この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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どれだけ猫を被っていても、子供は大抵口が悪い

カズマ達が洞窟に戻る途中で、またもや自分達の偽物らしき者たちと遭遇していたが、こう何度も出て来ては対処も慣れるという事で、特に苦労することなく戦闘を進めていた。だが……、

 

「……私、もうお嫁に行けません……」

 

「私も……ぐすっ……」

 

紅魔族の二人は現れたそばから、自分達の恥ずかしい秘密を口にする偽物を良いだけ倒したものの、本人ですら忘れていた黒歴史を思い出したのと、カズマ達に知られてしまったのとで憔悴しきっていた。

 

「……あ、あのね? 気にしちゃいけないと思うの! お魚と友達になれるなんて夢があるわ!」

 

アクアが何とか元気付けようとしていたが、それを聞いた瞬間、ゆんゆんがビクッと体を振るわせてしまっていた。これは慰めるどころか、どう考えても精神にクリティカルヒットを喰らわせている。

『魚類とだって友達になれる』――学生時代に友人がおらず、学校の図書館でそのタイトルの本を読もうとしたところ、クラスメイトに見つかって恥ずかしい思いをしたとか……、

 

「居酒屋など、酔っ払いの巣窟だ。めぐみんの場合は……、ま、まあ……その、なんだ! 13歳になったばかりの頃だろう? 今ならば失礼な事は言われないはずだ!」

 

めぐみんは冒険者としてアルカンレティアで路銀を稼ごうとした際、居酒屋でのバイト中に客から主に発育について指摘されてしまい、偶然その場で持っていたおでんを、そのお客さんにぶちまけたなど……。

 

「お願いですから……もう何も言わないで下さい!」

 

その話題を出すだけでダメージを受けてしまう……、そんな状況になってしまっていた。

 

「ユウがいなくて良かったです……本当に……」

 

「うん。それだけは本当に良かった……」

 

本来いるはずのもう一人は、この時代では子供であり、彼に色々と知られなかった事だけが幸運だった。

 

「……っと、噂をすれば何とやらだな」

 

次にカズマ達の前に現れた闇の欠片は、彼らの良く知っている少年の姿をしていた。ただし、自分達が知っているよりも遥かに幼い。間違いなくこの時代のユウだった。彼は目の前の相手を見据えて、

 

「……あの、フェレットを連れたツインテールの女の子を見ませんでしたか?」

 

カズマ達に()()()()()()()()()()、その女の子の行方を聞いていた。

 

「……確か、市街地の空で一度会ってるよな?」

 

「……? あの、すいません……、お兄さん達は……?」

 

カズマからの返答に怪訝な表情をする目の前の少年の様子に、

 

「……あれ、本人じゃないわ。存在が虚ろで、その内に消えるとは思うけど……」

 

「つまりはユウの偽物ですか。私達もそうでしたが、見た目での判別は付き難いですね」

 

「こうして見ると本当にただの子供だ。いや、あの格好と杖で分かるが……」

 

「両手に一つずつ杖を持ってるのも珍しいです。昔はあんな風に戦ってたんですね……」

 

各々が率直な感想を言い合っていると、

 

「もしかして……、あなた達は、あの金髪の子の関係者ですか? 服装が変わってます……」

 

思念体である少年の口から出た”金髪の子”……。その言葉から誰の事かはすぐに想像はできたので、アクアから、

 

「金髪って……ダクネス……じゃないわよね? もしかしてフェイト?」

 

「そうですか……。あの子はそんな名前なんですね。すいませんが、居場所を教えてください」

 

一同、顔を見合わせて何の事かといった雰囲気になっていた。そして少年からは敵意の様な物も感じる。

 

「居場所なんて……私達には分かりません! そんなのを聞いてどうするつもりですか?」

 

「なのはに近づかない様にして欲しいだけですから。知らないわけないですよね……? 名前知ってましたし」

 

なのはとフェイトは、カズマ達からみても親友と言ってよい間柄だったはず。それを近づかない様にとはただ事ではない。アクアの話や今までに遭遇した自分達の偽物と同じく、過去の記憶を持っているようだが、その時代の二人はどんな関係だったのだろうか……、と全員が思案してしまったが、

