この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
さて、先日に現魔王さんから教えてもらった魔王城近郊のダンジョン入り口の前にいる。本来なら俺だけで潜ろうと思っていたのだが、何故か……、
「こ、ここが歴代魔王修業の地……! ああっ! この中にはどの様な強力なモンスターが生息しているのだ。アンデッドは元より、絶滅したと言われる女騎士殺し、姫騎士殺しと呼ばれた雄のオークなども……! 早く行こう! 行って私を盾替わりにしてくれ!」
「ダンジョンならアンデッドの巣窟だしね。この私の、水の女神様の活躍の地にこれ以上相応しい場所はないわ!」
意気揚々と、中のアンデッド全力で浄化して回るわ、オホホ。なんて雰囲気のアクア。
「ユウさん、ダンジョンは危険が沢山ありますから、エネミーサーチとか修得している私も役に立ちます。敵は養殖の要領で動きを封じますから、止めは譲りますね」
ここでも養殖の話を持ち出す辺り、ゆんゆんもやっぱり紅魔族なんだな。と再確認させられてしまう。
「……何で俺まで付いて来なきゃならなかったんだ!? 俺は屋敷でかすみの面倒見ながら寝転がって漫画本読みたかったんだ!」
「すまん。ダンジョンならカズマの千里眼と敵感知が役に立つから……ダメか?」
「いや……、ゆんゆんはともかく、アクアとダクネスが何やらかすか……。やっぱりこうなるんだろうな……。ハア……」
溜息を吐きながら渋々といった感じでカズマも同行していた。
「じゃあ入るか……。っと、これも使わなきゃな」
首から下げている立方体の青色の水晶が飾り付けられたペンダントと手に取り、
「セットアップ!」
そのキーワードと共にアクセサリーが武具の形へと変化していく。それを見ていた面々は、
「杖じゃないな? 何で槍?」
「そういえば槍も使えるんだっけ? 何、新しい武器なの?」
「今までの杖とは違うか……。まるでお前の知人の持つ剣やハンマーのような……?」
「けど、魔力は感じますし……魔法使いの武器……ですよね?」
……と俺の持つ新しいデバイスに興味津々であった。ちゃんと説明しないと、ダンジョン内で怪我でもしかねないという事で、こいつの説明を始めることになった。
数日前、時空管理局本局第四技術部にて。
「……本当に造っちゃったんですか? ミッドチルダ式アームドデバイス……」
「教導隊での試運用は終了してるから、後は現場でのデータ取りね。それは、なのはちゃんからの推薦で悠君にやって欲しいけど……」
「それについては、こちらも伺ってますから構いませんが。見たところ、AIもカートリッジシステムも見当たりませんね? 試作機だから堅牢性重視ですか?」
最初になのはが口走っていたのは、『ミッドチルダ&近代ベルカ併用式カートリッジ搭載人格型アームドデバイス』だった。これは流石に無理があるという事で、普通のミッド式アームドデバイスになったのだが、ここまで機能がオミットされているのは正直予想外である。カートリッジシステム程度は搭載されていると思っていたからだ。
俺の意外といった表情を見逃さずにマリエルさんから、
「うん。この『フォルテ』は確かに試作機だけど、現場運用する悠君用にカスタマイズもしてあるの。ここの所とか」
マリエルさんが指さしたのは、このデバイス――フォルテの穂先の反対側。一般的には石突と呼ばれる部分だった。連結部になっている様に見える。
「これって、もしかしてファルシオンをここにくっ付けるようになってます?」
「やっぱり分かるんだ! その通りで、悠君のデバイスと連結させての運用を想定してるんだよ」
何でそんなに面倒な……、と考えてもしまったが、コイツ自身が文字通りの試作機でAIだのなんだのと搭載できなかったのかも知れない。なので、
「つまりは、AIとカートリッジシステムに関しては、連結したファルシオンの方で担当するってので良いんですか?」
