この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

118 / 152
師の師は我が師も同然と言うが、やっぱりバトルマニアはおっかない

「俺らの他にも同じ反応を持ってる人間がいる……?」

 

「それが……ですね……。もう会ってるみたいで……」

 

もう二度と戦いたくないと思わせる、おそらく全盛時のユウとの戦闘後、カズマ達は自分達と同じ転移反応を持つ者を探していたが……、

 

「髪が長くて……桃色で……小悪魔っぽいお姉さん?」

 

「カズマさん⁉ クリスのジェスチャーが分かるようになったんですか?」

 

わたわたと短い腕で髪を表現したり、桃の果実や悪魔の角っぽいジェスチャーで、何が言いたいのか何となく分かったらしい。

 

「つまり……、あの時のお姉さんか……。関わるの止めろたって、そうはいかないか……」

 

あの人も騒動の渦中にいたので、普通の人間じゃ無いだろうが、さてどうするかと悩んでいると、銀十字の書から。

 

『猫型端末及び、猫によってブック本体に軽度の損傷。能動排除の許可を願います』

 

「にゃあ! にゃあ」

 

ガシガシと銀十字をかじるティオに、

 

「なーお。にゃっ!」

 

本の表紙に爪を立ててガリガリと研いでいるちょむすけ。外装がぬいぐるみのティオはともかく、ちょむすけの爪で結構な傷がついてしまっている。

この二匹、喧嘩しなくなったのは良いが、銀十字の書が割を食っている形になってしまった。

 

「銀十字さんを噛んだら駄目です、ティオ。めっ!」

 

「ちょむすけ、破壊衝動でしたらもう少し我慢してください。人をぺったんこなどと言った不届き者に目に物見せてやるのです!」

 

((((まだ根に持ってたのか……))))

 

アインハルトはともかく、ちょむすけを止めるめぐみんは、とある人物に対する憤りが見えていた。おそらく顔を合わせれば、現代の彼も未来の彼もただでは済まないかもしれない。闇の欠片のセリフの筈なのに、本人に対して物申す……だけで終わらないだろう。

 

「アイシスには、色々利点があるって言ってた……。泳ぐ時に抵抗が少ないとか、肩が凝らないとか、希少価値だ! ステータスだ! 胸を張れ。どっかの女神様みたいにパッドに頼るな……って」

 

アイシス――その名前を聞いて誰だか分からなかったが、リリィの説明にめぐみんだけはシンパシーを感じてしまったらしい。それとは別に、

 

「トーマの時代では25歳ですか……。その年になってそれでは、セクハラそのものではないですか⁉」

 

「確か司令補は……、それを口にしてすぐに、なのはさんに強烈なツッコミを喰らってました……。こう……壁にめり込みそうな感じの……」

 

それを聞いて未来のヤツも苦労してるんだな……と、ちょっとだけ同情してしまったカズマだった。何かを思い出し、

 

「……さっき、下手な攻撃なんて察知されるって言ってなかったか?」

 

「はあ……。司令補が言うには、ちゃんと察知して打点をずらしながら受けているので、”あんなのはスキンシップの一環さ! はははっ” ……と言って、ピンピンしてます」

 

「おかしな方向にはっちゃけてるな……」

 

カズマとしては、さっき見た闇落ち状態よりは良いんだろうが、仮にも公務員がそんなのって不祥事にならないのかと心配にもなってしまった。

 

「その話を聞いた後で、かすみちゃんにもバインドで縛られて正座でお説教とか……、それも抜け出そうと思えば抜け出せるのに、感慨深い顔で聞き入ってました。ええと……、”俺にお説教するくらい成長したんだなあ……”って、シミジミと……」

 

「あの男は……! 絶対わざとやってますね! 未来に戻ったら、その時代の私にも釘を刺すように言っておいて下さい!」

 

めぐみんのみプンスカ怒りながら、トーマ達に伝言をお願いしていた。

 

「面白い人ではあるのですけど……。着ぐるみで出没したり……」

 

「けど、あれは恥ずかしかった……。わたしもそうだし、ミウラさんだって……イメージがガラガラ崩れたって……。本人はノリノリでやってたけど……。まさかあの格好で稽古するなんて……、『謎のうさぎ師匠』をやってみたかったとか……」