 

「あいつは……なのはは頑固ですから……、無理矢理にでも止めないと、大怪我する前に……」

 

「だから私達は居場所など知らん! 言い掛かりも大概に――」

 

「……すいませんが、あの子の事、教えてもらいます!」

 

その宣言と共に、少年の思念体はカズマへと一直線に突撃して左手に携えているストレージデバイスの先端に魔力で構築した刃――一見、槍のように見える杖を振りかぶり一撃を――

 

「ちょ……ちょっと待て! 危ないだろうが!」

 

カズマも思念体のスピードに驚いたものの、16歳時の少年はもっと早い。それを見慣れているために咄嗟に反応できたのが幸いだった。紙一重で避ける事には成功したが、

 

「やるしかない……よな?」

 

「カズマ、どいてなさい……。あの姿は痛々しくて見てられないから、私が一発で消してあげるわ!」

 

アクアが拳を握り、精神を統一。そして目を瞑り、深呼吸して裂帛の気合と共に……、

 

「『ゴッドブロー』ッ‼」

 

魔力を纏ったその拳を思念体の顔面へ叩きつけようとしていた。

 

『ゴッドブロー』――女神アクアの怒りと悲しみを乗せた必殺の拳。アンデットは有無を言わさずに浄化し、たとえ生者であっても、その一撃に耐える事は適わないという……、かつて『魔剣の勇者』ですら沈めたアクア渾身の一撃である。カエルという例外は存在するが。

その力の前に思念体の少年では、成す術も無く霧散する。少なくともアクアはそう思っていた。しかし……、

 

「へっ……⁉」

 

その驚愕はアクアの物であった。直撃すると思われた自身の拳はスカッと空を切り、返す刀で、

 

――ゴチン‼

 

相手は杖を使った打撃でアクアの脳天に渾身の一撃を与えていた。攻撃を喰らったアクアはしゃがみ込み、攻撃を受けた部分を摩っている。たんこぶの様な物が見え隠れしてるが、数秒後。

 

「カズマ! あの子、強いんですけど! 9歳の筈なのに私の拳を避けてカウンター喰らわせたんですけど! 本人は弱かったって言ってたのに、何でよおおおおお‼」

 

思念体は9歳のユウを元にしているので、確かに弱い。だが、それはあくまで彼の周りに比べてである。その周りは、AAAランクの魔力を魔法覚えたてで自在に扱えた者や、母親から受け継いだ資質を持ち英才教育を受けた娘。そして、『闇の書』の転生先へと選ばれた車椅子の少女などだ。その上、その使い魔や従者達も相当な使い手なので、劣等感を持つのも馬鹿らしい程の差があったりする。

そんな、自分より格上しかいない環境で、ほぼ実戦形式で生き残ってきた人間が弱いかと言えば、決してそんな事はない。彼とて現在でも本局武装隊員程度の力量は持っているのだ。むしろ年齢を考えれば優秀と言ってよい。

 

「動きだって見えるし、攻撃力もそこまで高くないだろうが! あの姿で油断しすぎだ! 小さくてもあのユウだぞ!」

 

「だって! あの場面だと私の拳で消え去って、満足して”アクア様、ありがとうございます……。”って言う所でしょ⁉」

 

アクアが何やら喚いてはいるが、あちらは自分を思念体だとは思っているわけではなく、普通に戦闘をしているだけなので、反撃だってするし攻撃だって避ける。その辺を何か勘違いしているのかもしれない。

 

「仕方あるまい。カズマ、私が囮になって気を引き付けておくので、死角から攻めろ。めぐみんは爆裂を撃てんし、ゆんゆんも精神的に消耗しているからな」

 

「分かった。それじゃあ――」

 

ダクネスの提案に乗り、カズマは潜伏を使いながら身を隠しつつ正面には剣を構えるダクネス――その布陣で向かって行ったが、当然ながらダクネスの攻撃が当たるわけはなく、相手からの攻撃をただ喰らっていた。それを、

 

「みんな……、大変だ!」

 

ダクネスが何か重要な事に気付いたらしい。目を見開き、真剣な表情で、

 

