この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
みんながアースラカレーで満足して、神器探索のやる気を出してくれた次の日。まずはどこから探索しようかといった話題になっていた。
「アルカンレティアと紅魔の里の間か……」
「そうは言っても、結構な範囲になりますね……」
「あゆむの親の件もある。街での聞き込みもしなければな」
などなど、これからの行動についての指針をどうするかで、早くも行き詰ってしまっていた。その上……、
「おとうさん、ぼくはいっしょじゃないの? えんそく?」
「お兄ちゃん、わたしも一緒に行きたい! わたしだって戦えるから」
子供達まで付いて行きたいと志願する始末だった。かすみはともかく、あゆむ君は……といったところだったが、俺やゆんゆんがいなくなると、どうなるかも分からない。下手すれば冒険者ギルドの時みたく、感情的になった拍子に『
「街中であゆむの親が見つかるかもしれないから、一緒に連れて行くべきだと思うの。それに私達だとあの子の相手はちょっと自信がないし……」
「確かに誰かが残って面倒を見るとしても、ユウかゆんゆんはこちらに残る事になりますね。爆裂以外の高火力持ちが不在というのは些か不安ではあります」
ついでに言うと、うちの子はどっちかが不在でも不安がったりしちゃいます。だからここ数日は、朝には顔を合わせる様に、夜遅くでも屋敷に帰宅するようにしていたのだ。
「だったら、アルカンレティアから行きましょうか! あそこなら探索場所の近くだし、私もチヤホヤされるし言う事なしでしょ? ウィズかカスミにテレポートして貰えばすぐに着くから」
「……なあ、かすみがテレポート使えるのは良い。けど、いつの間にアルカンレティアを登録した?」
「前にお礼を言いに行った時に、転送地点に登録してもらったのよ。私がいつでもアルカンレティアに行けるようにね!」
……アクアの場合、
「じゃあアルカンレティアからで良いと思うよ? まずは人のいそうな所で情報収集は必要だしね」
「クリスまでついて来てくれるのはありがたいけど……、その……大丈夫なのか? 仮にも――」
「その辺は……ね? あたしはあくまで盗賊だから問題はないよ!」
この場でクリスの正体を知っているのは、俺とカズマのみとなる。一応、女神エリス様は時折地上へと降りて来ているといった逸話があるらしいが、それは単なるお伽噺の類である。まあ、先輩女神様がいるので話したところで問題は無いのかもしれない。しかし、アクシズ教の総本山にエリス様が行くと……、かなり大変な状況となりかねないかもしれないというのは、最初に温泉に行った際に
「おし、じゃあ出発するぞ!」
カズマが指令を出しているその横では、
「しゅっぱーつ!」
「温泉……楽しみです……」
元気良く腕を上げて喜んでいるあゆむ君と、探索の他に初めての温泉にウキウキしているみすてぃであった。
かすみにテレポートをして貰い、グニャっと空間が捻じれたのを目にした途端、アルカンレティアへと到着。結構な人数の筈だが軽く転移した上で、まだ余裕な顔をしている辺り、やっぱりうちの義妹は底が知れないと再認識してしまった。
余談だが、随分後になってクリスの正体を知ったアクアが、あの時ウィズの所に行かなくて良かったと言って安堵していた。曰く、アンデッドと悪魔には俺やアクア以上に容赦ないのだとか。
街を散策して情報収集を……と思っていた矢先、
「そういえば……、お前って時間移動の特典なんて、どこで知ったんだ?」
「ああ……、随分前だけど、王城から借りてた『神器研究』って本の中にそんな記述があってな。あの時は神器自体が半信半疑だったけど」
今回に関してはそれでクリスにどうにか連絡を取り、その神器があるのを確認して行動を起こしている。とはいえ、まずは情報収集しなければならないのはその通りなので、それを行う事になった。神器の外見は小手にダイヤルが付いた物みたいらしい。本の中にはデザインも書かれていたので、それをサラサラと紙に書きカズマにも手渡した。
「では、まずは二手に分かれようか。全員で固まっていても効率が悪い」
「だな。どうする?」
チーム分けになったが、そこはあまりこだわる必要がないと考えていた。しかし、
「じゃあ、チビッ子とユウとゆんゆんは一緒のほうが良いだろ。あと、ミニアクアも。他は適当にばらけて……」
「あたしはユウと一緒が良いかな。その方がバランスも取れるでしょ?」