 

アインハルトとヴィヴィオは、その時を思い出してしまったらしい。着ぐるみで出没って何やってんだ……といった雰囲気を醸しだしていたが、

 

「二人共、何もなかった⁉ 女の子なのにヌルヌルにされたりとか……」

 

「い、いえ。そういった事は特に……。悠さんは居合わせたかすみさんに引っ張られて行きました……」

 

ゆんゆんは王城でカエルの着ぐるみに、ところてんスライムでヌルヌルにされたのを思い出したらしい。年端も行かない少女達があられもない姿になってしまったのではないかと心配していた。おそらく『謎のうさぎ師匠』は、かすみに折檻されたと思われる。

微妙な雰囲気が漂った、そんな折、

 

『転送反応確認。脅威判定9体』

 

銀十字の書からの敵性反応と思しき警告が告げられた。

 

「9人……。どう考えても追手だよな……?」

 

『捜索対象発見。西側20km』

 

今度は自分達が探すことになった桃色さんの反応まで検知。せめてどちらか一方だけなら良かったのだ。だがこれでは追手を切り抜けつつ、捜索対象を確保するしか道はない。

 

「なのはさん達かもしれないけど……、八神司令は来ませんように、来ませんように……」

 

トーマが祈るように呟いていたが、これほど明快なフラグは逆に不安になってしまうカズマだった。

 

「トーマさんは八神司令に何か辛い思い出が……?」

 

「ユウも何回かやんちゃして、正座でお説教されてるからな。それかもしれない……」

 

「あの悠さんを……⁉ やっぱり八神司令は凄い方なんですね……!」

 

トーマはある意味、正座でお説教されるより辛い思いをしているのだが、それは本人しか知る由はない。とりあえず、各自でばらけて大事にならない程度に切り抜けて、後でちゃんと謝ろうとの意見で一致して各々で捜索対象の桃色のお姉さんを探す事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

かすみはカズマ達、特に浮けないアクア達の浮遊制御をしながら、捜索対象の元へと急いでいた。あまりスピードを出すと空に慣れない人達に無理を科してしまうので、少しは自重しながら飛んでいる。とはいえ、最近みんなを空で振り回しているので、そこそこ慣れて来たらしい。少しくらいは会話する余裕も出来た様だった。

全員で周囲を警戒しながら進んでいると、

 

「……げっ⁉」

 

カズマが千里眼で何かを見つけたらしい。顔から一気に血の気が引いていた。

 

「な、何? そんな顔されると、こっちまで不安になるんだけど……」

 

「よりにもよって、あの師弟コンビかよ!」

 

師弟コンビ――それだけでは誰だかは分からなかったアクア達だったが、あちらも自分達に気付いたらしく、猛スピードでこちらへと接近し、

 

「こちらは管理局だ。悪いが同行して貰うぞ?」

 

夜天の守護騎士、烈火の将シグナム。『炎の魔剣レヴァンティン』を携える凄腕の騎士であり、その近接戦能力は並大抵の魔導師など一撃で沈める事も可能な規格外である。

それはカズマ達も良く分かっている。その横には……、

 

「シグナムさん……。もうちょっと優しく言った方が良いです。それだと無理矢理首根っこ引っ張って連れて行くみたいですから……」

 

「む……、そうか……。普段の話し方がこうなので、特に気にしてはいなかったが……」

 

市街地上空で出会った、正真正銘本物の9歳のユウがその剣士に注意を促していた。続いて、

 

「皆さんを保護しに参りました。多分……お困りだと思うので、一緒に来て頂けませんか?」

 

9歳には似つかわしくない丁寧な言葉で、カズマ達の説得を試みていたが、

 

「この頃はまだ”姐さん”って呼んでないのね?」

 

「9歳でそんなの呼んでる方がおかしいだろ!」

 

アクアがシグナムへの呼び方を気にしていたが、この場では割とどうでも良い。”姐さん”呼びは、今後、シグナムの隊に引っ張られ、スナイパーの魔導師を真似るので、まだ先である。

 

「杖の二刀流……。変わってはいますが、未来では計4つの武器を状況に応じて使いこなしていましたから、この頃から片鱗はあったのですね」

 

