この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
顔を青くしながら、部屋のベットに横になっていたカズマだった。原因はキリエとの追いかけっこの際のやんちゃによるアースラ艦長のお説教の他に、緑茶にミルクと大量の砂糖を溶かした、通称”リンディ茶”を勧められて、緊張から何杯もおかわりしてしまったからである。
「あ、あれは……抹茶オレどころじゃない……。大量に砂糖をぶち込んだ……ナニカだ……」
もう今日の夕食はいらないと言わんばかりのカロリーを摂取してしまったんじゃなかろうかと考えてしまったカズマだった。ちなみに息子のクロノは朝食から焼きそばを食す剛の者である。
「ひたすら甘味を食させる拷問とは……。新機軸だ……!」
「カズマ……、私じゃ直せないから、後は頑張りなさい……」
ダクネスは自分の想像の範囲外の攻めに脱帽し、アクアは治療専門であるが故に、今のカズマの症状はどうしようもできない。いいとこ水を飲ませること位である。
もう今日は動きたくはない。そう思いながら目を閉じようとしていると、コンコンと部屋入り口のドアをノックする音が聞こえた。カズマが怠い体に鞭を打ちながらドアを開けると、
「あら、カスミじゃない。どうしたの?」
「その……、カズマお兄ちゃん達に相談があって……」
隣の部屋から訪れたかすみであったが、その後ろにはめぐみんとゆんゆんの姿がある。雰囲気からすると楽しいおしゃべりでは無い事は明らかだった。
かすみが決意に満ちた表情で……。
「わたしも……お兄ちゃん達のお手伝いがしたい!」
「却下」
即答され、即座にその意見を否定されたかすみだった。この子はかなり素直なので普通ならばここで話は終わる筈だが、この場では食い下がらずに、
「わたしも
「何かしたいたって、かすみは一回あのロリっ娘と戦ってるだろ? その時だって命からがら逃げて来たってのに、これ以上首突っ込むのは、許可できねー! お前がヤバくなっても、俺らはほとんど空が飛べないんだ。ダクネスに守って貰うのも出来ないし、アクアに治療もして貰えないだろ?」
カズマからしたら友人の義妹を預かり、その子を危険に晒すのはどう考えてもさせるわけには行かないといった判断だった。
「私達も散々説得したのですが、カスミにしては珍しく引いてくれないのです。どうしたものかと思いまして、こちらに相談に来たのですが……」
「カスミちゃん……、私もお手伝いはしたいけど、ここは他の人達に任せておこう……。ね?」
めぐみんとゆんゆんですら困り果ててしまっていた。なので、せめてカズマの許可を得てからという事で部屋を訪れたらしい。
「だめ……?」
自分以外の全員に否定され、消え入りそうな声になっていたかすみだった。
「うーん。せめて、カスミの封印が解ければ良いんだけど……。それをした本人はいないし、ユウの他にもう一人……誰だっけ? 確か必要よね」
いつもはあまり考え無しの水の女神アクアですら、かすみの意見には賛同しかねていた。
「ってか、お前は仮にも神なら、神様パワーで一発解決とか出来ないのかよ⁉」
「あのねえ……、アルハザートと古代ベルカの遺産って言ったら、私達ですら手に余る物もあるの! そのせいで手が出し難くなってるんだから!」
「元はと言えば、お前らがばら撒いたチートのせいでもあるだろうが!」
「私、あの世界と日本以外は、そんなに関わってないわよ!」
口喧嘩を勃発させてしまった二人だったが、本題からは遠く離れてしまっていた。そんな中……、
「もし……、わたしの封印が解けたら、お手伝いをしても良い?」
頭の良いかすみに似合わず、信じられない言葉が飛び出していた。
「カズマ……、どうしました? 震えていますが……」
「で、出来れば艦長室には行きたくねーだけだ! まあ、これで無理ならかすみも諦めるだろ……」
艦長室の扉の前で、扉をノックして中から返事が聞こえていたので全員で入室すると……、
「カズマさん……、何で艦長室に盆栽とか
「ここの艦長の趣味らしい……。言っとくが、絶対に艦長のお勧めのお茶は断れ! お前の為だ!」
カズマは”お話”中に、勧められておかわりしたお茶について思い出したらしい。ヒソヒソ話をしているとリンディから、
「もしかして……、もう一度お茶を楽しみに来たの? 私としては大歓迎だけど……」
