この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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この破壊者へ星光の爆焔を

突然脚を失った機動要塞が、とんでもない地響き、轟音と共に、平原のど真ん中に底部をぶつけ、そのまま慣性の法則に従って街の方へと地を滑る。

その巨体はバリケードに届くことなく、最前線で立ち塞がるダクネスの、ほんの目と鼻の先で動きを止めた。

なにはともあれ、もうダクネスが危険に晒されることも無いだろうと思い、迎撃地点のカズマ達の方へ向かった。

 

「ぐぬぬ……。む、無念です。流石はリッチー、私では、ウィズの爆裂魔法に勝つにはまだレベルが足りないようです……」

 

「お疲れさん。あれで悔しがれるって、めぐみんも相当な負けず嫌いだな……」

 

爆裂魔法で魔力を使い果しためぐみんに声を掛けると、

 

「ユウ!何ですかそれは!? 剣なのですか!? それとも槍なのですか!!? かっこ良すぎるじゃないですか!!!」

 

「これはめぐみん風に言うと、真の力を解放した状態なんだ」

 

魔力を使い果たした真っ青な顔にもかかわらず、フルドライブのデバイスを見て興奮しためぐみんが矢継ぎばやに質問してきた。

 

「何て……、何て……! おいしい設定ですか!? ……羨ましすぎます!!!」

 

「そんなこと言うなって。一番おいしいところはちゃんと譲ったろ?お前、偵察の時にデストロイヤー壊すって言ってたからな。もっとも、めぐみんがやらなかったら、俺が脚ぶった切ってたけど」

 

「……覚えていたのですか。あの後お説教だったので、忘れられていると思っていました」

 

俺とめぐみんのやり取りを見ていたカズマだったが、

 

「そんなのできるなら何で最初からやらないんだよ……?」

 

「この状態は俺自身にも杖にも相当な負担が掛かってな……。なんせリミッター外して全力でぶん回してる様なもんだし。まあ、爆裂魔法ほどじゃないけど」

 

そうして雑談していると、

 

「やったわ! 何よ、機動要塞デストロイヤーなんて大袈裟な名前しておいて、期待外れもいいとこだわ。さあ、帰って宴会といきましょうか! なんたって一国を亡ぼす原因になった賞金首よ、報酬は、一体お幾らかしらね!!」

 

アクアがもうお約束といわんばかりのフラグを立てやがりました。

 

「なあ、カズマ嫌な予感がする……」

 

「奇遇だな……、俺もだ」

 

俺達のところへ近づいてきたウィズだったが、

 

「……? な、なんでしょうか、この地響きは……」

 

大地が震えるようなこの振動は明らかにデストロイヤーを震源としていた。正門前の冒険者達が不安げにその巨体を見上げる中。

 

『この機体は、機動を停止致しました。この機体は、機動を停止致しました。排熱、及び機動エネルギーの消費ができなくなっています。搭乗員は速やかに、この機体から離れ、避難してください。この機体は……』

 

排熱とエネルギー消費ができなくなるってことは、……つまりこのままいくと大爆発!? 動けば国を滅ぼし、止まれば爆発ってタチ悪すぎだろ!

 

アナウンスに冒険者全員が慌てふためく中、誰かがポツリと呟いた。

 

「……やるぞ、俺は」

 

「……俺も。もうレベル30も超えているのに、なぜ未だにこの駆け出しの街にいるのかを思い出した」

 

「むしろ今まで安くお世話になって来た分、ここで恩返しできなきゃ終わってるだろ!」

 

何を安く世話になったかは知らないが、こいつらはやる気のようだ。

 

『機動要塞デストロイヤーに、乗り込む奴は手を挙げろー!!』

 

カズマが拡声器を手に大声を張り上げた。

 

「なんだ、ユウお前も行くのか? お前は何か算段考えるヤツだと思ってたけど」

 

「俺じゃこの街全体を大爆発から守る結界は造れない。だったらやることは一つだろ!」

 

ダクネスは鎧が重過ぎて上れない、めぐみんは爆裂後で動けない。よって俺、カズマ、アクアがデストロイヤーに乗り込むことになった。

 

「ゴーレムを囲め囲め! 大勢でロープを使って引きずり倒せ! 倒れた所をハンマーで叩けっ!」

 

それはもうどっちが侵略者か分からない光景だった。俺はというとデストロイヤー内部を進みながら、『エリアサーチ』を行い動力部の場所を探してしたのだが、

 

「カズマ、みんなを下がらせてくれ! 俺が道を作る!!」

 

「……おい、何する気だ……!?」

 

「さっき言ったろ!動力部まで、まっすぐ突っ切る!!! ファルシオン、ランスフレーム起動!」

 

『A.C.S Stand by. Barrier Jacket Armor Form』

 