「うん……。それだけじゃなくて、剣とか槍とかも使えるみたいだし、もしかしたらもっと使える武器があるのかも……」

 

「一度、私をモーニングスター替わりにすると言われたが、それもかも知れん」

 

めぐみん、ゆんゆん、ダクネスがこの時代の少年について各々の感想を持っていたようだ。

 

「お兄ちゃ……、あの……、ごめんなさい。一緒に行くわけにはいかなくて……」

 

「アミタさんとキリエさんの話しぶりだと、未来から来たらしいですよね? 帰る方法ならこちらでも探しますから、大人しくしてください」

 

一度会った際には、戦闘好きといった印象は受けなかったので、ユウは説得で大丈夫だと思ったらしい。しかし……、

 

「丁寧な話しぶりだが、一皮むけると結構乱暴な口調になるよな……」

 

「ええ……。ハゲとか変態とか、私もぺったんこと呼ばれましたね……!」

 

それはこの場の本人が言ったわけではないが、その辺はある意味子供らしいと言えるはず。

 

「まあいい。済まないがこちらに来てもらおう。お前達にも事情はあるだろうが、このまま好きにさせるわけには行かん」

 

古い騎士だからか、言葉使いが多少ぶっきらぼうな感じで、シグナムが彼らを確保しようとしていたが、

 

「悪い。こっちにもやる事があるんでな! ここは切り抜けさせてもらう!」

 

カズマが啖呵を切っていたので、自分で戦うのかと思いきや、

 

「かすみ! 適当に相手して隙を見て逃げるぞ! あっちは俺達を必要以上に傷付けようとはしないだろうから、頑張れ!」

 

「うん! 頑張る!」

 

主な戦闘はかすみに丸投げするつもりらしい。その様子を……、

 

「カズマ……、分かるけど、実際にやるのはどうかと思うの。カスミはこの場で最年少よ? ここは全力で逃げるとか、自分が囮になるとかそっちの方が、まだ絵になるわ……」

 

「そもそも遮蔽物も無い空の上で潜伏なんて無意味だし、狙撃だって防がれるだろうが! あの剣士の姐さんなら、ミスリルのワイヤーだって軽く斬りそうだしな! つまり俺は戦力外だ!」

 

「自信満々に言う事じゃないわよ……」

 

アクアが呆れかえりながら、ツッコんでいた。

 

「カズマお兄ちゃん、地上に降ろすね。戦ってる間にコントロールが効かなくなっても困るから……」

 

シグナムを目の前にして他に気を使っている余裕はないかもと……、そこまでの何かを感じとったらしい。かすみがゆっくりとカズマ達を地上に降ろすと、

 

「悠、お前はあちらの確保に行け。見たところ、かなりの使い手もいるようだ。気を引き締めろ」

 

「はいっ! では……ご武運を」

 

ユウもカズマ達を追って地上へと降下していった。少年はカズマ達をまっすぐに見据えて、

 

「あの……、もしかして未来の知り合いですか? 皆さんはデカい剣持ってるお兄さんみたく、狼狽えないみたいですけど……」

 

何となくではあるが、目の前の一行は未来の知人ではないかと、そういった予想で話しかけていた。それを……、

 

「そうね……。あなたは未来で私という女神に出会い、アクシズ教徒としてその力を振るうの。その姿と言ったらそれだけで、うちの子達が涙を流して喜んでいたわ!」

 

「アクア! 出鱈目教えるな! アクシズ教徒にはなってねーだろうが!」

 

「良いじゃない! 大体あってるしね。私の力を振るったのは本当なんだから!」

 

「アクシズ教徒……? って何でしょう?」

 

アクアが多少……、いやかなり自分の都合の良い様に脚色して未来での様子を伝えていた。アクシズ教は何かが分からない9歳は首を傾げている。

 

「それよりも、私をぺったんこと思っているのですか⁉ その辺を答えてください!」

 

「お姉さんは、そっちのワンドを持ってるお姉さんと違って、俺よりちょっとだけ年上な位ですよね? だったら普通じゃ――」

 

「おい、私はゆんゆんと同い年だ! どうしてそう思ったか聞こうじゃないか!」

 

「……背がちっちゃいです?」

 

