この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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子供というのは正直だが、大人はヒヤヒヤする

 本局執務室にて、出勤直後から山積みの書類と格闘して、どうにか落ち着いたといったところだった。みすてぃも一緒に出勤してはいるが、あちらはまだ研修真っ最中なのだ。生まれたてというのもあるが、正式に三等空士となる為の筆記試験や実技試験等もしなければならず、その対策のために先日は勉強会も行っていたりする。

 彼女の適性というか……、希望を鑑みると、陸戦や空戦よりは総合の方でランク取得をした方が良いなどの方向性も固まって来ていた。

 そんなのを考えながら仕事をこなし、昼休み。

 食堂で昼食を取って、ちょっとデスクで昼寝でもしようかなといった矢先、次元間通信の着信音が響き渡っていた。この着信音になっている歌を歌っている歌手さんは、何故かフェイトの声とよく似ている。

 何かと思い、発信先を見るとかすみのデバイスからで、モニターを開いた刹那。

 

「お兄ちゃん!? 助けてええええ!!」

 

かすみのどアップの顔と大声で、昼休み中で昼寝している方や、食後の紅茶やコーヒーで憩いのひと時を楽しんでいる方、はたまたボードゲームで頭の体操をしている方々が、何が起こったとばかりに一斉に俺の方を向いてしまっていた。

 

「な……なな、何があった!? まずは落ち着け! な?」

 

「あゆむ君が泣き止んでくれないの!? お父さんとお母さんがいないって。どうしよう!?」

 

 ちゃんと説明はしていたはずだが、やはりまだ子供なのでそこら辺は仕方ない。それも含めてアクセル屋敷のダクネス達に頼んではいたのだが……。

 ただし、あの子の素性に関する推理に関しては、カズマのみしかまだ知らない。そこはあまり広めない方が良いのかもしれないとの事で、口止めとなっていた。特にアクア辺りに知られると面倒といった理由で。

 

 とりあえず、状況を聞こうとはしたが、モニターに映っていない部分からダクネス達の声が響いていた。

 

「くっ……!? 男の子とはここまでパワフルなものなのか!? 子供だと思っていたが……。シルフィーナは大人しかったので、まだ楽な方だったというのか!? 済まんが、めぐみんはこめっこで慣れているだろう? 変わってくれ!」

 

「確かにこめっこは物怖じしませんが、ご飯を食べさせていれば基本的に大人しいので……。しかも、ここまで火が付いたように泣くのはありませんでした! アクア……手品をお願いします!」

 

「ほーら、このワンちゃんのぬいぐるみが消えて、コカトリスのぬいぐるみに……って、見てくれない!? ね、ねえ……ちゃんと見て欲しいわ……」

 

 男の子一人に悪戦苦闘する女性達だった。その間にも、彼の泣き声が止む気配は無い。話を聞くとカズマは朝から出張っているらしく、というか、俺の依頼をクリスと頑張ってくれている。

 

「おかあさーーーん!? おとうさーーーん! どこー!?」

 

 おそらく、ほぼ確実ではあるが、未来での俺の血縁の男の子は、一見大人しいが感情的になるとかなり厄介であるらしい。普段なら、仕事中にこんな連絡は寄越さないかすみがこうしたって事は、もう困り果てているという事だ。なので……スッと立ち上がり務めて冷静に。

 

「申し訳ありませんが、帰宅してよろしいでしょうか?」

 

「う、うむ……。しかし、今日中にまとめなければならない資料もあるだろう?」

 

「そこは自宅が落ち着いたら、戻って来て作成します。日付が変わるまでには必ず」

 

 口髭が特徴のナイスミドルと言わんばかりの上司である、この部署のチーフではあったが、先ほどの通信でただ事では無いと悟ってしまった様で、一時帰宅の許可を得ることに成功した。すぐさまポートまで行き、アクセルまで転送をして即座に屋敷の玄関へと入ると。

 

「ただいまーって!? ぐえっ!?」

 

「ううっ……ぐすっ……」

 

 俺が姿を現した途端、あゆむ君の猛烈な頭突きタックルがどてっ腹に直撃。昼食を取ったばかりなので、その衝撃でリバースしそうになったのを、何とか堪えて彼と向き合っていた。子供というのは加減が分からずに全力でやってしまうのだろう。

