この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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廃城探索と盗賊少女

雪精討伐の翌日。カズマは蘇生したばかりで、まだ安静にしていた方がいいというアクアの言葉に従い、クエストは請けずにギルドでゆったりしていた。

 

「今日はクエスト請けないんなら、俺はもう行くよ。」

 

「……ん。どこに行くんだ?」

 

ギルドから立ち去ろうとした俺にダクネスが問いかける。

 

「ちょっと行って探索してみたい所があってさ。まあ、ベルディアが陣取ってた廃城なんだけど」

 

「あの廃城に行くのでしたら私も連れて行ってください。あの城に爆裂魔法をですね……」

 

「却下! 今日はあの中に入るんだから、結界が無い状態で爆裂魔法撃たれると、俺が生き埋めになる。やるなら他でやってくれ」

 

めぐみんがついて行きたがったが、即座に断わった。断わられためぐみんは、少しいじけたような表情をしていたが。

 

「あんな所に何しに行くのよ? アンデッドの住処なんてジメジメして、埃くさくて、陰湿な場所って決まってるのに!」

 

……アクアのアンデッド嫌いも相当だよな。俺の言えることじゃないけど……。

 

「前にベルディアと戦った時に気になること言っててな。大きな光がどうとかって。アイツ何かを探しにこの辺に来たらしいんだよ。もしかしたら、あの廃城に行けば、その探し物がなんなのか分かるかもしれないからさ。手がかりがあったら、ギルドに報告すれば臨時報酬が出るかもしれないし」

 

「ふーん、いいんじゃないか。今日はクエスト行かないし、自由行動で」

 

カズマの言葉を聞いた俺たちは、各自で動くことになった。

 

 

 

 

「……それで、何でダクネスがついて来るんだよ?」

 

「うむ。例えばだ……、その廃城の中にベルディア一派の残党がいるとしてだ。ゾンビやアンデッドナイトに体の自由を奪われ、好き放題に蹂躙される自分を想像すると、いても立ってもいられなくてだな……」

 

……この変態クルセイダーはこんな事しか考えないんだろうか……? これなら、みんなには行き先を告げずに一人で廃城に行くべきだったか。

 

カズマは療養、めぐみんは爆裂魔法が撃てない。アクアはアンデッドの住処なんて行きたくないと言って付いてこなかったので、ダクネスも来ないと思った俺が甘かったか……。

今のパーティーメンバーの中ではダクネスが一番相性が悪い気がするんだよな……。

カズマは男同士でなんだかんだで仲はいい。アクアは色々振り回されてはいるが、憎めない性格してる。めぐみんは爆裂魔法意外に関しては、割りと常識人だと思う。まあ、俺の場合、全力で魔法を撃つ女の子に慣れてるだけかも知れないが……。

ダクネスの場合、今まで接したことのないタイプってのもあるけど、コイツの前で何かやると大体裏目に出る。バインドで動きを止めた時もそうだし、ベルディアに攻撃した時もそうだ。俺に対する悪評の半分はダクネスが原因になっている。

 

「なあ、ダクネス……、やっぱり俺一人で行くから帰った方がいいと思う。残党だっていやしないだろうし」

 

「遠慮するな。放棄され、碌に手入れもしていない廃城だ。何が起こるかわからんからな。突然床が崩れて落下したり、侵入者用の罠が作動したりするかもしれん。ふぅ……、想像しただけで、体が熱く……」

 

……何言っても帰らない気だ。この場で拘束して置いていく手もあるけど、そんなことすると、また悪評が広まりそうだしな。もう諦めて連れて行こう。

 

 

 

廃城の入口……というか以前に俺、カズマ、めぐみんで一日一爆裂を撃ち込んでできた大穴の前に到着した。 あらためて近くで見ると、入口であるはずの場所は見事に崩れさってボロボロになっていた。

 

……ベルディアもよくここまでされるまで我慢してたもんだ。

やっちまった俺たちの言えることじゃないけどさ。生前の状態なら胃に穴が開いてたんじゃないか?その意味では、アンデッドでよかったかも……。

 

入口でこれなら、中もさぞや酷い状況に……って、あれ?

