この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
「明日はダンジョンに行きます」
冬将軍に首を切られて以来、療養のため簡単なクエストか内職しかしていなかったカズマがそんな事を言い出した。聞くと、戦闘可能なほどには回復しているそうだ。
カズマの言葉を聞いためぐみんは、爆裂魔法が撃てないのでダンジョンでは自分の存在価値は皆無などと言って激しく抵抗していたが、
「まあ安心しろよ、ついて来るのはダンジョンの入口までで良い。ダンジョンの道中、危険なモンスターと遭遇したらお前の魔法で蹴散らしてくれ」
めぐみんは不思議そうな顔をしていたが、カズマの話を要約すると、ダンジョンに一人で潜り、盗賊スキル『敵感知』、『潜伏』と先日のパーティー交換で一緒に組んだキースから教わった暗闇の中でも空間把握が可能になるアーチャースキル『千里眼』を使い、モンスターを掻い潜りつつお宝を手に入れるというものだった。
これに関しては、素直に感心した。全ての職業のスキルを習得可能な冒険者のカズマならではの方法だ。確かにうまくいけば、もっと高レベルのダンジョンでも稼げるようになるかもしれない。
そうして、半日かけて目的のダンジョン……、キールのダンジョンに到着した。
−−その昔、キールという名の稀代の天才と呼ばれたアークウィザードが、一人の貴族の令嬢に恋をした。だが、勿論そんな恋が実るはずがない。それをよく理解していた男は、その芽生えた恋心を忘れるかの様に、ひたすら魔法の修行と研究に没頭した。月日は流れ、男はいつしかこの国最高のアークウィザードと呼ばれた。男は持てる魔術を惜しみなく使い、国の為に貢献した。彼の功績に報いようと王は、どんなものでも望みを一つ叶えよう、と言った。男は言った。この世にたった一つ。どうしても叶わなかった望みがあります。
その後、キールは貴族の令嬢をさらってこのダンジョンを作り、立て篭ったらしい。そんな逸話があるダンジョンだが、今は駆け出し冒険者達のダンジョン探索のいい練習場所になっている。
そうして、カズマが一人でダンジョンに潜った後、
「……やっぱり私、付いていくわ。ダンジョンにはね、大抵アンデッドがいるものなの」
アクアの言葉を聞いた後、自分の中に沸々と湧き上がるものを感じ、
「アクア、今アンデッドて言ったな。なら俺も行って連中を殲滅してこよう」
「いいわよ。この私についてきなさい!」
俺とアクアの様子を見ていたダクネスとめぐみんは、
「何故あの二人は時折同調するのだろうな?」
「アクシズ教のアクアはともかく、ユウはなんであそこまでアンデッド嫌いなのでしょうか……?」
そんな事を言いながら、不思議がっていた。そして、俺とアクアはカズマを追ってダンジョンへ入った。
「……俺の話聞いてたか? 一人で行動した方が良いんだって。お前等一緒についてきても何もできないだろ」
「この私が誰だか忘れてない? ユウとめぐみんとダクネスは頑なに信じようとしなけど、ほら私の職業言ってみて」
またアクアは自分が女神だと言いたいらしい。ここは付き合ってやるとするか。
「借金の女神様だろ」
「自堕落の女神様だっけ」
カズマと俺の返答にアクアは少し口調を荒げながら、
「違うわよ、水の女神様でしょ! ユウも何で自堕落の女神なんて言うのよ!」
「……アクアの顔を見たらなんとなく思い浮かんだんだけど」
俺の言葉を聞いたカズマが何かを察しようで、笑いを堪えているのが分かった。
ともかく、アクアが自分には闇を見通せると言いたかったらしい。
「ユウ、お前は大丈夫なのか?」
「一応、夜目が利くからな、この位なら何とかなる。」
この後、俺とアクアがカズマについてきた理由、ダンジョンには大抵アンデッドが居て彼らは人間の生命力を目印にするので潜伏スキルが通用しない事を説明し、カズマに動向することになった。
その後、ダンジョンを進みアンデッド相手をしていたのだが、
「この暗く冷たいダンジョンで彷徨える魂達よ。さあ、安らかに眠りなさい。『ターンアンデッド』!」
「アクア、こいつらはそっちに誘導すればいいか? とり合えず、炎で移動させて集めとくぞ!」
「ええ !じゃんじゃんやっちゃって!」