この場で今回の本当の経緯を知っているカズマとクリスが別チーム。ついでに女神様が同じチームなのも、クリスにしたら気を使ってしまうのかもしれない。二人は先輩後輩の間柄らしいからな。
「二時間後に、ここの冒険者ギルドで待ち合わせって事で良いか?」
カズマに同意して、彼らとは別方向に歩き、アルカンレティアを散策していると……、
「あの……この子と同じ紅魔族の大人を見ませんでしたか?」
「あら! 迷子ですか? でしたらアクシズ教へと入信なさいませんか? 信者からは不安が無くなったとか、探し人が見つかった等の実体験が――」
やっぱり勧誘へと結びつけるアクシズ教徒が多くおりました。他には……、
「ああっ……! この妖精は……、アクア様に瓜二つ!? もしや……アクア様の現身では……!?」
「ええっ……!? ロ、ロード……、これは……!?」
ミニアクアな外見のみすてぃを見て、まるで神や仏が目の前に現れた様な反応を見せるアルカンレティアの方々に困ってしまったりと情報収集は簡単には進まなかった。
「まあ、なんだ……、ここに住めば一生安泰かもしれないぞ? 俺は絶対にそんなんしないけど」
「とても嫌な予感しかしないのですけど……」
みすてぃもこの街の雰囲気はかなり疲れるらしい。生まれてまだ数ヶ月でこの街は確かに強烈すぎる。外見がアクアに似てるってだけで、勧誘もお土産を売る営業もいつもより勢いがある気がする。
「うーん……、神器の手掛かりを知ってそうな人とか……、場所とかってないかな……? これだと情報収集どころじゃないよ?」
「あゆむ君の親探しもです……。勧誘と売り込みを捌くので精一杯で……」
「私はアクアさんじゃありません……。アクアさんはもっと大きいです……」
「おとうさん、おかあさん、こんどは、どわーふさんのおみせにいきたい!」
それなりに疲れているゆんゆんとクリス、目も虚ろになって何やら呟いているみすてぃ、その中にあって元気一杯なあゆむ君となっていた。子供は元気が一番とはいえ、これでは何のためにここに来たのか分からない。
「もうすぐ約束の時間か……。とりあえず冒険者ギルドに行ってみるか」
この場の面子ですらかなり疲れ果ててしまっているので、休憩も兼ねてギルドへと向かうと、カズマ達もそこに集合してはいたものの……。
「アクアは……どうした? それ以上に……何で……」
その場にはアクアがおらずに、代わりの人間がいた。見覚えのあるその人物は、俺を見てすぐに。
「整体師さん、久しぶりだね。私がアルカンレティアにいるのがそんなに意外かい?」
「言っとくが、俺は資格は持ってるけど本業は整体師じゃない。清く正しい公務員さんなだけのお兄さんだ」
あるえがまだ俺を整体師と呼んで来たので、即座に反論をすると……、
「間違ってはいないが……、どっちかって言えば、狡賢い公務員の様な気がするが?」
「割と悪知恵が働きますからね。世渡りには必要だったのでしょうけど……」
「一応、職務上はそうしているという事で良いのだろう? 私としては、プライベートでは罵って欲しい物だが」
カズマ達から強烈なツッコミが入ってしまっていた。それに関してはスルーして、あちらの情報収集の結果について聞くと。
「こっちも全然だな。とにかく範囲も広すぎるし、お前が書いた絵を見せても、それを手に入れる為には幸運の壺が必要だとか、アクシズ教に入信した方が良いだので聞き込みどころじゃなかった」
「アクアは?」
「教団本部で信者の懺悔を聞きながら、チヤホヤされたいだとさ」
まあいっか。おかしな事をして騒ぎになるより、一か所にいてくれた方が楽な気がするから。
そして、もう一つの疑問。あるえが何故ここにいるのか。それを問いただすと。
「それがだね。実は……小説の構想が手詰まりになってしまってね。それでアルカンレティアに来てみたわけだが……」
そこでどうして、温泉街に来る必要があったのだろう? 気分転換位なら分からなくはないが……。
そんな思考をしていたのだが、あるえはそれを読み取ったように、経緯を説明してきた。
「どこかから伝え聞いた話だけど、作家というのはホテルや宿屋で執筆する『カンヅメ』というのがあるらしい。なので私もやってみようと思って、アルカンレティアの宿屋で小説の続きを執筆していたというわけさ」
「偶然ですが、窓から私達の姿が見えたらしく、声を掛けられて合流したという訳です」
「わたしとお兄ちゃんが近くにいると、小説の構想が思い浮かびそうなんだって」
別に旅館やホテルに泊まりこんだって進まないものは進まないと思うのだが。それとも厨二な紅魔族よろしく、著名な作家のマネでもしてみたかっただけだろうか?
