この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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今回でゆんゆんルート最終回となります。


未来はまばゆく輝いて、君を待つ?

 現在、アクシズ教団本部の応接室。かすみのテレポートでアルカンレティアまで戻り、今回の顛末についてエルトリアから来ていたアミタさん達も交えて説明を行っていた。

 

「……成程、事情は理解した。……が、だとしたら我々にも詳細を語って欲しかったものだ」

 

「なあ、ダクネスはシルフィーナちゃんから親呼ばわりされた時、アクアがそれを広めて火消しに苦労していたが……、その辺も含めてアクアだけに隠し通せると思うか?」

 

「むっ……、それを言われると弱いが……。カズマやクリスには説明していたのだから、せめて年長者の私にも話して欲しかった……」

 

「……それを言うなら私にもです。あの子の素性については頭を切り替えて、神器探しも効率よくできた筈です!」

 

 ダクネスとめぐみんが仁王立ちで、俺への質疑応答を続けていたが、それをジーっと見詰めていた未来の息子は……。

 

「おとうさん、わるいことしたの? わるいことすると、おかあさんとおねえちゃんのまえでせいざして、おこられるでしょ?」

 

 ……そういえば、魔王城前でウォルバクさんに、”俺はどう進んでも扱いが変わらない。”……って言われた気がする。その証人の言葉を聞くと目から汗が出て来るなあ……。

 

 その中にあって、話題に加わらずに、遠くを見るようでいて目の焦点が合っておらず、ひたすら独り言を呟き続けている少女がいた。

 

「私とユウさんの子供……。名前は変わってるけど変じゃない……。私がお嫁さん……、紅魔の里で一緒に暮らしてる……」

 

 全てを知り、未来を想像していたゆんゆんは、恥ずかしそうにしながらも嬉しさが勝っている様だった。

 

「色ボケもそこまでにしてください! 今から嫁気取りですか!? 気が早すぎるにも程があります!!」

 

「だって、もう決まってるようなものでしょ! 子供だっているんだから!!」

 

「良いですか? また記憶封鎖とやらを受けたら、今回の件……特に未来の人物については思い出し難くなります。つまり……、まだ未来は決まっていません!!」

 

 未来に思いを馳せているゆんゆんが気に食わなかったのか、めぐみんが突っかかってそんなのを口にしていたが……、

 

「そうね……? 記憶封鎖に関して『時間移動』についてだけは、厳重に封鎖するけど、それ以外はそこまででもないかしら? だからさっきのユウ君の自爆発言にしても、ちょっと違う風に解釈されて本当に”俺の嫁”って言われたように変換されちゃうかも……」

 

キリエさんの余計な解説で一触即発になりそうになってしまった紅魔族の二人であったが、そこはダクネス達がどうにか止めていた。その他には。

 

「では私が小説ネタにしたい彼の特殊能力については忘れないのだね? 整体師さん、これから隅々まで語ってもらうので、そのつもりで」

 

「……あるえ、それはもう小説じゃなくて未来を書いた不思議本になっちまうだろ!? その時代になったらおかしな話に――」

 

「むしろ予言書の様に扱われて、格好良いじゃないか! 私の小説が未来を言い当てるなんて!!」

 

 この厨二種族があああ!? 目を輝かせて嬉しそうに言ってんじゃねえ!!

 

 この混沌とした中にあって、一人だけ自分の言い分が正しかったとばかりに、胸を張る女神様が一人。

 

「やっぱり私の言った通りだったでしょ! この子は二人の子供だって。この私の曇りなき目に間違いなんてないんだから! あゆむを連れてアルカンレティアを隅々まで回りながら、私の偉大さを広めないと!!」

 

「頼むから止めてくれ!! いや……全てが終わるまでアクアには、ここを動かないでいて貰おうか……!」

 

「ね、ねえ……魔法陣展開してますけど……!? この清らな女神たる私を縛ってあられもない姿にする気ね!? 薄い本みたいに……!」

 

「安心しろ……、ボンレスハムみたいに力一杯グルグル巻きにして動きを封じるだけだ。色気なんて欠片も出ないから……!」

 

「何でよおおおお!? 私の扱いが酷すぎるわ!!」

 

 アクアがまたしても大声で泣き叫んでいる横で、カズマが何やら思い出したようで。

 