その受け答えにワナワナと震えだしためぐみんだったが、今日はもう爆裂を撃ってしまったので、というより彼に爆裂魔法を撃つわけには行かないので、

 

「ちょむすけ。私が許しますから、先ほど本を傷付けていた破壊衝動を解き放つのです! 多少ひっかき傷を付けても構いません!」

 

それに対しちょむすけは少々困ったような様子だったが、一応主人の命令を聞く気ではあるらしく、ユウの正面に突っ込んで行った。

 

「ちょ……⁉ 猫に何やらせるんですか⁉ そういえばリーゼが来てるから、これも持って来てたんだった」

 

自分に襲い掛かろうとするちょむすけに対し、スプレーの様な物をシューッと吹きかけると、

 

「なー? にゃーん……」

 

酔っぱらった様に地面に転がる黒猫が出来上がっていた。ユウはそれを抱き上げて、顎を撫でたり背中を摩ったりしてすっかりちょむすけを手懐けてしまった。

 

「よしよし、ロッテに襲われた時のためにマタタビスプレー持っといて良かった。お前はここにいろ」

 

頭の上にちょむすけを乗せて、再びカズマ達の方を向くと、めぐみんが激高し、

 

「卑怯ですよ! 猫質(ひとじち)とは……。返して欲しくば黙って付いて来いとでも言うのですか⁉」

 

「えっと……、いきなりけしかけて、どうするつもりだったんですか? なあ猫ちゃん、あんな理不尽な命令する主人は放って置いて、うちに来るか? 美味しい猫缶買ってくるぞ?」

 

「なー……。ごろごろ……」

 

まだ酔っぱらっているらしい。頭の上で気持ち良さそうに喉を鳴らしているちょむすけだった。

 

「……先ほど、聞き逃してはいけない言葉が聞こえて来た気が……」

 

「襲われるってなんでしょう? いきなり訓練でも始まるんでしょうか?」

 

リーゼロッテ曰く、ユウもユーノと同じく美味しそうなネズミっ子らしい。襲われるとは、押し倒されて味見される事を言う。それに対抗するためにリーゼが近くにいるとマタタビスプレーを携帯するようになってしまっていた。

そんなバカげたやり取りが地上で行われている最中、

 

「くっ……⁉ この動き……、なのはやテスタロッサ以外にも、この年齢でここまでの使い手がいるとは……!」

 

「この人がお兄ちゃんの剣の先生……。接近戦じゃ勝てる気が全然しない……」

 

一人は炎を纏った剣を振るう女騎士、もう一人は両手に杖を持ち、ミッド式とシグナムにとっては初見の魔法を使う少女。その二人の戦闘は打ち合うたびに火花が散り、その威力から衝撃波が周囲を駆け巡っていた。

シグナムにしても見た目に惑わされてはならない存在だと感じ取ってしまったらしい。双方、激突して距離を取った後でレヴァンティンを鞘に納め、カートリッジを一発消費し、

 

『Schlange form』

 

その刀身が蛇の様な連結刃へと変化。それは蛇では無く、火竜と言わんばかりの炎を纏い、

 

「『飛竜一閃』ッ!」

 

もはや砲撃と言っても過言ではない射程と威力を誇る一撃がかすみへと迫っていた。それを……、

 

「『ライト・オブ・セイバー』ッ!」

 

上級魔法で迎撃しようとしていた。通常なら威力は大きいが、手刀や杖の先から片手剣サイズの光刃を出すのが精一杯の魔法だ。しかし……。

 

「なっ……!?」

 

かすみの杖から伸びた魔力の刃はシグナムの連結刃と同等の範囲と威力を持って彼女の攻撃を相殺していた。

 

(あの少女……。おそらくは主やリインフォースと同様に広域攻撃の適性がある様だ。魔力の刃を事も無げにあそこまで伸ばし、鞭のように扱うとは……)

 

シグナムは戦いながら冷静に分析を行っていたが、対する少女は……、

 

(ベルカ式は近接戦闘主体って聞いてたけど、あんな射程の攻撃も出来るなんて……。倒すなら長距離か超長距離で攻撃しないと……。けど、それだと避けられやすいし……)

 