「おねえちゃんは……、がんたいで、おうちにいてばっかりのおねえちゃんににてる?」
「……? 君は誰かな? 見たところ紅魔族のようだが……」
「実は、この子は――」
あゆむ君について説明をしているゆんゆんであったが、表情が曇ったり怒ったりしている様子はない。元々動じにくい性格なのかもしれないが、冷静に説明を聞いていた。すると、
「ここでの執筆が終ったら、私が里での親探しをしても良いよ。しかし……二人を親と呼んでいるか……。そういえば、『紅魔族英雄伝』の主人公の両親は……整体師さんとゆんゆんがモデルだったね」
モデルどころか、ゆんゆんは実名が使われてますって。それは実在人物と言うと思う。
「あるえ、執筆が上手くいっていないと言っていましたが、どうしましたか? 確か、紅魔族の少年が冒険者になり、魔王を倒すための旅に出るまでは覚えています。『外伝』はその前日譚で、ユウをモデルにしているのも」
「あれはモデルどころか、殆どが実話だ。頼むからそれは世に出すな! お願いだから!!」
「あれなら、アクセルにある魔道具店の店員さんが引き取ってくれたはずだよ。何でも、モデルになった人物の名を出せばアクセルの冒険者の間で売れるのは間違いなしだとか」
あの仮面……、そこまでやってて黙ってやがったな……!? できれば今すぐ戻って燃やしてきたいところだが……。
俺が歯をギリギリ鳴らしながら、我慢している様子を察してしまったカズマ達だったが、殺気立ってしまっていたのが悪かったようで、冷や汗を垂らしていた。
「あるえさん、その……小説が書けないっていうのは……」
かすみも話の続きが気になるらしく、説明を促していた。
「ああ……、その紅魔族の主人公だが、このままで行くと、普通の紅魔族にしかならないのでどうしたものかと思ってね。丁度いい所に、オリジナルや整体師さんがいたので、何か良い案があったら聞かせてくれないか?」
「普通の紅魔族だと何かマズいのか?」
厨二で魔法使いの適性が高いってだけで、十分過ぎる程キャラが立っていると思う。
「そもそも一人前とされる上級魔法を扱う紅魔族なら、魔王軍幹部級はともかく大抵の敵は一人で倒せてしまう。それではパーティーを組む意味も低いし、それに魔王を倒すのは勇者の役目で、魔法使いと言えば基本的に後方で攻撃をしたり、作戦立案をするものだろう? もっとこう……主人公らしい能力でもあれば……と」
魔王軍幹部級ですら、大勢でかかれば軽く撤退させるくらいには強いからな、紅魔族は。
「
言ってる意味がよく分かりません。そんな感想などお構いなしにあるえは説明を続けている。
「オリジナルの場合は、勇者の血を引いているのと初代紅魔族と同様の改造の結果だ。私の小説の主人公にもそんな特別な何かが欲しくてね」
「つまり主人公が強い理由ってのをきっちりしたいって事か?」
カズマの問いかけにうんうんと頷くあるえだった。そんなのは――
「魔法以外は普通に一から頑張りました……で良いんじゃないのか? そうじゃなきゃ、クラスを《冒険者》にでもして、その親の友人にでも防御スキル教わったり、爆裂魔法教わったり、回復だの狙撃だのも教わって、あらゆるスキルを使いこなせるキャラにでもしたら? スキルポイントなんざスキルアップポーションでどうにでも出来るだろ。フィクションだし」
「……という事は、私にも師匠キャラとして小説内で出番があると!? それも悪くありませんね……」
「私の防御スキルもか……。次代にスキルを託すというのも中々かもしれん……」
めぐみんとダクネスも嬉しそうに俺の案を気に入ってくれていたようだった。しかし……、
「それではカズマさんと同じ、『最強の冒険者』となってしまう。実例が存在する以上、もっと違うのが、……というのが正直な所だね」
意外に面倒な注文を付けて来るあるえだった。すると、みすてぃが何かを思いついたらしく、手をパンっと合わせてから、あるえの方を向いて。
