この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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前話のカズマ視点です。できればそっちも読んだほうがいいかもしれません。


サキュバスと殲滅攻撃未遂 Side カズマ

ユウと一緒に内職を終え、暖炉の前でくつろいでいると……、

 

「あら、内職終ったんなら退いて頂戴な。暖炉の前で温まりたいの」

 

……この駄女神は俺達が何で内職してるかわかってるのか?お前が作った借金のせいなのを忘れてしまったかのように暖炉の前を占拠しようとするな!

 

アクアと一度やり合おうと思っていると、

 

「ユウ、内職が終ったのでしたら、私とチェスをしましょう! 昨日の雪辱を晴らすのです!」

 

めぐみんがユウをチェスに誘っていた。このチェス……、敵の王様に磐外へテレポートされた時点で、二度とやらないと心に決めた。だというのに……、

 

「盗賊スキル『潜伏』解除、王の後ろに布陣。ほら王手」

 

「なんでですか! なんで一回も勝てないのですか!!」

 

昨日に続き、めぐみんがまた負けていた。

 

アクアの話だとユウも俺と同じ日本出身のはずなんだけど、何であんな無茶苦茶なルールのチェスに即応できるんだ……? アイツは転生者じゃないのでチートは持っていないはず、持ってる杖は喋ったり変形したりかなり変わっているが……。それともアレか、生まれ持った才能って奴か? 天然のチート持ちなのかアイツは……。

俺は冒険者、アイツは最初からアークウィザード……、世の中ってのは理不尽だ。色々考えてると気が滅入ってくるな。こんな時は街に繰り出して気分転換がいいかも……。

 

「内職も終ったし、気分転換に外行って来る」

 

そうして街にでたのはいいものの、この世界の住人達の常識では、冬は引き篭もるもの。こんな寒い中、ふらついているのは俺の様な暇人か……。もしくは前方で不振な動きを見せている俺の知り合いくらいだろう。

 

「キース、ダスト。お前らこんな所で何やってんの?」

 

俺の言葉に二人が飛び跳ね、声の主が俺だと分かると安心した様で、

 

「よう。あれか? 今日はあの三人とおっかないのは一緒じゃないのか?」

 

「今日は俺一人だから安心してくれ。そんなにあいつらが苦手になったのか?」

 

「まあ、あの姉ちゃん達とアイツがいなきゃ別にいいんだ」

 

前のパーティー交換のときダストが初心者殺しに追いかけ回されていたのを、ユウは応援してただ見守っていたらしい。それ以来ダストはユウを見ると一目散に逃げるようになってしまった。というかアイツの危機感はちょっとおかしい、ダストの時もそうだが、アクアの湖浄化の時も檻が完全に壊れるまで手を出すつもりは無かったそうだし、屋敷の除霊の時だって幽霊見ても落ち着き払ってた。ユウの本来の仕事ってのはどれだけヤバイ事やってんだ?

めぐみんがチラッと聞いた時には、デストロイヤーより大きくて結界4層持っててダメージを与えたそばから再生して、ほっとくと世界が滅ぶようなヤツと戦ったことがあるとか。デストロイヤーってのはどんなのか知らないが、話を聞いためぐみんは冗談扱いしていた。……確かにそんな冗談みたいな怪物がいたら魔王軍だって真っ青だろう。

 

 

 

俺とダスト、キースはギルドの酒場に向かい真昼間から酒を飲んでいたのだが、なんで二人が路地裏のある店に入るかどうかを悩んでいたのかを聞くと、

 

「カズマ。この街には、サキュバス達がこっそり経営している、良い夢を見させてくれる店があるって知ってるか?」

 

「詳しく」

 

俺はダストに即答していた。

 

「だったら、カズマのパーティーのもう一人の男にも声掛けたほうがいいんじゃないか?」

 

キースがそう言うと、ダストはビクッと体を震わせていたが、

 

「いや。アイツはやめておいた方がいい。詳しくは話せないけど悪魔やアンデッドを見ると攻撃的になる時があるから。サキュバスってのは悪魔なんだろ? その店ごと破壊しても不思議は無いぞ」

 

俺の言葉を聞いたダストは胸を撫で下ろしたようだった。ユウが悪魔やアンデッドに攻撃的になるのはアクアのせいなんだが、本当にあの駄女神は余計なことばかりしてくれる……。ただ、アイツの場合は本当に切迫した状況なら冷静に立ち回るので、そこまで問題じゃないが。

 

俺はダストからサキュバスが経営しているという店について詳しく聞き、そこへ向かうことになった。

 

店の入口のドアを開けると魅惑の体をした女性達の出迎えがあり、中を見るとものの見事に男性しかいなかった。

俺達は空いているテーブルに案内され、アンケート用紙を渡された。そのアンケート用紙には夢の中での自分の状態、性別、外見などが記載されていた。性格や口癖、自分への好感度なども好きに設定できるらしい。しかも夢なので条例にも引っかからない、何て素晴らしい店なんだ!