にこやかにお客さんを歓迎する艦長であったが、そんな事をする気は全く無いので、自分達の用事を済ませようと話題を切り出した。
「――つまり、かすみさんには魔力封印措置が施されていて、その解除をしたいと」
正座のまま難しい顔をしながら顎に手を当てて考え込んでいたリンディであった。
「かすみさん……、あなたはそのままでもシグナムとも対等に戦えたと聞いています。それに……未来のあなたのお兄さんが、本来のあなたの力の行使をさせようとしていないのは、ただ単にその力が大きすぎるから……だけでは無いと思うわ」
その返答に目を見開いて驚いてしまったカズマ達だった。ほとんど初対面のはずなのに何故そんな事が分かるのか……と。
「かすみさんにとって、自分自身の力を振るうのはまだ早い……。能力的な問題ではなくて、精神的な問題ね。もしも封印を解除できたとして、それを十全に使えるかしら? あなたにとっては恐怖の記憶でしかない力の筈です。それをここ一番の決戦で扱えなければ、許可するわけにはいきません」
リンディの予想は完全に未来のユウの的を射ていた。カズマ達にはまだ話してはいなかったものの、かすみ本人は無意識のうちにその魔力を使うのを怖がっている節があると感じていた。それは封印状態なら良いが、『厄災』とまで言わしめた状態であれば、顕著に現れるだろうと。
「あの……何でそこまで分かるのですか? 未来ならともかく、カスミには数時間前に会ったばかりだというのに……」
「それはね。私も息子を持つ母親で、悠君の事も良く知ってるからよ。あの子も素直じゃない部分があるけど、意味のない事なんてしないもの。封印を解いて良いというのなら、とっくにそうしてるわね」
意味も無く封印を解かないわけではない。それとは別に……、
「つまり……あいつがたまにやるイタズラも意味があるって事か……!」
「私を中々女神って認めなかったのも……」
「私を『爆裂ロリータ』と呼んだのも深い意味が……」
「私に三十近くあだ名を考えたのも、何か理由が……!」
「”お兄ちゃん”って呼ばれて浮かれていた様に見えたのも、実は演技で……」
未来のユウの行動の数々を思い返し、全員が何やら思案していた。
「ええと……ですね? あくまで仕事の話であって、私生活だといたずら好きなだけの普通の子供よ?」
「いや、魔法使える時点で普通の子供じゃないですよ」
この場合、技能的な部分か精神的な部分かの”普通”の議論となってしまいそうだが、今回はそれを話に来たわけではない。本題に戻ろうとリンディがかすみの方を向き、
「封印は未来で施されていますが、解除できるかどうかはこれから調べる必要があります。特に封印を掛けた人物がどう設定しているかでも変わってきますしね」
「お兄ちゃんは、自分とリンディさんが揃わないと完全な解除はできないって言ってました」
これに関しては、解除できる人間の二人が簡単に揃わない様にといった意味があったのだが、それはあくまでカズマ達の時代であり、この時代のこの場においてはその二人が揃っている。だからこそのかすみの提案だった。
「解除については調べてみましょう。けど、実際に戦列に加わってもらうかは、私達で判断します。いいですね? 正直な話、システムU-Dの確保には私達も出来るだけ戦力が必要ですから」
カズマ達も顔を見合わせた後で、かすみが力強く頷いた。
「失礼します」
アースラ内の演習室に呼び出されたユウだったが、何のための物かは聞かされておらず、室内には艦長のリンディと未来の知人らしい人々がそこに揃っていた。
「突然の呼び出しでごめんなさいね。実は――」
自分がこの場に来た理由について、リンディから教えられると、
「つまり、この子の封印は俺とリンディさんの魔力を鍵にして解除できるから、それをしたいって事ですか?」
「ええ、魔力封印自体はそう複雑じゃないけど、二人が同時に解除しないといけない術式みたいね。未来の悠君からしたら想定外も良い所だと思うけど……」
封印解除については理解したが、こんな小さな女の子に封印を施すのは未来で何があったんだと、少しだけ怪訝な表情でかすみを見詰めていたユウであった。
「カスミも良いのですか? そこまで無理をする必要もありませんよ? さっき聞いた通り、ユウにもきちんとした考えがあった上で、その状態にしている様ですし、あなたが戦う必要はありません……」