「でしたら、あゆむさんの変換資質をモチーフにしてみてはどうですか? 今のところ、誰も考えたことは無い物の筈です!」
「その子の……魔力……変換? ちょっと詳しく聞かせて貰えないか?」
これは良いネタと言わんばかりに、彼についての詳しい話を聞くと、あるえが興奮しているらしく紅い眼を輝かせながら、『重力』の変換資質について俺へと詰め寄りながら顔を近づけてきた。
「つまり……、物体の重さを自由に変えたり、打撃を任意で重くしたり、相手の動きを封じたりと使い勝手が良い能力なのか。しかし……そんなスキルは聞いた事も無い……。紅魔族にそんなのを持つ人間がいたら、もう知れ渡っていてもおかしくはないのだが……」
あるえも顎に手を当て、おそらくはあゆむ君の両親と思しき人間を脳内で検索していると思われるが、まさか未来人だとは口が裂けても言えない。それよりも……、あるえがこれで決まったとばかりに宿へと戻ろうと。
「だが、これは良い話を聞いた! 唯一無二のスキルの持ち主とは、主人公らしい設定だ。早速執筆に――」
「悪いがそれは駄目だ! 何が何でも駄目ったらダメ!」
俺がそれはボツにするようにあるえへ強く言い放つ。
(なんつー偶然だ……。もうあいつの一家の内容になっちまうだろ!? 運が良いのか悪いのか分からないな……)
(助手君? その割には笑うの必死に
後ろでコソコソしながら笑うのを我慢している冒険者と盗賊は後でどうにかするとして、そんな小説は断固として執筆させるわけにはいかない。下手すれば将来予言書になっちまうよ。
「そこまで強く言う事は無いでしょう? それとも何か理由でも?」
理由か……、それなら……。
「重力って地系の魔法っぽくて、地味じゃないか? 主人公なら炎とか雷とか風とかの方が映えると思う」
こんなのは口から出まかせ。これ以上面倒事を増やして堪るかという気持ちだけで言い放っていた。その胸中では、
お父さんごめんなさい。あなたの魔法は地味でも何でもないです。映像資料だと、簡単に暴徒を鎮圧し、広範囲で発動させれば周囲の建物ごと抉り取ったように破壊し、人に向ければ動きを封じつつ物理的なダメージを付与する様なおっかない能力でした。
そんな謝罪を繰り返していた。すると、今度は不思議そうな顔をしたかすみから。
「そういえば……何でお兄ちゃんって、『重力』の変換資質に詳しいの?
「そういえばそうですね……。私は直接見てませんけど、個人の詳細なスキルまでは把握しきれないと思いますけど……」
このタイミングでかすみとゆんゆんから核心を突く質問が飛び出していた。さて、どう答えるべきかと思考を加速させて口を開こうとした瞬間。
「ああ……、こいつの昔の知り合いが、同じ類のスキルを持ってたんだってさ。今はもう職務には着いて無いけど、その縁で知ってるらしい」
唐突にカズマから答えが出たので、意外そうな表情で、そちらを向いていた俺とクリス以外の全員だった。その中でかすみが待機状態のゼファーブルームを注意深く見てはいたが、これはおそらく適当に追加していた嘘発見機能が反応しないので、偽りでは無いと納得したらしい。
確かに”昔の知り合い”で、”今は職務にはついていない”。ここで嘘を知らせる音色が聞こえないのは当然だ。
そして、次に口を開いたのはあるえだった。
「うーん……。出来れば彼の両親に詳しく聞いてみたいものだね。もし迷惑でなければ、私も同行しても良いかい? 取材ついでに、その子の両親探しも手伝おう」
「良いのですか? 人手があった方が確かに助かります!」
「済まないな。私達は別件もあるので、そうして貰えるとありがたい」
「あるえ、ごめんね? 執筆だってあるのに……」
めぐみん達はあるえからの思いがけない提案を嬉しそうに承諾していたが。
(段々ややこしくなってないか? できれば断りたいけど……)
(ここで断われば、また疑いの目で見られるかもな。ここは同行してもらって、さっさと特典探しておさらばが一番良いんじゃないか?)
