この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
出張が終了し、こちらへ合流したクロノと極秘任務中のリーゼ達が確保したレヴィとキリエさん。レヴィからはU-Dを倒す方法を。キリエさんからは今回の騒動の発端――彼女たちの故郷、エルトリアの死触とそれをどうにかしようとしていた彼女たちの父親の現状についてが語られたが、どっち道こちらがシステムU-Dの確保をしなければならないのは決定事項であるため、その対策を練っていた。その中で――
「対システムU-Dプログラム?」
「はい。カートリッジユニットに装填して使用します。ロードしたカートリッジが効いている間だけ、砕け得ぬ闇を砕くことが出来る」
シュテルからの説明では、そのプログラムをカートリッジデバイスを持つ全員に完全な形で渡すのは難しいらしい。メインアタッカーを二人決定する事になったのだが……、
「じゃあ、四人でじゃんけんして決めっか」
「……ヴィータ、四人? 五人じゃなくて?」
「オメーは自動的に補欠になるに決まってんだろうが! せめて、もう少しあたしらと戦えるようになってからにしろ。フルドライブだって、まだちゃんと使えてねーだろ!」
くすん。分かってたけど……、分かってたけどやっぱり悔しい。肝心な時は人任せになっちゃう……。
「焦るな。今すべき事、やれる事は山ほどある。お前はそちらを優先しろ。そして、今よりもその先を見据えておけばいい」
「むー。それは分かってますけど、やっぱり……」
「まったく、お前もなのはと同じで負けず嫌いだな。今度、剣の稽古相手をしてやるから、それで我慢しろ」
ワシャワシャと、ちょっと荒い撫でられ方をされて髪が乱れてしまったが、構わずに、
「シグナムさん、約束ですよ! 絶対絶対約束ですよ?」
ああ、と呟いたのを言質にした後、U-Dの反応や未来から来たっぽい人達の反応について、解析の手伝いをするべくアースラ艦橋へと向かった。
俺が艦橋で解析の手伝いをしている間、プレシアさんの偽物が現れたとか、フェイトとアルフの家庭教師だった山猫の使い魔さんがまた出て来たらしい。後から聞いた話だったが、その一方では彼女らとは違う『闇の欠片』も未来から来た来訪者と激戦を繰り広げていたそうだ。
海鳴市山中。陣取っている洞窟でヴィヴィオ達と合流したカズマ達だったが、
「にゃ! にゃあ! にゃー!」
ティオは必死に鳴いて危険を知らせ、クリスもわたわた腕を動かして敵と思しき反応の方向を教えていた。
「一人、いえ一人の反応に二人分……?」
「何だそれ? 一人なのに二人って……」
カズマ達からしたら訳の分からない事態だった。その対象は空から舞い降り、
「ヴィヴィオ⁉ それにアインハルトも……? そっちは……⁉」
その少年――黒騎士状態のトーマ・アヴェニールは、はっきり言って不審人物に近い。バリアジャケットに身を包んでいる大人モードのヴィヴィオ達、格好は中世っぽいがまだ許容範囲なカズマ達と比べ、黒を基調とした鎧や大剣の様な武器はまだ良い。だが、全身の刺青の様な紋様はどう考えてもヤバい人間である事を想像してしまい、向かい合ってる相手を緊張させてしまう。
「見るからに危なそうなヤツだな……。あいつも未来の知り合いか?」
どうやら自分達を知っているらしい人物なので安心したいが、もしかしたら今までに良いだけ遭遇した偽物の可能性もある。それで慎重に事を進めようとしていたが、
「カズマ……! 何ですか⁉ あのカッコいい服装と剣は! 紅魔族の琴線に触れまくっています。これは……できれば、里の鍛冶師に似た装備を造って欲しいくらいです!」
紅魔族は黒色の服を好み、ディバイダ―のデザインも彼らのセンスからすれば素晴らしく、他が警戒態勢を取っているにも関わらず、めぐみん一人で盛り上がってた。
「良いから少し黙ってろ。お前は……誰だ?」