「そう。元々、インテリジェント自体が使用者に合わせた完全受注生産だから、試作段階で新しく造るのも難しいのよね」
レイジングハートやバルディッシュくらいの長さのデバイスなら、こんなのはキツいんだろうが、ワンド程度の長さの俺のデバイスなら可能ってわけだ。その辺も考えて俺をコイツのテスターに推薦したのかもしれない。
「それに、連結しなくてもアームドデバイスとしても機能するから。ファルシオンを外して、それぞれを単独で運用も可能。剣と槍の二刀流って、ちょっと懐かしいかな?」
「別にそれだけの形態で使ってたわけじゃないですが……、ストレージで射撃しながら、もう一方で斬り込んだりしましたし」
けどまあ、この槍型アームドデバイスは見た目結構ごつそうだが、その割に身体強化込みで片手でも扱えそうな程には軽い。堅牢性と軽量化を両立するために余計な機能は付けない様にしたのかも。
「悠君の集束斬撃の魔力刃を纏わせても平気な位には頑丈に造ってるから、ガンガン振り回しても大丈夫だからね!」
俺のデバイスのデータから、そうしてくれるのはありがたい。ここまでやってくれたのだったら、現場でのデータ取りも捗る筈、と考えていたところで……、
「それとね。これはまだ計画段階だけど――」
「――ウ、ユウどうしたボーっとして?」
「えっ……!? ああ……、何でもない。今回はこいつの実戦運用も兼ねてるって事は分かったか?」
「お前は良いよな。そうやって良い武器支給されるし、俺の場合ちゅんちゅん丸はともかく、他は普通の弓矢に短刀だけ。そろそろ伝説の武器でも欲しいもんだ」
説明を終えて、ダンジョンへと潜り、明かりの無い石造りの回廊を歩く事、十分ほどで、
「まずはコボルトか……。基本と言えば基本だな」
早速遭遇したモンスターと戦闘を繰り広げていた。
その頃、魔王城では……、
「このワシの絶大なる闇の力の前に、なす術もなく敗れるがいい! 来いっ、冒険者ども!」
「むむっ!? 魔王というのは、やはり口上も大切にしているようですね……。では私は……」
何やら魔王の玉座の間で、前魔王の魔族の老人とめぐみんがお互いの口上を比べ合っていた。めぐみんが杖を掲げ、マントを翻し。
「我が名はめぐみん! 我が爆裂魔法の一撃にて、その闇ごと塵に還るがいい!」
「紅魔族というのは、好戦的なだけかと思っておったが中々どうして……。魔王というのは、玉座の前までたどり着いた冒険者に対し敬意を払わねばならん。この様な事も必須科目でな……」
「紅魔の里の学校でも、魔法より格好良さが重要視されています。どうですか? 一度、里の学校を訪れて子供達に教授するというのは?」
「嬉しい申し出だが、バカ娘がまだ魔王として半人前でな……。城を離れるのも心苦しいのだ」
魔王城、魔王の玉座の間――数ヶ月前であれば、全冒険者の目的地と言っても過言ではないその場所で、まるでお爺ちゃんの家に孫が遊びに来たかのような光景が広がっていた。
めぐみんは自分は爆裂魔法しか使えないからと、かすみと一緒に魔王城で留守番をしているのだ。その折、暇そうにしていた前魔王さんの話し相手をして現在に至る。そして、この場にいるもう一人は、
「このケーキ美味しい……。紅茶も……」
「はっはっはっ、そうかそうか、このケーキは、お嬢ちゃんの兄がワシに手土産で持ってきたのと同じ店のだ。あれ以来、ワシも気に入ってしまってな。先日、娘に買ってくるよう言っておいて良かった」
ケーキを頬張りながら前魔王さんに頭を撫でられて、ご満悦のようだ。
一方、ダンジョンに潜っている面々は、上層階の弱いモンスターはもう彼らにとっては楽に倒せる相手なので、その辺りは適当に相手をして下の階に降りる事を優先していた。そして、それを繰り返して行き……、
「はああああああっ!!」
目の前の腕が六本のアンデッドナイトの上位種と思しき骨の大軍や、アクセルでは高難易度クエストでの討伐になる白狼の群れ、人の大きさ程のスライムなど、各々の生態系など何処へやらといった節操のないモンスター達に対し、槍による一撃を喰らわせていた。
