしまったが、あちらは俺を見るなり……、

 

「もしかして、コンチビか? コンチビだろ? うわっ……⁉ でっかくなってる!」

 

いきなり変な呼ばれ方をされてしまった。それを見て、

 

「……お兄ちゃん、その人……、誰?」

 

「どう考えても知己のようだ。早く紹介してくれ」

 

「えっと……、コンチビって何ですか?」

 

かすみ、ダクネス、ゆんゆんまで、こいつ誰だってな感じで俺に質問を投げかけていた。

 

「ううんと……、どちら様――」

 

俺自身、全く覚えが無いので目の前の水色2Pキャラっぽいのに、何の事か問いただそうとした矢先、

 

パリーン

 

頭の中で何かが割れる音と共に、やたらとテンションの高い水色の事を、ある事件の詳細も含めて思い出してしまった。そして人をチビ呼ばわりするチビに。

 

「……チビにチビって呼ばれる筋合いはねーぞ? お前こそ万年五頭身じゃないか、レヴィ」

 

「なにおー! ちょっとでっかくなったからって、生意気だぞ! ボクらだって成長はするからなー。まだあれから一年位しか経ってないから、そんなに変わるわけないだろ!」

 

そうだったのか……。こいつらってデカくなるのか……。いつになるかは分からんが……。

 

「それと、そのコンチビって呼び方は止めろ。少なくともチビじゃないしな。ちゃんと名前は教えといたはずだが?」

 

「じゃあ、コンデカで」

 

こいつに対してはもう何も言うまい。常時このテンションのヤツだしな。コンチビ――”紺色のバリアジャケットのチビ”を略したらしいが……。

 

俺とレヴィが話し込んでいるのをジッと見ていた面々が……、

 

「……で? その元気っ娘は誰だ? やっぱり知り合いみたいだが……?」

 

カズマがとっとと紹介しろってな雰囲気で、俺に詰め寄っては来たが、どう説明したものかと考え込んでいると。

 

「そういえば、何でお前がここにいる? 他はどうした? エルトリアから飛ばされてきたか?」

 

それに対し、心配無用といった態度でもって、

 

「シュテるんも王様もユーリ達も一緒だぞ。変な実験してたら、いきなり空が光って気付いたらここにいたんだ。ボクだけスプライトフォームで、戦闘してるっぽい所に急いで来たら、デカいチビがいた!」

 

「デカいチビとか言うな! 訳わかんなくなるだろうが!」

 

相変らずの勢いというか、独特のテンションで疲れはするが……、どうやらあの姉妹までここに来ているらしい。なら早く合流するべきかと考えて、レヴィへと、

 

「アミタさん達はどこだ? 必要なら迎えに行くが……」

 

「うーんと、あっちのずっと向こう。何か、デカいカエルに囲まれてたけど、ボクだけ先行して来た」

 

デカいカエルに囲まれてる、それを聞いたカズマ達が、

 

「おい、まずいんじゃないか⁉ あのカエルだって数集まれば結構ヤバいぞ!」

 

「早く行きましょう! 手遅れにならないうちに!」

 

「うむ。私が盾替わりでも囮でも引き受けるので、向かうとしよう」

 

「うわあああああああああん! カエルはいやあああああ‼」

 

カズマ、めぐみん、ダクネスが救助に向かうべきと言って走り出そうとしている中、アクアだけはカエルに呑まれたせいか、大泣きしたまんまだった。レヴィの攻撃が掠ったのも精神的に効いてしまったのかもしれない。それはともかくカズマ達には、

 

「ああ……。あの人達なら大丈夫だろ。ゆっくり向かって合流するか」

 

「「「「へっ?」」」」

 

間の抜けた声を上げるみんなであったが、あの人達の力を知らなのだから無理はない。なので、

 

「うーん。俺くらいか、それより上の実力者が4人と、それが束になっても敵わないのが1人いるって言ったら、何となく分かるか?」

 

たった一言。だがその一言で、俺の言いたい事は十分伝わったらしい。全員が落ち着きながらも少々引きながら納得してくれた。

その後、レヴィとゆるーい雑談をしながら、彼女が言っていた方向へ歩くこと三十分程。数人の人影と、その周りにはカエルの残骸が所狭しと転がっていた。自己紹介についてはまだしていない。全員合流してからの方が良いと考えたからだ。