 

「なあ、ダクネス。アンデッドの住処ってジメジメして埃っぽいってアクアが言ってなかったか?」

 

「……う、うむ。実は私も同じような想像をしていたのだが……」

 

確かに城の中は所々にひび割れが見られたものの、長期間放置され、ベルディアがいた時に爆裂魔法を撃ちこまれた事を考えると仕方が無い。問題はそれ以外だ。

城の中は整理整頓、清掃が行き届いており、ついこの間までアンデッドではなく人間が住んでいたと言っても不思議ではない状態だった。

 

破壊された入口から大広間に進むと一枚の張り紙を見つけた。これだけやけに新しいので、恐らくはベルディア一派が張ったものだろう。

ええと……何て書いてあるんだ……?

 

『体は死体でも心は腐るな! 人様の城を間借するのだから、綺麗に使おう!』

 

何かスローガンみたいな内容だった。ここに書いてあることが事実だとすれば、この手入れが行き届いている城は、ベルディア達が頑張った成果なんだろうか……。

そして、そのスローガンの隣には……。

 

『庭掃除 アントン、厨房 コリー、大広間 ラッセル、礼拝堂 サム……』

 

……これって掃除の当番表なのか? 本当にベルディアとアンデッドナイト達は、荒れ果てていたであろう廃城をここまで綺麗にして使ってたのか……。

しかもアンデッドの癖して礼拝堂まで手入れするとか、涙が出てくるんだが……。

そうとも知らず、毎日爆裂魔法撃ち込んで城の入口に大穴開けられたら、そりゃあブチ切れるよなぁ……。

 

「……もしかして俺らって、ベルディアに対して物凄く悪い事しちゃったんじゃ……」

 

「自分達で綺麗にした城に毎日爆裂魔法を撃ち込まれて、片付けの繰り返し……か。それはそれで悪くは無いお仕置きだな……」

 

ダクネスは自分がやられる事を考えてか、顔を赤らめながら、またドM発言を言い出した。この際、この言葉は無視して探索を続けよう。

 

……ここは、食堂か……。

 

食堂と思しき場所もやはり清掃が行き届いており、その他にも皿やコップフォーク等の食器が並べえられ、部屋の隅にはアフタヌーンティーセットの様なものまで、用意され、まるで、これから会食でもするかの様な雰囲気を醸し出していた。

 

「……これってどう見てもベルディアが用意したものだよな? アイツもしかしてダクネスの『死の宣告』解いてもらいに城に来てたら、俺らと会食でもする気だったのか?」

 

「……一週間待たされての放置プレイだけではなく、その間も毎日爆裂魔法を撃ち込まれ続ける……。素晴らしい暴虐ぶりだな!」

 

ダクネス……、それやったのは俺じゃなくて、アクアとめぐみんだからな。そこは間違えるなよ……。

 

食堂にはあとは何もなさそうだけど……あれ? これって……本?

 

恐らく、ベルディアが座っていたであろう席に一冊の本があった。その本のページをパラパラめくると……、

 

 

「これは困難な道だ。あの人が魔王城に来るまでに、習得しておかなければ……」

 

 

魔王城……? これはもしかしてベルディアの日記か。ならベルディアがここに来た目的も書いているかもしれない。

そうして日記の続きを読んでいった。

 

 

「目的を達するためには近すぎても、遠すぎてもいけない。頭の向きも重要だ……。床の方を向いてしまうと、何も見えなくなってしまう」

 

……何かの訓練だろうか?……更に読み進めていく。

 

「毎朝の日課、鏡の前でのフォームのチェック。そうして1000回のスイング練習。それだけではない。部下達を廊下に歩かせてのシュミレーションも欠かしてはいけない」

 

……スイング? あの大剣の素振りかなんかか?

 

「明日、あの人が魔王城を訪れる。万全の準備をして待ち構えなければ……。被っている兜の手入れもしておこう。ほんの僅かな傷やヘコミで軌道ずれてしまう恐れがあるからな」

 

……決闘でもするのか?

 

「あの人が今、魔王城の廊下を歩いている。今までの修練は全てこの時のために……!」

 

……決闘を申し込むのか。なんだかんだ騎士ってことか。

 

「ストラーイク!! 色んな意味でドストラーイク!!! 全てがうまくいった! まさに奇跡の一投! タイミング、到着点、頭の向き、全てにおいてパーフェクト!!! まさかあの人のパ……」

 

ここで日記は途切れている。やけに興奮しているが、何がストライクだったんだろう?

