この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
みすてぃがアクセルに来てから数ヶ月。仕事にレベルアップに忙しい俺ではあったが、今はある無人世界で追手からの追跡を振り切っている最中だった。おそらく……今まで戦った中でも最上級に位置する連中だ。真正面からぶつかったら、叩き潰されるのが眼に見えている。
ここは各個撃破が定石ではあるが、あちらもそれを承知の上なのだろう。それぞれの役割をこなすのが、俺を倒す一番の近道だと分かっている。そして、あの面々での彼女の追跡能力から逃れるのは至難の業。追手の一人が目の前へと――
「何故逃げだす? お前はこれまでいかなる困難をも打破してきたはずだ」
「これは逃走じゃあない。戦略的撤退と言うんだよ。一応、俺の目論見通りの一対一だ。それで各個行動不能にすればいい。それが嫌ならここは退いてくれ。お前とは出来れば戦いたくはない」
「そういうわけにも行かなくてな。お前がこのままでは悲しむ者もいる。そうとなれば退くわけにも行かん……」
「ここで俺を足止めしている間……、集まった五人全員で取り囲む算段だろ? そこまで評価してくれているのは嬉しいが……、俺も止まるわけには行かないんだ、ザフィーラッ!!」
目の前の盾の守護獣へと向かって全力で駆けて行く。『盾』の名を冠するだけあり防御力も相当だが、警戒するべきはその拳。おそらくクロスレンジでの戦闘においては、最も厄介となりえる一人だ。
「はああああああ!!」
「うおおおおおお!!」
気合と共に俺の剣型の魔力刃とザフィーラの拳が激突し、双方顔を歪めている。相手の殺害が目的ではないので、お互い加減はしているが本来ならば、そんな事をしていればやられてしまってもおかしくはない実力者同士なのだ。
「縛れ、『鋼の
数十本の拘束条が俺の動きを止めるべく、地面から俺を突き刺そうとするが……、
『Freezing wall』
自身の四方を氷結変換で作り上げた氷の壁で覆い、俺を拘束しようとする軛を防御。すかさずその場を離脱する事に成功した。
「すまない……、逃げられてしまった……」
「足止めが叶わないとはな……。少しはやるようになったようだ」
「関係ねーな。こうなったら死なない程度にぶちのめして、引きずって行くだけだ」
「行きましょう。夜天の守護騎士の名にかけて!」
ザフィーラの元に集まった四天王ではなく、守護騎士達は再度俺を捕獲するべく、布陣を敷いていたのだった。
「さて、どうするか……。現状で一番厄介のはクラールヴィント。補助特化のデバイスとはいえ、索敵能力も捕獲能力も相当だからな。先生を行動不能にしておきたいところだが……」
そうはさせてくれないだろう。それはあちらが一番良くわかっている。出来れば司令塔は一番早くにどうにかしておきたい所なのだが……。
そんな戦略は守護騎士の主の前では無意味な思考と成り果てる。岩陰に身を隠していたというのに……、
「来よ、白銀の風、天よりそそぐ矢羽となれ。『フレースヴェルグ』ッ!!」
俺の周辺含む、数百メートルの範囲に目掛けて複数の砲弾が放たれていた。着弾地点で炸裂するそれは、正に『殲滅兵器』と言える程であり、並の使い手ならばここで勝負が決まってしまう。
夜天の主とその守護騎士――彼女らは単独でも一騎当千の実力者であるが、真の力は全員が揃った際に発揮される。
――索敵、補助、捕獲、治療等の支援で全員を支える『
――主や仲間の騎士の盾となり、時にはその拳で相手を滅する『
――敵の防御を突破し、先陣を切る『
――その炎の魔剣を以って全てを斬り裂く『
そして、その主であり魔法の広大な効果範囲、威力を以って後方から強力な攻勢支援が可能な『
彼女らが揃えば、それはチームなどと言った枠組みから外れ、一個の部隊を相手にしているに等しくなる。言わば、今の俺は個人対部隊の理不尽な状況に置かれているという事だ。
「無人世界に来たのが運の尽きか……。リインがいなくても気にせずに、はやては魔法ぶっぱが出来るから……」
文句を言ってもしょうがない。あの五人をどうにかしないと俺の明日は無いのだから。
「ぶち抜けえええええ!!」
気合の乗った声と共に、グラーフアイゼンからのロケット噴射による加速で接近するヴィータの姿があった。それをラウンドシールドで受け止めると、
「てめえ! 逃げてんじゃねーよ! あたしらにこんな事させんじゃねー!!」