「お前のさっきの太陽光の魔法、若い頃の苦い思い出とか言ってたが……、十七歳のお前の若い時ってのは、いくつの話だ?」

 

「訓練校時代だから……十歳?」

 

「十歳であんな危険な魔法構築するのか、お前は。冗談抜きでバニルの言う通りの凶悪魔道士じゃねえか!」

 

 凶悪とか失礼な……、と思いつつも、それは口に出さずにいると、めぐみんが何やら気になったようで。

 

「ユウの魔力の使い方は、一点に集中させるのを得意としている様にも見えます。初級魔法もそうですし、ハンスの時は、砲撃五発を同時に着弾させていましたし、切り札だってそうです」

 

「……魔力が多くなかった当時の名残みたいなもんだ。少ない魔力でもそれなりに威力が出るように……、ってな感じのな」

 

「それよりも……、どうしてあんなのを考えたのか、それを聞かせてくれないか!」

 

 今度はあるえから説明を促されてしまった。あまり話したくないのだが、俺以外は興味津々とばかりに耳を傾けている。

 

「はあ……、あれは、まだ故郷で学校に通いながら、ミッドの訓練校の授業も受けていた頃だけど――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法陣ってさ、太陽の光を集めたりできないのかな? 魔力って光ってるけど、シールドとかそれを弾いたりするから」

 

 七年前の訓練校での休憩時間。芝生の上でぽかぽかした陽気の中、持参した弁当を食べながら適当に雑談をしていた。

 

「……どうしたの? いきなりそんなの言いだすなんて……」

 

「ほら……、こないだ理科の実験の時、虫眼鏡で光を集めて紙を焦がしただろ? あれって魔法で同じ事出来ないかな」

 

 俺の発言に首を傾げながら、フェイトが不思議そうな顔を見せていたので、そう答えると。

 

「ゆーくん、もしかして……やってみたいとか思ってない?」

 

「もち! こう……魔法陣何層か重ねて、一点に集中すれば……必殺技とかできそう!! しかもお日様の光だから、魔力が少なくても大丈夫だし!」

 

 当時の俺は何を勘違いしてたのか、強力な魔法が欲しかった。多分……、それさえあれば、なのは達に追いつけるとか、そう思っていたのかもしれない。

 

「うーん。じゃあ……やってみる? ボクも丁度、訓練用のポールスピア持って来てるし、それにでも試してみれば良いでしょ? 今思い付いたばかりだから、そこまで威力なんて出ないだろうしね」

 

 この中では、唯一近代ベルカ式の訓練を受けているアクティから、そんな提案が飛び出していた。訓練用とはいえアームドデバイスではあるので、頑丈さはそれなりである。

 その後、念のため魔法使用の許可をとった。誰もいない茂みの中に四人で佇み、俺が魔法陣を三層ほど展開すると、本当に光が集まっていた。しかし、焦点が微妙にズレているため、ちょっとずつ調整をしてアクティの持つポールスピアの穂先に一点に集中するように、位置を変えると……。

 

「えっ……!? きゃああああああ!?」

 

 そのポールスピアが見る見るうちに溶解していき、溶けた金属部品が地面に落ちて草を黒焦げにして、焦げ臭いにおいが漂ってしまっていた。

 アクティさん、ちょっと焦点がずれていたら、自分も火傷とかしていたかもしれないと涙目になりながら悲鳴を上げてしまい、それを宥めたは良い物の訓練校側から貸し出されているデバイスは一丁駄目にするわ、下手すれば火災になっていたかもしれないという事で、学長室に呼び出されるわで俺達も大変な目に遭ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とまあ、大した検証もせずに思い付きだけで、やってはいけないっていう教訓だな、あの魔法は。ちゃんと色々試してから安全の確保とかした上でやらないと味方まで巻き込んじゃうっていう……」

 

「……その割には、その当時とは違って複数の敵を狙えるようにもなってるな?」

 

「そりゃあ……、ちゃんとコントロールとかも研究はしていたから。念のため、アクアとゼスタさんには魔法で防御してもらったけど、みんなには命中なんてさせなかっただろ?」

 

 そこまでで、カズマさんだけではなく、アクア達やかすみやみすてぃまで、おっかない様な者を見る目へとなっていた。

 

「何て言うのかしら? 発想は悪くないけど……、子供らしさが欠片もないわね……。そんな怖い魔法を偶然作っちゃうとか……」

 