「そうだよ! カスミちゃんの本来の力でも……、あの金髪の子はそれ以上らしいから、危険な事をしなくても良いんだよ?」
普段魔法の訓練を見ている紅魔族の二人は、彼女の実力は知ってはいてもやはり不安になってしまたんだろう。今になって心配そうな表情を浮かべながらかすみを止めようとしていた。
「あのね……。アクセルのみんなにお礼を言いに行ってた時に、冒険者ギルドでクリスお姉ちゃんから聞いたんだけど……」
あの日の冒険者ギルドでは自分達は、酒の一気飲み勝負をして二人共それで潰れてしまっていたが、何があったのだろうかとお互い顔を見合わせていた。
「お兄ちゃんね……、わたしと戦った時に、”最初から勝機なんて無い。けど、わたしを深い闇から引きずり出すために戦ってるんだ。”……って言ったんだって。あの子も一度戦った時に、自分と同じってわたしの事を言ってた……。だから……」
静かな口調ではあるが、決意に満ちた目をしたかすみに何も言えなくなってしまっていた。あのシステムU-Dと自分は通じる物があると。そして、自分が兄にして貰ったように今度は自分があの子を助ける。そう訴えかけていた。
「では、かすみさんの魔力封印解除を行います。マリー、エイミィ、モニターはしておいて。悠君も準備は良いわね?」
ユウとリンディの二人がかすみの前に手をかざすと、術式らしき魔法陣が浮かび上がってきていた。それに鍵となる二人の魔力を用いて解除を行うと、すぐにエイミィから通信が入り、
「か、艦長⁉ その子の魔力……、推定でもSS……いえっ、それ以上の魔力値を叩きだしています! こんなのって……」
モニターで一人狼狽えているエイミィの他には……、その後ろで、クロノや少女達の驚いた様な声も聞こえてきているので、気になってはいたのだろう。
「……なあ、俺らにも分かるように教えてくれねーか? SSって何だ?」
「とりあえず魔力値だけの話ですけど、魔導師にはランクってのがあって、一番上がSSS。もしかしたらあの子はその位の魔力を持ってるかもって事で、艦内のみんなが驚いてます。ランクにも色々種類はありますけど」
「お前は?」
「Bランクです……」
カズマが代表としてユウに質問を投げかけたが、改めてかすみの能力の底知れなさを認識してしまったようだ。
「これが
しかもこれでもまだ人造神器の腕輪が無いので、魔王城前で戦った状態には及ばない。それを考えてしまい、あの場でよく死者ゼロで収めたものだと……、あれはどれだけの奇跡だったのかを思い知らされていた。
「どうですか? どこか違和感はありませんか?」
「あっ……、はい。今のところは大丈夫です。特に体調が悪いとかはありません」
リンディもここまでとは思っていなかったらしく、息子を持つ親としても彼女の心配をしてしまっていた。
「では、続けて模擬戦をしますね。相手は……」
この状態でかすみがその力を振るえるか、それが封印解除の場を演習場にした理由だ。そして、その相手は……、
「さあて、やってみようか。お嬢ちゃん?」
「言っとくが、あたし達はそこまで優しくはないからな? 覚悟しろよ」
双子の猫の使い魔のリーゼ達だった。シグナムが再戦を申し出ていたが、彼女の
リーゼロッテがユウの方を向き、手を振りながら。
「おーい! ネズミっ子2号。後で可愛がってやっからなー!」
「変な事したら顔面にマタタビスプレーかけてやる!」
((((スプレーはあの人用だったのか……))))
彼を美味しくいただく気満々らしい。狙われている本人にとっては堪ったものではないが……。カズマ達はどことなく納得したような表情を見せていた。
模擬戦については、莫大な魔力を持つかすみがその魔法の威力と広域攻撃の適性からくる攻撃範囲でリーゼ達を近寄らせない様に立ち回ってはいた。しかし……その時はあっけなく訪れてしまった。
「あれ……⁉ 魔法が発動しない……。ゼファーブルームも異常はないのに……⁉」
その事に一番驚いていたのは他ならぬかすみであった。自分に何が起こったのかが、ちゃんと理解できていないらしい。
「はあ……はあ……、と、とんでもないお嬢ちゃんね……。けど……そっか、まだ全部の訓練を終えたわけじゃないのか……」
