この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

115 / 152
黒歴史って、やっぱり誰にも知られたくないよね?

「いいっ……⁉ や、八神司令⁉ ちっさ! どうしたんですか⁉ そんなカッコで!」

 

「あっちの悠さんも小っちゃいし……、みすてぃ先生もいない……?」

 

何やら俺達を見て驚いているらしく、見た目がどう考えても悪役っぽい、灰色の髪と肌に紅い模様が浮き出ている、若干服装が危ない気がする黒いお兄さんに遭遇していた。

 

フェイトやアルフと別れた後、例のお姉さんやマテリアル達を捜索するために、はやて、リインフォースと合流して、とある無人世界で行動していたのだが、無人であるにも関わらず人間の反応があったので現場に急行すると、リボルバー式のカートリッジっぽい物を搭載しているゴツイ剣を持った人と遭遇してしまったのだった。

 

(なんやろ……? 見るからに悪そうな人に見えるけど……)

 

(……それよりも、また俺らを知ってるぽい人だな?)

 

(我が主、万一もありますので、私の後ろにお下がりください)

 

俺達三人が念話で目の前の人物について、観察や警戒をしていると、

 

「もしかして、非常事態とか? それでわたし達を呼んだんですか?」

 

さっきも聞こえていたが、女の人の声もする。もしかして……。

 

(声が二人分……。融合してるんかな?)

 

(おそらくは……。私以外の融合騎が残っていたのでしょうか?)

 

念話の中のリインフォースの”自分以外”の部分に興味を持ってしまい、

 

(古代ベルカだと結構いたのか? 融合騎)

 

(私は比較的初期に造られている。後期になれば、小型の者も造られはしたが、それでもそこまで数は多くないはずだ)

 

融合騎自体がすでに失われた技術ってのは聞いた事はあるけど、諸々の問題点があったとかって話だよな。それを今、考えるのは止めておこう。

 

「あの……八神司令ですよね? 八神はやて司令。そちらは、浅間司令補」

 

はやてと俺を『司令』と『司令補』と呼ぶ、謎の怪しいお兄さん。何の事だと二人で顔を見合わせながら、

 

「『司令』ゆーんは良く分からへんですが、八神はやてではあります」

 

「ええっと……。俺らは嘱託なので、そこまで偉いわけではないですよ?」

 

何かの勘違いかも知れないので、とりあえず役職については否定をしたのだが、あちらは目を見開いて驚いている様子だった。あちらが何を驚いているかは分からないが、

 

「ここは管理外世界ですので、渡航許可はお持ちですか? ここ最近、持ってない人達が多いもので……」

 

俺の問いに慌ただしい感じになった、お兄さんと融合してるお姉さんと思しき人達は、

 

「「緊急離脱ーっ!」」

 

一目散に逃げようとはしていたが、それを止めたのは、

 

「すまないが……。君達、今は非常事態でね。怪しい人物を見逃すわけには行かないんだ」

 

漆黒の羽を持つはやての融合騎、リインフォースだった。その力のほとんどを失ったとはいえ、それでも並大抵の魔導師では太刀打ちできない程の能力を有している。

状況は三対二なので、数の上では有利だが、リインフォースから魔力以外の力を感じから気を付けろとの注意もあった。戦ってた中で、

 

「うええええ⁉ 攻撃が通らねー⁉」

 

「おかしいよ⁉ ディバイドが効かない。魔力分断が出来てない!」

 

あちらがどうやら想定外の事態があったらしい。魔力分断やディバイドなど聞きなれない単語が耳に入ったが、それははやても同じだったようで首を傾げていた。

 

(見た目ほど悪い人達ではなさそうな気がするけど……)

 

(……だな。見た目はモロ悪役っぽいけど、剣はカッコいい)

 

そこに関してしては双方、意見が一致したようだ。しかしあちらは、

 

「と、とにかく現状だと勝ち目がないかも……。あの二人を怒らせたら、後が怖いけどやっぱり……」

 

「うん。逃げよう! 銀十字」

 

銀十字――戦闘の中で、ページが宙に舞っていた魔導書っぽい本だろうか? それを考えているうちに、凄まじい加速と共に、お兄さんはその場を離脱。映像データは取ってあるので、指名手配する事で落ち着いたが、

 

「うーん、あの人……、はやてを見て怖がってたな?」

 

「悠君見て怯えとったよ? 融合騎の方もそんな感じやった」

 

俺とはやてが逃走した二人についての率直な感想を同時に言うと、

 

「俺みたいな、か弱いの怖がる理由なんて無いだろ? どう考えてもはやての方だって」

 