封印状態とはいえ、自分と同格以上かもしれない騎士に対してどう勝てば良いかを思案していた。

二人は視線を合わせて、次の行動に移ろうとしていた。シグナムはまたしても炎を剣に纏わせて、一撃を入れようとしている。

紫電一閃――変換資質を持つベルカの術者にとっては、基本にして奥義と言える魔力付与による攻撃。その斬撃は下手な防御は簡単に斬り裂いてしまう。それを……、

 

「『ラウンドシールド』ッ!」

 

シールドでその勢いを殺してはいた。だが、剣の騎士の一撃はそれだけで防げるものではないのは承知の上だった。その防御が破られると同時に、

 

「『トルネード』ッ!」

 

杖の先から竜巻を発生させて、剣を防ぐのではなく相手を吹っ飛ばして距離を取る事に成功した。防御しながら詠唱を完成させてシールドが破られると同時に発動させたのが、うまくいったようだ。そのまま砲撃を仕掛けようとしたが、

 

「……中々、心躍る戦いだ。お前……、良い師に学んでいるようだな……。一つはミッド式、もう一つは分からんが、それを同時に扱い、戦技として統合している。にわかには信じられんが……」

 

「それを聞いたら、お兄ちゃんも喜びます。わたしの先生は、お兄ちゃんですから」

 

シグナムからの賛辞に少々照れながら嬉しそうな表情のかすみだった。

ちなみに、未来の航空戦技教導隊名物コンビの兄妹(ユウとかすみ)に対する評価は……、

 

普通は系統の違う魔法を戦技に組み込むのは最低数年かかる。それを覚えたてでやってのけるのは、ちょっと自分でも無理。(高町一尉)

あの兄妹、特に兄の方は(誉め言葉として)頭がおかしい。普通はあそこまでミッド式を使えるなら、扱おうなんて思わないが、うまい事双方の長所を取り入れてる(ヴィータ二尉)

 

だそうだ。あちらの魔法は殺傷能力が高いので、ミッドチルダで使う事はそんなには無いのだが、未来においては認可が必要とはいえ、EC因子適合者との戦いで役立っているらしい。

 

「だが、私もこのまま手ぶらで帰るわけには行かないのでな。悪いが、倒させてもらうぞ?」

 

目の前の相手は軽視していてはこちらがやられる。それを理解したシグナムは全力で斬り込もうと――

 

「これは……不可視のバインド……⁉」

 

「ごめんなさい……。シグナムさんが後退した隙に、わたしに接近するコースになりそうな所に設置させてもらいました。時間を掛ければ壊すのは難しくはないですから、しばらくはそのままジッとしてくださいね?」

 

そのままかすみは地上に降りて、カズマ達の元へと向かって行った。

 

(あの杖の使い方……、似てはいるが……まさかな……)

 

シグナムもユウとかすみに何か通じる物があると感じ取ったらしい。少年はストレージデバイスの魔法発動速度とインテリジェントデバイスの判断といった長所を同時に扱い、少女は系統の違う魔法の同時行使を可能としている。違う機能の杖を統合させて使用する使い手というのは珍しいのである。

 

「カズマお兄ちゃん! シグナムさんは足止めしたから、速く行こう!」

 

「でかした! とっとと行くぞ!」

 

ここはもう逃げの一手とかすみと共に飛び立とうとしていたが、

 

「カズマ! ちょむすけが猫質(ひとじち)のままです! あのままではどんな目に遭うか……」

 

ちょむすけにとっては、こちらで飼われた方が幸せかもしれないが、流石において行くのも忍びないのでカズマが、

 

「『スティール』ッ!」

 

スティールを発動させると、その手の中にはマタタビで酔っぱらったちょむすけが収まっていた。そして、そのままかすみの浮遊魔法で全員を運搬して、捜索対象の反応がある場所へと向かって行った。

 

「はあ……、はあ……。あのワンド持ってるお姉さん……強すぎ……。魔法だけじゃなく、体術もなんて……」

 

かすみとシグナムが戦っている時に、ユウは主にゆんゆんと戦闘をしていたが、禄に攻撃も当てられないまま終わったようだ。息を切らせながらその場に立ち尽くしていた。

 