 

「ダクネス、これの意味は分かるか? 俺にはさっぱりなんだが」

 

「おそらく、修練が実を結んで興奮しているのだろう。アンデッドといえど、騎士だったということだな」

 

……おそらくはダクネスの言うとおりなんだろうが、魔王城で何と戦っていたのだろうか。日記にもこれ以上は有用なことは書いてないし……。そう思ったとき、

 

『マスター、近辺で不可解な反応があります。これはカズマさんの使う潜伏スキルに酷似していますが……』

 

ファルシオンからの警告で周囲を警戒しつつ気配を探る。

 

潜伏スキルってことは、盗賊かスキルを持つモンスター。もしかしたら、ベルディアの部下の残党か?ならダクネスには言わない方がいいな。アイツなら余計なことして、ややこしくなりそうだ。

日記を見続ける振りをして、更に警戒を強める。

 

『マスター、目標の潜伏スキル解除を確認』

 

随分と舐められたもんだ……。なら一気に……!

 

「ユウ、ダクネ――」

 

声を掛けられる前に足払いで相手を転倒させ、そのままバインドで拘束、馬乗りになりセイバーモードのデバイスを突きつけ……、

 

「大人しくしろ! ……って、あれ? クリス!?」

 

「いきなり何するのさ! 二人を見かけたから声を掛けようとしただけなのに!」

 

クリスが涙目になりながら、俺に対して訴えかけてきた。というかクリスに馬乗りになって、剣を突きつけてる俺ってどう見ても……、

 

 

「ユウ、クリスを拘束した上で剣を突きつけるだと……!? 言う事を聞かないと、この後どうなるか分からんぞ! ……とつまりはそういうことなのか!? ……なんでクリスではなく私にやらんのだ!」

 

……おい、ちょっと待て。大声で何口走ってやがる。ここは人目がないからいいものの一歩間違えれば大騒ぎになるだろ!

ダクネスに対して突っ込みを入れようとしたところ、

 

「えっと、とりあえず拘束解いて退いてくれないかな? あたしもダクネスの言葉を聞いたら結構恥ずかしくなってきたんだけど……」

 

「ああ、ごめんクリス……。今退くから」

 

クリスの拘束を解き、俺たちが何で廃城にいるのか説明していると、

 

「ねえ、ユウの杖って喋るんでしょ? ダクネスから聞いたよ。ちょっと見せて」

 

ファルシオンが喋る事をダクネスから聞いたらしいクリスが、デバイスを見せて欲しいと頼んできた。クリスにデバイスを渡すと色々質問をしていた。

 

「……本当に喋るんだ! これってもしかして神器?」

 

「なんだよ神器って? ダクネスにも言ったけど俺のいたとこじゃ、喋る杖なんて珍しくもないぞ。まあ、一般的に出回ってるものと比べたら大分高価だけど」

 

クリスの説明によると、この世界には神器と呼ばれる超強力な装備や魔道具があるらしい。ロストロギアみたいだな……。

 

「なあ、クリス。その神器の中には暴走すると世界が滅んだりするのもあるのか?」

 

「そんなの無いって! そんな物騒なものだったら、もっと大変なことになってるよ」

 

……なんだろう?クリスの言葉に違和感を感じる。

 

クリスの言葉に何か引っかかる物を感じながらも、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「理由はあとで教えるけど、実はあたし神器を探してるの。デュラハンがいた城だし、もしかしたらって思ってここに来たんだけど、良かったら手伝って欲しいな。お願い! 昔お世話になった先輩に理不尽な無理難題を押し付けられちゃって、今日しか時間がないの!」

 

「私は構わないがユウは……?」

 

クリスのお願いにダクネスが二つ返事で快諾する。俺もこれ以上探索しても意味がなさそうなので、

 

「別にいいよ。けど、そんなのがあったらベルディアが回収してそうだし、ありそうな場所ってい言うと……、隠し通路、隠し部屋、あとは……」

 

「うむ。あとありそうなのは拷問部屋だな。捕らえてきた捕虜に理不尽な責め苦を与えて、毎日死なない程度に続ける。……なんと素晴らしいシュチュエーションだ!」

 

ダクネスの言葉にドン引きしつつクリスのほうを向き、

 