「どの口が言うん? 本局武装隊員とランク自体は変わらへんやろ? か弱い言うたら、遠くで魔法撃つしか出来へん私の方や。絶対悠君を怖がっとった!」

 

両方とも自分に覚えが無いにも関わらず、初対面の人間に恐れられる謂れは無いので、それについて口論を勃発させてしまっていた。

 

「大体、”か弱い”なんて、男の子が自分に使う形容詞ちゃうよ? 私みたいな女の子ならともかく……」

 

「はやてがか弱いんなら、魔導師ほとんどが、か弱くなるだろ?」

 

今度は”か弱い”の定義について、議論を交わす俺達。このままでは結論が出ないと言わんばかりに、

 

「「リインフォースはどう思う?」」

 

俺達の様子を少しばかり楽しそうに見守っていたリインフォースに、その質問を投げかけると、

 

「私としては、お二人共、お強いと思います。我が主には生まれ持った強大な魔力がありますし、悠は未熟な部分が多いですが、これからの伸びしろを考えれば楽しみでもありますし……」

 

結局、結論は出ずに捜索に続けることになった。その中で、

 

(私としては、あの者達が二人に怯えていた様に見えたのだが……)

 

リインフォースが小声で何かを呟いていたが、彼女としては先ほどの口論を再燃させるのもマズいと思ったらしく、それ以上は何も言わなかった。

 

その後、海上ではやて似のマテリアルと捜索していた桃色の髪のお姉さん――キリエ・フローリアンさんを見つけたのは良いものの……、

 

「時は満ちた……。そこの桃色、準備は良いか?」

 

「はあーい! 強制起動システム正常。リンクユニットフル稼働」

 

「さあ……蘇るぞ! 無限の力『砕け得ぬ闇』‼」

 

砕け得ぬ闇って……、レヴィが言っていた自分達の生きる目的って奴だ……。

 

ディアーチェによると、その姿は『大いなる翼』らしい。当人が言うには戦船か体外強化装備らしい。その形状を想像したキリエさんは、一昔前のブリキロボっぽいのを考えたらしい。

俺的には翼に体外強化装備って言ったら、”お前を殺す”ってな感じの羽根が生えたコロニーを一発で破壊できるビーム砲を持ったモビルスーツを想像したが……、

 

「貴様のセンスは偏っておるな。何だ? その華奢な造りは?」

 

「そうね~。もっと実用性を考慮しなきゃ……ね?」

 

何故か敵さん二人に思いっ切りダメ出しされてしまった。ここまできっぱり否定されると、はっきり言って落ち込んでしまうのだが……。

 

「私としては……悠君の方がええと思うし、気にせんといて……な?」

 

「ああ……。今度、そのロボットとやらも見せてくれ。そうしなければ私も判断が出来ない」

 

はやてとリインフォースは俺の哀愁を感じ取ったらしく、特にはやては背中を摩って慰めてくれていた。そうこうしているうちに、システムが起動してしまい、

 

「ユニット起動。無限連環機構動作開始」

 

その声は、自分やはやてよりも、もしかしたら年下くらいの少女の物だった。そして、その姿が見えると、

 

「システム『アンブレイカブル・ダーク』正常稼働」

 

予想通りにその外見は、ゆるふわウェーブな長い金髪の小さな幼女。服装は白と紫を基調としてはいるが、何故かへそ出しルック。

ディアーチェが言っていた”戦船”でも”体外強化装備”でもない。その姿にディアーチェもキリエさんもポカンとしていた。人の姿をしているとは思わなかったらしい。リインフォースも警戒はしているが、害意は感じないと言っていた。そんな中、はやてが、

 

「あー……。とりあえず、『砕け得ぬ闇』やから、ヤミちゃん?」

 

「ヤミちゃん⁉」

 

いきなりあだ名呼びしようとしていたので、キリエさんも驚いたらしい。

 

「……ヤミちゃんよりは、音読みの(アン)ちゃんの方が女の子っぽくて良いと思うけど……」

 

「今度はアンちゃん⁉」

 

キリエさん、結構ノリのいい人かもしれない。はやてと俺の二回ともツッコミ入れてくれたよ。

 

目の前の幼女が自身の保有者が誰かが分からないらしく、はやてが自分が今の夜天の主であることを説明していたが、そこからディアーチェとキリエさんも争奪戦に参加。俺はというと、

 

もしかしたら八神家にもう一人、妹分が増える。ならば俺に、”保護者が同じだから自分はお姉ちゃん”……と自信満々に言っているはやてに従うなら、あの子は俺の妹。などと言った脳内変換が出来上がってしまい、