 

「ほらほら、男の子が泣かない。せっかくのイケメンが台無しだぞ?」

 

「だって……、だって……」

 

 泣いている子をヒョイっと抱き上げながら、屋敷内へと進むと……。

 

「お前ら……生きてるか?」

 

 思わず……そう口走ってしまった。アクア達、この場の四人は疲れ果てて目も虚ろで座り込んでいた。体力的にはともかく、精神が削られてしまったのかもしれない。

 

「お兄ちゃん……ごめんなさい……。お仕事なのは分かってたけど……」

 

「ああ……気にすんな。ちゃんと許可は貰って来たから。落ち着いたら戻るが」

 

 そこまでであゆむ君を降ろして、絵本でも読もうかなと……その前に、

 

「あのな? 俺はまたお仕事行かなきゃならないから、お姉ちゃん達の言う事をちゃんと聞くんだぞ?」

 

「うん……」

 

そこまでで理解はしているのは、紅魔族ならではの知能の高さかもしれない。感情的には納得はしてないだろうが。何とか納得させようと、めぐみんの方を向き。

 

「俺がお父さんなら、あっちのめぐみんは紅魔族だし、お母さんみたいなもんだ。あゆむ君も紅魔族だろ?」

 

「わ、私が……お、お母さん……」

 

 そこまでで頬を赤くしながらポーっとしていためぐみんだったが、あゆむ君が首を傾げながら。

 

「でも……、おかあさんとおねえちゃんみたいにふかふかじゃない……」

 

 ふかふかとは何の事だろう?

 

「だっこしてくれるとふかふか」

 

 この子を女性が抱っこしてふかふか……? そして、めぐみんには該当しない……という事は……!

 

 そこまでで背後から凄まじい威圧感を感じてしまい、恐る恐る後ろを向くと、指をバキバキに鳴らしためぐみんさんが仁王立ちしておりました。

 

「お、おお、落ち着け! この子供相手に大人げないにも程がある! 子供は正直だからつい出ちゃったんだ!」

 

「ふ、ふふふ……、何処の子でしょうね……! 見ず知らずの子にまで文句を言われる筋合いはありません……!」

 

 これはマズい!? めぐみんは怒らせたら、この子にだって容赦はしないかもしれない。どうにかうまく凌がなくては……。

 

「あのね? ふかふかじゃなくても、そこには男の夢とロマンが詰まってるんだ。あと十数年すれば分かるようになるから、謝ろうね?」

 

「……?」

 

 そりゃあ……男の子とはいえ、男のロマンが分かるようになるのはまだ早い。それは承知の上だが、この修羅場を乗り切るにはこれしかない。

 

「……ユウもかなり焦ってるわね? 男の子だから仕方ない部分もあるけど……、あんなの言うなんて……」

 

「もっとこう……欲情に駆られた視線でも良いくらいなのだが……」

 

「……? ふかふかって何?」

 

 約一名の年齢一桁な女の子を除き、俺の言い分は理解してくれた様ではあったが、俺自身もセクハラ発言なのは十分承知。しかしながら、

 

「おんぶしてる時にだって、それなりに背中へと感触がああああああ!?」

 

「この男は……! フォローしているのか、バカにしているのかはっきりして下さい!!」

 

 めぐみん、止めて! そんなに紅い目を輝かせながら、杖の先っちょ使って、穴開く勢いで俺の背中を突かないでくれ!

 

「ほ、ほら……、このお姉ちゃんは怒らせると……、おっかないから、ごめんなさいしようね?」

 

「うん……。ごめんなさい……」

 

 何が悪いかは分かっていないようだったが、謝られては怒る事も出来なくなったようで、渋々ながら引いてくれためぐみんだった。

 

 ……しかし、お姉ちゃんもふかふか、か……。かすみさんの将来は明るいらしいな。

 

「お兄ちゃん……、変な事を考えてない?」

 

「き、気のせいだよー……」

 

 こ、紅魔族のオリジナルは、めぐみん達の様に何を考えているかが分かってしまうらしい。今後気を付けなければ。

 