「ほっといて貰おうか? 誰がこんなの頼んだってんだ!」
「おめーを連れて行かねーと、色々と面倒なんだよ! 分かったら大人しくしやがれ!!」
どことなく余裕のないヴィータと口論になってしまっていたが、こちらは構わずに、
「炎熱加速っ! 貫けええええ!」
槍型デバイスのフォルテに炎熱を付与し、その加速力でもってその場を一気に離脱した。ヴィータを避ける様に動いていたので、怪我は無いと思うが……。それにあいつは硬いし。
「あの野郎……、基礎能力上がってねーか!? いつの間にあんな……」
「相手にすると、一番厄介な人間やな。新しい魔法を覚えても練度が低い。けど地味でも基礎をがっちり固めれば、全体的な技量の上昇に繋がるのが分かっとる」
「主、ここは私が追いますので……」
そうして、俺を追ってきた剣の師と刃を交える破目になってしまった。
地上では見渡す限り巨大な岩が転がっている無人世界の空中で対峙する俺とシグナム姐さんだった。彼女から静かな口調で。
「もう終わりにする気は無いか? 大人しく我々と共に来れば、余計な争いをする必要はない」
「少し頭を冷やしたいだけだったのに、追って来たのはそちらです。はやては何を考えてここまでしてるんですか?」
「主なりの気遣いだろう。後顧の憂いを絶っておくのは悪いとは思わんが?」
「それが余計なお世話って言うんです。俺には俺の考えがありますから」
双方、ふぅ……っと息を吐き、
「言葉は無用……か。ならば剣で語るまで。行くぞ……!!」
剣の騎士は炎の魔剣を構えて一直線に突っ込んできていた。その一撃を受ければ戦闘不能になるのは想像に難くない。魔力弾で迎撃したところで、一流の騎士の突破力では期待は薄い。
ならば、ここは己の最高の一撃を以って迎え撃つのみ!
「抜剣……、『
俺の炎熱では、変換資質を持つ姐さんには及ばない。それを覆すには集束斬撃に圧縮した炎熱を加えて、効果範囲を狭くする代わりに威力を高めるしかないのだ。
それを相手も感じ取ってしまったのだろう。自分の斬撃を真正面から受けて立つ。それを無視しては、騎士としての誇りを汚すことに他ならない。そして、
「「『紫電一閃』ッ!!」」
デバイスが激突した衝撃波と炎がぶつかり合った熱風が辺りを駆け巡る中、
(ファルシオン、連結解除。魔力刃に氷結を付与)
そうして、フォルテから切り離されたファルシオンの斬撃を間髪入れずに繰りだしたものの、レヴァンティンの鞘で防御され、ダメージには至らなかったようだ。とはいえ、距離を取る事には成功したのだが、あちらから。
「……このような状況でなければ、心躍る戦いだったものを……。これほどの相手と
「全力で遠慮します! 姐さんすぐ熱くなるから」
「今のお前が言うな! 先程の斬撃、殺されるかと思ったぞ!?」
呆れられながらの賛辞に少しばかり嬉しくなったが、今は戦いが目的ではない。どうにかしてこの五人から逃れるのが先決だ。よって……。
「すいませんが……、ここは退かせてもらいま――」
「『デアボリック・エミッション』ッ!!」
逃げようとした矢先、はやての空間作用型の広域殲滅魔法が俺へ向かって直撃コースで放たれていた。
その場には、リイン以外の八神家一同。そして、シャマル先生にグルグル巻きで拘束されている俺の姿があった。俺以外の五人は息を切らし、呆れかえりながら……。
「はあ……はあ……、五人がかりで捕まえるのに……、ここまで時間が掛かるとは思わへんかった……」
「この野郎……ふう……、手間掛けさせやがって……!」
「はやてもヴィータもそこまで意地になることないだろ!? 何だよ!? いじめかこれは!!」
拘束されながらも気持ちは負けていないとばかりに、目の前の昔馴染みに対して反論をすると、
「あのな? 見ててじれったいから、もうはっきりさせよ。別に取って食われるわけやあらへん。な……?」
「そんな事の為に、守護騎士総動員して俺捕まえて……、俺の気持ちを考えたことあるのか!?」
「様子見るたびにモジモジしとったら、私の方が気が気でないんや! 何や、その……青春謳歌してます、みたいな態度は!? 私なんて
……はやて紹介してくれって言う人、結構多いんだが……。邪魔してる、というか周りも凄すぎて声かけるのを戸惑っちゃうんだろうなあ……。
「俺は悪くない。みんなして追っかけるから逃げちゃたんだ。そのうちどうにかしたさ」