「ぜえ……ふう……。いやー、冷や冷やした。八神よりおっかないかも知れないね。まあ、あれだけ全弾全力で撃ってれば、いくらなんでも魔力が持たないか……。全力で撃っちゃうのは……」
リーゼ達はかすみの戦い方から、その原因が何となく予想できたらしい。
「あんた、まだ全開の自分の魔力を自在には扱えないね? そっちはまだあんまり訓練やってないってのもあるけど、無意識にそれを放棄しちゃってる感じだ。全く使わないか、それとも全力でぶっ放すかどっちかしか出来ないだろ? こりゃ精神的なもんだね」
精神的な問題からくる自身の魔力の使用法――これでは、自分は決戦には参加できないかもしれないと落胆してしまっていた。
「……まあ、ここは諦めろって。未来のあいつだってかすみが戦うのは賛成しないだろうし……な?」
「……うん」
カズマにとっては、むしろこの結果は安心するものだった。本来ならドンパチなんてのは遠慮したいし、まだ年齢一桁のかすみを戦わせるのも心苦しいのだ。俯いたかすみの肩に優しく手を置き慰めてはいたが、
「リーゼ、あの子を時間の許す限り鍛えて貰って良い? 俺の方はいいから……」
「あんたねえ……、決戦に自分も参加したいからって、あたし達に稽古つけてくれって言ってなかった?」
「だけど、俺よりあの子の方が戦力にはなると思う。俺はサポートに付くから……さ」
うーんと考え込んでいるリーゼ達だった。戦力的な意味合いで言えばその通りだし、ただ不安定な人間を戦列に加える事も出来ない。鍛えるって言っても時間もあまり無いときている。するとリンディから、
「悠君、できればかすみさんの近くにいて貰えないかしら? 魔力のコントロールについては、急造でもどうにかなるかもしれないから。シグナムとの戦闘記録も見たけどそこまで酷い物じゃなかった。きっかけさえあれば、もしかしたら……」
「えっと……俺が近くにいてどうなる物でも……」
「悠君が近くにいて、安心させるのが一番かも知れないわ。だから……ね?」
それは未来の自分であって、今の自分じゃない。それはリンディも分かってはいたようだが、
「いいのか? アースラの責任者はそっちだから従うけど、あたしとしては、良い結果は出ないと思うよ?」
「そうね……。母親の勘かしら? 未来の彼はちゃんとその辺も考えて、訓練してるんじゃないかって。封印状態の魔力運用は見事だったから」
半ばリンディに強引に納得させられる形で、かすみの魔力コントロールの訓練を行う事になってしまった。
「なあ、お嬢ちゃん? 普段一体どんな感じで訓練してんだ? ちょっと教えてみ?」
「うーんと、魔法そのものを覚えるよりも、魔法使用に必要な魔力量を瞬間的に出せる様にする方が大事って事で、コントロールに重点を置いてたみたいです」
リーゼからの質問に淡々と答えるかすみだった。それで何か分かったような感じなのは、経験からくるものがあるのだろう。
「お嬢ちゃんの場合、持って生まれた魔力量がデカすぎるんだね。けど、封印している状態なら小回りも利くしスタミナ切れも起きない。解除しちゃうと、威力を出せるが故に魔力消費量が途端に増えちゃうと……」
「最初の頃はお兄ちゃんがコントロールの手伝いをしてくれてました。自分がデバイスの代わりだー、って言って」
その一言に、リーゼが何やら思い付いたようで、
「おーい、この子の補助してやれ! あんたが早速役に立ったな」
「……そんなバカでかい魔力、俺に制御できるはずが――」
「良いからやれ! やらないとクロスケにやった特訓を今すぐやらせるからな!」
ユウにかすみの補助をさせようとしていた。指名させた本人は、とんだとばっちりとばかりに顔を青くしていた。それを見て、
「あの猫たちって……もしかして、かなりのスパルタなのか……」
「使い魔って言ってたけど、下手な人間より偉いんじゃない?」
「二人がかりとはいえ、かすみを抑えたのですから相当な手練れだとは思いますが……」
「そ、その特訓とやらは……一体どのような……⁉」
「ユウさんの訓練方法の根本的な部分を知っちゃった気がします」
ちょっとだけ引きながら、各々で感想を持ったようだ。
ユウがかすみの肩に手を置き、今度はリーゼの指示通りの威力で魔法を使えるかを試してみたのだが――
「……出来た⁉」
注文通りに魔法を撃って一番驚いていたのは、かすみ自身でありポカンとした表情を浮かべていた。
(悠、何かやったか?)