「なんとかと馬鹿は紙一重とでも言うのだろうか? ところで……違う必殺技は無いのか? 私ならば、喜んで実験体になってやる!」

 

 アクアとダクネスが素直な感想を漏らしていたので。

 

「もう身に染みてるって! 結局、どんなのでも近道なんてのは無いって事だからな。いきなり高威力の魔法を覚えようとしたって暴発とかすれば危険だし、コツコツやって行くのが実は一番だってのも」

 

 散々な言われようだが、これについては覚悟していたので、それは良い。

 

「まあまあ、その様な失敗があったからこそ、今のユウさんがあると考えて下さい。その魔法もああして、我々の窮地を救う事になりましたので」

 

 ゼスタさんのみ肯定的な意見を出してくれていたが、他には……。

 

「整体師さん! もっと小説のネタに出来そうなのはないかい? その重力の魔法の事でも良い。今夜は質問攻めをするので、そのつもりでいてくれ!」

 

 あるえが俺に対して、尋問を行う気であるらしい。当の彼女はその目を輝かせて、興奮が抑えきれないといった状態になっていた。

 

「……すいませんが、アミタさん、キリエさん、さっさと記憶封鎖して、息子も元の時代に戻してください」

 

「えー……。せっかく温泉街に来たんだから、温泉に入っていきたいわね? みんなは?」

 

 キリエさん、エルトリアの皆さんの方を向きながら、そんな意見を出していると。

 

「うむ。悪くはない。エルトリアには死んだ水場ばかりで、温泉など探すのも一苦労なのでな」

 

「私も温泉に入ってみたいです! 皆も一緒に!」

 

 などなど、俺としては事態の収拾を一刻も早くしてほしいというのに、ゆったりとした雰囲気でもう少しだけここにいると言い張っている王様達だった。

 

「……お兄ちゃん、そ、そんなに嫌そうな顔しないで……。わたしもユーリ達とお話してみたいから……。前にこっちに来た時は、まだ過去に行ってない時だったし……」

 

「ロード、そう気を落とさずに。もう殆ど解決したような物ですから……」

 

義妹と融合騎が、困った顔で宥めてはくれたものの、俺としては元通りにして欲しい。……とは、あの面子の前で堂々と要求したところで通らないのは眼に見えている。

 あちらも一晩だけという事で、こちらに留まる事となったその夜。

 

「はあ……、今回も何だかんだで、バタバタしてたなあ……」

 

 独り言を呟きながら、宿泊していたホテルから出て街の広場へと向かっていた。夜も更け、いつもの賑やかというより、はた迷惑なアルカンレティアの勧誘も目につかずに、ゆったりとした散歩をしていると……。

 

「ユウさん……、ここにいましたか……」

 

「おとうさん! おさんぽなら、ぼくも!」

 

 あゆむ君に手を引かれたゆんゆんが、小走りで俺の元へと近づいてきていた。

 

「二人してどうした……、いや、俺を探しに来たのかな?」

 

 男の子を肩車して、ゆんゆんの隣に行くと。

 

「あの……、あゆむ君ですけど、元の時代に帰ったら今までの事って……」

 

「俺自身は時間移動を経験してないから、はっきりとは言えないけど……、前のみんなみたいに夢を見たってくらいの認識にしかならないと思う」

 

 そうですか……と言いながらも、少しばかり寂し気な表情を浮かべるゆんゆんであった。

 

「おとうさん、さとにはかえらないの? おじいちゃんもまってるよ?」

 

「……紅魔の里には明日帰るから、今日はもう寝ような? でないと疲れて、あっちで遊べなくなるぞ?」

 

「じゃあ……、おんぶして!」

 

 肩車よりおんぶの方が良いのか……と思ってしまったが、男の子はおんぶした途端、すうすうと寝息を立てて眠ってしまっていた。子供はとっくに寝る時間なので、今まで頑張っていたのかもしれない。

 

「しかし……アレだな……。子供ってのは大変だ。一緒にいたのは一週間位しかないのに、この子が何ヶ月もこっちにいたみたいに感じる……」

 

 それだけ濃密な時間を過ごしたという事だろうが、それも明日で終わりだ。未来の息子の事は思い出せなくなり、またいつもの日常が始まる。

 

「あの……、昼間の事ですけど……」

 