「攻撃が……あのユウの苛烈な打ち込みが見る影もない! これでは……、私が欲求不満になってしまう! いや……これは新手の焦らしプレイか⁉ 温い攻撃で油断させておいて、本命の一撃に耐えて見せろと! そういう事だな!」

 

自分の予想と違い過ぎる目の前の思念体の攻撃に絶望したり、勝手に盛り上がったりしていた。

 

それにめぐみん、ゆんゆん、アクアでさえも口を開けてポカンとしている中、

 

「当り前だろうが! この状況で何言ってるんだ⁉」

 

何とかカズマだけはツッコミを入れていた。しかし潜伏スキルを使っているにも関わらず、声を出してしまったのが悪かったらしく、

 

「えっ⁉」

 

思念体がダクネスの方を向いたまま、右手で逆手に持っているインテリジェントデバイスから発生している魔力刃をカズマの顔先へと突き付けている。それに思わず後退ってしまったカズマだったが、

 

「……あの、出来れば終わりにしませんか? 俺はあの子の居場所を知りたいだけですから……」

 

敵は何故かカズマ達を憐れむような視線を送り、戦闘態勢を解こうとしていたが、それに対し、

 

「おい! さっきの眼……すげームカつく! 子供の癖して何で大人を馬鹿にした目してるんだ!」

 

「えっ……? そんな事は……」

 

「いいや! 俺達を馬鹿にしていたな! こう見えても、魔王だって倒したパーティーだ! あいつとはいえ、ガキにそんな目で見られる謂れはねえ!」

 

カズマのみ激高してしまっていた。思念体はかなり狼狽えてしまっている。

 

「……カズマったら何ムキになってるの?」

 

「おそらく……、子供にあそこまで同情されるのは頂けないのでしょう」

 

「うーむ……。これは……珍しい。カズマがここまでとは……」

 

「あの……何でしたら私が相手をしますから」

 

女性達が各々の感想を口にしていたが、そんなのはどうでも良いとばかりに、

 

「行くぞ! 『バインド』ッ!」

 

盗賊スキルのバインド、ロープやワイヤーで相手を拘束するための物ではあるが、目の前の闇の欠片はそんなのは捕まる前に斬れば良いと、魔力で形成された刃を振るっていたが、

 

「これ? 普通の縄じゃない⁉」

 

「バカか? 縄は本物のお前に斬られてるからな! これはミスリル製のワイヤーだ! どうだ、斬れないだろ? はははははっ!」

 

ミスリル――ゲームなどでもおなじみの鋼より硬いと言われる希少金属である。それで造られたワイヤーは霊体すらも拘束できるという。その様子を見た女性陣は……、

 

「「「「うわっ⁉」」」」

 

カズマの大人げない行動にドン引きしつつ、後ずさっていた。

 

「お前だって、バインドで動き止めてから攻撃するからズルとは言わないよな? まあ俺のは、お前と違って自前の能力じゃなく、財力で強化してるがな!」

 

「……分かりました。これを解くのは時間が掛かりますので……」

 

「ん? 降参か? 随分と殊勝だが……、大人相手に生意気な口を利くと――」

 

「バリアジャケット、パージ!」

 

「そんなのありかああああああ⁉」

 

その合図とともに、思念体のバリアジャケットの上着が砕け散り、その衝撃で自身を締め付けるワイヤーが幾分か緩んだ隙に空へと上がり、射撃と砲撃の雨あられを見舞っていた。

 

「ずりーぞ⁉ 空に上がるなんて……! こうなったら……『狙撃』ッ!」

 

狙いを定めて撃っていないカズマの連続狙撃は、その幸運の高さから全て相手に命中する軌道を取り、真っ直ぐにその矢が向かって行っていた。

 

(相当名のある狙撃手? 無茶苦茶に撃ってるはずなのに全部が必中のコースだ……)

 

冒険者なんてものを知らないため、そう思ってしまったらしいが、目の前の相手は軽視してはいけないとそう感じ取ったようだ。

 

「ロードカートリッジ。カノン、セット」

 

その指示と共に、カートリッジを消費し、高威力の砲撃で相手を倒そうとしている矢先、

 

「『ライトニング』ッ!」

 

