この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
王都で行われている『停戦一周年記念祭』の目玉のイベントであった武芸大会が、何者かによって襲撃され、決勝まで勝ち残った一名は意識不明。そして――
「こ、この会場の惨状は……!?」
「襲撃者とは、どのような……?」
魔王軍へと攻め入ろうとしていた騎士達のリーダーと、その協力者であるリッチーの男性との激しい戦闘により、武芸大会会場は見るも無残な姿へと変わり果てていた。
――地面、特に敵の二人がいた辺りの地面は、魔力弾や魔力刃による傷跡が。
――重力の魔力によって、ダクネスがいた周辺は、広範囲に陥没。
――調子に乗って魔法による弾幕を射出し続けたため、一部が観客席にまで到達。椅子やその下の床を破壊。
などなど、匠も真っ青なビフォーアフターを目にしたクレアさんとレインさんが口をパクパク開けながら、どうして良いか分からなくなっている。
「強大な敵だった。……騎士はともかく、もう一人はおそらく先代魔王以上の力の持ち主だ。そうだよな、アクア?」
「そうね……。もう一人はリッチーだったわ。リッチーは魔法を極めた大魔法使いが魔道の奥義により、人の
カズマとアクアが務めて真剣な表情で、襲撃者について解説していた。それを耳にしたクレアさんが、顎に手を当てながら。
「では……、この被害は、全てそのリッチーによるものだと?」
「あっ……。地面の陥没以外は、カズマお兄……むぐっ……!?」
かすみがそれはもう正直に事の成り行きを説明しようと口を開いたが、後ろのめぐみんに遮られてしまっていた。
「ええ……。凄惨な戦いでした……。ユウはあの通り魔力を奪われ、疲労困ぱいで意識を失い、ダクネスも特殊な魔法による攻撃で身動きが取れなくなっていましたから……。私も加勢できれば良かったのですが、生憎この身は爆裂魔法しか使えません。何の役にも立てず……、すいませんでした……」
「ん~!? んんん~!?」
めぐみんは嘘にならない範囲で申し訳なさそうに目を背けながら、かすみの口を抑え続けている。
「ダスティネス卿……、こちらも加勢できずに申し訳ない。観客の避難誘導を優先しなければならなかったのだ」
「い、いや……、人的被害が無くて何よりだった。今回はそれで良しと……しよう!」
ダクネスは目を背け、視線を合わせない様にしながら、クレアさんの謝罪を受取った。それを横で見ていたゆんゆんは、
(……全部、あのリッチーさんのせいにしちゃったけど……良いのかな?)
(ゆんゆんさん、こ、ここは、話を合わせておきましょう! 損害賠償とか、色々と大変になりますから!)
みすてぃの必死の説得により、脂汗を垂らしながら、どうかバレませんようにと心の中で呟いていた。
「それよりもロードです! ロードを早く治療しないと……」
「みすてぃ、ちょっと落ち着きなさいな。カズマ、私の魔力をユウに送ってあげて。魔力不足ならそれでどうにかなるはずよ」
「……後で幸運値が下がったって文句言われても知らないが? まあ、いつまでもこのままって訳には行かないか……」
手早くユウの回復をして、あの二人を追った方が良いと考えたカズマは、ドレインタッチで魔力を送っていたが……。
「おかしい……。魔力がユウの方に行かない……。普通なら魔王城前の状態になってもおかしくないのに……」
「カズマ……それは本当ですか!? ちょっと見せてみて下さい!」
めぐみんも尋常ではない状態だと感じたらしく、彼に近寄ってきていたが。そこで見た物は……。
「この落ちているのは冒険者カードですが……。こ、これは……!?」
「どうしたの、めぐみん!? ユウさんに何があったの!?」
ゆんゆんもめぐみんに掴みかかる勢いで、めぐみんの手の中にある冒険者カードをまじまじと見詰めていた。それはカズマ達も同じで。
「嘘だろ……。魔力が俺より低くなってる……」
冒険者カードに記載される魔力が大幅に低下していた。これは通常ではありえない事態だと、その場の全員の顔が真っ青となっている。
「これは一大事です! 早くロードをミッドチルダに連れて行って、専門のお医者様に診て頂かないと!」
みすてぃとかすみがミッドへ連絡を取り、俺は本局の医療施設へと運ばれていた。現状、ミッドを行き来できるのは、俺の他にかすみとみすてぃだけなので、俺が目覚めるまでの一昼夜、二人はずっと傍らに付いていてくれたらしい。