 ゆんゆんがおずおずと口にしたのは、あの魔法をぶっぱする前の俺の一言だろう。はっきり言えば失態でしかない。隠し通そうと思っていたのに、自分でばらしてしまったんだから。

 

「あ、あれはな? そういった可能性の話だ……よ? 少なくとも現時点では……」

 

「現時点ですか……」

 

 それに少しばかり、残念な顔をしていたゆんゆんだったが、何度か深呼吸した後、真剣な眼差しで俺の方を向き、

 

「あの言葉……、後から思い出すと、嬉しかったんですよ。感情を露わにして、私達を必死に守ってくれてるって感じちゃって……」

 

その一言を発した少女に、思わず見惚れてしまった。こちらを慈愛に満ちた顔で見つめ、少しばかり恥ずかしそうに。

 

「さっきめぐみんが……、未来はまだ決まってない、って言ってましたけど……、その……、私とこの子がいる未来を歩むのは駄目ですか?」

 

 話している途中から震えだして、涙目になっていたゆんゆんではあったが、さっきの意味が分からない程、俺自身は鈍いつもりはない。

 

「あ、あのな……? それって……、その……告白というよりは……」

 

「はい! 分かってます! けど……こんなのを言うのは初めてじゃありません。前の時だって……」

 

「シルビアの時のは……、手紙のせいだろ?」

 

 前の時はもっとストレートに”子供が欲しい”だった。あれはややこしい手紙のせいだと思って、ノーカンにしていたのだが……。

 

「あの時だって、宿屋でずっと悩んでたんです! いくらあの手紙の内容だからって……、あんなの嫌いな人には言えません!」

 

 あの時は確か……、一週間くらい屋敷に顔を出さなかった筈。そこまで悩んでいたのかと思い返してしまい、必死になって想いを告白してくれた少女に対して、俺は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝早く、あまり人目につかない様にと教団裏手の空き地に集合していた。準備ができたエルトリアのキリエさんから。

 

「ごめんね? 何回も迷惑かけちゃって。今後、変な実験とかしない様にするから」

 

「ほんっと良い迷惑だ。せめて他人を巻き込まない様にやってくれ!」

 

「年取って辛辣になってない!? 昔はもっと小動物的な可愛さがあったのに!?」

 

 彼女からすれば、九歳の俺のイメージの方が強いらしいが、いつまでも良い子なだけの人間ではいられないのだ。世渡りには色々と必要なのだよ。

 

「カスミ、また会えたらどっちの魔法が凄いか勝負してみましょう」

 

「ユーリも元気で。その時は負けないから!」

 

 一晩のうちに仲良くなった女性では見た目最年少な二人が、次に再開した際の約束を交わしていた。 

 ちなみにかすみとユーリの勝負は、どちらがデカいクレーターを作れるかを競うつもりらしい。ユーリも戦闘訓練でエルトリアの大地にクレーターを作っているとか。

 お前らはクレーター友達――略称クレトモか!? とかツッコみたくなったが、それはカズマ達も同じであるらしく、微妙な表情で二人を見詰めていた。というか、言うと凄まじく面倒ごとになりそうな気がするので、言わぬが花という奴だろう。

 

「おとうさん、いっしょにいかないの? おかあさんも」

 

「……お父さんとお母さんは、ちょっとだけ用事があるから……。あゆむが里に着く頃には俺達もテレポートしてるからね?」

 

 てっきり俺らが自分と一緒に里に戻るもんだと思っていたらしい。また泣き出すといけないので。

 

「お爺ちゃんやお姉ちゃんも待ってるよ。俺らも用事が済んだら……な?」

 

「……うん」

 

 少しばかり寂しそうな顔になってしまったが、知っている人達に会えると分かったからか、そこまで不安ではないようだ。

 

「では……、皆さんお元気で!」

 

「コ~ン~チ~ビ~……、いくつデバイス持つ気だ!? ズルいぞ!! ボクとの勝負は!?」

 

「……覚えてたらやってやるよ。その時は手加減なしだが」

 

 時間移動をする前に俺を恨めしそうに見つめるレヴィだったが、デバイス関連については勘弁してほしい。そして、彼女らが元の世界と時代に転移を行う……その瞬間。

 

「また会おうな。俺らにとっては、ずっと先の話だけど……」

 

 このままその選択をしても、例え彼が生まれたとしても、記憶封鎖のせいで今日の事とは結び付かないだろうが、それでも楽しい日々をプレゼントしてくれた子に精一杯笑いかけながら手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 六年後、紅魔の里にて。

