この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
その男は女神に導かれて、この世界に降り立った……、現地では”勇者候補”と呼ばれる者だった。転生の際、女神から授かった能力は最高峰の魔法使いに必要な知力と莫大な魔力といった『魔法使いとしての適性』の強化だ。
降り立った地で冒険者となり、そこで出会った冒険者達とパーティーを組み、苦楽を共にしていた。
だが冒険を続けていくにつれ、魔王軍との戦いは熾烈を極めていく。いくら神から授かった力があるとしても個人の力だけでは限界がある。そんな折、彼らの力が必要だと……、自分達の国に腰を据えて欲しいといった誘いがあった。
そこは当時、技術力では他国に追随を許さない、魔王軍でさえ首都を攻め入るには相応の被害を覚悟しなければならなかった魔道大国ノイズ。
その地で彼らは一時の安息を手にしていた。魔法使いのパーティーの中には彼と同郷の少女がおり、冒険の中で、お互いをかけがえのない存在だと……、そう感じるようになっていた。
ノイズで生活する中、彼女との間に娘を授かり冒険者としてではなく、一人の夫として、そして父親としての生活。それは転生をしてから戦いばかりだった彼の人生で至福の時間だった。
そんな折、一人娘が行方不明となってしまった。妻と共に方々を探し回ったが、その先で彼が目にした光景は――
そこは地獄だった。人間だったモノ、家屋だったモノ、国だったモノ全てが無残に破壊され、死が支配する地へと変貌していたのだから。
それを行ったのは幼い少女。その少女は二人の女性と熾烈な戦闘を繰り広げていた。神から能力を授かった彼ですら、立ち入る事すら許されない超常の域の戦いだった。
その戦いは女性達の勝利で幕を閉じ、少女の姿はなく、彼は一人その地に残された。
片方の女性が放った魔法は最強と名高い『爆裂魔法』。それを喰らっても生存し何処かへ封印された少女を救う。
だが、彼女の封印を解いたとしても、自身の力では太刀打ちできない。そして、
ならば、そのために――
俺とかすみを見据え、敵対する意思ともとれる威圧感を発するフードの男だった。武芸大会決勝戦の相手は彼ではあるが、まだ試合は始まっていない。にもかかわらず、奴はかすみにその狙いを定めている。俺はかすみを背にして男に立ちはだかり。
「かすみ……、今からテレポートでアルカンレティアにでも転移しろ。そこでゼスタさんに事情を話せば、匿ってくれる」
「お兄ちゃん!? あの人って確か……」
かすみもフードの男を覚えていたらしい。ちょっとだけしか会話していなかったが、それでも記憶しているのは、知力の高さによるもののはず。
「僕に手を出さないというのなら、敵対するつもりはない。大人しくその子を渡してもらえないか?」
「その割には……、その剣呑な気配はなんだよ? 俺が首を縦に振らないのを分かっていて、そう言ってんだろ?」
俺達の雰囲気を感じ取ったのか、試合会場の観客はどよめき始め、一体どうしたんだ……と言った声まで聞こえて来ている。
「あの……。お二方、決勝は20分後――」
俺達を止めようとした大会の審判だったが、男が軽く触れると、バタンと倒れこんでしまっていた。その尋常ならざる様子に悲鳴を上げながら、観客達はその場を離れようと逃げ惑っている。
「よし、こんな所か……。後はどれだけ残ってる?」
屋内ではカズマ達が魔王軍への襲撃を
「貴様ら、正直に吐け! 他に仲間はいるか? 答えなければ、この私の鍛錬の結晶たる筋力で貴様らのこめかみを圧迫する。それが嫌なら答えろ!」
「何だ? その馬鹿げた責め方は? そんなもの拷問にもなら……、があああああ!? いや!? ぐえええええ!? やめ……あばばばばっ!?」