俺が目覚めた次の日。かすみは血相を変えて、息を切らせながらカズマ達の待つ屋敷へ急いで戻っていた。
「カズマお兄ちゃん……、お……お兄ちゃんが……、お兄ちゃんが……!」
「かすみ、落ち着け! あいつがどうした!?」
かすみの肩をがっしりと掴み、とにかく落ち着くようにと言い聞かせていたが、カズマ自身も胸中は穏やかではなかった。
あのリッチーが、ユウの魔力の源を奪った。もしかしたら、それだけではなかったかもしれないと。
ウィズ魔道具店でリッチー自体は、ぽわぽわな方で見慣れているが、本来は『アンデッドの王』とまで称される伝説級のモンスターなのだ。下手をすれば、命に関わる何かをされている可能性もある。カズマの脳裏にそれが過っていた。
「かすみ、あいつの入院してる病院まで案内しろ! 少しくらいのルール破りなら、この際無視だ!」
「私も行きますよ! もしも昏睡状態だというのなら、叩き起こします!」
「治療なら私だって役に立つのよ! もし死んじゃっても、生き返らせるわ!!」
この場の全員が、このままでは終わらせないと……、その想いだけで、かすみに案内されユウの病室まで全力で向かっていた。
病室の前で、カズマは深呼吸をする。この中にいるのは自分の知る彼なのかと、それとも変わり果てた姿になっているのでは……。そのイメージを振り払い、ノックをしてから一気に扉を開けると。
「ぐやしい……! 悔しい悔しい悔しい!! リッチーもあのおっさんも、このままでは済まさない!!」
「ロード、少しお静かに! 隣の病室の迷惑になりますから!! 悔しいのは、よーく分かりましたから!」
カズマ達が呆気に取られた顔をしている。かすみの様子からして、容態が悪化したのだというのが、屋敷の人間の共通の見解だったからだ。
「……かすみ、あいつが……どうしたって?」
「お兄ちゃんが、元気過ぎて……。わたしとみすてぃちゃんだけだと抑えきれなくて……」
そのセリフを聞いて、ユウの方に痛い視線を向けるカズマ達だった。この病室の主も彼らの顔を見るなり。
「おう、カズマ。ってか、みんなまで、もしかしてお見舞いに来てくれたのか?」
いつも通りの人懐っこい笑顔を向ける魔導師だが、普通なら喜ばしい事だ。だがカズマは彼の傍に行き、首筋を軽く触ってから。
「……『ドレインタッチ』」
「カズマ、何しやがる!? 病人にドレインタッチとか、魔力が無くなってるのに体力まで……。や、止めろー!?」
「病人だったら、少し静かにしてろ! こっちの気も知らないで、何言ってんだ!」
その後、俺は”キングオブシスコン”と書かれた札を貼られ、体力を奪いつくされてベッドから動けなくなっていた。しばらくして。
「あら? あっちのみんなも揃ってるなんて……。まあ、ちょっとくらいなら、構わないか……」
「
俺が入院したと聞いて、主治医を買ってくれたシャマル先生が、みんなも交えて現状を説明しようとしている。
「悠君の命に別状はないわ。けど……」
「けど……、どうしたのだ? 寿命が縮んだとか、そういった事でも?」
ダクネスも耐え切れずに質問してしまっていたが、シャマル先生は意を決したように。
「悠君のリンカーコア。要は魔力の源になっている器官ね。9割以上が削り取られたようになってしまっていて、再生も不可能になってるの」
「そ、それで……、体の方にも異常が?」
めぐみんとしては、そちらの影響も気になっているらしい。リッチーにリンカーコアを抜き取られた時の苦しそうな顔を忘れられないのだと、後に語っていた。
「それがね。体の方には全く、これっぽっちも異常がないの。まるでリンカーコアだけを綺麗に削るような感じで、体の他の器官には影響がでないようにしてる。これって凄いわよ! そのためにどれだけの研究を重ねたのか分からないくらいの物ね」
その説明で、一同がホッとした様な表情を見せていたが、ゆんゆんが気になる事があったようで。
「えっと……、魔力の源が削り取られているという事は、今のユウさんって……」
「ほんの少しだけ魔力があるだけの、身体能力が高い男の子……ってところかしら。ただし……」
このままでは、魔導師としての道は諦めなければならないと、そう目で語っていたシャマル先生だった。
自分についての現状を整理して、今度はあちら側の情勢を確認しようとしていた。カズマの達の方を向き。
「それで、あの逃げた二人の行方は掴めたのか?」