 

「おねえちゃん……おはよう……」

 

「おはよう……って、お昼寝は終わり? 寝る子は育つって言うから良いけどね」

 

 お姉ちゃんと呼ばれた十五歳の少女は子供の時とは違いロングヘアではなく、その長い髪を結んでポニーテールにしているものの、紅魔族の証ともいえる紅い眼ではなく、日本人と同じ黒髪で黒い瞳の紅魔の里では珍しい容姿の持ち主であり、オリジナルとも呼ばれている。

 

「ねえ、おとうさんって、おそらにまほうじんつくって、てきをやっつけたりできる? ピカッてなって、てきがうごかなくなるの!」

 

「確か……太陽光を集める魔法を持ってたような……? あゆむ、何で知ってるの?」

 

「んーっとね。ゆめでおとうさんが、くもみたいなごーれむにつかってた」

 

 夢で見たなんてのは何かの偶然だろうと思ったかすみは、目を擦りながら歩いて来る自分の弟とも言える男の子と手を繋いで、外へと出ていた。今日は自分の兄であり、彼の父親である人にとって大事なイベントがある日なのだ。その様子を確認しようとしたところ……。

 

「く……くくっ……はははっ!」

 

 高笑いしたいのを必死に堪えている男性が一人。その人物は、もう我慢できないとばかりに。

 

「『紅魔の里振興計画』……これでほとんど完成だ!」

 

 その光景を疲れたように見上げてしまったかすみであったが、そんなのはお構いなしとばかりの様子でもって。

 

「里の商業地にある店は、冒険者を引退した……とりわけウィザードやアークウィザードが、転職する際に魔法を色んな職業で役立てるための訓練の場に! そして、周囲の森を切り開いて里のニートもとい自警団に造らせた演習場は冒険者だけではなく、魔導師の鍛錬にも対応している優れもの! 初心者の冒険者には養殖場ツアーを企画。危険を減らしてレベル上げが出来る!」

 

 そりゃあもう大声でアピールしてる、ぱっと見痛い人物がそこにはいた。

 

「ついでに宿泊施設もロッジ風に建築。温泉は出なかったんで仕方ないが、『混浴温泉』に毎日アクアを入れて、お湯を聖水にしているので、怪我の治りが早く冒険者にはもってこいの施設となった」

 

 紅魔の里振興計画――今までの紅魔の里の観光事業が良い成果を出せていなかったので、どうにかできないかと族長さんから相談されたので、計画立案をして丁度今日、完成に至ったのだった。

 それは族長さんからの相談事だけでなく、彼にとってある思惑もあったのだが……。

 

「カルナージのルーちゃんには負けんぞ! ルーちゃんには! はーっはっはっはっ!!」

 

 何故か訓練合宿に行くたびに設備が充実してきているホテルアルピーノに対抗心を燃やしているらしい。

 

「おおっー! 族長の家の婿がカッコいい事してるぞ!」

 

「屋根に上って高笑いとは、様になっているな。流石は『万象を断ち切る者』!」

 

 などなど、普通なら目に余るような行動ではあるが、紅魔の里では特に気にはされないらしく、その笑い声が響いていた。そんな自分の父親の様子を不思議に思ったらしく。

 

「おとうさん……、どうしたの?」

 

「ええっとね? お父さんは、里に昔からのお友達がみんな揃うから、嬉しくて仕方ないんだと思う……」

 

 いつの間にか近くに来ていたゆんゆんが息子の疑問に答えていた。そう、今日から訓練合宿 in 紅魔の里という事で、テンションが爆上がりしまくっている状態なのだ。その姿を見て。

 

((何で……こうなっちゃったんだろう?))