捕縛された騎士の一人に、ダクネスがこめかみグリグリをすると悲痛な叫びをあげて、ついには痙攣して気絶してしまった。それを目の当たりにしためぐみん達は。
「……ダ、ダクネスの筋力でやるのでしたら、それなりに加減をしなければ、頭蓋が割れてしまうのでは!? もう少し優しく……」
「ダクネスさん……、魔法で身体能力を上げているわけでもないのに……、この威力!? 凄いです……」
「い、一応、治療はしておきます……。ちょっと気の毒になって来ました……」
やられた騎士の方を心配し、みすてぃに至っては治療を施そうとしている。
「わ、我々を捕まえたところで、大勢は揺るがん! リーダーと協力者がいる限り……!」
「ねえ! 威張ってる癖して、詳細を語りだしたんですけど! ダクネスのこめかみグリグリがよっぽど怖かったのよ! プークスクス!」
アクアに指摘されるまでも無く、冷や汗を垂らしながら仲間の惨状を見て涙目になっている騎士だが、カズマが彼からもたらされた情報を聞き漏らさずに。
「つまり、あと残っているのは二人……か? そいつらはどこに居る? 素直に吐いた方が身のためだ……」
「ふん! また、あの拷問をするというのだろう? そんな物に屈する――」
「『スティール』でお前の服を全てを奪ってから、顔や体に落書きをして、逆さ吊りで公衆の面前に晒すが? お前はこの先、王都では常に痛い視線に晒されながら生きることになる」
カズマの意外過ぎる返答に、質問をされた騎士は真っ青となっていた。そしてカズマは彼らの動揺を見透かしたように。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な。ア・ク・ア・さ・ま・の・い・う・と・お・り……」
「ちょっとカズマ! それだと私が悪い神様みたいじゃない! やるんだったら、エリスか邪神か……、名も無き女神にでもしなさいよ!」
生贄にする人間を順番に指差して選ぶ素振りをしながら、満面の笑みを見せている。アクアは自分が引き合いに出されたのを納得していないようだった。
騎士達はその場の全員が自分ではない様にと神に祈りを捧げている様な絶望した顔を見せていたが、その中の一人がそのプレッシャーに耐え切れずに、
「ふ、二人なら……試合会場の方だ! お、教えたから……助けてくれ!!」
彼らにとって一番重要な情報を口にし、自分だけは見逃してくれと懇願していた。
「試合会場って事は、ユウの方ね! ……ねえみんな、会場の方が騒がしくない?」
「そうですね……。魔剣使いとユウの試合が盛り上がっているのでしょうか?」
こちらは済んだので、試合会場で残りの二名を確保するといった意見が出たが、怒涛の津波の様な大勢の足音が自分達の方へと近づいて来る。
「何だ!? 観客が……こっちに来るぞ!? みんな……避けろ!!」
千里眼で状況を確認したカズマが、咄嗟に指示を出したものの、地べたに転がっていた魔王軍襲撃の騎士達の数人はかなりの人数に踏まれてしまったらしく、気絶している者も多々見られた。
「こっ……これは……、何と羨ましい! カズマ! 私も縛って地べたに転がしてくれ! まさか、この場でこんなプレイが可能だとは……!」
「いい加減にしろ! どう考えたって会場の方から逃げて来てただろうが! ユウ達に何かあったかもしれないだろ!? 行くぞ!」
カズマのその声で全員が真剣な表情をして、試合会場へと全力で駆け抜けていた。
フードの男は、倒れた審判の様子を伺っているが、自分でやっておいて、容態を確認するのはどういう事だと、そんなのが頭を過ったので。
「おい、その人に止めでも刺そうってのか? そんな真似は――」
「……何せ、効果までは自分で選べないものでね。もしも毒だったら、応急処置をしようとしたまでだ」