ここまで多種多様なモンスターだと、それに合わせて瞬間的に戦法を変える必要もあるのだが、それについても良い訓練となっていた。
アンデッドについては、一撃で粉々になるように威力重視、白狼はその移動速度に惑わされない様にしつつ、こちらの最速で仕留める。スライムは氷結付与の攻撃で凍結させた後で粉々にするなどだ。
槍型のデバイスの横薙の一閃をいつものデバイスと比べても、アームドデバイスであるためか威力が眼に見えて高いのが分かる。周りのモンスターを一通り倒した後で、
「……お前は剣士なのか槍使いなのか、それとも魔法使いなのか分からなくなる時があるな」
「それを言ったらフェイト辺りも、鎌使いなのか大剣使いなのか、普通の剣士なのか魔法使いなのか分からなくなるぞー。そこら辺は術者次第だからな。人によって千差万別なんだ」
カズマにツッコまれてしまったが、ダンジョンに入る前にフォルテ見て羨ましがってたのを思い出したので。
「ちょこっと使ってみるか? こいつは俺専用ってわけじゃないし、普通の武器としても使用可能だから」
「い、良いのか?」
カズマにしては遠慮がちにしていたが、見るからに特別製の武器みたいのは使ってみたい様で、手に取ってみると……、
ガツンッ――地面に敷かれた石畳と槍の穂先が激突する音だけが周囲に響き渡り、カズマは両手を使っているにも関わらず、持ち上げるのが精一杯となっていた。
「こ……こいつ……かなり、重……い!?」
「アームドデバイスはこんなもんだぞ? 大体が武器型だから扱うには筋力は結構必要になる。まあ、身体強化も少しは使ってるけど」
「カズマ、何? 使えないの? ウケるんですけど! ちょっと私に貸してみなさい?」
ヒョイっと槍を持ち上げてブンブン振り回すアクアに、
「私も持ってみても良いか?」
普段から筋トレを欠かしていないダクネスも片手で軽々と持ち上げ、
「私も使ってみて良いですか?」
魔法での筋力強化込みだろうが、ゆんゆんですら両手を使って突きや薙ぎを行っていた。それを目の当たりにし、
「畜生おおおおおおお!!!」
カズマの悲痛な叫びのみ、ダンジョンに響き渡っていた。
その後、道を遮るモンスターも粗方討伐し、下の階へと向かう階段を降りていると、
「そういえば……何でかすみを連れて来なかったんだ? 戦わせるのが好きじゃないのは分かってるけど、近くに置いてた方が良かったんじゃ……?」
「魔王城で留守番させた所で、今更あの魔王のお姉さんも前魔王さんの方も何かするとは思えないし、戦わせるの前提で魔法使わせるのも良くない気がして」
「……? 魔法って戦うための物ですよ? それが良くないって、どうしてですか?」
ゆんゆんの言う通りだが、それに関しては俺自身にも考えがあるので、ここはきっちり説明した方が良いかも知れない。
「最近よく思う様になったんだけど、かすみみたいな……、圧倒的な才能を持つのは本当に良い事なのかな?」
「まあ、かすみの場合、昔は色々あったのは分かってるが、無いよりはあった方が良いだろ」
無いよりはあった方が良い、それはその通りだと思う。カズマにしたら……、俺だって昔はなのは達の当時じゃ手の届かない程の能力は羨ましかった。
「たださ……、魔法使いの才能があるから、魔法を使って戦うってのは……、持って生まれた才能を使ってるんじゃなくて、才能に使われてるだけじゃないのかなって……、そんな気がして」
「ユウさん、それだと紅魔族だって魔法使いの才能を生まれながら持ってて、めぐみんみたいな例外を除くと上級魔法を修得してますよ?」
「ゆんゆん、紅魔族は魔法の技能を生かしてるけど、それだけじゃないだろ? それを利用して鍛冶師やったり農業やったり結構自由に暮らしてる。魔法が生活の一部になってるけど、それを有効利用しようとする視野は広いと思う」
かすみについて真面目な話をしていたので、それについて聞き入ってしまっていたカズマ達だった。
「つまりは魔法の才能があるからといって、それだけに傾倒して欲しくはないという事か?」