(特に何も……。むしろやる必要なんて何にもなかった……)
(うーん、これはあれね。”お兄ちゃん”が近くにいて、安心したのかも……。元々運用自体も問題ないのかもしれないけど、そこはやっぱり精神的な部分が引っかかっていたみたいね……)
念話で会話している男の子と猫の使い魔二匹。今度は手を離してやってみたが、
「……やっぱりお兄ちゃんが補助してくれないと、うまくできない……」
先程とは全く逆の結果になってしまった。
(どうする? 言葉で説明しても本人が納得しなさそうだ……)
(これだけの力を持ってても、まだ子供って事か……。うーん)
能力的には申し分ないが、ここまでムラがあると危険に晒してしまう可能性の方が高い。どうしたものかと考えていると、
「どうしたんだ? 三人して難しい顔をして……」
「その……、実は――」
かすみの魔力運用についての結果をカズマ達に知らせると、
「だったら、お前が近くにいてやれば良いんじゃないか? 説明したってこれから数時間でどうにかなるもんでもないだろ?」
「そうですけど……、それこそ俺が近くにいると足手まといに――」
そこまで言ったところで、リーゼロッテが頭上に明るく電球が点灯した様な雰囲気で、何かを閃いたらしく、
「ネズミっ子2号! これから特訓すんぞ! U-Dの近くにいても足手まといにならない程度にはしてやる!」
「い、いきなり……何言ってるんですか⁉ これから特訓って……」
「元々参加したがってたから良いだろ? フルドライブをキチッと使えるくらいにはしてやんよ。お前が近くにいなきゃ、この子が戦えんだろ」
つまり、かすみがちゃんと魔力制御できるように、決戦時は常に近くにいろという事らしい。
「待って……。普通の稽古ならともかく、特訓なんてのを今からやったって俺、疲れ果てて――」
「心配いらないわ! 回復なら私に任せなさい! あの
震えながら後退るユウを尻目に、どれだけ傷つき疲弊しても全力で治療すると、力強く宣言した水の女神様。
「だったら私も参加します! 未来ではユウさんに鍛えて貰ってましたから、動きとかを良く知ってます!」
未来で稽古を受けていたゆんゆんも参加を表明。そして、
「ならば、攻撃を試す的なら私がなろう。何、これでも防御力には自信がある」
特訓のサンドバック代わりになってくれるというダクネスも、どことなく嬉しそうに拳を握りながら、合法的に痛めつけられるのを期待しているようだ。それを見て……、
「……今度はあいつの方が精神的に瀕死になるんじゃないのか……?」
「ええ……どうか無事でいて下さい……。終わったら、何かご褒美でも考えておきますから……」
カズマは彼の不運を再確認し、めぐみんは祈るように手を合わせていた。その渦中の少年はというと、
……確か、達人な師匠が沢山いて、死にそうになっても秘薬で無理矢理蘇生させられる漫画があったような……。あの主人公ってこんな気持ちで過ごしてたのか……。
と、出来る事ならこの面子からは逃げ出したいが、それすらもさせてはもらえないのだろうと、心の中で泣きながら特訓を開始する破目になってしまった。
かすみが魔力制御をうまくできるようにするために、決戦の、しかもおそらく一番危なそうな所に行くことになってしまった本編主人公でした。
もしこれがゲームなら、リーゼ姉妹みたく二人一組のユニットになるんだろうなあ。
かすみの封印解除に主人公とリンディが必要なのは、111話の海鳴でのシーンで書いています。