この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

19 / 152
カズマが居ないシーンでは書籍版と同じ行動をしてると思ってください。


サキュバスと殲滅攻撃未遂

冬越しに必須な念願の住処を手に入れた俺達ではあったが、俺とカズマは暖炉の前で借金返済のための内職をしていた。

 

「とりあえず、ひと段落だな」

 

「ああ、ユウがいて良かった。俺一人なら心が折れてたかもしれない」

 

内職を終らせた途端アクアから、

 

「あら、内職終ったんなら退いて頂戴な。暖炉の前で温まりたいの」

 

……この内職はアクアの洪水で出来た借金返済のためなんだが、こさえた本人が何もしないのは何でだろう? まあアクアがこんななのは今に始まったことではないが……。

 

「ユウ、内職が終ったのでしたら、私とチェスをしましょう! 昨日の雪辱を晴らすのです!」

 

めぐみんからチェスのお誘いを受け、そちらへ移動する。こちらのチェスは各職業の駒に合せたスキルがあり、それを駆使しての戦略が試されるものとなっている。カズマは敵の王様に磐外へテレポートされた時点で、二度とやらないと言っていた。俺はというと、昨日めぐみんと何局か打ち、全勝したので負けためぐみんは相当悔しがっていた。

 

「我が軍勢の力見るがよいです。このマスにオーク兵をテレポート、王手です!」

 

「甘い。クルセイダースキル『デコイ』で王周辺の敵兵を移動させて…」

 

「ならば、ソードマスターで敵陣を突破して一気に押し切ります!」

 

「盗賊スキル『潜伏』解除、王の後ろに布陣。ほら王手」

 

俺とめぐみんの差し合いを見ていたダクネスだったが、

 

「……戦闘もそうだが、チェスもえげつないな……。後方からは盗賊、前方には戦士とソードマスター、逃げ道はアーチャーの攻撃範囲、突破口になりそうな場所にはクルセイダーを配置とは……。身動きも取れずただ詰まれるのを待つだけではないか……」

 

「なんでですか! なんで一回も勝てないのですか!!」

 

ダクネス曰く俺はチェスでもえげつないらしい、ちょっとショックだ。めぐみんは紅魔族由来の知力でこの手のゲームには自信があったらしいが、昨日から一度も勝てていないので少し涙目になっていた。

 

「めぐみんはウィザードの使い方がうまいけど、作戦が一辺倒すぎるんだ。困ったら押し切ろうとするのは良くない。相手の思考を読みながら突破口を構築しなきゃな」

 

「クエストでは爆裂魔法があれば押し切れますので、つい……」

 

なるほど、めぐみんのこの思考は爆裂魔法由来か、……納得だ。

 

「内職も終ったし、気分転換に外行って来る」

 

カズマはそう言って屋敷から出て行き、俺は再度めぐみんとチェスをしていたのだが、

 

「ごめんください。どなたかいらっしゃいませんか」

 

誰かが訪ねてきたらしく、玄関へ向かうと宅配業者らしい男が荷物を抱えて立っていた。その男から荷物を受取り、みんなの所へ向かうと、

 

「何か荷物が来たんだけど、誰宛だろ?」

 

「ああ、これは私の実家からだ。ここに住むことになった引っ越し祝いと、普段私が世話になっている礼として父が送ってくれたようだ」

 

どうやらダクネスの実家からの荷物らしい。箱を開けて中を確認すると……、

 

「……カニだな」

 

「……カ、カニですね」

 

「これって霜降り赤ガニじゃないの!? しかも普段お目にかかれない高級酒まであるわよ!」

 

俺、めぐみん、アクアの三人とも箱の中身を見て驚いてしまった。どう考えても、冒険者をやっていてはお目に掛かれない高級食材だ。しかもこのカニ、”霜降り”なんてついてる位だから、日本でいうところの霜降り肉のような特別なものなのだろう。思わずダクネスの方を向き、

 

「……もしかして、ダクネスの実家って金持ちなのか?」

 

「あ……いや、そういうわけでは……、気にせず食べてくれ」

 

どことなく歯切れの悪いダクネスではあったが、あまり言いたくないこともあるだろうし気にしないでおこう。

思わぬ形で高級食材を手に入れた俺たちではあったが、とある問題が発生した。

 

「……調理器具が足りないな。ついでに調味料も」

 

馬小屋で寝泊りしていたときは基本的にギルドで食事を取っていたので、先日引っ越した時に最低限のものしか持って来ておらず、生活用品……とりわけ台所用品が足りていなかった。