「そこに関しては、捕縛した者達から情報を聞き出している最中だ。どうやら隠れ家も複数ある様で、騎士団も順次動く手筈になっている」
並大抵の相手ならそれで済むのだろうが、今回の相手は並ではない。リッチーもそうだが、俺の魔力を吸い込んで起動した魔道具を使っていた中年の騎士。あの人だって、あの『重力』の魔力変換を魔道具で使えるなら十分な脅威となりえる。
「どの道、今回お前は不参加で決定だ。魔力は無い。槍も壊された。確かに身体能力は高いんだろうが、あの連中相手にソードマスターの真似事をする気は無いだろ? かすみと一緒にこっちに居れば安全――」
「カズマ、何言ってるんだ? この俺が、やられっぱなしで泣き寝入りするわけないだろ? 俺は受けた恩は忘れないが、受けた屈辱も忘れないと評判の悠君だぞ」
その一言で、カズマ達は信じられない人間――まるで地雷原を手立ても無く歩くような、そんな馬鹿げた存在を見ている様な目になっている。
「まあ、このままで行こうってわけじゃない。ちゃんと目が覚めてから計画は練っていたから。ただ……、ちょっとめぐみんにお願いが……」
「わ、私ですか? 折り入ってというのは珍しいですね?」
「正確には、めぐみんというより……、ひょいざぶろーさんだけど」
めぐみんは自分の父親に何の用事があるのだろうかと、首を傾げていたが、その内容を聞くと。
「お、お前……本気か? ついにお前まで頭がおかしい方の仲間入りを……」
「おい、頭がおかしいとは私の事ですか? この場でケンカを買っても良いですよ!」
めぐみんがカズマに飛び掛かろうとしていたが、それを止めた後でダクネスから。
「では、準備の方は、どうするのだ? まだ行く場所はありそうだが……」
「あとは、デバイス関連の専門家の所か。そっちはマリエルさんにお願いするとして……。俺の方はちょっと時間が掛かりそうだから、みんなは先に戻っていて欲しい」
みんなには心配無用と伝えて、帰そうとしたのだが、かすみだけは呼び止めて。
「かすみはこっちに居た方が良い。知っての通り、あのリッチーの狙いはかすみだ。いくらなんでも次元間移動なんてできるはずは無いから、ミッドにいれば手出しは出来ないだろ?」
「……いや。お兄ちゃんだって、そんな状態でみんなと合流するのに、わたしだけ待ってるなんてしたくない!」
「我がまま言うんじゃありません! 良いか? あの人は、普通じゃ太刀打ちできない程の実力者だ。おそらく人間のままであったとしても、勝てるかどうか分からない位のだ。そんなのに狙われて、戦ったりしたら無事で済まないのは分かるだろ?」
「だったら……、お兄ちゃんもこっちに居て! もし……お兄ちゃんがいなくなったら……、わたし……一人ぼっちに……」
目に涙を貯めているかすみをベッドに座らせて、その隣に俺も座りながら。
「あのな? もしかしたら……、かすみは一人ぼっちじゃなかったかもしれない。会えなかっただけで、かすみを守ろうとしてた人だっているかもしれないよ?」
俺の何気ない一言に、かすみ含む全員がポカンとしていた。不意にめぐみんが。
「何を言っているのですか? カスミはずっと封印されていたのですよ? その時代の人間が生きているはずが……」
「んー。俺もまだ確証があるわけじゃないんだけど……。みんなと合流する前に、ウィズの店で色々と聞かなきゃなんないかな……」
そこまで言ったところで、カズマが俺の表情を見て何かを感じ取ったらしい。それは、まるで俺が単身魔王城へ向かった時と同じ空気となっていたと、数日後に語っていた。
「……退く気は無いんだな? まあ、お前がその顔の時は、言っても聞かないが」
カズマがため息をつきながら、仕方ないと言った感じではあるが納得してくれたので、かすみの方を向き。
「流石に分かってるな。だからかすみはこっちに――」
「わたしを無理矢理ここに置いて行くと、お兄ちゃんと口きいてあげない」
「待て! それは駄目だ。反則だ。ルール違反だ。やり直しを要求する」
そんな兄妹喧嘩が勃発してしまっていたが、このままでは埒が明かないとばかりにダクネスが口を開いた。
「あのリッチーの狙いはカスミだ。ならばカスミがいれば奴が現れる可能性は高い。そこから先は私達でこの子を守る! それでは駄目か?」
その提案にかすみの表情がパアっと明るくなっていた。自分も子供ではなく仲間として認めて貰っているのが、余程嬉しいのかもしれない。