「せやったら、これからでもええやろ。逃げられへんように、みんなであっちに行くから」
さて、どうしてこんな状況になったかというと、数日前の通信にて――
「もう告白しよ? 私の方が気になって仕方ないから」
「余計なお世話だ。その話題禁止」
最近、俺を心配して事あるごとに通信で様子を確認しようとしていたはやてが、いきなりおかしな事を言い出していた。
「今度の休みにそっちに行って、私も手伝うから……な?」
「来なくていい。話がややこしくなりそうだから」
……と、丁寧にお断りしようとも、多分奴はそんなのお構いなしにアクセル来ようとするだろうと予想したので、休日での無人世界の渡航許可を取り、そこへ逃げ込んだのだ。しかし、それを読んでいたとばかりに先回りされて、しかも五人がかりで捕まえようとしてきたので、全力で逃げ回っていたというわけだ。
まるで俺が犯罪者の様に扱われているが、俺は何も悪い事はしていない。なので、
「八神三佐からパワハラ受けてる~。理不尽だー、暴挙だー」
必死の訴えで、周りを懐柔しようとしたものの。
「これはプライベートや。階級は関係あらへん。昔からの友達と、ちょうじゃれとっただけや」
ちょっとで俺の周りごと吹っ飛ばすのか、お前は。笑顔で恐ろしい事をシレッと言いやがって。
「万が一、振られても、もう一人の方と付き合えばええやん。難しく考えすぎや」
「あのなあ……。告白するって事は、ゆんゆん振るんだぞ!? それで俺が振られたからって、やっぱり付き合ってとか、どんな恥知らずだ!?」
((((面倒だなあ……、この男))))
俺の説得をしているうちに疲れ果ててしまっていたようで、ゲンナリしていた一同だった。
「なあ……、何であたしらが……たかだか色恋沙汰でここまでしなきゃならねーんだ?」
「まあ、迷える子の手助けって事で……」
「ベルカの時代では考えられん事だ。それだけあの時よりは平和という事だろうが」
「…………」
ザフィーラのみ無言を貫いてはいたものの、俺を見る視線が痛い。
「大丈夫やって。きっとうまくいくから、そこは――」
「すまんな。ちょっと心の準備したい。この拘束は解かせてもらう」
俺以外の人間は意外も意外といった表情をしていたが、こちらもただ捕まっていたわけではない。会話しながらバインドを解くための解析作業を淡々と続けていたのだ。
「じゃあなー! 無理矢理告白させられるなんて、俺は御免被る! もう捕まえられるつもりはない!」
八神家全員が呆れながら、俺がその場から立ち去って十数分後、
「はやてちゃん! 皆さんを連れて来ました!」
「リイン、お疲れや! カズマ君達もごめんな? いきなり呼び出して。実は――」
別行動をしていたリインがカズマ達を連れて、無人世界へと訪れていたのだった。はやてが事情を説明すると……、
「あの男、バカなんですか!? 帰りが遅くなるからと言っていましたが、こんな下らない事だったとは……!」
「あの……ロードはそういう人なんでしょうか? マリエルさんからは、優秀な魔導師だと聞いていましたが……」
「お兄ちゃん……、情けないよ……。かっこわるい」
めぐみんは拳を握りながら怒りに震え、みすてぃは自分の主に対して抱いていたイメージが崩壊し、かすみは兄の情けなさに脱力してしまっていた。
「ユウさん……、ギャップが激しすぎます……」
「と、ところで……この地形の惨状は……!? どれほどの責め苦を……!?」
「ユウさん……無事よね? もし怪我してても治してあげるけど……」
「ここまでされてまだ逃げ回ってるって……、その労力をちょっと別方向にやればいいだろうが! あのリア充があ……!!」
カズマ達ですらここまで馬鹿くさい理由とは思っておらず、どうしたものかと困ってはいたが、
「ここは俺に任せろ。あいつを炙り出せば良いんだよな?」
「何かええ方法があるの? 私達でもかなり難儀してるよ?」
「ふっ……。あいつは最初から詰んでいるのさ。かすみがここにいる時点でな……」
カズマがかすみで何かをしようとしているので、それに反応した人間が一人いた。顔を緩めながら赤くなって実に嬉しそうに、
「つまりは……、義妹を辱められたくなければ、大人しく出て来い! この可憐な少女がどうなっても良いのか……! と、つまりはそういう事なのか!?」
「そんなわけねーだろうがああああ!!」
ダクネスの予想を即座に否定したものの、彼の捕獲のための準備を滞りなく進めていた。紙を一枚かすみに手渡してから、それを見たかすみが、大きく息を吸い込んで目一杯の声量でもって……。
