この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
昨日のサキュバス騒動で無駄にカートリッジを消耗してしまったので、ウィズの店に行き魔力補充を頼んでいた。というか、あの騒動は思い出したくない、心の奥底にしまっておこうと決心していた。
「ありがとうな、代金ここにおいて置くから」
そう言って、店から立ち去ろうとした時、
「ちょっと待ってください。先日お預かりした分をお返しします」
そうして魔道具職人にカートリッジを作成してもらう為に、見本としてウィズに預けた分を受取った。正直、返ってくるのはまだ先だと思っていたのだが。
「先方もとても興味を示されたようで、絶対に作って見せるって気合が入っていましたよ。これも無ければ困るだろうと、魔力の補充までしてテレポートで来てくださいましたし」
これはありがたい、カートリッジの供給が無い今の状態だと一発でも多い方がいい。そのうちお礼を言いに行きたいところだ。
「すまない、ウィズからその方にお礼を言っておいて貰っていいか? 俺もその内、会いに行こうとは思ってるけど」
そう言っていたときに、
『デストロイヤー警報! デストロイヤー警報! 機動要塞デストロイヤーが、現在この街に接近中です!冒険者の皆様は、装備を整えて冒険者ギルドへ! そして、街の住民の皆様は、直ちに避難してくださーいっ!!』
突如、街中に轟いたアナウンスで俺とウィズが顔を見合わせ、
「デストロイヤーってあれだよな……? でかい蜘蛛の機動要塞の」
「ええ、通った後はアクシズ教徒以外、草も残らないと言われています……」
一度、偵察でデストロイヤーを見たことはある、あれは通っただけで全てを破壊する力を持った、この世界では規格外のものだ。めぐみんも爆裂魔法を撃ったものの、結界に阻まれて傷一つつかなかった。あれをどうにかするのは正直俺一人じゃ無理がある。
「悪い、すぐに屋敷に戻る。ウィズも早く逃げた方が良い」
そうして、全速力で屋敷に戻ると、
「逃げるのよ! 遠くへ逃げるの!」
「もうジタバタしたって始まりませんよ。住む場所も全てを失うなら、もういっそ魔王の城にカチコミにでも行きましょうか」
アクアは自分の持ち物をひっくり返し慌てていたのとは裏腹に、めぐみんは小さな鞄を一つだけ横に置き、落ち着き払っていた。
「どうしたんだお前ら。何だこの状態は? 緊急の呼び出し受けてるんだぞ、装備を整えて早く行こうぜ」
デストロイヤーを知らないカズマが緊急アナウンスに従おうとしていたが、
「カズマ、デストロイヤーはこの街の冒険者が束になったってどうにかできる相手じゃない。一度偵察に行ったとき、めぐみんの爆裂魔法でもどうにも出来なかった」
それを聞いたカズマも、ようやく事態が飲み込めたらしく顔を青くしていたのだが、何故か決意に満ちた表情をしていた。まさかギルドに行く気なのか?
「……遅くなった! ……ん、どうしたカズマ。早く支度して来い。お前ならきっとギルドへ行くんだろう?」
そうして屋敷の二階から降りてきたダクネスが重装備に身を包み、そんな言葉を発した。
「おいお前ら、こいつを見習え! 長く過ごしたこの屋敷とこの街に、愛着は無いのか!ほらギルドに行くぞ!」
カズマがメンバーを引き連れてギルドに行こうとしたのだが、
「すまん、カズマ俺は少し遅れる。街の中を一通り見回ってからギルドに行くから」
「……お前、逃げる気か?」
カズマがジト目で俺を見ていたのだが、アクアとめぐみんはそれも仕方ないといった、ダクネスはどこか残念な表情をしていた。
「勘違いするな、逃げ遅れた人が居ないか見回るだけだ。ここまでパニックになってるとそんな人が必ず出るんだよ。子供とか老人とかな」
俺の言葉に全員がハッとなっていたが、ダクネスだけが、
「……ああ、すまないが頼む。さあ私たちはギルドへ行こう」
みんなと別れ、街を巡回していると……、
「ウウッ……ヒクッ……」
案の定、一人で泣きながら街を歩いている女の子を見つけた。
「お嬢ちゃん、どうしたのかな? お母さんとはぐれた?」
俺の言葉に女の子は泣きながら頷き、その子を抱き上げて街の住人が向かっていった方向へ行こうとしたところ、
「ユウさん、その子どうしたんですか?もしかして逃げ遅れて……」
「……ウィズ、見ての通り。この子の親御さんがいそうな所に向かってたんだ」
女の子を抱きかかえた俺を見つけたウィズと住人が逃げた方へ走っていたのだが、その途中で、俺より少し年上くらいで、何処と無く気品のようなものが漂っている男と女の子の母親らしき女性がこちらを見ていた。
やはり、女性のほうは母親だったらしく女の子を引き渡したら一緒に逃げて行った。男は俺達の方を向くと、
「感謝します。僕もあの方のお嬢さんを探していた所でして……」