「えっ⁉ そ、そういえば、皆さん……若い……? でも……アクアさんだけはシグナム姐さんと一緒で変わってない?」
ヴィヴィオ達に初めて会った時と同じ事を言われてしまっていたので、彼女らと同じくらいの時代から来たのだろうと予想はしたものの、
「もっ……もしかして……トーマ⁉」
「あの方をご存知ですか?」
「お、おかしいですって! トーマはこんなにおっきく……もしかしたら変身魔法かも知れませんけど、空だって飛べないし、戦闘魔導師でもなかったはずです。それに……女の人の声も聞こえてますし……」
アインハルトからの質問に狼狽えながら答えるヴィヴィオだったが、警戒を解いてはいないので、カズマから。
「いや待て。もしかしたらヴィヴィオが知ってるより未来から来てるかもしれないだろ? そんなに慌てて戦闘に入ろうとするなって!」
「でも……もしかしたら偽物かも……」
困り果てたヴィヴィオに対して、自分自身も闇の欠片と戦闘して、その気持ちが分かってしまってるので、トーマは……、
「ヴィヴィオ……! ごめん、ちょっと確かめさせてもらって良い⁉」
「銀十字、非破壊打撃設定。DSAA-R、コンタクトシステム、ロード!」
どうやら格闘戦競技のルールで一戦交えようという事らしい。その様子を、
「あいつらは戦わないと気が済まないのか……」
「カズマ、これって男の子の仕事じゃないの? いいの、ヴィヴィオにやらせて……」
「俺があの格闘家や危なそうな剣持ってるのと、やりたいと思うか?」
「カズマさんだと、あの剣で一刀両断されて私に蘇生される所まで想像できるのが辛いわね……」
アクアの物言いにツッコミを入れたかったが、実際にその通りになりそうなので反論できない。ここはもう好きにやらせた方が良いと判断し、両者の試合を見守っていた。
「ヴィヴィオさん……。あの剣を紙一重で避けてカウンターを入れてます! あんな攻撃をよく見切って……」
ゆんゆんはヴィヴィオを”競技選手”、つまりはスポーツだと思って甘く見ていたのかもしれない。その見切りとカウンターを実際に目にして称賛の声を上げていた。
「何ですか⁉ 本のページが舞い上がったと思ったら、円環になって魔力砲の様なものが……⁉ こ、これもカッコいいです!」
めぐみんはトーマの攻撃方法を見て、腕をブンブン振り回しながら興奮している。
「はあ……はあ……、ヴィヴィオ、今度は是非私の急所に容赦ない打撃を見舞ってくれないか……。あれだけ正確な急所打ちなど、そうそう見れる物ではない!」
ダクネスはまたおかしなプレイに目覚めそうになっている。
「あの子……10歳よね? さっきの9歳のユウもだけど、あっちの子達って何? 戦闘民族なの⁉」
アクアは若くして亡くなった日本人を導く女神様である。その人間に特典を渡している存在からすれば、おかしな戦闘能力を持ってるので自分の常識が崩れている最中らしい。
「二人共……、凄く強い……! 特にヴィヴィオはお兄ちゃんやわたしと違う感じの強さ……」
かすみでさえ二人の試合に魅入ってしまっていた。そして……、
「ぴぴーっ! 試合終了! 勝者、トーマ!」
何とか僅差で勝利を収めたトーマであったが……、
「や、やばい……ヴィヴィオのボディブローで……うえっぷ……」
どうやら吐きたいのを我慢するほどの強烈な一撃も喰らってしまったらしく、顔面から血の気が薄れていた。
「とりあえず、気は済んだか? 両方、痛みも感じるし偽物って事はないだろ?」
カズマが双方のまとめをしていると、
「は、はい……。俺と年の変わらないカズマさんってのも新鮮ですけど……」
「か、かすみちゃんがちっちゃくて可愛いよ! ギューっと抱きしめたい!」
トーマの他にリアクトプラグのリリィがかすみに対して、ぱっと見、危ない事を口走っている様だった。もしこの場にゼスタでもいたら、遠慮せずに抱き締めなさいとでも言って彼女を導くだろう。
その後、各自戦闘態勢を解き、現状を確認するために話し合いの場を設けたが、