……効果までは自分で選べない……か。先程のミツルギといい、何らかのネタがあると見ていい。それが魔法なのか、何らかのスキルなのかまでは分からないが、トリガーは何だ? 即座に相手を封じる様な何かなら、接近するのは得策じゃない。
『Stinger Blade』
ファルシオンをデバイス形態にして、飛翔型の魔力刃で迎撃を試みる。相手に向かって一直線に飛び交う十数本の魔力刃を、
「……『ブレード・オブ・ウインド』」
風の刃を発生させる中級魔法で対抗している。だが、それだけではなく。
「……嘘。お兄ちゃんの魔法を中級魔法で消し飛ばして、ここまで届くなんて……!?」
幸い掠った程度で済んだが、かすみの言う通り、俺の方が単純に力負けして傷を負ってしまっていた。
「成程。アクセルの魔道具店の者達が語った通りの力量だ……。が、君では僕には敵わない。君も、その子も悪い様にするつもりはない。大人しくしてはもらえないか?」
「ウィズ達が何を言ったかまでは知らないが、かすみにあんな……、おっかない気を放ってた奴の言う事なんて聞くつもりは無い!」
とはいえ、この人の実力は普通に考えても俺より上だ。だが、かすみがターゲットならこの子を逃がせば時間は稼げる。
「かすみ、さっき言った通り、テレポートで――」
後ろのかすみの方に視線を一瞬向けただけで、目の前の敵対者の姿が忽然と消えていた。だが、あの寒気がするような気配はまだ近くにある。奴はどこかと探っているうちに、かすみの真後ろにその姿を現していた。
……これって、俺やクリスがスクロールでよく使う、光の屈折で姿を消す眼晦まし。姿を隠して、身体強化で接近しているとか……。しかも身体能力も強化込みとはいえ普通じゃない!? なんつー魔力量で強化してんだよ!?
「テレポー――」
かすみもこのままではマズいと感じた様で、俺の指示通りにテレポートで逃げようとしたが、
「何で!? 魔法が……発動しない!?」
男に服を軽く触れられただけだというのに、テレポートだけではなく、全ての魔法を封じられてしまっていた。
魔法を封じれば、かすみは頭が良いだけの普通の女の子となってしまう。今のかすみでは戦闘は不可能。それはフードの男も分かって入る様で、そのままかすみに手を伸ばそうとしていたが。
「……少し、背が伸びた……か。顔も……似て来たな……」
かすみの顔を見て、懐かしむような、慈しむような、そんな優しい声を発していた。それとは裏腹に彼は小声で呪文らしきものを紡ぎ、魔力を込めた右手を少女へと突き立てようと――
カズマ達が試合会場へと息を切らせながら到着したその場では、彼らにとって信じられない光景となっていた。
「ああああああああッ!?」
そこには、フードの男に胸を貫かれ、呻き声を上げているユウの姿。かすみを咄嗟に庇って攻撃を受けてしまったのは、駆けつけた全員が何となく理解していた。そして、男の腕が彼から引き抜かれる。
「あれは……ロードのリンカーコア!?」
みすてぃも驚いていたが、男の掌に収まっているのは、太陽の様な茜色の光を発する魔力の塊だった。
リンカーコア――カズマ達もその名を聞いた覚えはあるものの、実際に目にするのは初めてであり、目を奪われてる。
「首尾はどうだ? お前の様な下賤なはぐれ者を使ってやっているのだ。核になる魔力は奪えたのだろうな?」
「一つ言っておく。僕とお前たちは利害が一致しているだけの関係だ。戦力となる魔力と魔道具の提供の代わりにあの子の情報を受取るという……ね」
いつのまにかカズマ達の視界に入っていた鎧を纏った中年の騎士の様な男性が、フードの男に対して辛辣な言葉を投げかけていた。フードの方は予想済みとばかりに飄々と受け答えをしている。