 

アンケートにどんな内容を書こうか悩んでいると、以前ユウを訪ねてきた二人組みを思い出した。

 

……確かフェイトさんとはやてさんだっけ。両方美人だったな……、はやてさんには少し説教されたけど、それはそれで結構良かったよな……。あのゆったりとした関西弁でお説教……、萌えだ。

フェイトさんの方はあまり話してなかったけど、金髪でスタイルも良くて性格も大人しめで、うちのパーティーの駄女神や爆裂魔法しか頭にないロリッ娘やドMクルセイダーに比べたら月とスッポン、……それはいくらなんでもスッポンに失礼だ。

ユウの奴あんな人達とお近づきにというか、話を聞くと9歳の時からの幼馴染で同じ仕事に就いたそうだ……。アイツはどっかのエロゲの主人公かなんかか? 羨ましすぎるだろ! けど、ユウはなんでかあの人たちを怖がっている節があるんだよな。

よし、どうせ夢だし折角だからフェイトさんの特徴をアンケートに書いて渡すとしよう。

 

そうして、お姉さん達にアンケートを渡し代金を払うとまっすぐに帰宅した。

 

 

 

「カズマ、お帰りなさい! 今日の晩御飯は凄いわよ! カニよ! ダクネスの実家から超高級の霜降り赤ガニが送られてきたのよ!」

 

俺が帰ると夕食の準備が整っていて、しかも今日はダクネスの実家が送ってくれたカニで作ったカニ鍋がテーブルに置かれていた。しかも高級酒まであり、至れり尽くせりといった感じだ。サキュバスのお姉さんには酒は控えるようにと注意を受けていたので、あまり飲まないようにしておかなきゃな。

 

そうしている内に、甲羅酒で気分を良くしたアクアの宴会芸に対抗心を燃やしたユウが冒険者カードを取り出し、

 

「アクアに負けたままだと悔しいから、『花鳥風月』習得しようと思って」

 

「やめろ! そんな意味の無いスキル習得するな! もっとクエストに役立つスキルとればいいだろ!!」

 

俺は必死になって止めた。

 

なんとなく分かってはいたけど、コイツは物凄い負けず嫌いだ。この事もそうだけど、めぐみんとチェスやってた時だって手を抜こうとしなかった。どうやったらこんな性格になるんだ?

 

みんなと楽しく食事をしていると、これから何だか後ろめたい事をしてしまうようで胸が痛んだ。

みんなで酒飲んで忘れちまえばいい。アンケートの内容がそのまま夢になって出てくるだけだ。そしてその夢は朝起きても忘れないらしい。

皆とそのアンケートとどっちが大切か考えろ。そしてアンケートに何を書いたか思い出せ!

 

そして、カニをたらふく食うと立ち上がり、

 

「それじゃ、ちょっと早いけど俺はもう寝るとするよ。ダクネス、ご馳走さん、お前ら、お休み!」

 

 

部屋に戻った俺は緊張と期待でなかなか寝付けなかったので、庭で軽く体を動かした。軽く汗を掻いたので風呂に入ることにし、なんとなく眠くなって目を閉じた。

……そして、次に目を開けた時に、ダクネスが風呂場へ入ってくる姿が見えた。

 

……あれ、なんでダクネスが? ああそうかこれは夢か。フェイトさんが出てくるかと思ってたけど、金髪だしスタイルいいし、多分性格だって大人しめになってるだろうし、まあいいか。

 

「……? どうしたダクネス、早くこっちに来いよ。ていうか、まず背中を流してくれ」

 

俺の言葉にダクネスはかなり戸惑ったような様子を見せたが、結局はそれに従い背中を流してくれた。というかこれが夢とは凄いリアリティだ。サキュバスサービスは素晴らしい!

