この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
俺、カズマ、アクアはとある場所に向かっていた。カズマがある人からスキルを覚えたいということで、俺は俺で丁度その人に用があったので付いて来ていた。
目的地の店に到着しカズマが、
「ようウィズ、久しぶり。約束どおり来たぞ」
そうしてウィズの店を訪れたのだが、
「……ふん。お茶も出ないのかしらこの店は」
アンデッドということで、アクアがウィズに対して陰湿なイビリをしていたのだが、それを無視してカズマはリッチーのスキルを覚えたいと言っていた。アクアはアンデッドのことをナメクジの親戚とか言って大反対していたが。
「そういえば、アンデッドで思い出したけどベルディアはあの廃城を綺麗に掃除して使ってたぞ。結局その人(?)の性格次第だろ」
「なによ! ユウったらアンデッドの味方なの? ”アンデッドは殺っちゃいなさい”ってのは覚えてると思ってたんですけど!」
「なんの事言ってるかわかんねーよ! それに俺だってウィズに用があるんだから、殺っちゃったらまずいだろ。しかも俺とウィズが本気でやりあったら勝敗はともかく、ここら辺一体が大変なことになる。……多分」
アクアとそんな事を話していると、
「そういえば、最近知ったんですがカズマさん達があのベルディアさんを倒されたそうで」
なぜかベルディアを”さん”付けで呼んでいるウィズを不思議に思っていると、カズマも同じ疑問を持ったようで質問していたのだが、
「ああ、言ってませんでしたっけ。私、魔王軍の幹部の一人なんです」
まるで、世間話するかのようにウィズから驚愕の事実が明かされた。
「確保ーっ! ユウ、バインド!バインドでグルグル巻きにしちゃいなさい!!」
ウィズを押さえつけるアクアを止め、事情を聞くと彼女は魔王城の結界維持だけを担当しているなんちゃって幹部らしい。魔王城の結界を解くには幹部全員を倒さなければならないらしいが、アクアなら幹部2〜3人分で維持する結界なら破れるそうなので、わざわざウィズを倒す必要がないということで落ち着いた。
よし、魔王軍とやらが本気で不味いことしたら、本局に応援頼もう。うまくアイツらが来てくれれば、俺と合せて結界ごと城を焦土にできると思うし。
「なんか、ユウが悪そうな顔してるわよ」
「……ああ、ベルディアを後ろから撃った時と同じ顔してるな」
俺の考えを見透かしたようなアクアとカズマに失礼な事を言われていた。
ウィズ曰くベルディアとはあまり仲がよくなかったらしく、敵討ちなどは考えていないそうだ。しかも、ベルディアは自分の首を転がしてウィズのスカートを覗いていたらしい……。あの日記はそういうことか。
「えっとな、日記に書いてたんだけどスカートの中覗くために、鏡の前でフォームをチェックしたり、スイング練習毎日1000回やってたらしいぞ、ベルディアって」
俺の言葉を聞いた三人はドン引きしていた。なんか死体蹴して更に魔法を撃ちこんだ気分だが気にしないで置こう。
その後、カズマはリッチーのスキル『ドレインタッチ』を習得した。相手に触ると魔力や体力を吸い取れるスキルらしい。スキルを見せようとした時にアクアがウィズに抵抗したり浄化しようとしていたが、もっと静かにできないもんか……。
そして俺はというと、
「えっとさ、ウィズにコイツの魔力補充を頼みたいんだ。もちろん代金は払うから」
そうしてカートリッジを取り出した。
現在、このパーティーでカートリッジの魔力補充ができそうなのは、俺、アクア、めぐみんだが、めぐみんはそれをやると爆裂魔法が撃てなくなる、俺もまとめてやると結構な魔力を消費する。そしてアクアはというと、
「ちょっとユウ! なんでリッチーに頼むのよ!?そんな陰湿な魔力より、この私の神々しい魔力の方が良いに決まってるでしょ!」