 ここまでで、ふと疑問に思った事が一つ。この子の母親は誰だろう……と。紅魔族以外にも赤い目の女性を知らないわけではないので、もしかしたらといった懸念があったが、昨日ベッドで眠っていた時に、あゆむ君の腕にはバーコードがあった。

 昔々の初代紅魔族が、開発者に機体番号を強請った時に付けて貰ったそうなので、紅魔族には違いない。ちょいと違う血も混じっているが。

 とは言うものの、お母さんってどんな人と聞くのも躊躇われる。その女性ってのは要は俺自身の相手という事になるからだ。

 昔、キリエさんが未来の事は知らない方が良いとも言っていたが、さて……。

 

「ねえねえ、あゆむのお母さんって、どんな人?」

 

 アクアさん、俺が悩んでいる横でさも当然の様にその質問をしないで下さい。

 

「んーっとね。めがあかくて……」

 

 そりゃあ、紅魔族ですもんね。

 

「かみがくろくって……」

 

 それも紅魔族の特徴だよな。

 

「まほうで、もんすたーたおすおかあさん」

 

 ……結論、子供の説明ではどんな人かは分からない。そして、それ以外ではふかふかな部分がある人と。

 

「しかし……、少し疲れた……。どうだ? 気分転換に皆で散歩というのは?」

 

「それも良いかも知れませんね……。爆裂にはまだ早い時間ですし、この子では冒険者ギルドは落ち着かないかもしれませんから、ウィズ魔道具店にでも行きましょうか」

 

 それもありだろう。この人数では、万年赤字の店に集りに行くみたいなので、ケーキ位は持参してお茶会も良いかも知れない。

 という訳で、この場の全員でウィズの店へと向かう事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 カランカランと来客の鐘が鳴る中、入店する。

 そこには店長と店員さん二名が揃っており、俺達はいつもの顔ぶれの他に、あゆむ君もいるのでウィズ達の視線はそちらへと釘付けとなっていた。

 

「あら? 今朝早くにカズマさんが来てましたけど、皆さんはどうされました?」

 

 カズマがここに来てたって……? もしかして神器探索の件で、バニルの力でも借りに来ていたのか?

 

「フハハハハ! 茶髪の方の小僧がわざわざ我輩に見通せなどと頼んで来たからには何かと思えば。そうか! これはまた面白おかしい事態となっておるな。凶悪魔道士よ!」

 

「いきなりケンカ売ってんか!? 良いか! 余計な事するんじゃねーぞ? ただじゃ置かないからな!!」

 

「それには及ばぬ。何、我輩は何もせぬとも。何もな!」

 

 奴は何を考えているのだろうか? 嫌な予感がする。

 

 すると、あゆむ君は俺のズボンをクイクイ引っ張り、俺の顔を見上げながら。

 

「おとうさん……、いつもかめんのあくまさんには、おしおまいて、じょうかしなさい……っていってた」

 

 そういえば……、それって日本じゃ、お清めの意味でやるよな? もしかして……ヤツに効く?

 

「あら! あなたのお父さんは素晴らしい人ね! でもね? この汚らわしい存在に、そんなのは無意味よ! 私が二度と甦らない様にしてあげるわ!」

 

 その場に魔法陣を書き始めたアクアだったが、全力でやっているらしくウィズまでヤバい事になっていた。彼女まで浄化させるわけにはいかないので、何とか止めると。

 

「でもね……、おかあさんが、”おとうさんは、ほんとうはあくまさんをきらってないからね。ほんきだったら、ふっかつしないようにふういんして、ひとのこないばしょにくくりつける。”って、いってた」

 

 何を教えてるんでしょうね? あゆむ君のお母さんは。

 

「うむ、小僧よ。我輩も汝の父を嫌ってはおらぬ。何せ、奴ほどおちょくりがいのある人間はそうそうおらぬのでな。フハハハハハ!!」

 

「そうだなあ……、まだ優しいな。もし俺だったら、仮面ごと封印して虚数空間にでも叩き落してやるって。あはははは」

 

 バニルと俺が笑いながら、和やかどころかお互いを牽制してしまい、店内の壁や床にひびでも入るんじゃないかといった状態となってしまった。

 