「かな……? まだうまく言えないけど、もしかしたら……アクアにチートを貰ったから、それを戦う方にしか使えなくなってしまった人も多いのかも? 魔王軍と戦ってた時は仕方ない部分もあったんだろうけど、カズマみたいに何も持たないでここに来た方が、そんなのを考えなくて済むのかもしれないな……」
ダクネスがそんなのを言っていたが、戦う力や才能を貰ってしまったから、そうしてしまうのは自然なことかもしれない。戦争状態なら猶更。
「ちょっと! カズマが何も持たないでここに来たって……、この私、水の女神様なんてこれ以上ない特典を連れて来てたじゃない!」
神様同行で世界に降り立ったと言えば聞こえはいいが、最初の方……、特にアクセルの洪水被害について思い返すと……、
((あれって、ある意味……借金返済のために
俺とカズマの思考が合致してしまった様で、お互い顔を見合わせ遠い目をしてしまった。
「要はあれだろ? 魔法だけじゃなくて色んなのを経験して、好きな事を目一杯作れって言いたいんだろ?」
「まあな、その上で魔法使ってなんかやるのは良いけど、今の内からそればっかりやらせるのもな。訓練に関しては、あくまで魔力制御のためだし。ノイズの連中の思惑の為に生まれて来たわけじゃないから、もっと自由にやっても良いと思ってる」
カズマの言う通りだが、ちょっと前に”子供達が自由な夢を見られる世界が良い”……って言ったのがいたな。温泉以来あんま会ってないけど。
「めぐみん辺りは才能云々じゃなくて、爆裂が好きでああなってるから、そういうのをちょっとは見習ってほしいかな?」
「めぐみんのは才能の無駄使いって言います……」
「あのなあ……。かすみが爆裂馬鹿になったらどうする気だ? 下手すれば大変な事になるぞ?」
かすみが一日一爆裂をするようになったら……か……。
「『エクスプロージョン』ッ!」
めぐみんの爆裂で地面にクレーターが作られ、土煙が舞い衝撃波が駆け抜ける。
「次はカスミの番です! さあ、爆裂を解き放つのです!!」
「『エクスプロージョン』ッッ!!」
めぐみんと寸分違わぬ場所に爆裂を撃ち込み、先に出来たクレーターは隕石の激突後の様になってしまっている。
「めぐみんお姉ちゃんの爆裂魔法って凄い……! わたしじゃ敵わないけど、まだ魔力に余裕があるからもう一発!」
その場所は二人の爆裂魔法によって、草も生えない土地になってしまったとさ。
「……やっぱりさっきのは、半分くらい無しで……」
そんな会話をしながら、ダンジョンの下の階へと到着し暗がりの中で歩を進めていた。
丁度その頃、魔王城内の玉座の間では、玉座を背にして杖を構え、真剣な表情で正面を見据えるめぐみんと、その横には使い魔である黒猫にしてウォルバクの半身であるちょむすけが佇んでいた。
その視線の先には、かすみと前魔王が並んで目の前の紅魔族に対して戦闘態勢ともいえる構えを取っている。
先代魔王、勇者候補の娘にして当代随一の魔法の才を持つ少女、そして紅魔族随一の天才に神の半身の黒猫。
その顔触れは、そこら辺の街なら簡単に消し飛ばせそうなものだが、この三人と一匹は、今にも戦いを勃発させると言わんばかりの雰囲気を作ってしまっていた。
そこから堰を切ったようにめぐみんがローブを翻し高らかに。
「我が名は魔王めぐみん! 冒険者達よ、よくぞここまで辿り着いた! さあ、この私の爆裂魔法の前に成す術も無く力尽きるがいい!」
「にゃーお!!」
そのセリフに対抗するように目前の二人は……、
「わたし達はそんな物に屈したりしない! 魔王を倒して平和を取り戻して見せるっ! 行くよ!」
「うむ。ワシら勇者の子孫として、貴様の思い通りにするわけには行かん!」
まるでめぐみんを討伐しに来たような言葉を発していた。それを呆れたように見ていた人物が一人。
(何で、玉座の間で勇者と魔王の対決ごっこをしていて、お父様が勇者役の方をやってるの? もしかして、やってみたかったのかしら……?)