A.C.S――瞬間突撃システムでゴーレムもろとも内部の壁を破り、道を作る。デバイス本体は魔力刃を圧縮し更に鋭くした上で炎熱を纏い、突撃に耐えられるように胸部、両手足にそれぞれ堅牢製を重視した金属のような胸当て、篭手、すね当てをバリアジャケットに追加し起動させる。

 

『Ignition』

 

デバイスの合図と共に猛スピードでゴーレムごと壁を破っていく。魔力の奔流と炎熱によって巻き上がる気流。……その光景を見ていたカズマとアクアはというと、

 

「熱っ……!? 今度は何だ!」

 

「何よアレ……!?何なのよ!! ほとんどチートじゃない!?」

 

そしてA.C.Sを起動させた俺はというと……。

 

「ひゃあああああああああああ!!!」

 

想定外の加速に叫び声を上げていた。

 

ヤバッ……、何だこれ!? このまま進むと動力部突きやぶっちまう。どうにかして止まらないと……!

 

「『ホールディングネット』ッ!!」

 

網状の魔力を張って自身を絡めとり、どうにか減速、停止を成功させた。

 

「……し、しし、死ぬかと思った。危うく動力部ブチ抜くところだった……。何だったんだ……、あのおかしな加速……!?」

 

『どうやら、先ほどウィズさんから返して頂いたカートリッジが原因のようです。通常の倍以上の魔力が入っていたようですが』

 

俺の疑問にデバイスが答えを返す。

 

それって、ウィズが懇意にしてる魔道具職人に渡したヤツだよな……!? どうやったらカートリッジに倍以上も魔力入れられるんだ……!? ありえないだろ……。

 

そうして、俺が壁に穴を開けて作った道から冒険者達が後を追ってきていた。その後、ある部屋に到着すると、寂しげに椅子に座り白骨化した人の骨があった。アクアが言うには未練のかけらも無いくらいすっきりと成仏しているらしい。

 

その後、アクアが机に埋もれた手記を見つけた。おそらく、座っている遺体が生前書いたものだろう。その手記をアクアが読み上げる。

 

「――国のお偉いさんがまた無茶言い出した。こんな予算で機動兵器を作れと言う。無茶だ。それを抗議しても聞く耳持たない」

 

……デストロイヤーを作った経緯か。低予算で作ったから、どこかに欠陥があって暴走したのか?

 

「――設計図の期限が今日までだ。どうしよう、まだ白紙なんて言えない。悩んでいると突然紙の上に俺の嫌いな蜘蛛が出た。悲鳴を上げながら、手近なもので叩き潰してしまった。用紙の上に。もうこのまま出しちまえ」

 

「――設計図が予想外に好評だ。ドンドン計画が進んでる。どうしよう」

 

……おい、設計図それで通るのか? 提出する方もアレだが、受理するほうもおかしいだろ! それとも、外観のデザインだけでよかったのか?

 

「――動力源をどうこう言われたけど知るか。そんなの永遠に燃え続けるとか言われている、伝説級の超レア鉱石コロナタイトでも持って来いと言ってやった」

 

「――持ってきちゃった。どうしよう、本当に持ってきた。マジでどうしよう。これで動かなかったら死刑じゃないの」

 

……なんか話がおかしな方向に行き始めてるな。なんとなくこの後の展開が予想できそうな……。

 

「――現在只今暴走中。これ俺がやったと思われてる。畜生、国お偉いさんも国王も、みんなクソッタレだ! こんな国滅んじまえばいいのに」

 

「――国滅んだ。やべぇ、滅んじゃったよ! ヤバイ、何かスカッとした! 満足だ。俺、もう満足。よし決めた。ここで余生を暮らすとしよう。だって降りられないしな。止められないしな。これ作ったやつ絶対馬鹿だろ。……おっと!これ作った責任者、俺でした!」

 

……すごい開き直りっぷりだ。ここまで来ると尊敬するな……。というか、そもそも停止させる機能そのものがついていなかったんじゃないのか?この機動要塞。あのアナウンス聞いてるとそうとしか思えないんだが……。設計も欠陥、造った連中もどこかおかしい、こうなって当然じゃねえか!!

 

手記を聞き終わり、微妙な雰囲気の俺達ではあったが、コロナタイトがある中枢部へ移動した。大人数で行っても仕方ないので、ここには俺、カズマ、ウィズ、アクアしかいない。コロナタイトは鉄格子で囲まれていたが、それを一刀両断して近づく。

 

「ユウ、あなたね……。もう何でもありになってきてるわよ。本当にアークウィザード?」

 

「あっちにいたときは、ある意味なんでもありなモノを相手にしてる。この位できないとやってられないんだ」

 

アクアがもう呆れたような感想をもらしていたが、構わずコロナタイトに近づいた。

 

「取り合えず、コイツをどうにかしないとならないけど、熱すぎて触れないな……」

 

今更ながら、『氷結』変換の技能を修得していなかったことが悔やまれる。デストロイヤーの結界破壊からここに来るまで、魔力を使いすぎて封印もできない。手詰まりかと思ったのだが……、