 

「おーい! みんなー! コンチビがいたぞー!」

 

レヴィが大声でカエルと戦っていたであろう5人に呼び掛けると。

 

「ああっ……! お久しぶりです! 本当に大きくなって……。もしかして、私達が帰ってから結構時間が経っていますか?」

 

赤毛の三つ編み、青いジャケットのアミタさんが俺の姿を見て、目を見開いて驚いていた。

 

「あら? 一年ぶり位なのに、背丈越されてちょっとショック~」

 

こっちは七年ですって。小学生だって高校生になって背がぐんぐん伸びる時期ですよ。桃色のキリエさん。

 

「ご無沙汰しております。ここが何処かも分からずに困惑しておりました」

 

ペコリと頭を下げて挨拶しながら、現状について確認しようとする、なのはによく似たショートカットのシュテル。

 

「貴様か。まあいい、この我を忘れたわけでは無かろうな?」

 

お前みたいなインパクトあるヤツ、忘れようとしたって忘れられないって。吊り目はやてのディアーチェよ。

 

「あの……、みんなでここに来てしまいまして……。それと、その節はありがとうございました」

 

大人し目だが、七年前と比べたら雰囲気が眼に見えて明るくなっている、見た目は最年少でウェーブの掛かった長い髪の少女――ユーリの姿もある。

 

「……一度、あの男の女性関係を洗い直して置きたいのですが……」

 

「うん。何で女の人の知り合いが多いんだろ?」

 

めぐみんとゆんゆんが若干ジト目になりながら、俺にキツイ視線を向けている。

 

「俺にあらぬ疑いをかけるのは止めて貰おうか。この人達は今じゃずっと遠くに住んでるから、ちょっとした知り合いってだけだ」

 

困った事に、変な勘違いをされそうだったのを即座に否定して、自己紹介を済ませるとディアーチェから、

 

「見知った顔ばかりだな。特に茶髪の間抜け面。相変わらず締まらぬ顔を晒しておる」

 

「いきなり何言いやがる⁉ この生意気なロリっ娘が! お前なんて俺は知らねー‼」

 

「王たる我をロリっ娘呼ばわりとは……。そこに直れ!」

 

ディアーチェとカズマが喧嘩を始めてしまい、それを止めようとしたが、気になる事が聞こえたので、

 

「ちょっと待て。アミタさん達はこいつらを知って――」

 

それを問いただそうとした瞬間、またも頭の中で、

 

パリーン

 

ガラスが割れる音と共に、重要な事実を思い出してしまった。そしてアミタさんから……、

 

「あの……。もしかして、厳重に記憶封鎖した部分も解けちゃいましたか?」

 

「はい……。全部思い出しましたけど……。王様、こいつらはまだ、あちらには行ってませんから何の事か分からないと思う」

 

何せ、かすみだって専用のデバイスは持ってないし、めぐみんの杖だって俺の子供の頃の記憶と食い違っている。多分、時間的に言えばまだ後の筈だ。

 

「そうか、ならば仕方あるまい。それよりも緑目、貴様この地に住んでおるのだろう? 我らを案内(あない)せい。とりあえず休める場所が必要なのでな」

 

確かにこの人達をここに放って置くわけにも……、放っといても大丈夫な気がするが、レヴィ辺りがモンスターを倒しまくって生態系おかしくしても面倒だ。というわけで屋敷へと全員を案内した。リビングで寛ぎながら。

 

「ところで、エルトリアには帰れるんですか?」

 

「それについては問題ありません。座標の特定は出来ていますから。ただエネルギーが必要なので少し休ませて欲しいです」

 

予期せぬ事態でこちらに来てしまい、ついでにカエルと戦闘してしまったのでそれなりに消耗しているらしい。

 

「お兄ちゃん……。あの人……」

 

かすみはユーリが気になってるというより、ユーリがかすみの方をチラチラ見ているので、どうしても気になってしまうらしい。俺にどうすれば良いか聞きたいのだろう。

 

「お前らは似た者同士だからな。ユーリも友達になりたんじゃないか?」

 

「似た者同士?」

 

これに関しては話して良いもんか迷う部分があるので、どうしようかといった所でもある。

 