「クリス……、なんでお前こんなのと友達やってんだ?正直ドン引きなんだが」

 

「これでも、いいところは結構あるんだよ。……うん」

 

確かに、ドMなところ除けば騎士っぽく見えるときもあるけど、それにしたって限度がある。

 

「とりあえず、時間がないんだろ。だったら俺に任せてくれ! 『エリアサーチ』」

 

魔力で生成したサーチャーを飛ばし城の内部を探索すると……、

 

「地下に普通の方法じゃいけない部屋があるな。宝箱みたいなものもある」

 

クリスとダクネスが驚いていたが、俺の指示に従いその場所へ向かった。その途中、

 

「ユウ、キミって何者なのさ? アークウィザードなのに変なバインド使うし、今の魔法だって見たことないし、アクセルでも結構噂になってるよ」

 

「どうせ、(ろく)でもない噂だろ。鬼畜だとか変態だとか……。言っとくが、俺の悪評の半分以上はダクネスのせいだからな!」

 

それを聞いたクリスは少し困ったような顔をしていたが、

 

「……確かにそれもあるけど、魔王軍の幹部を単騎で抑えられる凄腕だって。そんな風にも言われてるよ。話してみたい人も結構多いみたい。みんな敬遠してるけど」

 

……意外だったな。悪評ばかりだと思ってたんだけど、そういった噂もあったのか。

 

そうして雑談しているうちに、隠し部屋の真上に来た。

 

「うーん。『宝感知』に反応はないね」

 

盗賊スキル『宝感知』、レアな宝の在り処が分かるスキルらしい。それに反応が無いってことは、外れだろうが……。

 

「折角来たんだし、モノだけでも確認してくか」

 

そう言って、床面の一部を『ブレイクインパルス』で破壊して地下の隠し部屋へと立ち入る。すると先ほどの『エリアサーチ』で見た宝箱があった。

中を見ると、この城の元の持ち主の隠し財産だろうか。数百万エリス程度の価値のある装飾品が納められていた。

 

「……どうする? これも収穫といえば収穫だけど、持って帰っていいもんか。借金の足しにはなりそうだけど」

 

「私は反対だ。廃城の中にあった物とはいえ、所有者もいるはずだ。これを換金したとして、その所有者がこれらを質に入れられた事を知れば、盗まれたと言って騒ぎ出すかもしれん」

 

……むむ、ダクネスが珍しくまともな事を言ってる。確かに無用なトラブルは避けたいが……。

 

そうして悩んでいると、

 

「じゃあさ、あたしに任せてくれない? 足が付かない換金場所も知ってるし、お金も悪いようにしないから」

 

盗賊のクリスには彼女なりの人脈があるってことか。だったら……。

 

「わかった。けど万が一、足が付いても俺らは知らない振りするぞ。ダクネスもそれでいいな?」

 

「私は構わない。クリスなら信用できるしな」

 

ダクネスも快諾し、隠し部屋にあった宝物はクリスが全て持って帰った。

 

 

 

翌日、冒険者ギルドである噂が立っていた。何でも、エリス教会の運営する孤児院に五百万エリスの寄付が差出人不明で置かれていたそうだ。

 

「なあ、ダクネスこれって……」

 

「ああ、おそらくクリスだろう。寄付金の額も一致しているしな」

 

なるほど、悪いようにはしないって言ってたけど、こういうことか。確かにこれなら足が付かない限り、角は立たないか。そうして感心していると、

 

「ユウ! お前、昨日クリスを押し倒したって本当か!?」

 

俺の所へ来たカズマの言葉を聞き、思わずシュワシュワを噴き出してしまった。

 

「……カズマ。それ、誰から聞いた?」

 

いや、カズマに質問するまでもない。犯人は俺の隣にいるダクネスだ。

 

「私はユウがクリスをバインドで拘束し、馬乗りになって剣を突きつけたと言っただけだが……」

 

「お前は何てこと言ってやがる。もしかして、もう噂が……」

 

そうして周りを見ると、俺を見る女性冒険者達の目が冷ややかになっているのを感じた。

 

……畜生! 今回は、ほとんど間違いじゃないとはいえ、やっぱり俺とダクネスは相性が悪い。

 

こうして俺の悪評がまた一つ追加になった……。

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