「魔力に関してはもう一つ奪う……、があああああ!? 熱い!? 腕が焼ける!? この魔力は……何だ!? 痛い……、しかも腕が薄くなって!? いたたたたたた!?」
ユウのリンカーコアを持っている男が、何故か苦しみ始めていた。彼も想定外とばかりに悶えている。しかもよく見ると、全体的に薄くなっている印象すら受けていた。
「あれ……、リッチーよ、リッチー! 汚らわしいアンデッドが何でこんな場所にいるのかしら? しかも、この私の……水の女神アクア様の聖なる加護を持つユウの魔力の源に触れて、浄化しかかってますけど! なんてドジなリッチーなの? ちょーウケるんですけど!!」
アクアの見立てでは、フードの男性はウィズと同じリッチーであるらしい。アクアのみ腹を抱えて大笑いしているが、その他はポカンとしている。
そういえば、昔……、アルカンレティアの聖水風呂で浄化しかかったウィズに俺の魔力を渡したら、余計浄化が進んだことがあった気が……。
「は、早く、この魔力の源をその魔道具に入れろ! 彼もかなりの実力者ではあるから、無駄にはならない! 熱いの通り越して、気分が良くなって……、このままでは本当に浄化される!? 僕はまだこの世に居なければならないんだ!! ああ……天界の入口が見えている気が……、いや! 天界に行くわけにはいかないんだ!! 頑張れ、僕! 負けるな、僕!」
リッチーなフードの人は、先程までのシリアスなんぞもう忘れたとばかりに、浄化に対して必死に抵抗している。凄まじい執念を感じるが、自分のリンカーコアでそうさせてしまったのは、少しだけ申し訳ない気がする。
しかし、あちらだって俺達に襲い掛かって来たのだから自業自得だろう。
「お兄ちゃん、大丈夫!? 早くアクアお姉ちゃん達の所に……!」
リンカーコアを抜かれた俺と魔法が使えなくなっているかすみ。ほぼ戦力外となっているが、俺に関してはまだ手立てがある。
「セットアップ!」
フォルテを槍の姿にして、二人に対して構える。アームドデバイスは武具としての性能も高いので、魔力無しでも、そのまま使用が可能だ。
……せめて、かすみがアクアの近くに行くまでは……、前にいなきゃ……な。あの人がリッチーだってんなら、アクアがいれば手は出せなくなる。何せ、自分に近づいたそばから浄化しそうだし。
「ユウ、盾役は私に任せろ! お前は下がりつつ、応戦だ、良いな!」
こんな時のダクネスは……本当に頼りになる。
そんな安心感は長くは続かなかった。中年の騎士――おそらくは魔王軍襲撃を企てたリーダーと思われる人物は、魔道具らしき杖の様な物を取り出していた。それに俺のリンカーコアが吸い込まれるように同化して――
「なっ……!?」
「これは……、この重圧は……!?」
それは……資料でしか見た事が無い『重力』の魔力変換だった。前に出ている俺とダクネスは地面に縫い付けられるような感覚に動きを鈍らせていた。そして、
「あの少年、発現していない能力が眠っていたのか……。いや、あの年で発現していないという事は、彼にはあの魔力を扱うのは不可能という事だ……。適性が無いので、体が無意識のうちに通常の魔力として扱うように調節していた……か? 彼から切り離されて……僕の魔道具に入れた事で、その性質が出て来たようだな」
人のリンカーコアを掴んだだけで、もがき苦しんでいたリッチーさんは、そこそこ回復して来たらしく、冷静に今の状況を分析している。右手にまだダメージが残っているらしく、フーフーと息を吹きかけながら……ではあるが。
「ほう、あの少女の方ではないが、中々特殊な能力のようだな。喜べ。そちらの少女の魔力と共に魔王軍壊滅に役立ててやる」