カズマの雷の中級魔法が闇の欠片へと直撃し、ヒューっと自由落下してしまう。先程、ワイヤーの拘束を解除するために、バリアジャケットを一部パージしたのも悪い方向に転がったらしい。

立ち上がる事すらできず、腹ばいのままカズマから離れようと必死になっていたようだったが、

 

「さて……、大人を蔑んでおいて、これで済むと思う――」

 

カズマが闇の欠片にゆっくりと近づくと、不意に何かに足を取られてしまっていた。そのせいで顔面から地面に激突し、ゴツンと鈍い音が周りに響いていたが、カズマが足元を確認すると、雑草を結んだトラップのせいで転んでしまったらしい。

おそらくそれを仕掛けたであろう張本人の方を向くと、何事も無かったように立ち上がりアッカンッベーをしてカズマに魔力弾を放とうとしていた。怒りから小刻みに震えたカズマが、

 

「このいたずら小僧っ! もう容赦しねー! 覚悟しろ!」

 

敵の放つ魔法なんて、喰らっても構わないといった怒涛の勢いで闇の欠片へと肉薄し、再度ミスリルワイヤーで拘束した後、ヒョイっと持ち上げる。その様子を見て、

 

「そういえば……クルセイダー(ダクネス)の防御スキル修得してたわね? 最初っからああすれば良かったのに……」

 

「そう言ってやるな。カズマとしては、華麗に勝ちたかったのだろう……」

 

「い、一応……魔王を倒した男……ですよね?」

 

「うん。ほとんど相打ちだったみたいだけど……」

 

”魔王を倒した男”、……その通りなのだが戦闘方法が泥臭いというか、最初と本質的にあまり変わっていないのが自分達にも当てはまってしまうので、ゆんゆん以外の全員がどうしてよいか分からなくなっていた。一方、

 

「離せ! 何で魔法まで発動しないんだよ!」

 

「悪いな……。『スキルバインド』も使わせてもらった。これでお前は普通の子供だ! さて……覚悟して貰おうか!」

 

「このハゲ! 男の子に手を出す変態野郎! 襲われるー! 助けてー!」

 

「この口の悪いガキが! どこでそんな言葉覚えた⁉ 未来のお前はこめっこ心配してたが、このままじゃ碌な大人にならねーぞ!」

 

持ち上げられながらもジタバタしている闇の欠片だった。思念体とはいえ、まだ子供なので気の毒になってしまったのだろう。めぐみんから嗜めるように、

 

「まあまあ……、落ち着いてください、カズマ。子供の言う事ですから。心の暗い部分が出てきてしまっているのでしょう。ここは大人として寛大な気持ちで――」

 

「うっさい。ぺったんこ」

 

その瞬間、めぐみんが杖を振り下ろし、ゴツンと頭蓋骨から響く音が聞こえたと思ったら闇の欠片は霧散して消えていた。

 

「……未来に帰ったら、その辺をきちんと話し合う必要がありそうですね。心の闇とはいえ、本人の言ですから……」

 

((((お前(めぐみん)の方が大人げない!))))

 

めぐみん以外の全員が同じ感想を持ったようだったが、それを口にせずにそのまま洞窟へと戻ると、

 

「あの……この大きい反応の居場所を教えてもらえませんか?」

 

何故か赤い髪のお姉さんが洞窟の前で、かすみ達に『砕け得ぬ闇』――システムU-Dの居場所を問いただしていた。

 

「ええっと? あなたは……?」

 

「ああっ……⁉ すいません! ちょっと変な反応があったので、立ち寄ってみただけなんですが……、丁度私もシステムU-Dを探していまして……」

 

かすみ達が怪しいお姉さんに対して戦闘態勢を取ろうとしているが、

 

「わたしはアミティエ・フローリアン。親しい人はアミタって呼びます。今は急を要していまして、妹を止めないといけないんです!」

 

”妹を止めないといけない。” それを聞いてかすみも思う所があったらしい。目の前のお姉さんに対し、

 

「わたしも……お兄ちゃんが命懸けで止めてくれました。色々あって……」

 

「お兄さんがおられるのですか? 喧嘩したりは?」

 