「つまり、トーマはヴィヴィオ達の時代の更に二年後から、ここに飛ばされた……か」
「最初は信じられませんでしたけど、小さい八神司令や浅間司令補、俺の知ってるよりも若いカズマさんやヴィヴィオ達を見たら信じざるを得ないです……」
少しばかり、がっくりと肩を落とすトーマであったが、何か気になる事があったらしく、
「未来でどんな風に言われてるんだ? 俺って……」
「え……? ええと……、司令補の説明だと、ここぞって時にはどんな困難でも打破する凄腕で、自分ももしかしたら敵わないかもしれない人だと……」
それを聞いて内心嬉しくもあり、ここで変なところは見せられないと改めて心に誓ったカズマであった。
「まだ未来から飛ばされた人間はいないと良いが……。さて、これからどうするか……」
「わたし達がここに来た時の反応を解析して、どうすれば帰れるかを試すのが良いと思う」
幸い、デバイスや銀十字の書も揃っているので、もしかしたら……というレベルの話ではあるが、かすみの言う通り、今はそうするしかないといった結論に至ってしまった。解析を進めてしばらくして、
『敵性反応検知』
「にゃ⁉ にゃにゃにゃ⁉」
「なーお⁉ にゃー⁉ にゃご⁉」
銀十字とティオが同時に敵の反応を捕らえ、それと共にクリスも慌てたように危険を知らせていた。しかも銀十字はともかく、うさぎと豹のぬいぐるみ、そしてちょむすけまでが毛を逆立てその反応に対して警戒どころか即座に戦闘態勢を取れる程、緊張していた。
カズマ達も洞窟の外にいる存在の威圧感を感じ取ってしまい、特にカズマは魔王と戦った時以上のまずいものがいると直感してしまっていた。
「どうする? 外にはもしかしたら、あの金髪の小さいのがいるとか……」
「そうかもしれませんけど……だったら逃げるしか……」
さっきゆんゆんがテレポートの転送先に登録した場所に転移するか、それともここで迎え撃つかの二択。それの判断をしていると、
「この反応……思念体? けど……今までのと全然違う……」
かすみが外にいる敵の解析をしていたらしい。U-Dではないのは幸運だが、ただの偽物ではない。それに情報はもっと必要だ。との考えとなり、
「……俺が潜伏を使いながら、外に出てみる。もしヤバそうなのならすぐに逃げるぞ? 良いな?」
その提案に無言のまま頷く一同。こんなところで無駄に戦うわけにも行かず、相手も不明瞭ならそれが最善手と全員が納得していた。
カズマを先頭に洞窟の入口へとゆっくり向かうと、そこに佇んでいたのは、
「ユウ……? いや……あれは……⁉」
「わたしの知ってるパパに近いけど……少しだけ違う気が……」
「俺の知っている司令補と同じ姿?」
カズマ、ヴィヴィオ、トーマが三者三様の感想を漏らしていたが、その人物はカズマの知る少年ではあるが二十代半ばといった雰囲気で、どう考えても様子がおかしい。自分達と同じく未来から来たのも予想はしたが、かすみが先ほど思念体と言い切っている。それに、肌に纏わりつく――まるで抜身の刃を突き付けられている様な威圧感はまだ健在だ。
「……そこに誰かいるのか?」
潜伏を使っているにも関わらず、自分達の存在に気付かれてしまっている。これは予想外だった。この相手はまずいとテレポートでの撤退をしようとしたが、
「あなた……どこから迷ってきたの? この私がそんな暗ーい気持ちの原因を聞いてあげるから、話しなさいな。そして早く消えて楽になりなさい」
「この馬鹿がああああああ⁉」
アクアが無警戒に偽物へと近づき、こちらの計画を破綻させてしまったので全力でツッコまれてしまっていた。しかし、その目の前の闇の欠片は……、
「カズマか……。ここはどこだ? 頭が割れそうに……」
「お前……俺が分かるのか? だったら――」
戦うことなく話し合いで済むかもしれないと、少しだけ安心してしまったが、思念体がある人物を目にすると。
「かすみが……何でここにいる? あの子は俺が……したはずだ……」