俺が『炎熱』変換した魔力で、ゴーストやアンデッドを怯ませながら一箇所に集め、アクアが『ターンアンデッド』で浄化する。その様子を見ていたカズマが、
「お前等……、何でそんなに息合ってるんだ?」
「だってアンデッドの浄化は私の領分だもの! けど流石ねユウ! どうすればアンデッドを一網打尽にできるか理解してるわね!」
「アクア程の浄化なら、俺はサポートに回ったほうがいい結果が出るしな。それにこう……アンデッド浄化させるのを見ると心が晴れやかになっていく感じがしていい気分なんだ!」
俺たち二人の行動に、カズマは多少引いていたようだったが、
「いや、助かったよ、俺一人で来てたら危ない所だった」
「あら? 私の評価がようやく全うになってきた?」
カズマからの労いの言葉に満更でもなさそうだったが、お宝が見つからない事を少しイラついているようだった。
その後もカズマは自身のスキルを使い、どんどんダンジョンの奥へと進み、ある部屋へと入っていった。
「……ちっ、ろくな物が無いな」
「カズマ、この探索方法といいそのセリフといい、私、こそ泥の気分なんだけど」
「そう言うなって、まだ色々欠点はあるけどアンデッド対策や熱感知なんかの対策ができれば、これは探索方法としては優れてるぞ。もしかしたら数年後はこの方法が改良されて広まるかもしれないし」
アクアがこそ泥の気分なんて言ったので、自分自身の感想を返したのだが、
「ユウ……あなたね、何でそこまで理詰めなのよ? 可愛げが無いわ。昔は悩み多き少年って感じだったのに……」
「昔って何の話だよ? アクアと初めて会ったのは、お前がカエルに喰われてた時だ。それに、自分にも周りにも被害が出ないのはいい事だろ。悪い人の相手をしてると一瞬の迷いでどうなるかわからないんだ」
「そこまでにしろって。アクアもあんまりおかしな事言うな」
俺とアクアの会話を聞いていたカズマがそんな事を言いながら、アクアに耳打ちをしていた。その後、アクアはなぜか大人しくなったが。
その後も、宝箱に化けたダンジョンもどきやなぜか大量に出現するアンデッドの相手をしながらダンジョンの内部を進んで行き、結局お宝らしいお宝は見つけられなかったのだが……
「お宝は無かったけど、アンデッドたくさん浄化できたし私的には満足したわ。……でも待って?なんか、まだその辺にアンデッド臭がするわね」
そろそろ帰ろうとした俺達だったが、アクアの言葉を聞き周囲の探索を開始した。特に何も見つからなかったので諦めて帰ろうとした時に、突き当りの壁の一部がクルリと横に回転し突然開く。すると、
「そこに、プリーストがいるのか?」
奥からくぐもった声が聞えてきた。
俺たちは、その声の主が出てきた部屋へと入り、カズマがティンダーで部屋を照らすと、干からびた皮が張り付いた骸骨がはっきりと見えていた。
「私はキール。このダンジョンを造り、貴族の令嬢をさらって行った、悪い魔法使いさ」
キール……このダンジョンの名前にもなっているアークウィザード、彼の話では王様から望みを聞かれたとき、虐げられている自分が一目ぼれした貴族の令嬢をくれと言い、さらった後このダンジョンを作り立てこもったらしい。ベットにはその貴族の令嬢と思しき白骨化した遺体が寝かされていた。
逃避行の途中に王国軍とドンパーティーやったのを楽しかったなどど言っていたので思わず、あなたもバトルマニアですか? と言いそうになったが何とかこらえた。
そうして色々話を聞いていると、
「私を浄化してくれないか。彼女は、それができる程の力を持ったプリーストだろう?」
現在アクアは、キールを浄化するための陣を敷いている。本来なら、人一人分だけの広さで十分なのだが、部屋全体を覆う物となっていた。おそらく逃避行の途中で重症を負い、それでもベットで横たわる令嬢を守る為にリッチーになってしまった経緯を聞いて気合を入れているのだろう。
「なあアクア、俺も参加していいか? ちょい無理矢理だけど俺の魔法陣とその陣を連結させて何かするからさ」
「いいわよ!じゃあユウはリッチーとして体を構成してる呪詛を解除をして頂戴。とはいっても私が殆どやるから、魔力を出してくれるだけでいいわ」
俺たちの会話を聞いていたカズマから、