「たまにありますけど、お兄ちゃんの事が大好きですから、すぐに仲直りしちゃいます」

 

屈託のない笑顔で答えるかすみに対し、寂し気な表情を浮かべるアミタであった。

 

「あなた方はもしかしたら……? その……もしかしてこの反応は……⁉」

 

かすみ達が検索していた中で、ひと際どころか異常と言えるほど大きい魔力反応の位置を確認し、

 

「アクセラレーターッ!」

 

アミタは猛スピードでその反応の元へと向かっていた。カズマも一部始終は目撃していたが、

 

「何なんだ⁉ あのお姉さんは……」

 

いきなり飛び立った人間にどうして良いか戸惑っているらしい。しかし、かすみは、

 

「わたし……あの人を追いかけてみます。凄く悲しそうな顔をしていたから」

 

「待て! それは駄目だ! お前に何かあったら、ユウだって悲し……怒り狂ってどうなるか分からないからな!」

 

「あの男も日に日にシスコンの気が出て来ていますし、ここはカズマの言う通りにした方が……」

 

カズマやめぐみんも止めようとしていたが、決意に満ちた表情のかすみが、

 

「けど、お兄ちゃんだったら絶対に追いかけると思う。わたしの時みたいに」

 

その制止を振り切り、一目散にアミタを追いかけて行ってしまった。

 

「カズマさん⁉ どうするのよ! 早く追いかけないと!」

 

「ああっ……。ったく、一人で突っ走るのも似て来たのか⁉ 本当は血が繋がってるんじゃねーか、あの二人は⁉」

 

カズマ達もアタフタしながら、かすみの飛んで行った方向に向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけましたよ。システムU-D!」

 

ここは海鳴市街地上空。かすみから得た情報でシステムU-Dと対峙するアミタだった。その目の前の少女の服装――正確には前とは違い、色彩が赤と黒を基調としたものに変わっており、何か悪い予感を感じさせる。

 

「協力してください。あなたの持つ『エグザミア』を妹に渡さないように……‼」

 

「『永遠結晶』エグザミア、これは私の大切な物だ。これが無くなれば、私はこの体を保てなくなってしまう」

 

それなら好都合とばかりに、システムU-Dの護衛を買って出ようとしていたアミタが突如攻撃を受けてしまう。その前にU-Dがギアーズについて何やら気付いていたらしいが……。

 

「全く……、思い通りにならない事ばかりだけど、最悪エグザミアさえあれば何とかなる‼ 私達の未来で博士に希望をあげられる‼」

 

アミタを一時的に行動不能にし、U-Dの持つエグザミアを奪い取ろうと戦闘態勢を取るキリエ。それを必死になって止めようとはしていたが、そのまま両者は戦闘を開始してしまっていた。

色彩が変わって攻撃力も上がっているらしく、キリエ一人ではどうにもならない戦力差があった。

 

「うう……ああ……」

 

「君は時の操手足りえない。この魄翼の前に鉄屑として砕けて消える。……それが定め」

 

もう勝負はついているにも関わらず、まだ諦めないといった瞳でU-Dを睨みつけるキリエに止めを刺そうと――

 

「待ってください! この人はもう戦えません。これ以上は止めて下さい!」

 

「あ……あなたは……⁉」

 

突如目の前に現れた黒髪の少女に驚くアミタであったが、それとは逆にU-Dは、

 

「君も時の旅人。そして、『厄災の子』。その力がある限り、あなたは苦しみ続ける。私と同様に……」

 

「……⁉」

 

まるで知っているかのように、かすみの素性を言い当てていた。それに動揺してはいたが、目の前の自分と同じ位の年齢に見える金髪の少女は。

 

「白兵戦システム起動。出力10%」

 

その言葉と共に、かすみへと襲い掛かったのだった。

その頃、地上ではカズマが千里眼を使い戦闘状況を確認していたが、

 

「かすみが押されてる⁉ 何なんだよ、あれは!」

 

「カズマ、落ち着きなさい! 今のかすみは全力は出せなのよ! だったら……」

 

「そんなレベルじゃねーんだよ! あんなの……魔王城前で戦った時のかすみより……ずっと⁉」

 