「しっかし、ゆんゆんがユウを圧倒するなんてな……」

 

「ちゃんと成果が出てたんですね……。いつもやられっぱなしだったから」

 

「あの子供にやられたら、それこそ一大事でしょう! しかし……ユウの動きは良かったですね?」

 

「ああ……。次に会う場合は子供と侮らない方が良さそうだ。あの年でも一端の冒険者をやれるのではないか?」

 

そんな雑談をしているうちに、目標を発見し。

 

「おーい! 俺達が元の場所に帰る方法を教えてくれー!」

 

「……はい?」

 

ほぼ同時にヴィヴィオ達も到着した様で、叫び声をあげてキリエに対し詰め寄ってはいたが、時間移動に巻き込まれてしまったのを理解した様で、

 

「……迷惑をかけちゃったのね、ごめんなさい」

 

未来に帰るのは自分だけではどうしようも無いかも知れないと説明し、こちらでの目的が済んだら戻れるようにするという事で、とりあえずは安全な場所――つまりはアースラへと彼らを案内する事になった。

 

「彼らの素性とかはあまり聞かないであげてね。会話もあまりしない方が良いと思う」

 

彼らを案内していたユウとはやては、それを了承していたが、

 

「我が名はめぐ――」

 

「何やってんだ! さっき会話するなって言われただろうが!」

 

「やるなと言われればやってしまうのが、紅魔族の(さが)なのです! こればかりは抑えようがありません!」

 

注意事項を聞いたそばから、それを破ろうとしているめぐみんに全力でツッコんでいたカズマだった。

 

「眼帯のお姉さんは変わってますね? 会話しちゃ駄目って言われたのに……」

 

「めぐみんお姉ちゃんは、あんな感じだから……。カズマお兄ちゃんはチュウニビョウって言ってた」

 

成程、そう言った年頃なのかとかすみの説明で納得していたユウだったが、

 

「ではエスコートをお願いします。そして、出来ればカスミの負担を減らすためにおんぶして下さい。今日はもう爆裂を撃ってしまったので、気怠いのです」

 

「お姉さん(俺より)重そう……」

 

その一言で周囲の空気が一瞬にして変わってしまった。

 

「ふ、ふふふ……。レディに対して”重い”とは、失礼な子供ですね! 未来のあなたは私など軽くお姫様抱っこしてくれましたよ? ええ、今からでも鍛えるためにやってみましょうか……!」

 

ここに来てから割と神経を逆撫でされる事の多いめぐみんは、我慢の限界に来ていたのかもしれない。そのままユウにしがみ付き、

 

「さあ……、このまま向かいましょうか! もやしっ子ではいけませんよ!」

 

その様子を見ていた面々は、

 

「……あのままで、良いんすか?」

 

「仕方ないんじゃない? やるなって言ってもやる子はどこにでもいるもの」

 

カズマは一抹の不安を覚えてしまったようだが、今度はゆんゆんが続けて、

 

「ユウ君! 今度はめぐみんと交代で私をおんぶして鍛えよう! そうすれば強くなれるよ!」

 

つまりは自分もやって欲しいらしい。それについてしばらくめぐみんと言い合いをしていたが、

 

「……重い」

 

背中にはめぐみんがしがみ付き、ユウの開いた両腕にはゆんゆんをお姫様抱っこしているという、羨ましく見えるが、実際にやっている人間にしてみれば、嫌がらせにしかならない状況となっていた。

 

「はやてお姉ちゃん……、助けて……」

 

「あー。私も前に”重い”言われたから、ちょう鍛えた方がええよ? 男の子やからその位は大丈夫やろ」

 

はやてに助けを求めると、自分も言われたのを思い出して、きっぱりとお断りをされていた。

 

「……あいつは、アクアに会う前から運が悪いのか?」

 

「うーん。普通に運が悪いのが、更に下がったって感じかしら? もしかして、ユウの運が悪いのって私のせいじゃない?」

 

薄幸な少年は元から薄幸なのかと、ちょっとだけ同情してしまったカズマであった。

 




本編主人公、やっぱりアクアの影響がなくても普通に幸運値は低いらしいです。

シグナムさん、なんだかんだでかすみとの戦闘を楽しんでいる様です。結構本気でやってたかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。