「……いいのか? 余計なことすると失敗するんじゃ……」
「いいのよ。折角見送るんだから少しでも賑やかにいきましょう!」
そうして、アクアが再度気合を入れ詠唱を開始した。それと同時に俺も魔法陣を連結させて目を閉じ集中し、アクアの陣へと魔力を送る。おそらく、キールの体に纏わりついているドス黒い魔力、これがアクアのいう呪詛なんだろう。俺の魔力がアクアを通って呪詛を解除しているのが分かった。
そうして、アクアは今までに見たことの無い表情でキールへと語りかけ、
「神の理を捨て、自らリッチーと成ったアークウィザード、キール。水の女神アクアの名において、あなたの罪を許します。」
そういえば、アクシズ教の御神体もアクアっていうんだっけ。アクシズ教自体良い噂は聞かないけど、これを見てるとそうとは思えないけどな。
そして、アクアの話が全て終った後、
「『セイクリッド・ターンアンデッド!」
リッチーの浄化を終えた部屋にはなぜか令嬢の骨も消えてなくなっていた。
帰り道、これまでアンデッドが多く出没するのは、アクアの神聖な力が強すぎるせいでアンデッドが寄ってくるせいらしい。これでアクアとカズマが喧嘩になりながら歩いていった。途中で出くわしたモンスターやらアンデッドはどうにかしたが。
ダンジョン入口のログハウスに着いてもまだ喧嘩を続けていた二人に、めぐみんから、
「なんとなく予想はつきますが、何があったか聞いてもいいですか?」
そうして、ダンジョンで出会ったキールや貴族の令嬢のことを話していると、
「そういえば珍しいよな。余計なことするの嫌いそうなお前がリッチーの浄化に参加するなんてさ」
カズマがそんな事を言ってきた。
「子供の時にな、自分の大好きな人を守る為にその人に別れも告げずに逝こうとしてた人がいたんだ。キールを見てたらあの人の事を思い出してさ。つい手を貸したくなったんだ」
俺の言葉に四人とも耳を傾けて聞き入っている。
「あの人の……アインスの言葉は今でもはっきり覚えてる。”お前達にもいずれ分かる。海より深く愛し、その幸福を守りたいと思える者と出会えればだが”って言われてさ。キールにとってあのお嬢様がそういう存在だったんだろうけど、俺もその内そんな人と……ってどうしたんだ、お前ら?」
俺の話を聞いていた四人が呆気にとられた様な表情をしていた。
「……いえ、意外だったもので。ユウは徹底したリアリストだと思っていたのですが、結構ロマンチストなんですね」
「ああ、目的のためなら敵を後ろから撃つことも
「お前らにロマンがどうこう言われたくはない! 爆裂魔法しか使えないヤツと防御にしかスキル振ってないヤツが何言ってんだ!」
めぐみん、ダクネス、特にダクネスに失礼な事を言われたので、そう返すと、
「なーに照れてんだよ。いいじゃないか別に」
「うっさい! 照れてない!」
カズマからの言葉に少しイラつきながら答えると、今度はアクアから、
「なんだ、今でもそういう顔ができるのね。そっちの方が可愛げがあっていいわよ」
またアクアが昔あったことがある様なことを言い出した。けど、待てよ……。
「そういえば、昔夢の中であった人はアクアに似てたかも……」
そう言うと、カズマとアクアは驚いたような顔をしていたが、
「でもほら、あの時のお姉さんは立派な人で言動も落ち着いてた感じもするし、アクアみたく借金はこさえたり、だらしない生活したり、人に殴りかかったりしなさそうだから、どう考えても別人だろ」
※本当は最初に会ったとき、アクアは寝転がりながらポテチを食べてマンガ本を読んでいます。詳しくは外伝参照。
それを聞いたカズマはなぜか笑いを堪え、アクアはというと、
「なんでよおおおおおおおおお!!!」
そう叫び、泣きながらアクセルの方へ走り去って行った。
「アクア、どうしたんだ……?」
「アイツの場合、自業自得だからほっとけ」
カズマも言っていたがアクアに関してはいつもどおりなので、ほっとくのがいいだろう。
その後、ギルドに戻った俺たちが見たのは……、
「わ、私、女神様なのに!アクア様なのにいいいいい!!」
泣きながら酒を飲んで愚痴を言っているアクアだった。ただし、次の日にはケロッとして普通に接してくれたので、あまり気にしないでおこう。