「お兄ちゃんの意気地なし! 30歳でもないのに魔法使いのヘタレ童貞!!!」
普段は静寂が支配する無人世界に、かすみのちょっとまずいセリフが響き渡っていた。これが普通に人間が生活している場所であれば周囲は凍り付いていただろう。
かすみがそれを言い放つとすぐさま、
「かすみに何言わせてんだ!? ゴラアアアアアア!! ……あっ」
彼女を溺愛している保護者にして義兄が、目の前にすっ飛んできていた。逃げていたはずなのに姿を現してしまったのを後悔しても遅い。その場の面々はすぐさま、
「お願いね。クラールヴィント!」
「『バインド』ッ!!」
「『フリーズバインド』ッ!!」
炙り出されたユウの動きを全力で封じ、指一本動かす事すら困難な状態へとしていたのだった。
捕獲されてしまった俺の周りには、八神家全員にアクセルの面々も全員と、正に四面楚歌。俺、何も悪い事してないよね? エリス様、ウォルバク様、アクア様、名前の知らない傀儡と復讐の女神様、どうかお助け下さいと心の中で祈っていた。アクア様は目の前にいるけど。
「もう、観念しよ? 丁度めぐみん来てくれたし……な?」
「この状態でか!? ミスリルのワイヤーと魔力の糸に縛られて、体は氷漬けで何の冗談だ!? ムードも雰囲気もへったくれも無いだろ!? はやてはそんなのだからセクハラロギアって呼ばれるんだぞ!」
「こうでもせえへんと、全力で逃げるやろ!! それと私をそう呼ぶんは悠君だけや!」
こうなったら最後の手段とみすてぃの方を向き、今が出番とばかりに高らかに。
「みすてぃ、訓練の成果を見せるぞ! ユニゾン――」
「お断りします」
我が家の末っ子、生誕数ヶ月にして反抗期に突入したとばかりに、プイっとそっぽを向き俺の要請をガン無視していました。
「……融合騎に愛想つかされる主ってのも斬新だな」
「あれは仕方ないです。私が同じ立場でもああします……」
ヴィータとリインがみすてぃの態度を目の当たりにして、少々引き気味になっていた。
「お前……、最初に紅魔の里に行った時に言ってたよな? 堂々と開き直れって。責任は取るつもりだし、手を出したのが、ロリっ娘に見える……、おいやめろ、めぐみん! 杖を思いっ切り振り被るな!!」
「記憶にございません」
「お前はどっかの政治家か!?」
カズマが今となっては懐かしいシルビアの件で里に行った際の何気ない会話を思い出していた。確かに俺も覚えてはいるが、知らん振りしていようと考えていると、なにやら録音再生っぽい音声が流れていた。それは紛れもなく、紅魔の里での会話内容で――
『……はあ。あのな、手を出すなら出すで、もっとこう……堂々と開き直った方が良い。例えば……、俺はロリコンじゃない! 責任は取るつもりだったし、手を出したのがたまたまロリっ娘に見える人だった――』
「おい……、ファルシオン。お前まで何で裏切ってんの? お前は苦楽を共にした相棒だと思ってたが?」
『マスター、ここはもう観念するべきところです。いくらなんでも情けなくなってきましたから……』
この場の味方はもう誰もいない。完全に孤立してしまっていたのだった。
「ユウ……あの夜のは……嘘だったのですか? だからここまでして逃げ回って……」
「い、いや、そうじゃない! 嘘とかじゃなくて、その……自分でも戸惑っているというか……、今の関係が変わったらどうすれば良いんだろうかとか……、俺ってかすみの方を優先しちゃうからそれで良いのかとか……」
「良いですか!? いくらなんでもここまでされたら不安にもなりますよ! その気持ちを考えた事があるのですか!?」
涙目になりながら、俺に対して詰め寄るめぐみんだった。これがドラマ辺りなら抱きしめたりするところだろうが、全身拘束されている状態ではそれは適わず、顔だけが出ている雪だるまならぬ氷だるまの男に怒っている少女の図が出来上がっていた。
「ねえカズマ……あれってやり過ぎじゃない? 感動的なシーンが台無しよ?」
「仕方ないだろ。ああでもしないとまた面倒だ」
「もう拘束を解除しても良いのではないか? というか、私に代わってはくれないだろうか……」
アクア達が俺達を見て、あの状況はないといった感想を漏らしていたが、これに関してはこの場の全員でやったに等しいので、そう思うなら自由にして欲しい。