 

「じゃあ、俺は街に行って足りないもの買ってくる。ちなみに今日の献立のリクエストは?」

 

「やっぱり、今の時期なら鍋でしょ! カニ鍋で決まりよ!あとついでに七輪も買ってきて」

 

「いいですね。霜降り赤ガニのカニ鍋ですか……、楽しみです」

 

「ああ、この寒さならそれがいいだろう」

 

アクア、めぐみん、ダクネス三人のリクエストでカニ鍋となったので、それに必要になる鍋や野菜、調味料を買いに街へ繰り出した。必要な物を一通り揃えて、街を歩いていると、

 

「ユウじゃない。夕飯の買い物?」

 

「ダストとキースを見なかったか?」

 

俺の姿を見かけたリーンとテイラーに声を掛けられていた。

 

「見ての通り夕飯の買出し。それとダストとキースは見てないぞ、特にダストは俺を見ると逃げ出すから最近顔も見てないな」

 

二人に事情を聞くと、この冬の時期には珍しい良いクエストが見つかったらしくダストとキースを探しているらしかった。

 

「アイツらを見かけたら二人が探してたって言っておくよ。じゃあまたな」

 

そう言って二人と別れ屋敷への帰路に着いたのだが……、

 

「すいません。この屋敷に何か御用ですか?」

 

屋敷の門の前に到着すると、フードを被った自分と同じか少し下くらいの少女がその場に立っていた。

 

「いえ、あなたはこの屋敷に住んでいる方ですか?」

 

「ええ、そうですけど……」

 

俺がそう返すと、

 

「……では、後ほど」

 

そう言って、その少女は屋敷から離れていった。

 

……後ほど?用があるなら入ればいいのに。

 

「ただいまー。さっきこの屋敷に用がありそうな人が来てたけど、誰かのお客さんか?」

 

カズマはまだ帰って来ていないらしく、俺の言葉を聞いてアクア、めぐみん、ダクネスが顔を見合わせていたが覚えが無いようだった。

 

「……おそらく、押売りの類ではないでしょうか。この屋敷は貴族の元別荘ですし、住んでいる人はお金を持っているように見えるかもしれません」

 

……なるほど、めぐみんの言うとおりなら、そこまで気にする必要はないか。

 

そして夕食の準備が整った辺りでカズマも帰宅し、

 

「カズマ、お帰りなさい!今日の晩御飯は凄いわよ! カニよ! ダクネスの実家から超高級の霜降り赤ガニが送られてきたのよ!」

 

アクアが満面の笑みでカズマを出迎え、五人で食卓を囲みカニに舌鼓を打っていた。確かにこのカニ、ふんわり甘く、濃縮されたカニ特有の旨みが口に広がる。他のみんなも黙々とカニを食べていた。

 

そうしている内にアクアが、

 

「カズマ、ここにティンダー頂戴」

 

そう言って、買ってきた七輪にカニの甲羅を乗せ酒を注ぎ熱燗にした後、それは旨そうに飲み干していた。

 

……七輪買って来いってのはこのためか。

 

「アクア、おっさんクセェ……」

 

「せっかくカニと高級酒が揃ってるんだもの!これをやらないと損よ!」

 

俺の感想にアクアがすかさず反論する。そして酒を飲んで気分が良くなったのか……、

 

「指芸で機動要塞デストロイヤー!!」

 

「「「おおー!!!」」」

 

アクアの宴会芸で俺、めぐみん、ダクネスが歓声を挙げた。

 

……確かに似ている。あのわけ分からない動きを指でここまで再現するだと…!?

 

一度デストロイヤーを見た自分もできるか試してみたのだが……、

 

「全然ダメね! 動きにキレがないわ! 宴会芸スキル習得して出直して来なさい」

 

アクアの言葉で自分の冒険者カードを取り出したのだが、カズマがそれを見て、

 

「おい! 何しようとしてるんだ!?」

 

「アクアに負けたままだと悔しいから、『花鳥風月』習得しようと思って」

 

「やめろ! そんな意味の無いスキル習得するな! もっとクエストに役立つスキルとればいいだろ!!」

 

カズマに必死に止められ、『花鳥風月』習得には至らなかった。

 

その後、カズマは何か様子がおかしい感じだったが、昼間キースたちと飲んできたらしく酒の味はまだ自分には分からないなどど言っていた。そして、ひたすらカニを食べていたのだが……、

 

「それじゃ、ちょっと早いけど俺はもう寝るとするよ。ダクネス、ご馳走さん、お前ら、お休み!」

 