そうしてダクネスを少しからかいながら、続けて背中を流させていると……、

 

「結界に反応があったわ! こっちよ!皆、この屋敷に曲者よーっ!!」

 

屋敷の中に響くアクアの声、夢だとは分かっていても文句を言ってやりたくなったのでタオルを腰に巻き、アクアの声のしたほうへ行った。

その場所へ到着すると、おそらくアクアの結界で動けなくなっているサキュバスとその娘を退治しようとしているユウ、アクア、めぐみんがいた。特にユウは冷静ではあるが必死に怒りを抑えているような印象があった。

 

ここにサキュバスが居るって事は、さっきのダクネスは……。

 

俺はサキュバスを守るようにアイツラの前に立ちはだかったのだが、

 

「お客さん、すいません。私、間違えてお客さんじゃない人に夢を見せてしまって……」

 

後ろのサキュバスが俺にだけ聞える声で説明してくれた。

 

……つまり、夢を見せたのは俺じゃなくユウでアイツはいい夢見てたってのか!! 羨ましいじゃねえかぁ!!!

 

 

「今のカズマは、恐らくそのサキュバスに魅了され操られている! 先ほどからカズマの様子がおかしかったのだ! あんな……、あんな辱めを……っ! ぶっ殺してやるっ!」

 

俺を追ってきたダクネスがサキュバスに向かってそう叫ぶと……、

 

「うわあああああああ!!!」

 

ユウが突然奇声を上げた。顔を見ると悔しいような、怒っているような感じで少し赤くなっていた。

……あいつ、女慣れしてるかと思ったけど、結構純情なのか……?やっぱりあの店のこと教えてやれば良かったかも……。そんな事を考えていると、

 

「……ファルシオン、射砲撃殲滅シークエンス」

 

ユウの口から物騒な単語が聞えた気がした。

 

……せんめつ、……センメツ  ……SENMETSU?? ……SE☆N☆ME☆TSU???

殲滅――すっかり滅ぼすこと。皆殺しにすること。

 

そんな辞書出てくるような説明を思いだした俺がユウの方を見ると、廊下に所狭しと出現する魔力弾と杖からは砲撃が今にも飛び出しそうな勢いで、俺の後ろのサキュバスに狙いを定めていた。

 

おい、ちょっと待てえええええ!!? 俺ごとサキュバスを殺る気か!?

 

 

「ユ、ユウ何するつもり? カートリッジを今までないくらい一度に消費してますけど……」

 

「し、しかもさっきカートリッジ足しましたよね? ……や、屋敷ごと消し飛ばす気ですか? や、やめてください」

 

「そ、そうだぞ、しかもこの位置で撃ったらカズマまでタダではすまん。す、少し落ち着くんだ」

 

 

アクア、めぐみん、ダクネスが必死にユウを止めようとしている。

 

みんな頑張ってくれ! 俺だってこんな下らない事で死にたくねええええええ!!!

いや待てよ、このままユウの攻撃を受ければサキュバスを守ってたって事であの店への義理も果たせる。そして俺は操られてたって話でこの事はうやむやに出来る、しかも運悪く死んでしまっても、あの癒させるエリス様に会いに行けて一石二鳥どころか一石三鳥じゃねえか! ユウ、思いっきり撃て! お前の全力を受け止めてやる。

 

そうして覚悟を決めた俺ではあったが、

 

「……大丈夫だ、俺の魔法は非殺傷設定ってのがあるから、カズマは死ぬほど痛いだけで死んだりしない。サキュバスはどうか知らないけど消し飛ばせれば良し、そうじゃなきゃ気絶させた後で退治すればいい……。それに昔誰かに悪魔は殺れって言われた気もするし」

 

ユウの魔法について説明を聞き、一瞬でどん底へ叩き落された。

 

非殺傷設定? 何その便利機能。これじゃあ俺はただのやられ損じゃねえかあああああ!!! みんな頼む!あいつをなんとしても止めてくれええええええ!!!

 

「やめろ! 死ぬほど痛いだけで死なないのは私にとってご褒美だが、屋敷を消し飛ばすのはマズイ! やめてくれ!!!」

 

ダクネスがそう言うとユウを抑え、続けてアクア、めぐみんがしがみ付いて止めているうちに、サキュバスは逃亡に成功し何とか事なきを得た。

 

次の日、俺はサキュバスに操られてたってことで無罪放免になったのだが……、

 

「カズマ、お前何ともないか?」

 

ユウは俺の心配をして声を掛けてきたのだが、

 

「……ああ、だ、大丈夫だ。な、なんとも無いから……あんまり気にするな」

 

昨日の恐怖が蘇り、思わず後ずさってしまう。

 

コイツはアレだ、サキュバスのお姉さんが天使に見えるほどの悪魔かなんかだ……。

 

俺はユウを本気で怒らせないようにしようと心に誓った。

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