かすみの姿を見て驚きを隠せないといった様子の闇の欠片だった。その言葉の全てを聞き取る事はできなかったが、彼はある結論に達したらしい。
「そうか……アクアもいるのか。だったら蘇生させたな? かすみをどうするつもりだ? またかつての様に兵器にでもするのか……」
「な、何を言ってるの。ねえ⁉ 蘇生とか、兵器にするって……」
「魔王軍も神器も……、争いを生むものをこのままにはしておけない。また手に掛けるのは忍びないが……」
闇の欠片の言葉を理解できる者はこの場にはいなかった。まるで話が噛み合わずに、敵を殲滅すると……、その意志だけは感じ取る事が出来たが、その場の全員がコレと戦ってはいけないと、本能が訴えかけている。
「逃げ――」
「……させん」
カズマが撤退の指示を出そうとしたその一瞬で、ユウの偽物はゆんゆんの懐まで一足飛びで潜り込み斬撃を加えようとしていた。だが……、
「ダクネスか……。お前の防御は厄介だ。最後にするから大人しくしていろ」
「くっ……⁉ 貴様、本当にユウか⁉ 子供の頃の偽物とはまるで……」
ダクネスが何とか間に合い、ゆんゆんへの攻撃を防いでいた。いつもなら悪い癖でも出そうなものだが、相手からの殺気、その斬撃の鋭さから冷や汗を垂らしていた。
「何だよ⁉ ……あの左手に持ってるのは⁉」
「嘘だ……。この時代にある筈が……。ストライクカノンなんて……」
その驚愕はトーマの物だった。AEC武装――AMFやゼロエフェクトに対抗する為に造られた魔力駆動の兵器である。見た目は巨大な砲身。それとしても機能するが、結束状態では『突撃槍』と『重剣』としても用いられる。
砲身にして突撃槍、そして重剣。ファルシオンのフルドライブと重なってしまうのは偶然だったのか、はたまた運命と言える程の必然だったのか、この場の誰も知るよしはない。
「左手にはあのゴツイ兵器、右手にはいつもの杖とか……、どうなってるんだ⁉」
「違和感は前からありました。前に遭遇したユウの子供の頃の偽物はフェイトの名前を知らないのに、ファルシオンを持っていましたので。昔話を聞いた時だと、その時は持っていないはずなのに……」
めぐみんは思い当たる節があったようだ。ただ単純に過去の記憶から再生された欠片では無く、何らかのエラーや偶然が重なっていると。
「あの悠さんはもしかしたら、かすみさんを手に掛けてしまった……。そんなありえたかもしれない可能性なのかも……。ただ、それだけじゃなくて私達の記憶から再現されてる部分もあるんだと思います」
「つまり、かすみを殺して闇落ちした挙句、未来の自分を先取りした反則野郎だと?」
「はい……、多分……。みすてぃ先生がいないのが唯一の救いかも知れません……」
リリィの説明にカズマは呆れる他なかった。反則もここまで来ると、いっそ清々しいくらいだ、などと思ってしまった。
”みすてぃ”という名前は気になったが、考えている余裕はない。
「カズマ……。あのユウは……怖いです、とても。別人の様で……」
「実際に別人だろうが。あれは俺達の知ってるあいつじゃない。このままだと逃げる前に全員やられる」
もう覚悟を決めてやるしかないと、その決意を固めたカズマに、
「だったら、俺達が先に攻めます。良いよな、リリィ?」
「うん。その方が理に適ってるよ!」
「あのパパだったら、わたし達の方が攻撃パターンも詳しいですよね、アインハルトさん!」
「ええ……! 一度手合わせした際は、なす術なく倒されましたが、今回は……!」
自分よりも未来から来た少年少女達が、囮となるので、その間に策を考えてくれとそう訴えていた。その時代のユウの能力を一通り聞いた後、トーマ達は闇の欠片へと突っ込んで行ってしまった。
「おし! あいつらが時間を稼いでいるうちに、ユウを封殺するぞ! 耳かせ!」
アクア達に作戦を説明している間、ヴィヴィオ達は、
(アインハルトさん、気付きましたか? このパパは……)