「そういえば……、帰る時にまた記憶封鎖してくださいね? どうやら()()()()()()()()みたいですし。なんだっけ? ヴィヴィオだっけか、それとトーマっての。覚えてると、色々まずいかも知れないですよね?」

 

「そこは当然。けど、そうねえ……。ヴィヴィオちゃんってパーツ的に言えば、ユウ君とフェイトちゃんの娘っぽいわよね?」

 

キリエさんがそんな突拍子もない話題をしだしたが、確かあの子はなのはの娘とか言ってた気がする。パーツ的って意味が分かんないけど。そんな様子を察したのか。

 

「だって、金髪と左の瞳の赤色はフェイトちゃん。右の瞳の緑色はユウ君。ね? しっくりくるでしょ?」

 

そういえばそうだったか。もう一人いた方もオッドアイだったけど……。

 

そんな事を思い返しながら、あの事件で出会った人たちの事を考えていると……、

 

「ユウとフェイトの娘⁉」

 

「ど、どどど、どういう事ですか⁉ 何でそんなのを知ってるんですか⁉」

 

めぐみんとゆんゆんが突然、声を裏返して俺とキリエさんの方を向いて愕然としていた。というか、全てを思い出してから、どうもまともに顔が見れない。仕方ないちゃ仕方ないのだが、どうしたもんか……。

 

――続きは未来で……。

――ちょっとだけごめんね?

 

あれを思い出してしまったのが痛い。はっきり言ってまずい。顔なんて直視したら、赤面してうまく話せない自信がある。当時9歳の子供に何してんだか、ほんと。

 

「あの……、お願いが」

 

「なあに? キリエさんにお願いするのは高くつくわよ?」

 

ちょっとふざけた感じではあったが、一応聞いてはくれるらしい。耳元でヒソヒソと、

 

「あれの記憶だけは封鎖じゃなくて、消去できませんか? その……どう接したらいいか……」

 

それを聞いた桃色髪のお姉さん、ニヤッと笑い、

 

「ねえ、結局どうなったの? お姉さんに教えて?」

 

「別にどうもなってませんよ。ここに来てから初めて会ったと思ってましたから」

 

そこで、つまんないのーってな顔されても困ります。そしてアミタさん、聞いて無い振りして興味津々な感じで耳を傾けないで下さい。

 

「ふーん、良いじゃない。私達が帰るまで、甘酸っぱーい思い出に浸るのも」

 

「良くありません。お願いですから!」

 

キリエさんが腕を組み、うーんと唸る事数秒。カズマ達の方を向き、

 

「昔、そこの娘達がユウ君に――」

 

「うわああああああ! 何言ってるんですか!」

 

何とか大声を上げてキリエさんの暴露を遮りはしたが、今度は、

 

「……それで、俺はその人達は知らない。けどそっちは俺達を知ってる。どういう事だ?」

 

「そうよ! 全く以て訳が分からないわ。説明しなさい!」

 

「ナノハ達に似ていたり、一方的に私達を知られていたり、正直良い気分はしません」

 

「うむ。説明できる範囲で良いので、話してはもらえないか?」

 

はっきり言って全く経緯が分からないといったカズマ達であった。これに関してはどうしようも無いのだが。

 

「……そのうち、また会えるから、あまり気にしないで欲しい。まあ、その時は全部終われば綺麗さっぱり忘れるとは思うけど」

 

「お兄ちゃん……説明になってないよ。わたしが一番最初とか、何の事?」

 

「そこは大人になれば分かるよ。多分……」

 

かすみですら怪訝な表情で俺をジッと見つめていた。隠した方が良いってのは分かるんだけど、うまく説明できないもんか……。

 

「そうですね……。確かにあなた方にとっては初対面ですので、不思議に思うかもしれません。ですが、私達にとっては……特にかすみさんは恩人みたいな方ですから、絶対に危害を加えたりはしません! 約束します!」

 

「ええ、その通りです。むしろ私達がいる間に困った事がおありでしたら、申しつけ下さい。力になりますので」

 

アミタさんとシュテルが力強く宣言して次は、

 

「ふん。ここに留まる間は、食事くらい我が作ってやる。宿賃代わりだ」

 

尊大な態度の割には義理堅い王様だったりする。

 