 

「ちなみに俺はお兄ちゃんだから、そう呼んでくれると嬉しい」

 

これがヴィータなら、そんなん呼ばれたくはないが……、本人も呼ぼうとはしないだろうけど、あの子なら良いかなと考えてしまった。

 

「貴様⁉ 一体何を言っている⁉」

 

「その年でそんな趣味は頂けないわよ? まあ、妹より優れた兄や姉なんていないけど」

 

”妹より優れた兄はいない。” ……どこか引っかかる物を感じるが、ディアーチェやキリエさんもやはり必死のようだ。そこからアンちゃん(俺命名)がその場の全員を一瞥し、

 

「状況不安定。躯体の安全確保のために、周辺の危険因子を……排除します」

 

その宣言と共に、途方もない魔力で出来ている翼の様な物を展開した。

 

「「「⁉」」」

 

目の前の人物の魔力量に俺達三人とも固まってしまっていた。彼女の魔力量は文字通り、”桁が違う”。この場で一番魔力量が劣る俺と、はやてやリインフォースとの魔力量の差ですら、『砕け得ぬ闇』にとっては誤差程度の違いでしかない。

目の前の翼の幼女は俺達三人を見据え、

 

「空中打撃戦システムロード。出力上限8%」

 

とんでもないセリフが聞こえてきましたよ。俺はともかく、夜天の主とその管制融合騎を同時に相手して、出力一桁で倒せるって事だ。

 

「……はやて、こうなったら全力で攻撃して。現状で火力が一番出るのはお前だからな? 俺は援護に回るから……」

 

「やるしかない……か」

 

はやてと目を見合わせ、やるだけやってみるしかないといった雰囲気ではあったが、

 

「ならば、前には私も出よう。我が主、一撃を叩き込む隙は我等が作りますので、最後はお任せします」

 

その作戦が功を奏したのか、それとも相手が目覚めたてでまだうまく体を動かせないのかは分からないが、躯体操作が困難になってしまったらしい。

いつの間にかシュテルやレヴィも合流し、マテリアル三人がアンちゃんとの再会を喜んではいたが、肝心の一番小さな女の子は、

 

「駄目なんです。私を起動させちゃ……」

 

彼女は語りだしていた。誰も自分を制御できなかった事、だから自分に繋がるシステムを破断して、別のシステムを上書きして、自分の存在を誰にも悟られない様に情報を抹消したと。

そして、自身を『闇の書』の抱える本当の闇と称した幼女は、背中の翼を刃の様な形態へと変化させ、マテリアル三基を貫き、どこかへと消えてキリエさんもそれを追いかけて行ってしまった。

その直後、シャマル先生から通信が入り、

 

「各地で思念反応多数出現! 物凄い数です!」

 

その情報と共に、アースラへと向かう事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんが変な事を言ってる気がする……」

 

かすみが何やら感じ取ったらしいが、ここは海鳴市山中の洞窟の中。うさぎのぬいぐるみが目を閉じながら色々と反応検索を行い、そのデータをかすみのデバイスで解析するといった手法でもって、自分達と同じ転移反応の持ち主を探してはいたものの、

 

「クリス……、どう? かすみさんがいるから効率は上がったと思うけど……」

 

ヴィヴィオの問いにジタバタと何やらジェスチャーで答えるクリスであった。

 

「えっと……? 転移反応じゃなくて、幽霊みたいな変な反応が沢山ある?」

 

「何でジェスチャーが分かるんだ?」

 

「何となくですかねー。クリスも一生懸命伝えようとしてますから、分かっちゃうんです」

 

カズマ曰く、自分にはウサギのジェスチャーの意味は分からないらしい。

 

「確かにおかしな反応です。幻と言うか……、それなのに実体を持ってるような……」

 

「ゴーストの類でしょうか?」

 

「だったら私の出番ね! 悪霊退治ならどんと来いよ!」

 

そんな単純な物ならそれでいいが、自分達が過去に来てしまった事と、この反応は無関係ではない。それはこの場の全員が何となく感じ取ってしまっていた事だった。

 

「調べに出てみますか? こうしていても進展はありませんし……」

 

「確かに……な。どう考えても、私達のこの状況と繋がりがあるだろう」

 

このままこの場所で調べるだけでは、何も前に進まないと……、そう考えてしまったのだろう。なので、

 

「だったら、かすみとヴィヴィオは引き続き検索を。アインハルトは護衛って事で残ってくれ。山の中なら俺達でその辺を探索してくるから」

 

「大丈夫ですか? だったらわたしも行きますから……」

 