人造神器を装備していた頃のかすみなら、下手すれば前魔王や現魔王すら一対一で倒せるかも入れない程の力を持っていた。カズマの見立てではそれを遥かに凌駕していると、驚愕を通り越して恐怖しか湧いてこなかった。

 

「カスミでもこのままでは勝てないだと⁉ カズマ、早く止めなければ!」

 

「爆裂を撃ちますから、魔力を返してください! いくらなんでもそれならダメージ位は……」

 

この状況をどうにかしようと、かすみの援護をしなければといった案を出しているうちに、

 

「砕け得ぬ力を前に、ただ静かに震えて眠れ……」

 

かすみに止めを刺さそうと攻撃を仕掛けようとした刹那。

 

「ふ……たり共、逃げなさい……っ! キリエも……そちらの方も守って見せます! あなたのお兄さんだって悲しみますから……!」

 

アミタがその一撃に割って入り、全力でU-Dを食い止めていた。その傷口からは機械の様な部品が見えている。それに驚いていたカズマ達やかすみであったが、

 

「全員……逃がさない。ここで消えてしまう方が、痛みも苦しみもきっと少ない……」

 

それがどんな存在だろうと構わず消し去る。そうしてアミタごと三人を亡き者にしようと魔力の翼を変化させようとしていた。しかし、

 

「逃げるぞ! ここで戦ってもどうにもならねー! 早く!」

 

ゆんゆんを背負って浮遊しているカズマが、かすみ達の前にテレポートで現れた。転移を行うには事前に地点の登録をしておかなければならないはずなのに何故、などと考える暇も無く、

 

「お姉ちゃん……⁉」

 

アミタがキリエをカズマのいる場所へと突き飛ばし、目で語り掛けていた。”妹をお願いします”……と。

 

「ゆんゆん!」

 

「はいっ! 『テレポート』ッ!」

 

ゆんゆんのテレポートでアクア達の元へと戻り、そこから全力疾走でその場から離れたものの、その直後に見えたのは、爆裂魔法を遥かに超える規模の大爆発だった。キリエが何かを思い出したように、

 

「あれって……、オーバーブラスト⁉」

 

おそらくは、ユウのリミットブレイクに似た事をやったのだと、その場の人間は直感していた。その後、すぐに、

 

「……助けてくれたことには感謝するわ。けど、もうこの騒動に関わるのは止めなさい。命の保証はできないわよ?」

 

キリエがカズマ達を一瞥して、その場を立ち去ろうとしていたが、かすみを見て、

 

「……あなたは、お兄さんを大切にしなさいね」

 

自分では叶わなかった願いを託すかのように、やさしく言葉を紡ぎながら飛び去っていた。

 

とりあえず、ヴィヴィオ達が待つ洞窟まで戻ろうといった話になり、その途中、

 

「カズマお兄ちゃん、さっきのテレポートってランダムだったの? それで運良く、わたしの前に?」

 

「違う。俺は予め、かすみ自身を転移先の地点として登録してたんだ。もし、お前に何かあってもすぐに駆け付けられるように……な。怪我でもされたら後でユウがおっかない……」

 

人を”地点”として登録するなんてのは普通は考えないだろうが、今回はそのおかげであの強大な力を持つ相手から、かすみを逃がすことに成功した。それは良いのだが、

 

「カズマさん……、お願いだから、カスミが着替えしてる時とかお風呂入ってる時にはやらないでね? もう冗談でロリマさんって呼べなくなるわ……」

 

「やるわけねーだろうが! 俺を何だと思ってるんだ⁉」

 

アクアへと必死に抗議していたが、何やら思い出したらしく、

 

「カスミだって、そのうちスタイル抜群の美少女になるらしいから、その前に登録は解除しておきなさい。でないと本当にユウが怖くなるわよ?」

 

大人のかすみの着替えや入浴に乱入――その後、ユウやかすみにどんな酷い目に遭わされるかを想像してしまい、震えながら洞窟へと戻って行ったのだった。

 




テレポートに関しては、こんな使い方もあるかもといった感じなので、あまりツッコまないでいただけると助かります。
(実際に人を”地点”として登録できるかは分かりませんので……)
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