「なあなあ、コンチビ。ここってあんなでっかいカエルとかいるのか? それよりもエルトリアの危険生物みたいのがいたら、ボクがぶった斬って良い? 良いだろ?」

 

レヴィの普段の生活が垣間見えるセリフだなあ……。

 

「こんな感じで、気のいい連中だから深くは追求しないでくれるか? 説明すると色々と面倒ごとになるかもしれないから」

 

みんなに深く頭を下げながら懇願すると、しょうがないなといった感じで彼女らが帰るまで屋敷で生活するのを了承してくれた。

その夜、寝室であの事件――『砕け得ぬ闇事件』を思い返し、当時を振り返っていたのだった。

 




砕け得ぬ闇事件は、主人公にとっては過去。カズマ達にとっては未来の出来事になります。なのであんな反応をしてると思ってください。




今回は後日談の魔王城編をショートストーリーって形で掲載します。

――ペタペタ……ペタペタ。ゴソゴソ……。

「ぐすっ……。ひっく……」

ここは魔王城。何かを塗ったり、積み重ねたりする音と共に、何者かのすすり泣くような声が毎日聞こえている。その理由は――




魔王城前での決戦から数日後。ユウとかすみが屋敷を開けている間に、玄関の開く音が聞こえたので、全員がそこに向かうと、

「総出でお出迎えなんて、嬉しい限り……。彼はいないの?」

「残念でしたね。ユウならカスミを連れたまま、しばらく戻らないそうです!」

新魔王さんが、何故か屋敷を訪れていた。とりあえず、立ち話というわけにも行かないので、リビングに通して要件を聞いたところ、一枚の紙を差し出された。

「これは何ですか?」

「良いから見なさい」

カズマが促されるまま、その紙を開くと顔が見る見る真っ青になり、

「……⁉ この請求書は⁉」

「何って……良いだけ人の家を破壊してくれたでしょ? 壁を斬り裂いたり、天井とか床面に穴を開けたり、変な魔法の余波で城全体が軋んでたりするの。補修しないと、とてもじゃないけど住めないわ」

魔王城は先日の攻略戦や対前魔王の戦闘でかなりのガタが来ているらしい。それを聞いて、

「わ、私は悪くないわよね? カズマの指示通りに進んだだけだし……」

アクアがいの一番に逃げだそうとしていたが、カズマに首根っこを掴まれて逃亡を阻止されていた。

「確か……お父様を倒したから、報奨金が出ているはずよね? どうするの? お金は払わないで体で払う?」

体で払う……これは自分で作業して魔王城を補修しろって事だろうが、普通はやりたがらないだろう。

「魔王の癖にケチ臭いわよ! 魔王だったら自分の負けを認めたら良いでしょ!」

「魔王だって先立つ物が必要なのよ。城を直してたら、こっちの資金が枯渇するわ」

「だったら、あの邪神にでも頼みなさいな。まあ、私みたくアクセルの外壁の補修をしていて、親方に正社員にならないかって言われるほどの腕を持っていたらですけど!」

その一言でカズマがアクアの肩をガシッと掴みながら、新魔王さんへと。

「……こいつをこき使ってください。こう見えてもこんな技術に関しては、他に追随を許しませんから」

「ちょ……。カ、カズマさん⁉ ねえ、冗談でしょ⁉」

アクアが拒否しようとしていたが、話はもうまとまってしまっていた。

「分かったわ。明日からウォルバクに送り迎えを頼むから、よろしくね」

「いやああああ⁉ 何で⁉ カズマさんがポンっとお金を出せば済む話でしょ⁉ 私を犠牲にしないで!」

泣き叫びながらアクアはカズマに懇願するが、そんなものは聞き入れられるはずも無く、それから魔王城では毎日。

「わ、私、アクア様なのに……、水の女神様なのに……」

超一流の補修技術を持つアクアが、泣きながら魔王城の補修を頑張っていたらしい。





王都でのお礼も終了して、次は一応お世話になった魔王城へも行こうかと思ったのだが……。

「お願い! 魔王城だけは止めて! 私、頑張ったの! 今までで一番頑張ったから、魔王城にだけは行かないで! お願いだからああああああ‼」

アクアが縋りついて俺に懇願して来たので、魔王城はもう少し経ってから行こうかという事で、何とか慰めたのだった。
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