俺の魔力を自分の物みたいに扱っている、中年騎士のおっさんにかなりイラっと来たが、一歩動くのも難儀する状況では殴り掛かるどころじゃない。その一方でめぐみんが杖を前方に構えながら。
「こうなったら爆裂で全てを吹き飛ばしてくれます! 多少建物に被害を出しても構いませんよね?」
「めぐみん、それは止めろ! それだとダクネスはともかくユウは確実に死ぬぞ! 魔力の源を奪われてるんだから、防御だって禄に出来ないだろうが!」
「あそこに近づくだけでも、私達の方が不利になりますから、ここは遠距離での上級魔法を……」
「あのリッチーの人の魔法、中級魔法でも上級魔法以上の威力だから……、並じゃ駄目だよ! わたしも今、魔法が使えないから……」
アクアの元に合流していたかすみも敵に対する対応策を練っていはいたが、俺とダクネスはというと……。
「この重圧の中でそこまで動けるのは驚きだが……、リッチーの僕はともかく、人間にはかなりの負荷になっているはずだ。その槍も僕の
「……鍛え方が違うんだよ! 俺の魔力で好き勝手させてたまるか!!」
そうして、フードのリッチーが武器を破壊された俺に触れて、かすみやミツルギの様な状態へとしようとした、その瞬間、カズマから指示が飛んできていた。
「ダクネス! お前のその鍛え抜かれた筋力でユウをこっちに全力で投げろ! そうすれば後はどうにかしてやる!」
「分かった! これで……、がああああああああ!!!」
ダクネスは俺の襟首を掴み、お前本当に貴族のお嬢様かと疑いたくなるような咆哮とともに、その素晴らしい筋力を以って俺をカズマ達の場所までぶん投げていた。それを確認した後。
「アクア! お前はさっさとそいつを完成させろ! 珍しくその無駄な才能が役立つんだからな! その位、軽いもんだろ!」
「何ですってえええええ! 私のこの高貴な技術を何だと思ってるの!? 謝って! アクア様ごめんなさいって謝って!!」
「後で好きなだけ謝ってやるから早くしろ!!」
どうやらアクアはちゅんちゅん丸の鞘の先で地面を削って広い範囲で何かを書いている。これは……!
「ユウとアクアは中央だ! 『クリエイト・ウォーター』ッ!」
アクアに全力のクリエイト・ウォーターをぶっ掛けて、削った地面の溝にアクアの聖水へと変化させた水を満たす。
「アクア、魔力を寄越せ! ユウはコントロールだ! ほとんど魔力が無くてもそれはできるだろ? かすみは魔法が封じられているらしいから無理だしな」
「ああ……! これなら行ける! 制御は任せろ!!」
俺とカズマ、そしてアクアが地面に描かれた紋様の中央で敵を見据えている。地面に書かれているのは『ミッドチルダ式』の魔法陣。あの複雑な紋様を一人で、この時間で書き上げるアクアの芸術センスは、ちょっとおかしいと思う。
そこにアクアの聖水を流し、触媒として扱う事で魔法を起動させる。魔法に使う魔力はカズマがアクアからドレインタッチで受け取り、俺が魔法制御を行う事で敵を迎撃しようという訳だ。この方法は、ミッドでも昔々に自動で魔法陣を起動させていなかった頃の物だが、バニルに卸すスクロールを作っている時に、少しだけカズマに話していたことがあった。
そして魔法の起動を示すように、魔法陣が水色の輝きを放っていた。
その光景にリッチーや騎士だけでなく、めぐみん達も絶句していた。それもそのはず――
「こ、これは……素晴らしいぞ! カズマ、構わん。私ごとやれ!! いやむしろ私に狙いを定めろ! その物量の魔法に狙われるなど……、くっ……!」
重力によって、地べたを這いつくばっているに等しくなっているダクネスだったが、自身の後方に展開させている魔法を目の当たりにして、そう懇願していた。
そこには百以上の魔力弾に飛翔型の魔力刃。しかもまだ数は増えていっている。それを一斉に相手に対して射出すると……。