「気にしないでください、困った時はお互い様ってヤツです。あなたも早く逃げてください」
「いえ、僕が逃げるのは街の住人全員が居なくなった後です。これでも領主の息子なので、この位はしないと」
……なんと!? 領主の息子って事は貴族なのか。領主はあまり言い噂を聞かないが、息子の方はまともそうだ。
「それよりも、あなた方は冒険者でしょう? 逃げ遅れた方々は僕に任せてギルドに向かってください」
領主の息子の言葉に従い俺とウィズは冒険者ギルドに向かった。ウィズも冒険者の資格を持っているらしく、何か力になれないかと馳せ参じたそうだ。そしてギルドに着くなり、
「店主さんだ」
「貧乏店主さんが来た!」
「店主さん、いつもあの店の夢でお世話になってます」
「店主さんが来た! 勝てる! これで勝てる!」
などと熱烈な歓声を上げていた。
元々、ウィズは高名なアークウィザードだったらしく、この街では有名人なのだそうだ。ウィズの店が赤字続きなのは、駆け出しの街では高価なマジックアイテムの需要が無いかららしい。ただし皆、美人店主のウィズを見に店を覗いているのだそうだ。だったら貧乏店主はやめてやれと思ってしまったが。
「おーい! みんなどんな話になった?」
俺が声を掛けると、パーティーメンバーの四人がこちらに来て作戦を説明した。
アークプリーストのアクアが結界の解除、そして丸裸になったデストロイヤーにめぐみんが爆裂魔法を撃ち込むという作戦らしい。
その作戦を聞いたウィズが、
「……爆裂魔法で、脚を破壊した方が良さそうですね。めぐみんさんと私で、左右に爆裂魔法を撃ち込むのは如何でしょう。脚さえどうにかしてしまえば、あとはどうにかなると思いますが……」
確かにウィズの言うとおりだ、だったら俺は作戦を確実に遂行できるように、
「なら俺はアクアと結界破壊をする。その後、どれだけ持つかは分からないけどデストロイヤーにバインドを使って動きを止める。爆裂魔法撃つなら手早く頼む」
最終的な作戦は、結界解除後に爆裂魔法で脚を攻撃。万が一破壊し尽せなかった場合は前衛職の冒険者各員にハンマー等を装備させ、破壊できなかった脚を攻撃し、これを破壊。破壊後には、万が一を考え、本体内に突入もできる様にロープつきの矢を配備し、アーチャーはこれを装備。身軽な人間は、要塞への突入準備を整えておく……となった。
デストロイヤー攻略のための準備を冒険者、街の住人総出で行っている中で街の正面のバリケード、その更にジッと立ちはだかるダクネスにカズマは説得を続けていた。
「おいダクネス、悪い事言わないから下がってろよ。お前の固さは知ってるが、流石に無理があるし、そこにいても役に立たないって。お前のどうしようもない趣味は置いておいて、俺と一緒に道の端っこに引っ込んでこう。な?」
「私の普段の行いのせいでそう思うのも仕方がない。……が、この非常時に、この私が自分の欲望にそこまで忠実な女だと思うか?」
普段と違う、決意に満ちた表情のダクネスではあったが、
「思うよ。当たり前じゃん」
「むしろお前好みのシュチュエーションだろ」
カズマと俺の容赦ないツッコミを受けていた。
一瞬静かになったダクネスではあったが、そのまま話を続け、
「今はまだ言えないが、私にはこの地の住人を守る義務がある。少なくとも私はそう思っている。だから……。無茶だと言われても、ここからは何があっても一歩も引かん」
ダクネスの言葉に引き下がろうとしたカズマではあったが、
「……ダクネス、無駄なことはやめろ。カズマの言うとおり、ここにいたって何にもならない」
「……無駄とは、どういう意味だ……!」
俺の発言にカズマは驚き、ダクネスは、怒りを露にし俺をじっと見ていた。
「……ユウ、お前いくらなんでも言いすぎだ!」
「言葉通りの意味だ。お前がここに居たってデストロイヤーは止められない。それよりも避難民の誘導したり、さっき俺がやってたみたいに逃げ遅れた人でも探したらいい。別に盾になるだけが”守る”って事じゃない。最悪街は破壊しつくされるかも知れないけど、また作り直せる。けど人の命はそうじゃない……」
カズマの制止を無視し、俺自身もダクネスを真っ直ぐ見据えその言葉を発した。ダクネスは、
「……お前はこんな時でも容赦が無いのだな。確かに言うとおりかもしれんが……、私は……」
俯き、悔しそうな顔をしたダクネスだったが、それでもここを離れる気は無いようだ。思わず溜息をついていまい、
「……ハァ、ならもう好きにしろよ。デストロイヤー止められなかったら、ふん縛って無理やり引きずって行くから。戻ろうぜカズマ」
「……すまない。わがままを聞いてくれて、ありがとう」
少し申し訳なさそうな声で、ダクネスが礼を言っていた。
カズマとデストロイヤー迎撃地点へ向かっている途中、