(はい! やはり別人です。いつもなら……)
(ここまで見る影も無くなってしまうのか……。一人の人を失っただけで……)
念話で闇の欠片と戦いながら、自分達の知っている彼では無いと再確認できたらしい。
魔力弾や砲撃、打撃が飛び交う中、三人は徐々に押されつつあったが、
「交代だ! 一旦下がれ!」
トーマ達を呼び寄せてアクアの治療を受けさせてから、前に出たのは。
「……お兄ちゃん、わたし……」
「かすみ……、何で蘇った? あれでもう辛い思いもしなくて済んだはずなのに……」
「違うよ! 悪い夢を見てるのは、お兄ちゃんだから……。今、解放してあげる……!」
かすみが闇の欠片を見据えて、
「ゼファーブルーム……。ツインハンドモード」
かすみ専用デバイス、『ゼファーブルーム』――これは文字通り彼女専用に造られ、その強大な魔力に耐えられる堅牢性だけでなく、彼女の生まれ故郷の魔法とミッドチルダの魔法。その双方を同時に使うために造られた杖である。
普段は子供の身の丈を超える長杖だが、真ん中から分割して二本のワンドへと変わる。一つはミッド式用、もう一つは、あの世界の魔法用として……、その二つの同時行使を目的として製造されたデバイスだ。
「何だ? その杖は……」
「これは……お兄ちゃんがわたしにくれた杖だよ。わたしのお父さんやお母さんから受け継いだ魔法と、お兄ちゃんから教えてもらった魔法。その両方を全力で使える様に……って」
相手から発せられる威圧感は子供のかすみには、逃げ出したいほどのものだろうが、彼女は真っ直ぐに彼を見詰めて、
「『ライト・オブ・セイバー』ッ!」
紅魔族が得意とする、光の刃で対象を断ち切る上級魔法。それを左手の杖の先から発生させてファルシオンの魔力刃に対抗。相手は一旦距離を取り、ストライクカノンでの砲撃を試みようとしていたが、
「『ブラストカノン』ッ‼」
今度は砲撃同士で相殺し合い、勝負は互角の様に見えた。しかし……、
「カスミの方が劣る……だと⁉」
「マジかよ……。封印状態だけど、かすみより上って事か……。どれだけの化け物だよ……」
この場で不調のトーマとめぐみんを除けば、最高火力のはずのかすみに勝る。半ば信じられない光景ではあったが、両者そのまま戦闘を続行して……、闇の欠片ユウが隙を見せた時に、
「かすみっ! 下がれ! めぐみん……頼む!」
カズマの指示でめぐみんの後ろまで下がり、次は最強魔法を極めた一発限りならば比肩する者の無い魔法使いが、
「黒より黒く闇より暗き――」
爆裂魔法を闇の欠片に向けて、解き放とうとしていた。相手もそれを読んでいたとばかりに、
「……モード、エクスプロージョン・ブラスト」
集束砲に炎熱変換を加えた広範囲爆撃で相殺、または相手を一網打尽にする算段だった。その魔法は同時に放たれ、
「『スターライトブレイカー』ッ!」
「『エクスプロージョン』ッ!」
周囲は爆音と熱風を伴った衝撃波で土煙が舞い、視界が無いに等しくなる。それがカズマの狙い。千里眼を持っていないユウではこちらの捕捉に時間が掛かる。すかさず、
「ゆんゆん! かすみ!」
その名前だけで行動に移す二人の魔法使い。
「『フリーズバインド』ッ!」
「『ライト・オブ・セイバー』ッ!」
ゆんゆんのフリーズバインドで対象の足先から膝までを凍らせて、かすみのライト・オブ・セイバーでストライクカノンを破壊。動けないなら、数で攻めれば隙も出来るとヴィヴィオ、アインハルト、トーマが接近戦での波状攻撃を仕掛けようとしていた。
「……モード・『コールブランド』」
相手は動けないながらも、抜剣状態のデバイスで接近するヴィヴィオ達を迎え撃つつもりらしい。それを、
「これが……抜剣か! 思った以上の痛みと鋭さ! ああ……今度は本物で味わいたいものだ!」
ダクネスがその身を挺して闇の欠片へとしがみ付き、彼の身動きと手持ちの武器を封じる。そしてヴィヴィオ達の攻撃が届くかと思われたが、