別にカートリッジに入れる魔力は誰のでも良いんだけどと思いながら、
「だってさ、こないだアクアに頼んだら”忘れちゃった。てへっ”とか言って結局やってくれなかったろ」
「あ、あの時は忙しくて……」
「クエストの後、特にやることもなくて馬小屋で寝てたって聞いたけど?」
そう言ったら黙ってしまった。なのでここは代金を払ってでもウィズにやってもらった方が良いだろう。
カートリッジを手に取り、魔力補充を行っていたウィズだったが、
「……変わった魔道具ですね。どんな仕組みなんですか?」
「コイツは杖に入れてから中身の魔力を使って魔法の威力を上げたりできるんだ。ただ手持ちがこれしかないから、使い回してるけど」
それを聞いたウィズが何やら思いついたようで、
「でしたら、私が懇意にしている魔道具職人の方に、同じような物が作れるか聞いてみましょうか?」
確かにカートリッジ自体は大量生産が可能な位だから構造自体は難しくはない。もしこちらで代用品でも手に入れられれば、いちいち魔力補充する手間は省ける……。
「じゃあ、お願いしてもいいか? 無理だったら無理で構わないからさ」
そう言って、見本としてカートリッジを一つウィズに預けた。その時、
「ごめんください、ウィズさんはいらっしゃいますか?」
店の扉を開け、中年の男が訪ねてきた。
ウィズを訪ねてきた男は不動産業を営んでおり、最近この街の空き家に、様々な悪霊が住み着きまくっているらしい。しかも悪霊の討伐クエストを出して退治しても、また直ぐに住み着いてしまうのだそうだ。
その話を聞いた俺たちは、とある貴族の別荘だった屋敷の悪霊退治を引き受けることになったのだが……、
「悪くないわね! ええ、悪くないわ! この私が住むのにふさわしいんじゃないかしら!」
アクアは何もおかしな事を言っているのではなく、今回の除霊が済んだ暁には、その報酬として悪評が消えるまで無料で住んでも良いらしい。
この件に関しては、対アンデッドのエキスパートアクアがいるので、そこまで難易度が高い依頼ではないはずだ。そのアクアはというと、どこかのテレビ番組のように霊視を行い、この屋敷についての詳細を語りだしていた。正直胡散臭い。
屋敷に入った俺たちは、掃除を済ませてそれぞれの部屋割りを決めてくつろいでいた。途中でアクアが酒が無くなったなどと騒いではいたが、知らない振りして眠りについた。
そして夜半過ぎ、日本で言う丑三つ時の時間帯、
『マスター、屋敷内に動力不明の動体反応多数』
大人しく寝せてくれるとは思ってなかったけど、やっぱりか……。
デバイスからの警告で体を起こした俺は、悪霊の相手をする為に部屋を出た。
「……けどさ、今回の件って俺ほとんど役立たずだよなあ」
思わず呟いてしまった。
そもそも俺の魔法は、魔法とは言うものの悪霊なんて相手にするように出来ていない。炎熱なら多少効果はあるかもしれないが、屋内で使って火事を出すわけにもいかないし、……さてどうするか。
そんな事を考えながら屋敷の廊下を歩いていると、多数の人形が動いていた。さっきデバイスが言っていた動力不明の動体反応はおそらくコイツだ。とりあえず、攻撃してくる雰囲気は無かったのだが結構な数おり、壊したそばから悪霊が新しい人形に取り付くようなので、バインドで動きを止めて後でアクアに除霊してもらうことにした。
廊下を歩いているうちに、向こう側から足音が聞えてきたので警戒していると、
「ユウか。お前も悪霊に起こされたのか?」
「お前も……ってことはダクネスもか」
廊下で出会ったダクネスは寝間着のままであったが、聖騎士のクルセイダーとしては放って置く訳にもいかないので、動く人形をどうにかしようと試みていたそうだ。何故か顔が紅潮していたが余計なことは考えないでおこう。