「……カズマ、絶対にデストロイヤー止めるぞ。もしかしたらアクアの出番が無いかもしれないけど、全力でやる! 終ったら打ち上げで頭まで固いダクネスに酢の一気飲みでもさせる! そうすれば少しは頭も柔らかくなるだろ。それでもってサシで言い負かしてやんねーと気が済まない!!」
カズマは俺の言葉に驚いたような、面白いものを見たような顔で……、
「ユウ、お前ってさ……、ツンデレか?」
「何でだよ! どこでそんなのが出るんだよ!!」
カズマとしょうもない言い合いをしながら、迎撃地点で待っているめぐみんのところへ到着した。
「説得は失敗した。あの頭の固い変態を守るためにも、確実に成功させるぞ」
「そ、そそ、そうですか……! や、やらなきゃ! わ、わわ私が、絶対やらなきゃ……!」
傍目から見ても分かるほど、めぐみんが緊張していた。俺はカズマにそっと耳打ちをしてアクアの方へ向かい、
「アクア、初撃は俺がいく。もし結界が壊せなかったら追撃を頼む」
「ええ、分かったわ!けどなるべく結界にダメージは与えてね。そうすればなんとかできると思うから」
『冒険者の皆さん、そろそろ機動要塞デストロイヤーが見えてきます! 街の住民の皆さんは、直ちに街の外に遠く離れていて下さい! それでは、冒険者の各員は、戦闘準備をお願いします!』
魔法で拡大されたギルド職員の声が、広い平原へ響きわたり、大地からは微かな振動を感じた。
そして、あの時の偵察クエストで見た蜘蛛の要塞、デストロイヤーが姿を現した。デストロイヤーは数々の罠を突破し轟音を響かせてアクセルへ突撃してきた。
俺はというと現在空を飛び、丁度ダクネスの上空辺りにいた。これは魔法で街を傷つけないようにする為の措置でもある。ついでに作戦が失敗した場合、ダクネスを即座に拾える位置なのだ。そして、この作戦の指揮を任されているカズマから声が拡声器で響き渡った。
「ユウ! 今だ!」
その声を聞いて、自分の相棒へと語りかける。
「ファルシオン、フルドライブ……いけるな?」
『All Right. Calibur Form』
そうしてカートリッジを消費し、デバイスがフルドライブ形態へと変形する。この世界でフルドライブを使うのは初めてであり、パーティーメンバーですら見たことの無いデバイスの姿に、後方のカズマが驚いていた。
「……なんだアレ、……剣!?……槍か!?」
剣のようにも突撃槍のようにも見えるデバイスは、魔力で形成した身の丈ほどの刀身に炎熱を纏い、結界破壊のための魔法を発動させた。
「切り裂け!
『Burst Calibur』
横一文字の炎熱を纏ったデストロイヤーの全幅並の巨大な斬撃を飛ばす。その斬撃は結界、そして衝撃で対空中モンスター用の自立型ゴーレムをすべて破壊していた。
「なんなんだあいつは……、本当にベルディアの時、全力じゃなかったのか……!?」
「あ、ああ、あんな魔法どうやって……!? ライトオブセイバーよりずっと……」
「何よ……アレ!? 一撃で完全に破壊なんて……!? 私でもないのに……!?」
迎撃地点のカズマ、めぐみん、アクアからの驚嘆の声が上がっていたようだった。
即座にバインドで拘束を試みるが、長くは持ちそうも無かった。
「早く! 爆裂魔法撃ってくれ! 長くは持たない……」
拡声器でカズマへと声を届け、爆裂魔法を撃つように促す。
「ウィズ、頼む! そちら側の脚を吹っ飛ばしてくれ!」
カズマは、ウィズへと指示を出し、続けて緊張で震えているめぐみんに。
「おい、ユウからの伝言だ。”お前がやらないんなら俺がおいしいとこ全部持っていく。けどそうなったら、お前の爆裂魔法は肝心な時に役に立たないヘッポコって呼んでやる。”……だとさ」
「な、なにおうっ!? 我が名をコケにするよりも、一番私に言ってはいけないことを口にしましたね!! ええ、やってやりますとも! さっきのユウの魔法に負けるわけにはいきません!!!」
今までの緊張はどこへやら、バッっと立ち上がっためぐみんが、朗々と、力強く詠唱を……!
そうしてウィズ、めぐみんの爆裂魔法が同時にデストロイヤーへと放たれる。
「「『エクスプロージョン』ッ!!!」」
そうして放たれたこの世界最強の魔法は、機動要塞の脚を一つ残らず粉砕していた!
キャリバーフォーム(Calibur Form)
ファルシオンのフルドライブ形態、名前は某騎士王様の剣から。キャリバーとは言うものの外見は突撃槍を平らにして刃を付けたような感じで、大きさは全長で170cm程度です。流石にバルディッシュザンバーよりは短いです。
バーストキャリバー(Burst Calibur)
結界破壊用の魔法。炎熱を纏った巨大な斬撃を飛ばして攻撃。着弾点に爆発を起こし追加ダメージを与えることができます。
あとウィズから返してもらったカートリッジに魔力を補充したのは紅魔の里のひょいざぶろーです。管理局製のカートリッジなので、今の所そこまで酷いことにはなりません。