「我が爆裂魔法ならば、リッチーでさえ葬る事が可能です! 心配はありません!」
「私のターンアンデッドでも良いわ! アンデッドなんてお茶の子さいさいよ!」
みんなして、かすみが同行するのが決定事項とばかりの勢いだった。もうこれは止まらないと思い。
「分かったよ! ただし、少しでもマズいと思ったら、テレポートで逃げる事。良いな?」
「うん!」
俺の許可が下りたので、元気に返事をして可愛らしい笑顔を向けていたかすみだった。
カズマ達があちらへ帰った後で、技術部を訪れていた。昨日一日はずっと寝ていたが、確かに魔力が極端に少なくなっているだけで、体の調子自体は普段と変わらない。室内に入りマリエルさんを見つけて、俺の考えを聞いてもらうと。
「特注のカートリッジシステムの追加に、こっちの方はミッド式へ使用術式を変更。この子達はそこまで難しいわけじゃないから、突貫作業なら2~3時間もあれば可能ね。けど……本気?」
「大丈夫。理論上は行けます。カートリッジシステムもこの通りで。既製品のだと、魔力全部使えないで俺が大変な事になりますので」
「これ……、なのはちゃん達が知ったら心配もするし……怒ると思うけど……。私も賛同しかねるよ?」
そりゃそうだろうなあ……。何せ、こんなの考えるのは、頭のねじが2、3本どころか10本くらいぶっ飛んでるって言われてもおかしくない。
「こっ……、この事は……なのは達には内緒で! お願いです! 頼れるのマリエルさんしかいないんです! やってくれないと、縋りついて大泣きしちゃいますから!」
「ちょ……!? やってあげるから! それは止めて……ね?」
こないだSランクになった魔導師が女性技官にしがみ付て泣くとか、プライドどこ行ったと言われても仕方ないが、俺も背に腹は代えられないのだ。
こんなやりとりをしていると、俺の後ろで穏やかながらも威圧感のある声が聞こえて来ていた。
「……何をどうするつもりなのかな?」
「シャマルに聞いたら、技術部に急いでたって言うから……。どうしたの?」
魔王と呼ばれるのは娘が出来てからの筈の少女が、まるで魔王の様な気配で後ろにいるのが分かる。もう一人の金髪の少女はそこまでではないが、かなり心配している感じだ。
だがこの俺も『アクセルの大魔王』と呼ばれる男。ここで屈するわけにはいかんのだ!
「いや~。本日も良い日和で。じゃ! 俺はこれで!」
はい。『アクセルの大魔王』は逃走します。逃げるのは負けじゃない。逃げるが勝ちという言葉があるのだから!
「って、なんでやねん! ここはちゃんとお話しするところやろ!!」
後ろで気配を消していた狸に回り込まれた挙句、ハリセンでスッパーンと頭を叩かれてしまった。俺は知らなかった……。狸からは逃げられないのだと。
「オーバーSランクが三人とか酷いぞ! こっちは弱体化してんだぞ! どんな無理ゲーだ、これは!?」
若干逆切れ気味で三人に対して涙目になりながら、釈明を行おうとしていると。
「はやても……なのはもちょっと待てよ! この馬鹿が馬鹿しようとしてるのは、あたしだって分かるが、ちょっとくらい話を聞いてやれ」
「流石ヴィータちゃん分かってる! 今日は、そこはかとなく可愛く見えるよ! いつもの……一割二分増しくらい!」
「微妙な数字だな! おい!」
ヴィータとの掛け合いは本当に面白い。こいつの事からかうのを止められない原因だろう。
ヴィータがふう……っと息を吐き、こちらを見据え真剣な表情で。
「……で、その状態で、こんな事までして……、おめーがそこまでやる理由ってのは、何だ?」
そこまでで、その場の全員がジッと俺を見詰めていた。俺としてもこの空気で話をはぐらかすと、おそらくただで済まない。なので。
「……俺な。もしかしたら……、あっちで死んでたかもしれなかったんだってさ」
「いつか話してくれた占いの事? かすみちゃんと戦って……だっけ?」
魔王城前でかすみと戦う未来をバニルが占った時だが、ヤツに言わせれば、『かすみを封印して、俺が亡き者になる未来』と『かすみを殺して、俺が生き残る未来』のどちらかになる筈だったらしい。
最も後者に関しては、確率1%くらいとか言われた挙句、貴様はほぼ絶命していたとか
「何て言うのかな……。本来そうなってるはずの俺も……かすみもか。あっちの色んな人達のおかげで命を拾わせて貰って、日々を楽しく過ごせてる。そりゃあ、大変な事もあるけど、本当にこうなって良かったって……そう思ってるんだ」