「『チェーンバインド』……」
三人の動きをバインドで封じる。アインハルトだけは『
「なっ……⁉」
その驚愕は闇の欠片の物。彼の後ろにはいつの間にかカズマ、アクア、ゆんゆんがおり、アクアは自身の装備でもある杖にありったけの魔力を送り、目標を完全に消し飛ばす勢いでもって、
「『ゴッドレクイエム』ッッ‼」
闇の欠片の背中へ全力の一撃を加える。女神アクアの全力は思念体である闇の欠片に耐えられるものではなく。
「……そうか、あれだけの攻撃はアクアの存在を隠すためだけだったか。ゆんゆんの光屈折の眼晦ましと、カズマの潜伏、これにやられたか」
アクアの一撃を受けて体が消え去ろうとしているのに、冷静に自分の状態を分析しているのは、どう考えても……。その疑問を持ってしまったカズマから。
「お前……、もしかして……自分の状態に……?」
「ああ。違和感だらけだったからな。けどこれは感謝するところか。俺はかすみの言ってた通り、悪い夢……なんだな」
ユウのありえたかもしれない可能性は、目を閉じて静かに崩れ去って行こうとしていた。その間際に、
「悪いが、ここの俺を頼む。こんな惨状にならない様に……な。かすみも生きてるし、大丈夫だと思うが……」
「お前は一番まともそうに見えて、一番面倒な奴だからな! 分かったから安心して消えろ」
カズマが憎まれ口を叩いていたが、ユウは昔を思い出したように少しばかり微笑みながら、その体が散っていった。その様を、
「まったく、強いのに手の掛かる男です。……本当に」
魔王城前でかすみを犠牲にしようとしてしまっためぐみんも思う所があったらしく、爆裂後の気怠い体を押して立ち上がり、目を閉じ祈るように手を合わせていた。
もしかしたら、あの姿は自分の可能性でもあったかもしれないと。彼が幻だとしても、せめて安らかに……、そう願っていた。
その後……、とりあえず脅威は排除できたので、その場で休んでいると、
「やっぱり司令補とは別人だった。もし本物だったら、目晦ましも通じないし、最初の三人がかりだってあそこまで時間が稼げなかったはず」
「……お前らの知ってるあいつは……どんなのなんだ?」
トーマの何気ない一言で、彼らの未来のユウがどんなのか興味を持ってしまったカズマ達だった。
「ええっとですね……。わたしとアインハルトさんを素手で同時に相手をして、わたしたちが軽く倒されるんです。知らないうちに一撃加えられたり……。昔、リオのお爺さんを訪ねてルーフェンに行って、何かを掴んだとか言ってました」
「相手の動きを目だけで追うのではなくて、体全体を使って察知しているので、フェイントにも引っかからないとか……。私の断空拳も発動を察知されて、拳を突き出す前に潰されます……」
「フェイトさんほどのスピードじゃないのに、
ヴィヴィオ、アインハルト、トーマが未来の彼について語っていたのを総合すると、
「つまり……お前らの知ってるあいつは、今戦ったのより……強い?」
それに同時に頷く格闘少女達とトーマだった。
「……チートスペックが更にチートになるのか。あいつって人間か?」
カズマの呟きに肯定も否定もできなくなり、その場は静寂が支配して誰もが無言で佇むしかなかったのだった。
今回の主人公の闇の欠片は「魔王城前でかすみを手に掛けて、心の闇に呑まれた状態」という、可能性の姿です。
記憶はカズマ達といた頃が近いですが、能力的にはViVid、Forceが近いです。
GOD本編でも『銀十字の闇に呑まれたトーマの可能性』(リリィ予想)が出ていますので、それを参考にしています。
しかしこの主人公、闇の欠片含めて対カズマさんの勝率が悪すぎる。一回しか勝ってませんね。
かすみのデバイスが二つになるのは、114話の後書きで、デバイス名の由来になってるニリンソウから来ています。
1本の茎から特徴的に2輪ずつ花茎が伸びるそうです。
次回辺りから、未来組と現代組が合流すると思います。