(そうだね。真相を教えれば後で大変になりそうだから、ここは助手君の言う通りにして、好意に甘える振りをするのが良いと思うよ。あの娘は取材も兼ねてるから、適当に小説のネタを提供するのを忘れないで)
俺とカズマ、クリスはヒソヒソ話をしながら口裏を合わせていた。
「できれば、オリジナルやそちらの妖精にも色々と話を聞きたいな。それは道すがらよろしく頼むよ」
「わたしの話って……、どんなのでも良いですか? お兄ちゃんから教わった魔法の事とか……」
「私もまだ生まれたてで、そこまでお話しできる事はありませんが、それで構わないのであれば……」
あるえにすれば、そんなのでも十分らしく、興味津々といった表情を見せていた。
「じゃあ、とりあえず……情報収集再開するか。その前にアクアを呼びに――」
まずは全員揃ってからと思い、アクシズ教団本部に向かおうとしていたのだが。不意に冒険者ギルドの扉が勢いよく開き、そこにいたのはいつもの見慣れた水の女神様だった。
「アクア、教団行って満足したか? これからまた街で聞き込みをするから……」
「あーら、カズマさんったら私がアクシズ教団で何もしていなかったとでも思ってるの? その特典、見たって人がいたわよ!」
一同、アルカンレティアに来て好き勝手やっていると思っていたアクアからの情報に固まりながらも詳しく聞こうとしていた。アクアは自分を褒めてと言わんばかりにエッヘンと胸を張っている。
「アクアさん……それって本当ですか? どこで聞いたんだ?」
「それよりもみんな私を褒め称えて! 流石はアクア様ですねって言ってくれたら、教えてあげるわ!」
俺達が誰も碌な情報を得らえなかったのを分かった途端こうなってしまった。確かにアクアだけが有効な働きをしたみたいだが。態度はちょっと大きすぎる気がするけど。そんなのが気に入らなかったのかもしれない。
「ああ……流石はアクアだ。伊達に……」
伊達に女神をしてないとでもカズマは言おうとしてるのだろうと、その場の全員が考えていた。しかし、
「年取ってないな」
その一言で周囲は凍り付き、アクアだけがギルド全体に響くような叫び声で。
「何ですってえええええ!!!」
カズマに詰め寄り、今にもゴッドブローを繰り出すような様相を呈していた。だが、それで動じるカズマさんではなかった。俺をジッと見ながら。
「アクアは前にユウの事を自分の息子みたいって言ってたよな? 自分の力の欠片を持ってるからってさ」
「それがどうしたのよ!? 純然たる事実じゃない!」
それは確か、最初にアルカンレティアに来て、汚染された源泉を目指していた時に雑談な中でそんなのを聞いた気がする。あの時は取るに足らない世間話だと思っていた。
「と、いうことはだ。ユウの魔力を大本にしているみすてぃは、言わばお前の孫じゃないのか? 息子の娘だぞ? 良かったな。アクアもめでたくお祖母ちゃんか!」
カズマからの指摘に愕然としたアクアさんでした。今まで特に意識はしていなかったが、そう考えるとあゆむ君だってアクアの孫みたいな人間という事になる。
図らずとも孫がこの場に二人もいるアクアさんの胸中は穏やかではないはずだ。うち一人は自覚は無いだろうが。プルプル震えながら泣きそうになって俺に助けを求めている。
この話題は止めて、アクシズ教団に向かおうと説得しようとアクアの近くへと行こうとした時、
「あのね? おとうさんが、みずいろのおねえちゃんは、おばあちゃんみたいなひとっていってた」
未来の息子がアクアにクリティカルヒットを喰らわせていた。その時代の俺も同じ事を言ってたらしいが、純真な瞳の子供相手にゴッドブローで殴り掛かるわけにも行かないアクアがついに。
「うわあああああん!! 何で私がお祖母ちゃんなの!? こんなに若々しいお祖母ちゃんなんていないわよおおおおお!!」
全力で泣き出してしまったアクアを泣き止ませるのに、一時間近くを必要としてしまいアクシズ教団に着く頃には、夕暮れとなってしまっていた。
アクアが主人公を息子みたいと言ってるのは、59話と127話に記述があります。
未来のアクア様もお祖母ちゃん扱いされて大泣きしていたと思われます。