ダクネスと二人で歩きながら、目に付いた人形にバインドをかけていくと、
「ユウ、頼みがあるのだが……」
「お前にバインドかけて放置しろってんならやらないからな」
「何故だ! 動けないまま抵抗も出来ず聖騎士たる私が悪霊に襲われる。またとないシチュエーションだ! この機会を逃したら今度はいつになるか……」
……なんでダクネスはこの状況でも、ブレないんだろう?そもそも悪霊に襲われるためにこの屋敷に来たんじゃなんだが。
しかし、ダクネスといると人形があまりこちらに来ないような気がする。いや、人形自体は確かにいるのだが、ダクネスに近づくのを戸惑っているような感じだ。こう……、どうしていいかわからない様な雰囲気を出している。
「ダクネス、お前人形に会った時どんな反応したんだ?」
「勿論、もっと大群で押しかけて私を蹂躙しろと言ったが……」
……なるほど、悪霊も襲って怖がられるのは良くても、悦ばれるのは嫌らしい。彼らにも襲う人間を選ぶ権利はあるってことか。
そうしている内に、後ろの方から叫び声を出しながら誰かが近づいてきた。見ると、カズマがめぐみんの手を引いて走ってきたのだが……、
その姿、正確にはめぐみんの姿を見て俺とダクネスは絶句してしまった。めぐみんはパジャマの下を履いておらず、上着の裾の部分を押さえて走っていた。なので、おそらく下着も……。
「カ、カズマ……お、お前……もしかして」
俺がその言葉を口にする前に、
「カズマ! めぐみんを押し倒したのか!悪霊どもに触発され己の欲望を顕にし、めぐみんに襲い掛かったというのか!! 何で……! 何で私の所に来ないのだ!!」
おそらく俺と同じ想像をしたであろうダクネスが、とんでもない事を口走っていた。一瞬時が止まり、
「カズマが……、嫌がる私の手を引いて無理やり……」
「ちょっと待て! 間違ってないけど違うだろ!」
めぐみんの言葉でカズマはうろたえていたが、これはいけないと思いカズマの肩にポンと手を乗せ、
「カズマ、俺……お前のこと鬼畜ロリコン野郎なんて思わないからさ。3歳位の年の差なら全然ロリコンじゃない。ただ……責任はちゃんと取ろうな」
なるべくカズマを傷つけないように出来るだけやさしげな声で語り掛けた。
「お前らあああああ、俺の話を聞きやがれええええええ!!!」
カズマの説明によると、めぐみんの用足しの途中で悪霊に追いかけ回され、やむなくこの格好になってしまったそうだ。
「いやー、ごめんごめん。めぐみんの姿があんまりにもアレだったもんでさ」
「う、うむ。何事も無かったのなら良かった」
俺とダクネスが謝罪したあと、四人で話し合ったのだが、
「めぐみんはダクネスといると良い、ダクネスには何故か悪霊が寄ってこないから。俺とカズマはバインドとドレインタッチで悪霊動けなくしてアクアが除霊しやすいようにするか」
ダクネスが変態だから悪霊が寄って来ないとは言わないほうがいいだろう。そうして、俺とカズマの二人で屋敷内で動く人形の対処をしていたのだが、
「おい、あれ……なんだ?」
カズマが顔を青くしながら廊下の奥を指差しているので、そちらを向くと人形ではなく金髪の女の子がこちらをじっと見ていた。よく見ると、その女の子が透けていたのでカズマは相当驚いたようで、
「……あれって幽霊だよな? はっきり見えるってことはヤバイ奴なんじゃ……」
カズマは目の前の幽霊(?)は相当ヤバイと思ったらしく俺の後ろで震えていたのだが……、
「ユウ、アイツはお前に任せた!俺はあっちに行くから頑張れ!」
ここは単独行動は控えた方がいいんじゃ……と言う前に、カズマは後ろへ走り去って行った。そして、幽霊のいたほうを見ると、その娘は影も形もなくなっていた。仕方なく一人で人形の対処をしていると、
……足音? しかも一人。カズマか……?