「お兄ちゃん……、めぐみんお姉ちゃんに嫌われても良いの? こんなお兄ちゃんはわたしだって嫌い!」
かすみの一言が何よりも胸に刺さってしまう……。お兄ちゃんは嫌い、嫌い、嫌い……と、その単語のみが俺の精神を徐々に、そして確実に削っている。
「ロードの目から光が失われています! これはかなりマズい状態では!? しっかりして下さい!!」
「私よりもカスミが言った方がダメージが大きいとは……! 悔しいのは悔しいですが、こんなのを見ても嫌いになれないのが、自分に対して頭を抱えたくなりますよ!」
俺の様子が危険領域だと感じたカズマ達はすぐさま拘束を解除。俺は通常状態へと復帰したのだが……、
「嫌い……。お兄ちゃんは嫌い。俺は要らない子。お兄ちゃんなんて要らない子……」
膝を抱えながらどんよりどころか、ブラックホールの様な暗黒が立ち込めている。そんな雰囲気にカズマ達も何も言えなくなっていた。
「わたし……あそこまで言ってない……」
「何でアイツは……、こう、悪い方向に脳内変換しちまうんだか……」
どうやったらこのしょうもない状態から抜け出せるのかと困り果てていたカズマ達だったが、はやてが何やら思い付いたらしく、
「ああっ! これはあかん! 私、大事な用があったんや! ミッドに帰ろ。かすみ、みすてぃ、今日は家に泊まりに来て。海の近くやから景色がええよ」
「へっ……? お兄ちゃんに聞いてからじゃないと……」
「まあまあ、後で私から言っておくから……な?」
その行動の意味を即座に理解したのは、アクセルの面々ではカズマの他に、
「では、私達も帰るとするか。ユウは魔法で戻って来れるのだろう? こちらは先に戻って夕飯の用意でもしておくか」
ダクネスからの提案でアクセルに戻ろうとしていたが、そこに無言で佇むゆんゆんに、
「……今日は、思いっ切り泣くと良い。酒でも何でも今日だけは特別だ」
「……はい」
アクセルに戻ってから愚痴でも何でも最後まで聞いてやるとばかりの優し気な態度を取っていた。
そして、俺とめぐみんしか残されていない無人世界では……、
「二人っきりですね……」
「そうだな……」
「その……隣に行っても良いですか?」
「ああ……。寒かったらこれでも着るか?」
そう言って、バリアジャケットのコートの部分をめぐみんに差し出そうとすると……、
「そうですね……、しばらくこのままでいたいです」
胡坐をかいている俺の上へと座り、もたれかかって、ぴったりと触れ合っている体勢になってしまった。
「「あの……」」
同時に相手に対して何かを言おうとしたが、言葉が続かずにしばし無言となってしまう。このままでは流石にいけないと感じてしまい。
「あのさ……、せっかくだから……ここで爆裂してくか?」
「もっと……言って欲しいのがあるのが分かりませんか?」
そりゃあ……みんなして気を使って二人きりにしてくれた意味が分からないわけではない。
「その……な? 俺ももう少しこのままでいたいかな?」
後ろからめぐみんを抱きしめると、その温もりで安心してしまう自分がいるのが良くわかってしまう。
「はあ……。本当にしょうがない男です。せめて、二人っきりの時くらいは、私だけ見てくださいね?」
「ん……。せめて愛想尽かされないように努力します……」
そして、爆裂後にアクセルに帰ったのだが、俺達を見た光景は、
「あはははは! あの二人なら式はアクシズ教会にしないと! うちの子にも話しておかなきゃ!」
「ダクネスさん……! 私じゃ駄目だったんですか!? ぐすっ……」
「まあこればかりは……な? 私も自分好みの男が中々いなくて困っているのだ……。もう一杯行け」
良いだけ酒飲んで酔っ払っている女性陣だった。ダクネスは愚痴にでも付き合っているのだろうが、アクアはどう考えても、ただ便乗して飲んでいる。カズマに至っては姿が見えない。おそらくこの惨状で酒場にでも行っているのかもしれない。女三人寄ればやかましいとは言うが、酒まで入っているので手が付けられない。
ここで俺らが見つかっては、また面倒ごとになる。そう思ってしまった俺とめぐみんは……。
「今日はどっかに泊まるか?」
「そ、そうですね……。どうせなら……一緒の部屋が良いです」
こうして、あれだけの騒動にしては……、ゆったりだが進展があったのでした。
ゼストさんについては、後書きでやろうかと思ってましたけど、長くなりそうだったので、外伝といった形でやろうかと思います。次で終わりかな。