「大丈夫だって! 幽霊ならアクアの領分だし、ここは俺達に任せて置けって。幽霊じゃなくても、ゆんゆんの魔法があれば大抵の相手には勝てるしな」

 

かすみの提案は不要と言わんばかりのカズマがアクア達を引き連れて、洞窟から飛び出して行ったのだった。

 

「カスミもそうだけど、あの娘達も結構強そうなのに、洞窟に残すとは思わなかったわ」

 

「俺だって、あんな子達を戦わせようなんて思わない。俺を何だと思ってるんだ、アクア?」

 

カズマからしたら、妹どころか未来の自分にとっては娘くらい年の離れているような子達にそんな真似はさせたくはない。……そんなのもあったが、

 

「カズマさんも、やっぱり男の子ね! てっきり私は、ダクネスを盾にしてる所とか、運悪く死んで私に蘇生される所を見せたくないからだと思ってたわ!」

 

「……そ、そんなわけないだろ……。は、はは、ははは……」

 

未来でユウがカズマ達、特にカズマをどう紹介していたかというと……、

 

ある世界の長く続いた争いに終止符を打った『最強の冒険者(最弱職)』と呼ばれ、ヴィヴィオにとって親とも言える男性からも一目置かれている凄腕だと教えてもらったらしい。

それを横で聞いていたアインハルトですら……、いや古代ベルカ戦乱の時代を生きた覇王(クラウス)の記憶を継承している彼女だからこそ、まるで目の前に英雄(ヒーロー)が現れたかのように、目を輝かせてカズマに憧れの様な視線を送っていた。

 

カズマにとっては嘘では無い物の、アクアの言う通りであの少女たちの前では格好悪い所を見せられないのも、また事実。なんとか彼女達を洞窟に残して探索に出たのだった。しばらくして……、

 

「あれは……ええっ⁉」

 

「嘘……これって……⁉」

 

「何かの冗談か⁉」

 

めぐみん、ゆんゆん、ダクネスがその場から動けないでいた。そこにいたのは鏡に映したように自分達にそっくりな人間だったからだ。

 

「……学校のパンの耳。ゆんゆんのお弁当……、ザリガニ……、セミ……取って来なければ……」

 

闇の欠片のめぐみんは、どうやらお腹を空かせていて食べ物を求めている様子であった。

 

「……お誕生日会でも誰も呼べない。ボードゲームも一人でできる。ワンちゃんもお花にも逃げられる……。もう悪魔が友達でもいいよね?」

 

闇の欠片のゆんゆんの切実なセリフを聞いたカズマ達は、一瞬だけ本物の彼女に視線を向けて一筋の涙を流していた。まさか自分そっくりの偽物が過去をばらすなど考えもしなかった二人は、

 

「「わあああああああ⁉」」

 

叫び声で偽物のセリフを遮ってはいたが、もはや手遅れであった。続けて、

 

「……クリス、何故だ? 何故、募集要項から、”鬼畜な性癖を持つ者”を消した……? 私の望みは魔王軍にあられもない姿にされて、その後……くっ……⁉」

 

「……ダクネスはあんまり変わらないな」

 

カズマが指摘した闇の欠片のダクネスは、本物と変わらずに頬を赤くしてその身を震わせている。最後は、

 

「……何で俺は駄女神なんて連れて来たんだ……。借金、損害賠償……もう嫌だ……」

 

カズマの闇の欠片まで出現していた。その言葉が気に入らなかった一人、それは……、

 

「ちょっと! この私を無理矢理連れて来ておいて、文句なんて言ってるんじゃないわよ! 私のおかげでベルディアも、あの魔王だって弱体化出来たんだから、むしろ私を天界から連れて来たのは大正解よ!」

 

アクアであった。まあ当人の言う通りでアクアがいたからこそ出来た事も多々あるのだ。……この場合、それで発生した損害については目を瞑っておいた方が良いだろう。

 

「……行きますよ! 『深紅の超絶破壊者(クリムゾン・ノヴァ・ストライク)』……。あの偽物を跡形も無く消し飛ばしましょう!」

 

「おい! 止めろ!」

 

めぐみんが我慢の限界と言わんばかりに、爆裂魔法の詠唱を始めてしまっていた。ここでそんなの撃ったら大騒ぎになる。それを分かっていたカズマ達は即座に止めようとはしたが、

 

杖の先からは何も出ずに、辺りがシーンとなっていた。

 

「……そういえば、さっきドレインタッチで魔力吸い取ったっけか」

 

「カズマ! 早く魔力を返してください! あのパチモンを吹っ飛ばしますから‼」

 