さっきまでとはうって変わり、真剣な言葉を紡ぐ俺に誰も何も言わず、ただ耳を傾けている。
「だから……、あの世界の人達には、返しきれない恩がある。その人達が、また戦禍に晒されるかもしれない……。しかもその原因が俺の魔力とか、そんなのを黙って見てられるほど、俺は大人でもなければ、頭良くもないんだよ!」
「つまり……、おめーは自分が馬鹿だって認めるわけだな? この大馬鹿野郎が!」
辛辣な様に見えて、表情は穏やかなヴィータが俺に向けて行って来いとばかりに、バシーンと背中を叩いてくれた。
「こいつは止んねーよ! 行かせてやれ。そうしねーと、恨み言をいつまでも言われ続けるぞ?」
「ありがとな。お礼にヴィータちゃんには、かすみのお下がりをあげよう」
「いらねーよ! あたしを何だと思ってんだ。てめえは!!」
いつもの憎まれ口をたたき合ってはいるが、お互いの心の内が分かっている様な、そんなやりとりだった。
「……だが、行くからには、決着をつけて戻って来い。そうでなければ、ただではおかん」
「分かってますよ。俺だって別に自殺願望があるわけじゃないですから。きっちり片をつけて、顔見せます」
今まで無言だったシグナム姐さんも、ぶっきらぼうな口調ながらもエールを送ってくれていた。だが、この先はどうなるかは分からないので、はやての方を向き。
「……もしかしたら、魔導師としては……、これで最後かもしれない。空港火災の時の約束、守れなくなるかも……」
「気にせんでええよ。もしそうなったら、ヘリパイロットとか、情報管制とか、そっちに回って貰うから。今更、外すなんて言わへんよ」
俺はどうあっても
「ゆーくん、本当だったらこんなやり方は……して欲しくないけど――」
「そこは、なのはだけには言われたくない……。って、何でレイジングハートがデバイス形態になってる!? 助けてフェイト! お前だってそう思ってるだろ!?」
俺のツッコみが気に入らなかったのか、はたまた昔を思い出した照れ隠しなのかは分からないが、俺に砲撃を繰り出さんとする気迫を感じてしまっていた。
「二人共、仲良くじゃれるのは、全部が終わってからだよ。いつまで経っても子供みたいなんだから」
「フェイトちゃん、助けてくれてありがとー! なのはちゃんがおっかない!!」
俺達二人を引き離したフェイトは、これから戦いに行くというのに、いつも通りな俺を見てどことなく安心した様な表情を見せていた。
「まっ! これが終ったら、エリオ達と一緒にでもピクニックとか良いかもな。お弁当用意して、その後は草原で昼寝してるだけでも良い」
「うん。じゃあ、計画は任せておいて」
これで、負けられない理由が一つ増えてしまった。けど、これで良い。こんな他愛のないのが大好きなんだから。
みんなが俺を送り出してくれて、2時間後。
「悠君。注文通りに改良は施したよ。ストレージデバイス、『インフィニティチェイン改』。剣型アームドデバイス、『リヒトヴォルフ改』。両方、カートリッジシステム搭載で、メンテナンスも一緒にしたから、実用には耐えられるはず」
「無理な注文聞いてくれて、感謝します。こんな形で使う事になるとは、夢にも思いませんでしたが……」
マリエルさんからデバイスを受取り、みすてぃと共にあちらへ向かっている最中、
……父さん、母さん、力を貸して。俺じゃなく、かすみや……みんなのために。
両親のデバイスを携えて、そう祈りながら現地へと向って転送陣を起動させていた。
……ただし、今の俺は、転送陣を使うのも難儀するほどの魔力しかないので、みすてぃにやって貰ったが。
デバイス解説
インフィニティチェイン改
主人公の父親が使っていたストレージデバイス。本来は重力の魔力変換に対応していますが、ストレージだけあって普通の魔法も使えます。
うちの主人公は普通の魔法の方しか使えません。
カートリッジシステム搭載したという事で『改』の字が付いています。
名前は重力で相手を制しているのが、無数の鎖で縛っているようなイメージからです。
リヒトヴォルフ改
こちらは主人公の母親が使っていた方で、剣型のアームドデバイス。名前は訳すと『光の狼』といった感じです。こちらもカートリッジシステムを搭載したので『改』となっています。
こっちに関しては、かっこ良さそうなのを適当に選んで付けただけです。
この二機に関してはこの章の最初でチラッと出ています。
ファルシオンがどうするかというと……、そのうち役割が書かれます。