そうして、カズマは自分の部屋に戻って行った。

 

残された俺達というか俺はというと……。

 

「ユウ! あなた、ほんっとうに私のこと覚えてないのぉ〜? あんなに親身になって相談に乗ってあげたのにぃ〜」

 

酔っ払ったアクアに絡まれていた。

 

「なんのことだか分かんねーよ! 酔っ払っておかしなこと言ってんじゃない! もう寝ろ!!」

 

そうしてアクアを振りほどいたのだが、アクアはその場で寝てしまった。酔っ払いの相手は疲れる……。

 

「……だ、大丈夫ですか? ユウ」

 

「めぐみんは将来あんな風になるなよ?周りが大変な目にあうから」

 

「ええ、気をつけます……」

 

めぐみんもさっき酒を飲みたがっていたようだったが、アクアの姿を見て考え直したようだ。

 

「さてと、アクア部屋に運んで俺も寝る。悪いけど、どっちか一緒に来てアクアの部屋のドア開けてくれ」

 

「……なら私が行こう。」

 

屋敷の中とはいえ冬場なのでアクアをそのままにしておくわけにもいかず、ダクネスを連れてアクアを部屋に運び、ベットに寝せた。カニと高級酒でご満悦だったのか、それはもう幸せそうな寝顔だった。

 

「じゃあ、ダクネスお休み。カニ旨かったよ、ありがとう」

 

「気にするな、いつも世話になってるからな。お休み」

 

そう言ってダクネスと別れると、自分の部屋に行き眠りについた。

 

 

 

 

……ここは、どこだ? 屋敷の俺の部屋……だよな? いつの間にか目が覚めてたのか。あそこに誰か……いる!?

長い金髪と整った顔立ち、どこからみても美少女と言って過言ではないその人は、

俺の良く知る幼馴染のフェイトだった。しかもここにいるのに管理局の制服やバリアジャケットでは無く、私服姿でそこに立っていた。

 

「フェイトなんでここに? お前相当忙しいはずだろ……。エリオやキャロの所にも行かなきゃって言ってたし……」

 

俺の声が聞えていないのか、フェイトはゆっくりと俺に近づき……、次の瞬間、衣擦れの音が聞えたと思ったら、フェイトは自分の服を脱ぎだしていた。

 

「……おい! ちょっと待て! こないだの模擬戦の時、お前のバリアジャケットすぐ破けるとか言っちまったけど本当に脱ぐこと無いだろ!! 聞いてんのか!!!」

 

俺の言葉を無視し、そのまま上半身の全ての服を脱いでしまっていた。胸は腕で隠しているものの、彼女の細い腕で隠しきれるものではなく、その豊満な胸がはっきりと見えていた。そして、下半身の服に手をかけようとした時……、

 

「……ウ、ユウ! 起きなさい!! このままだと精気を抜かれるわよ!!!」

 

「早く起きてください! 起きないとサキュバスの思うままです!!!」

 

アクアとめぐみんの声が聞えたような気がして彼女達を見たのだが、まだ夢の中にいるような感じだったので……、

 

「……アクア、めぐみん……、お前らも……脱ぐのか?」

 

俺の言葉を聞いて二人とも、特にめぐみんは顔を真っ赤にし、

 

「何を言っているのですか!? 寝ぼけているのなら早く目を覚ましてください!!」

 

めぐみんは俺の体を揺らしながら必死に呼びかけるが、

 

「退きなさいめぐみん、ユウの寝起きの悪さは身をもって知ってるわ! ここは私に任せなさい!!」

 

アクアはそう言って拳を硬く握り……、

 

「『ゴッドアラウザル』ッ! ゴッドアラウザルとは女神の慈愛と悲哀を込めた覚醒の拳! 相手は死……じゃなくて目覚める!!!」

 

そうしてアクア渾身の拳が俺の顔面へめり込み……、

 

「……アクア、……何しやがる!?」

 

俺は完全に目を覚ました。……顔が痛い、歯がグラグラする。しかも何か恨みがこもってたような気もする。

 

俺が完全に目を覚ましたのを確認した二人は今の状況を説明した。どうやら淫夢を見せて男から精気を吸い取る悪魔……サキュバスが屋敷に侵入したらしい。アクアは外の結界に感知されずに侵入されたことを驚いていたが、屋敷内にも捕縛用の結界を多数設置しているらしく、捕まえるのは時間の問題だと言っていた。

 

ということは、さっきの夢はつまり……。

 