カズマなら早く合流した方がいいと思い。そちらへ向かうと……、
「きゃああああああああああ!!!」
あちらから来ていたのは、めぐみんだったらしく俺の姿を見て悲鳴を上げていた。
「めぐみん、なんで一人なんだよ? ダクネスと一緒にいろって言ったのに」
「それが、トイレが途中だったので済ませていたらダクネスが何処かに行ってしまいまして……」
ダクネスめ……、人形追いかけていきやがったな……。
とりあえず、めぐみん一人にしておくわけにもいかないので、一緒に行動することになったのだが、
「なんでユウはそんなに落ち着いているのですか? 幽霊の相手は慣れているのですか?」
「……うーん、幽霊よりタチの悪いの相手にしたことあるからか。例えば、デストロイヤーより大きくて、結界4層持ってて、ダメージを与えたそばから再生して、ほっとくと世界が滅ぶようなヤツとか。もっとも、その時はサポートばっかりやってたけど」
「……いくらなんでもそれは冗談でしょう? そんな嘘みたいな怪物がいるわけありません」
……本当なんだけどな、信じてもらえなかったらしい。
二人でダクネスを探していると、めぐみんが何かを見つけたらしく震えながらその方向を指差していた。
「あれってさっきの幽霊だな」
「だからなんでそんなに落ち着いているのですか!?は、早く逃げたほうが……!」
「だって、危害加えられてないし」
俺が落ち着いているのとは裏腹に、めぐみんはパニックになっているらしく爆裂魔法の詠唱を始めていた。ちょっと待てと言いながら口を押さえたときにバランスを崩してしまい、ちょうどめぐみんに覆いかぶさるような形になってしまった。
その時……、
「……二人ともナニやってるのよ?」
「ユウ、お前まで悪霊に触発されて……」
いつの間にか近くにいたアクア、ダクネスが何かを言いたそうにしていたので、とりあえずめぐみんから退き、誤解を解こうとしたのだが、
「ユウ、お前のこと鬼畜ロリコン野郎なんて思わないからさ。責任はちゃんと取ろうな。俺と違って現行犯だから言い逃れはできないぞ」
アクアとダクネスに合流していたらしいカズマが、満面の笑みで自分が言われたことを俺に語りかけてきた。
「お前ら! 俺の話をきけええええええ!!!」
思わず、さっきのカズマのように叫んでしまった。
その後、誤解は解けたものの5人で行動した方が良いということになって、悪霊退治をしていた。
翌朝、ギルドに報告に行くと悪霊が増えた原因を聞かされたのだが……。
アクアが共同墓地に巨大な結界を張ったせいで、行き場をなくした霊たちが空き家に住み着いたらしい。流石にギルドの臨時報酬を受取るわけにもいかず、不動産屋にも謝りに行ったのだが、屋敷の悪評が消えるまで住んでも良いと言われ、ホッとしていた。
「そういえば、あの女の子も悪霊だったのかな?」
「その女の子って金髪の娘? それなら霊視で視えた娘ね。私のお酒飲んだのもその娘なのよ、別に危害は加えなかったでしょ」
俺たちがリビングでくつろいで幽霊の話をしていると、アクアが例の幽霊について教えてきた。
「多分、ユウは面白そうな話が聞けそうだから付いてきてたんだと思うわ。あの娘、冒険者の冒険話が大好きだから」
……あの胡散臭い霊視は本当だったのか、アクア侮りがたし……。俺の話は冒険話じゃない気がするが。
カズマの時は分からないけど、めぐみんの時は闇の書の防衛プログラムの話をしたから出てきたってことか……。
「それよりもカズマ、ユウ、私に手を出すとロリコンになる理由を教えてもらおうか!」
昨日、俺とカズマに間接的とは言え子供扱いされためぐみんが、喧嘩腰で俺たちに突っかかってきた。
「だってな、ユウの同僚の人達見たろ?あんな人たちと一緒に仕事してれば、めぐみんは子供扱いされても仕方ないって。しかも結構親しそうだったし……。もう昨日のめぐみんにしたみたいなことは済んでるんじゃないのか?」
カズマはニヤニヤしながら、以前ここに来たフェイトとはやてのことを言っていたのだが……、
「あ、あいつらにそんなことすると……」
「すると?」
カズマが俺の言葉にあわせ、再度問いかけてくるが……、
「こ、殺される……」
「「「「……は?」」」」
俺の返答に四人全員が驚いた顔をしていたが、カズマから、
「そんな大袈裟な。あんな優しいそうな人たちがそんな事……」
「お、お前に何が分かるんだ、カズマ!どれだけ魔法撃っても大したダメージにもならずに砲撃一発でひっくり返されたり、物凄いスピードで切り刻まれたり、逃げ場の無い広域魔法撃ち込まれた俺の気持ちが分かるってのかああああああ!!!」
両手でカズマの肩を掴み、思いっきりグワングワン揺らしながら叫んでいた。
「とりあえず落ち着け! 何のことか分からないけど俺が悪かったから!」
「そ、そうですよ。私もこの話は終わりにしますから!」
カズマとめぐみんが俺を必死に宥め、何とか正気に戻った。その後、俺にこの話題はマズイと思ったのらしく、これ以上は何も言わなくなっていた。