 

 ゆんゆんとかすみは同じ感想を持ってしまった様で、そのはっちゃけている男性も嫌いではないのだが、もっと落ち着いた雰囲気を出せないもんかと、頭を抱える時もあったりする。

 

 そうしているうちに、合宿場へと到着した昔馴染みを見つけた彼は、そちらへと近づいて行き、サイドポニーで茶髪の女性へと。

 

「よう、待ってたよ。色々と作ったから役立てるなり、ゆっくりして行ってくれ」

 

「うん! ゆーくん、こちらこそお世話になります」

 

 魔法に出会った頃からの付き合いの人間や、機動部隊で部下だった面々。そして幼馴染の娘にその友人らを笑顔で出迎えていた。




終盤駆け足かもしれませんが、これでこの章も終了となります。
もうネタになりそうなのが思いつかないので、番外編もこれで終わると思います。



おまけ (本編の少し後です)

なのはと軽く挨拶を交わしていると、俺を狙っていたとばかりに背中に突き刺さる様な気配を感じたが、そのまま大人たちの方を向いたまま、背中に繰り出されている拳を自分の掌で受け止めていた。

「甘い。その程度の不意打ちなんて、俺には通じない。もうちょっと鋭く――」

拳を突き出していたヴィヴィオににこやかな表情で指導していると、今度は頭上から攻撃の気配がしたので、半歩下がってそれを躱す。

「前よりは良くなってはいるが……、アインハルト、動作が分かりやすいな。どうせなら躱せない状況を作った方がいいぞ?」

そう、俺とヴィヴィオ、アインハルトの間ではちょっとしたゲームをしている。いつでも、どんな方法でも仕掛けてきていいので、一撃入れたら何でも言う事を聞いてやるというものだ。
もっとも、二人にとっては今のやり取り自体が勉強になるようで、それを楽しんでいるらしい。

「何で見てもいないのに……、受け止められるの?」

「完全に死角を狙ったはずなのに……」

二人からすれば納得がいかないらしいが、これについては――

「2年前くらいだったかな。俺も自分の壁にぶち当たって、どうしたもんかとルーフェンに行ったことがあったんだ」

何せ当時でレベルカンスト。これ以上俺は数値上は強くなれないらしい。なので、突き詰められる物が無いかと、そちらを訪ねてみたわけだ。その際、『拳仙』と呼ばれている方に少しだけ稽古をつけて貰った時に……。

「確か……リオちゃんのお爺さんだったか。その人が言うには、俺って、”相手の動きや思考を自分の中に映して、先を読む”ってのが出来るらしい。とはいえ、それを当時うまく使う事はできなかったわけだ」

持ってるだけじゃうまく使うのは出来ない。自覚してそれを研鑽して漸く形になるものだ。よって俺がとった行動は……。

「この着ぐるみな。実は前とか見えないんだよ。目に頼らないで、そんなのを分かるようにするための訓練の一環だ」

((((あの着ぐるみって、ちゃんと意味があったのか!?))))

姿を現したウサギさんの着ぐるみを見て、意外そうな表情を浮かべる全員だった。
その訓練のおかげか、あえて視覚を封じる事で、それにだけ頼らない戦い方が出来るようにはなってきていた。先程、二人の攻撃を避けたように。
そして、その他には自分の動きから徹底的に無駄を削り、予備動作も無く繰り出される俺からの攻撃は、相手からするといつの間にか一撃喰らっている様な感じらしい。

と、そこまで解説したところでノーヴェが。

「……あのさ、だったら目隠しに耳栓とかでも良かったんじゃないか? 着ぐるみじゃなくて……」

「何ていうのかな? ウサギさんって……可愛らしいだろ? 何せ息子もお気に入りでな。八神家道場の子供達にも何気に人気だ。そこの師匠達はデバイスで攻撃してくるが」

特にヴィータ辺りは、”うちの道場をイロモノにする気か!?” ……と、アイゼン持って本気で殴りかかって来るので困りものだ。そこの師匠からして、狼の耳が付いているので気にする程では無いと思うが……。

「……そこまでして、今の様に強くなられたのですね! 私も見習わないと……!」

ほぼ全員が呆れかえる中、アインハルトのみが感心したように俺を見詰めていたので。

「だったらこれを一着あげよう。昔、教会の偉い人が、生きている人間は前を進むことを止めないうちは強くなれる……、って言ってたから、その心構えがある限り、何処までだって行けるさ」

「はい……! ありがとうございます!」

嬉しそうに着ぐるみを受取ろうとしていたオッドアイの覇王っ娘だったが。

「それはダメええええええ!!」

……と、チームの子供達に必死になって止められていた。その一方で俺は……、

「……お兄ちゃん、ちょっとこっちに来てくれないかな? お姉さんも目が光ってるから!!」

「かすみ!? 俺は今回真面目にやってたぞ!? そんなずるずる引っ張るな!」

自宅へと引きずり込まれ、妻と義妹からお説教を受けてしまったのだった。
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