「めぐみんお姉ちゃん……、お兄ちゃんが怖い……」

 

「大丈夫ですよ……。い、いい、いつもの事ですから……」

 

「頼むから暴れないでくれ……。それだけは頼む……」

 

 めぐみんはかすみを抱きしめて安心させるようにし、ダクネスは俺が万が一、暴れても抑えられるように準備している。

 

「それで……今日はどうしたの? 見たところアイテムも持って来ていないみたいだけど……」

 

「ちょっとした散歩ついでです。大人数ですので、お土産も持って来ました」

 

 ウォルバクさんとそんな他愛のない会話をしながら、店内のテーブルの椅子に着席した。男の子が一名、俺の膝の上に座っている以外は、いつもこの店を訪れた時の光景となっている。

 

「この子も紅魔族ね? 託児所でもやってるの?」

 

 その質問に対して、経緯を説明するめぐみんとダクネスだった。すると、ウィズがあゆむ君に顔を近づけて、何やら気になったらしく、

 

「誰かに似ていますね? よく知っている人の様な……?」

 

「……紅魔族で子供ですから、同じに見えるだけですよ……。きっと……」

 

 膝の上でケーキを頬張りながらジュースを飲んでいる子は、この店の店員を知っている感じだ。何となくだが、顔を合わせた時に、誰だろう……、といった雰囲気は出していなかった。

 

「そういえば……凶悪魔道士よ。貴様が持ってきたアイテムだが、今しばらく時間をくれぬか? もう少しで高値が付きそうなのでな」

 

「そこらは任せるって言わなかったか? ってか、意外にきっちりやってくれてんだな?」

 

「うむ、高値で売れれば我輩の取り分も増えるのでな。本当に貴様ら二人は良いお客様であり、取引先であるわ」

 

 何気に取引に関してはきっちりやってくれているのが、コイツと縁切れない要因ではなかろうかと思う今日この頃。俺じゃあ、良い買い手を探すだけで一苦労だから、そこら辺は助かっている。

 一部ピリピリしていたものの、昼下がりのゆったりとした時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 その頃、カズマ達はというと――

 

「助手君……、どこから神器の在処を聞いて来たのさ? こんなに早く手掛かりが掴めるとか……」

 

「ちょっとした伝手(つて)があるだけですよ。あいつの言い分だとアルカンレティアと紅魔の里の間らしいですが……、そこからの詳しい在処までは、言うつもりが無いとか……」

 

「じゃあどうする? あたし達だけで行ってみる?」

 

「うーん……、意外に面倒そうなので、俺達だけだと……」

 

 喫茶店でお茶を飲みながら今後の行動についての指針を立てている最中だった。

 

「そういえば、クリス。その時間移動の神器だが、使い方次第じゃかなりの危険物じゃないのか? 早く回収しておいた方が良いんじゃ……」

 

「神器の本来の持ち主ならともかく、それ以外の人間が使っても人の移動なんて無理だしね。良い所で小物を飛ばせるくらいかな。だから優先順位は低いけど」

 

 その程度なら確かに危険物とは言い難い。そう納得していたカズマだった。すると、クリスはワクワクが抑えきれないとばかりに。

 

「でもさ、その男の子ってユウの血縁でしょ? ってことは、相手は誰なんだろうね?」

 

「紅魔族って事は、めぐみんかゆんゆんのどっちかじゃないですか? ちょうど今、女の戦いになってますから。あいつは、ハーレム系主人公なんて楽しめる性格じゃないから、さっさと決めちまえば良い物を……」

 

「ユウならやり方次第じゃ、それも可能かもしれないけど……。まあ、生まれ育った所の習慣とかあるからね。そんなのは、そうそう変えられないから――」

 

 やり方次第じゃ可能とは……? と聞き捨てならない言葉を耳にしてしまったカズマだった。

 

「クリスさん、その辺を詳しく」

 

「じょ、助手君? ちょっと目が怖いよ……。いや……ほら、世界って沢山あるでしょ? その中には重婚っていうのが可能な世界もあったはず……」

 