ここで爆裂を撃たせるわけにはいかない。それはめぐみん以外の全員が分かっていたようで、アクアに無理矢理引きずられながらダクネスの後ろへと引っ込んで行った。その間にも……、

 

「これは一宿一飯のお礼……。転んだ振りをして、人の良さそうなのにアクシズ教の入信書を……」

 

「……友達に……奢るために……アルバイトしなきゃ……」

 

闇の欠片から次々と明かされる紅魔族少女達の恥ずかしい秘密。二人共、顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。

 

「トラクターってなんだよ? せめてトラックだろ……。俺の心臓はその程度でショック死しちまうのか……」

 

淡々とカズマの知られたくない秘密も暴露されていく。ダクネスが首を捻りながら。

 

「とらっく? とらくたー? 何だそれは?」

 

「頼むから聞かないでくれ! 思い出したくもない‼」

 

「カズマさんの死因! 今思い出してもお腹が痛いわ‼ あははははは‼」

 

アクアのみカズマと出会った頃を思い出したらしく、腹を抱えて大笑いしていた。

 

「あいつら……もう我慢ならねー! 『ファイアボール』ッ!」

 

堪忍袋の緒が切れたカズマが中級魔法でめぐみんの偽物を攻撃すると、元々爆裂魔法以外のスキルを取っていない彼女の偽物だけあり、しかもあちらには爆裂魔法を撃つ程の魔力が無いらしく、特に攻撃されずに倒せた。

 

「よくもやってくれましたね⁉ でしたら私はこうです!」

 

偽物とはいえ、自分が倒されるのを見せられて良い気分はしないめぐみんが、今度はカズマの偽物に殴りかかり、その脳天に直撃した杖の一撃で程なく消えていった。

 

「おい! 何でわざわざ俺を殴るんだよ!」

 

「紅魔族は売られた喧嘩を買う種族です! カズマが私の偽物を倒したのが悪いのです!」

 

お互いに自分の偽物を倒されて微妙な気分となっている二人の口論の横では、

 

「……私の偽物、多分、紅魔の里にいた頃のだ。中級魔法しか使えないみたい……」

 

ゆんゆんのみが自分の偽物の分析をしながら、特に苦戦することなく勝利を収めていた。そして残る一人……ダクネスの偽物を各自が攻撃していったが、

 

「なぜだ⁉ なぜ……何も感じない⁉ これでは……」

 

その偽物は何かに驚いているような感じだった。ダクネスの防御力からすれば、この場では一番の難敵かも知れないが、その敵が何故か自身に愕然としていた。

 

「何だ⁉ あいつ……何に驚いて……?」

 

「成程、あの偽物は痛みを感じないらしい。これならば私にとっては地獄だろう」

 

つまり、ドMさんにとっては痛みを感じない体なんぞ何の意味も成さないと、そう言った説明であった。するとダクネス(本物)は、

 

「私の偽物よ……。これは悪い夢だ。目を閉じて力を抜けば、いつもの素晴らしい日常が帰って来る」

 

自分の子供をあやす様な慈愛に満ちた表情で偽物に語り掛けると、

 

「……ああ。夢か……良かった……」

 

未練なぞ、もうすっかりなくなったと言わんばかりの安心した表情で消えて行ってしまった。

 

「「「納得いかねー(行きません)!」」」

 

殴って無理矢理消えたカズマ達の偽物と比較して、まるで成仏したかの様に消えたダクネスの偽物に、嫉妬にも似た感情を持ってしまったらしい。

その後、周辺を探索したが特に何もなかったので洞窟に戻る途中に、何かに気付いたカズマが、

 

「そういえば……、何でアクアの偽物が現れなかったんだ?」

 

「カズマさん……。多分あれは強い未練や恨みが具現化しているものよ。この水の女神たる私、日々をストレスフリーで生きている存在には無縁よ!」

 

「つまり、お前は毎日を何の悩みも無く過ごしてると?」

 

「当然よ! アクシズ教の教義を思い出しなさい! それで全て解決するわ! それとうちの子達だって、あんな偽物なんて現れないわ! 何せアクシズ教徒だもの」

 

アクアの説明に色々と思い返してしまったカズマ達は、妙に納得してしまい、今更ながらアクシズ教徒は恐ろしい者だと再確認してしまったのだった。

 




トーマが主人公を怖がってる理由は……GODエンディングを知ってる方なら何となく想像できるかと思います。
空の上で撃墜されたり、特訓を科したりしてるからですね。Forceの時代だと、少なくとも”か弱く”はありませんから。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。