現魔王さんは仕事のついでにここに来ていたが、どうやって声を掛ければ良いかが分からなくなってしまっていた。
その一方でダンジョン攻略組は、順調に進んでいたかのように見えたが何階か降りた先が迷宮では無く、だだっ広いだけの部屋だった。
こんなのがダンジョン内にあるのも驚きだが、その階に降りた途端に全員が背筋に悪寒を感じていた。この場に何かヤバいのがいる。直感でそう理解していた。
「グルルルル……」
室内全体に響き渡る低い唸り声、明かりも無い場所なので目が慣れるまではもう少し時間が掛かるが、暗視が可能な千里眼スキルを持つカズマと、暗闇を見通せるアクアが微かに震えている。声の主の正体を知ってしまったらしい。
「ド、ドドド……!?」
「アンデッドだけど……何でこんなのがいるの!? 浄化したいけど、ちょっと時間が掛かるから誰か囮になって頂戴!」
どうやら、アンデッドらしいがアクアでも浄化に一苦労する相手らしい。漸く目が慣れて来たのでその姿を見据える。その他には腐臭の様な物も漂っているが……。
「……ドラゴンの……アンデッド!?」
それは巨大な竜ではあったが、体が崩れ落ちていたり骨が見えているにも関わらず、こちらに狙いを定めるアンデッドだった。おそらくドラゴンゾンビとかそういった類のモンスターの筈。
「す、素晴らしいぞ、これは!! この様なモンスターまで生息しているのか! よし、アクアの言った通りに囮になるので、早く始末してくれ!」
喜びから身を震わせ、ドラゴンゾンビへと突撃していくダクネスだったが、いくらなんでもそのままにはしておけないという事で、
「『クリエイト・ウォーター』ッ!」
カズマがアンデッドの弱点である流水で弱体化を狙っていた。しかしながら、
「……アンデッドの癖に炎のブレス吐きやがった!?」
相手の口から放たれた熱閃によって、カズマの造り出した水は即座に蒸発されてしまっていた。アンデッドならアクアの出番かと思われたが、
「あのブレスとか、爪とか牙の攻撃なんて……、私だって受けたらただじゃ済まないわ! 浄化もちょっと大変だし、こうなったらセイクリッド・クリエイト――」
「やめ、止めろおおおおお!? ここで洪水出したらアクア以外全員溺れ死ぬから!」
こんなダンジョンの奥深くで、無理心中とか絶対に嫌だ!