「つ、つまり……、そこに引っ越せば……男の夢(ハーレム)が叶うと……!? 俺が世界移動の許可を得たのは大正解だったのか! はははははっ!」

 

 カズマが高笑いしているのを黙って見ているしかないクリスだった。それが収まるまで待っていたのだが、カズマから気になる事があったらしく。

 

「そういえば……、あいつの親って突然変異とか言われましたけど、実際は先祖がチート持ちとか、そんなのじゃないんですか?」

 

「そうだね……、あり得なくはないけど、魔力そのものがそこまで特化しちゃうのは、ちょっと無いかも……。どうせだったら、普通の魔法も使えたうえで特殊なのを付け足すから」

 

 確かに神様から貰うようなチートなら、そっちの方が良いに決まってる。

 

「でもさ、そんな特殊な能力を持ってるような人の息子さんなら、結構大変だったかもね」

 

「と……言うと……?」

 

「ユウはさ、その魔力変換資質っていうの受け継がなかったんでしょ? もしかしたら、行く先々でお父さんと比べられたりして、悔しい思いをしてたんじゃないかな? その人の息子さんなのに……って」

 

 プロ野球選手の息子だからって、周りが勝手に野球が上手いと思い込んで勝手に落胆されるとか、そんな感じなんだろうかと直感的に理解したカズマだったが。

 

「こないだ取材に来てた人からは、かなりの使い手だって言われてましたけど。まあ、あいつの劣等感は、幼馴染だけじゃなくて、そこら辺も起因してるかもしれないですが。今なら、そんなの言う奴なんていないんじゃないですか」

 

「ユウの場合、その過程で凄く根性が捻じ曲がってる気がする……。心根は真っ直ぐな人の筈なんだけど……。今朝だって、あたしを呼ぶのにあんな方法を使ってるから……」

 

「ああ……、何となく分かった。けど、そこまでの経験して、ただ真っ直ぐなヤツの方が異常ですって。その位の方が個人的には安心ですけどね。それで爽やかで努力家な奴なんて嫌味でしかありませんから」

 

 その後、とりあえず、神器の在処についての情報を依頼主へ届けなければならないというので一致していたカズマ達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって、ウィズ魔道具店。そろそろ仕事に戻らないと、俺のデスクがマズい事になるのでお暇しようと考えていた。

 

「じゃあ、そろそろ――」

 

「少し待たぬか。そうすれば面白い物を見れるが?」

 

「悪いが、仕事が溜まっててな。ゆっくり話なんてしてられないんだよ」

 

 そう、こちらに来てはいるが、いつまでも仕事ほったらかしという訳にもいかない。そろそろ勤務に戻ろうかとしていた時、男の子が俺を涙目で見上げて。

 

「おとうさん、きょうはかえってくるよね?」

 

 どうしよう……、どうにか今日の分を終わらせても帰れるのは日付が変わったあたりだ。そこまででまた泣き出したりしたら、アクア達の手に余るかもしれない。

 

「えっと……、夜遅くなるから、お姉ちゃん達と良い子で待っててくれないかな?」

 

「ぐすっ……ううっ……」

 

 ヤッバイ……もう泣きだしそうだ……!? 逃げるのもな……。大人相手ならそれもありだが、この子だと……。

 

 そこまでで、どうにか説得しようとしゃがんで彼の頭を撫でようとしたその時に、店の入り口が開き……、

 

「あれ? 屋敷に誰もいないから、店主さんのお店だと思いましたけど、ユウさんまでどうしたんですか? お仕事中じゃ……」

 

 紅魔の里に帰っていたゆんゆんが姿を現した。用事とやらは済んだらしいが、もう少しだけゆっくりしてくるものだとばかり思っていた。とりあえず、不思議そうにしているゆんゆんに経緯を説明しようとしたところ、

 

「あっ! おかあさーん!! おかえりなさい!!」

 

 あゆむ君が満面の笑顔になりながら、ゆんゆんへと抱き着き、信じられない言葉が飛び出していた。




主人公は未来でバニルについて何言ってるやら。フォローしてるゆんゆんの苦労が垣間見えますね。
まあ、バニルさんはその程度はどこ吹く風でしょうが。
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