「ははははははっっ!! 何これ凄い! 弾幕はパワーだあああああああ!!」
カズマさん、魔法の一斉発射でハイになってしまっていた。そして、不幸にもその魔法を向けられたリッチーさん達は……。
「ちょっと待て! 何だ、あの魔力量!? 攻撃の止む気配が無い!? しかもこの魔力、触れただけで浄化が!? いや……あの水色のは……、もしかして……、女神様!? 何で女神様があそこにいるんだ!? それとも、そっくりさんか!?」
「魔法を得意とする騎士全員の一斉攻撃にも、勝るかもしれない数と……威力だと!? この場でここまでするとは……、奴ら、頭のねじが飛んでいるのか!?」
予想外過ぎる俺達の反撃に狼狽えるリッチーと中年騎士のおっさんだった。
「わ、私も我慢できません! 爆裂を……、私にも爆裂を撃たせてください! あのド派手な魔法攻撃に負けるわけにはいかないのです!!」
「めぐみんお姉ちゃん、それはダメええええ!」
「めぐみん、落ち着いて! めぐみんが爆裂魔法を撃ったら、この辺一帯なくなるから!!」
「めぐみんさん、ここで爆裂をしたらロードが泣きます! お願いですから止めて下さい!!」
めぐみんは俺達の魔法の弾幕に対抗心を燃やしてしまい、爆裂を撃とうとしているが、かすみとゆんゆん、みすてぃにまでしがみ付かれて、何とかその行動を止められてる。
「おいリッチー! どうにかならんか!? 魔法ならば貴様の領分だろう!?」
「この魔法攻撃……、どれだけ続くんだ!? ありえない……、この魔力量……。あの人は本当に、女神様なのか!?」
最早、逃げ回るのが精一杯となっている敵さん二人は、降り続ける魔法への対抗策が取れないようだ。リッチーさんにしても俺のリンカーコアを素手で掴んだ後遺症か、一時的にしろその力が弱まっているらしい。
「ここは一旦退く。かすみ、次こそは、必ず――」
「あはははははっ!! このクソリッチー! 私の目の前に現れたのが運の尽きよ! 神の理に従って大人しく浄化されなさい! 『ターンアンデット』と、この魔法。どっちにするか選ばせてあげるわ!!」
「あの人、前に会った時と性格が違い過ぎないか!? もっとこう……荘厳な人だったはず……」
アクアまでハイになっているせいか、捨て台詞すら言わせてもらえず、命からがら逃げる……といった表現がぴったりなリッチーと騎士だったが、テレポートで転移する間際リッチーのフードに魔法が掠り、初めて彼の顔が白日の下に晒された。
「その髪と、瞳の色って……?」
「日本人……?」
俺とカズマが彼の顔を見て呆気に取られてしまった。少しばかり頬はこけているが、黒髪に黒い瞳。顔立ちはこの世界の住人というよりは、日本人そのものだった。
「くっ……! この世界では目立つので隠していたのだが……」
当人もあまり見られたくなかったようで、顔を隠しながら騎士と二人でテレポートでその場を去って行った。
どうにかこの場は切り抜けた、そう思って力を抜いてると。
「あ……あれ? 何で……?」
かすみが大粒の涙を流している。本人ですら、どうしてそうなってるかが分からずに困惑していた。かすみを落ち着かせようと、彼女の傍に行こうとしたが……、
「あ……あれ? 視界が……ぼやけて……」
急激な疲労感と脱力感に襲われ、そのまま意識を失ってしまっていた。
主人公、弱体化です。
蒐集と違ってリンカーコアを奪い返さなければ元には戻りません。
今回は随分アナログな方法で魔法を起動させていますが、これはForceの用語集にもあります。
砂とか液体を触媒にしていたらしいです。
そしてリッチーさん、あなたかなりのドジっ子では? しかも運も悪そうだ。
ミツルギやかすみが状態異常になっていますが、web版を呼んだことがある方なら、何故かはわかると思います。