「『狙撃』ッ! 『狙撃』ッ!」
「舐めんな! コイツでも喰らってろ! カノンッッ!!」
「『インフェルノ』ッ!」
俺達がドラゴンゾンビに接近しない様にダクネスを囮にしつつ、ある程度の距離からの攻撃を繰り出してはいるが、アクアの支援があるとはいえ、決定打に欠けていた。
腐っても……、本当に体は腐ってはいるがドラゴンといったところだろう。聞くところによると、ワイバーン辺りもドラゴンの亜種らしいが、目の前のはどう考えても純粋種のドラゴンのアンデッドなので、戦闘能力も段違いらしい。
俺やゆんゆん、カズマが魔法で周囲に撒いた魔力が室内に満ちて来たので、それを見逃さずに……、
『Sword Drive』
集束を開始して、槍型デバイスの刃に纏わせる形で抜剣を展開。更に、その魔力にカートリッジを消費して炎熱を付加する。
「すまん、援護を頼む……!」
その一言で、俺が斬りかかろうとしているのが分かったらしく、
「『バインド』ッ!」
縄ではなく、ミスリルのワイヤーで拘束を試みるカズマや、
「『カースド・ライトニング』ッ!」
ミスリルのワイヤーでの拘束を好都合とばかりに、黒色の雷で追撃を加えるゆんゆん。
「行きなさい! 『速度強化』、『筋力強化』っ!」
アクアの支援魔法を受けて、ドラゴンゾンビの真正面からジャンプしてアームドデバイスを振りかぶり、
「『紫電一閃』ッ!!」
炎に変換した大出力の魔力刃で一刀の下に斬り伏せた。両断したドラゴンゾンビは燃え盛り、後には熱せられた骨のみが残るだけだった。
「ふう……、何とかなったか……」
「この骨……、持ち帰ってみるか? ドラゴンの骨なので、武器や防具の良い素材になるかもしれん」
ダクネスの言う通りなら、換金しても鍛冶屋に持って行っても良い物らしいので、持てるだけ持って帰ろうとの意見で一致したが、それも束の間。
「グアアアア……!」
えー、さっき聞いたばかりの唸り声がまたしても響いておりました。しかもお仲間をやられたのが気に食わないとばかりの、聞いただけで機嫌の悪そうなのが分かるくらいの怒りが混じっていた。
「……普通、ボスって一体だけだよな?」
「カズマ……、それは言わない方が良い。どう考えたってフラグだから……」
「フラグ以前に、もうこの場にいるだろうがああああ!?」
その後、2匹目のドラゴンゾンビと死闘を繰り広げた後で、今日はここで終わる事になった。
この階の階段をテレポートの転送地点に登録してもらい、地上に一旦戻り、めぐみんとかすみを迎えに魔王城へと向かっている。
このダンジョンは入るたびにマップは変わるが、唯一変わる事の無い下の階に降りる階段を登録しておけば、次回はその階から始められるらしい。
「カズマ……、ドラゴン討伐者は『ドラゴンスレイヤー』の称号を得るらしいけど、ドラゴンゾンビはドラゴンに入るのか?」
「何だよ、その……バナナはおやつに入りますか? みたいな聞き方は……。何が悲しくて一日でドラゴン二匹も相手しなきゃならないんだ……」
魔王城で留守番している二人を迎えに、城内を疲れ果てながら歩いていると、
「あら……、どうだった? 結構面白かったでしょ?」
「お姉さん……、できればもうちょい詳しく教えて欲しかったです……。ドラゴンゾンビ二体出ましたよ……」
その一言で、魔王のお姉さんが驚いたように目を見開いていた。意外といった感じで、
「私でもそれは2、3回くらいしか経験してないのに……、1回で引くって運が良いのかしら? でも、これって運が悪いから強いのが立て続けに出たかもしれないわね……」
……どうせ俺は幸運値が低いですよ! 運が悪い方が強いの出てレベル上げ捗るって微妙な気分なんだが……。
自分の運の悪さを思い返してしまい、少しばかりゲンナリしながら玉座の間へと辿り着くと……、
「良くぞ……私を倒しました……。しかし私の後には第2、第3の魔王が……ガクッ……」
「にゃー……」
力尽きたように、その場に倒れる演技をしているめぐみんとちょむすけ、そして、
「これで……、やっと世界に平和が……!」
「ああ……! この年寄りの役目も漸く終わるか……」
ガッツポーズをしながら万歳しているかすみと、感慨深そうな演技をしている先代魔王さんだった。
「……何やってんだ、お前ら……?」
「ああっ……、お帰りなさい! 勇者と魔王の対決ごっこです。もちろん私が魔王役で、そちらの二人が勇者役ですよ」
元とはいえ、魔王さんが勇者役やって良いのかよ……と、その場の全員がツッコみたかったが、その元気すらなくアクセルへの帰路へとついたのだった。
槍型アームドデバイス、フォルテについて
名前の由来は、1978年に発売された三菱自動車のピックアップトラックになります。
このフォルテの後継車が『ストラーダ』なので、StSでのストラーダのプロトタイプという位置づけでもあります。
槍の方のストラーダはエリオの資質に合わせてはいますが、作成の際はこっちのデータも使用しているという設定です。