「ユウ、さっき私達にも脱ぐのかと言っていましたが、どんな夢を見たのですか?」

 

めぐみんが突き刺さる様な視線でさっきの夢の内容を聞いてきたのだが、

 

「……ノーコメント」

 

あんな内容の夢を言えるわけもなく、黙秘を貫くことにした。そうしている内に、

 

「結界に反応があったわ!こっちよ!皆、この屋敷に曲者よーっ!!」

 

アクアの指示に従い付いて行くと、結界で捕縛され動けなくなっているサキュバスと思しき少女がいた。そのサキュバスをよく見ると……、

 

「……お前、俺が帰ってきた時に門の前にいた奴だな?」

 

「そういう事だったの。押売りじゃなくて獲物を探してたってわけね」

 

アクアの言うとおりなら、屋敷の門の前で俺に狙いを付けて進入したと……。”後ほど”って言ったのはそういう訳か。

 

俺とアクア、めぐみんはサキュバスを退治しようと準備していると、カズマが腰にタオルを巻いたままこちらに向かってきた。アクアはともかくめぐみんは刺激が強すぎたようで目を覆っていた。

そしてカズマは何故かサキュバスの前に立ち、俺達に立ちはだかった。

 

「今のカズマは、恐らくそのサキュバスに魅了され操られている! 先ほどからカズマの様子がおかしかったのだ! あんな……、あんな辱めを……っ! ぶっ殺してやるっ!」

 

カズマの後を追ってきたダクネスがサキュバスに向かって叫んでいた。

 

ダクネスも何かあったのか? ……しかも辱めって、俺にも……あんな、あんな……!

 

「うわあああああああ!!!」

 

「ユウ!?」

 

俺が奇声をあげて驚いていたのはアクアだけでなく、殺気立っていたダクネスもその場で固まっていた。

 

……よし、あのサキュバス消し飛ばして今日のことは綺麗さっぱり忘れよう……。

 

「……ファルシオン、射砲撃殲滅シークエンス」

 

俺の指示で廊下に所狭しと出現する魔力弾とデバイス本体からは砲撃が今にも飛び出しそうな勢いで、カズマの後ろにいるサキュバスへ狙いを定める。その様子を見ていたアクア、めぐみん、ダクネスは、

 

「ユ、ユウ何するつもり? カートリッジを今までないくらい一度に消費してますけど……」

 

「し、しかもさっきカートリッジ足しましたよね?……や、屋敷ごと消し飛ばす気ですか? や、やめてください」

 

「そ、そうだぞ、しかもこの位置で撃ったらカズマまでタダではすまん。す、少し落ち着くんだ」

 

三人ともさっきまでの勢いは何処へやら、怯えながら俺を止めようとしていた。

 

「……大丈夫だ、俺の魔法は非殺傷設定ってのがあるから、カズマは死ぬほど痛いだけで死んだりしない。サキュバスはどうか知らないけど消し飛ばせれば良し、そうじゃなきゃ気絶させた後で退治すればいい……。それに昔誰かに悪魔は殺れって言われた気もするし」

 

「やめろ! 死ぬほど痛いだけで死なないのは私にとってご褒美だが、屋敷を消し飛ばすのはマズイ! やめてくれ!!!」

 

ダクネスが俺を抑えるのに合わせ、アクアとめぐみんも俺にしがみ付いて必死に止めていた。

そうしていると、結界から抜け出すことに成功したサキュバスはどこかへと逃げていった。

 

次の日、カズマはサキュバスに操られていた時の記憶は無かったらしく、何も知らないと言っていた。何故か数日間、俺を見ると顔を青くして後ずさっていたが……。

アクアとめぐみんは屋敷ごとサキュバスを完全に殺ろうとしていた俺にかなり怯えてしまったらしく、夢の内容を聞こうとはしなかった。

 

 

 

 

その頃ミッドチルダでは、

 

グシャッ

 

「執務官どうしたんや? 報告書握り潰して……」

 

「八神一尉、……何か、凄く失礼な事を言われて、恥ずかしい思いをした気がして……」

 

「うーん、浅間捜査官のところで何かあったんやろか? まあその内、休暇が取れたら行ってみてもええやろ」

 

フェイトとはやてがそんな会話をしているとは知らず、俺はまるで風邪でも引いた時のような悪寒を感じていた。

 




2回目のOHANASHIフラグが立ちました。
レッドカードまで後いくつだ?

サキュバスサービスでフェイトの姿を希望したのは、当然ながらカズマです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。