 

「もしかしたら、何とかできるかもしれません。カズマさん、ユウさん、吸わせてもらえませんか?」

 

ウィズが何かを思いついたらしく、俺達に近寄ってきた。カズマはというと、

 

「喜んで」

 

……カズマ、お前が何を考えているかなんとなく分かるけど、そんなおいしい話じゃないぞ、……多分。

 

「カズマさん、すいません。ドレインタッチー!」

 

……流石は本家リッチーの『ドレインタッチ』。見る見るカズマが干物のようになっていく。俺も吸われはしたが、カズマほど酷いことにはならず、普通に走れるくらいの体力は残っていた。デストロイヤー警報発令前にウィズにカートリッジの魔力補充を頼んでいたので、カズマだけでは足りなかったらしい。

 

「これでテレポートの魔法が使えます。……でも問題はどこに送るかなのですが」

 

ウィズの話によるとテレポートの登録先はアクセル、王都、観光地にもなっているダンジョンで、後の方法は何処に飛ぶか分からないランダムテレポートのみらしい。

 

「カズマ、お前が決めろ。俺だとテレポートの移動先が、この場所になったっておかしくない。俺はそのくらい運が悪い」

 

俺はカズマの方を向き、判断を委ねることにした。自分の運の悪さを思い出して少し落ち込んでしまったが。

 

「大丈夫だ! 無人の場所に送られる可能性のほうがずっと確率は高いはずだ!大丈夫、全責任は俺が取る」

 

カズマの言葉にウィズが頷き、声高に魔法を唱えた。

 

「『テレポート』ーッ!」

 

 

 

 

……どうやら、コロナタイトは近くには飛ばされなかったらしく、爆発音は聞えてこなかった。そしてみんなの所に戻ったのだが……、

 

「まだ、終っていない。私の、強敵を嗅ぎつける嗅覚が、香ばしい危険の香りを嗅ぎとっている」

 

そんなダクネスの言葉に呼応するように、デストロイヤーが振動音と共に震えだした。どうやら、内部に溜まっていた熱が外に漏れ出そうとしているらしい。

……動力部抜いても被害があるとか、どれだけの欠陥要塞だよコイツ!

デストロイヤー前で騒いでいたカズマ、アクア、ウィズではあったが、ウィズが爆裂魔法で爆発を相殺しようとするとアクアから魔力を貰わなければならないが、リッチーのウィズがアクアの魔力を受取ると浄化されてしまうらしい。……だったら。

 

「俺がやる! 一発くらいならまだどうにかなる」

 

「真打ち登場」

 

俺とめぐみんが同時に名乗りを挙げ、魔法でデストロイヤーを消し飛ばそうとしたのだが……、

 

「めぐみん、下がってろ。ここは俺がやった方が成功する確率は高い」

 

「ユウこそ下がっていてください。我が爆裂魔法で粉々に吹き飛ばしてくれます! 私は爆裂魔法に関しては誰にも負けたくは無いのです!!」

 

俺とめぐみんが顔を見合わせ、お互いを止めようとしているが、カズマが慌てた声で、

 

「どっちでもいいから早くしろ! もう時間が無いんだからな!!」

 

――デストロイヤー、いつか必ず我が爆裂魔法で破壊してみせます! これは挨拶代わりです。受取りなさい!!

 

偵察の時にめぐみんがデストロイヤーに言い放った言葉を思い出す。……ダクネスの時といい、やっぱり俺は甘い。めぐみんの目を見て、

 

「……お前がやれ、めぐみん。それとウィズ、ドレインタッチってのは魔力の塊から直接吸うことはできるか?」

 

「……ええ、人体を通して吸うより効率は良くなりますが……」

 

「だったら好都合だ。魔力は俺が集める。カズマは集まった魔力をめぐみんに送ってくれ。それとアクア、終ったらめぐみんを看てやってくれ。今までに経験したことの無い出力になるはずだから、体に相当負担が掛かると思う」

 

俺の言葉に一同が驚いた顔をしていた。アクアは頷き、カズマはみんなの様子を察して、

 

「魔力を集めるってどうするんだ!?」

 

「こうするんだよ! ……魔力の集束と維持だけでいい。大丈夫だな?」

 

デバイスへと語りかけ、魔法を発動させた。

 

『Starlight Breaker』

 

大気中に散ばった魔力が流星の様に俺の前へと集まり、巨大な球の形を作り出す。集束砲撃スターライトブレイカー、なのはから教わった自身、最大威力の魔法でもある。

 

「これって、一度使って散ばった魔力をまた集めてるの!? こんなのどうやって……」

 

「しかもユウさんの分だけじゃありません。私やめぐみんさんが爆裂魔法で使った魔力まで……」

 

アクア、ウィズが集まった魔力を見て驚愕していた。おそらくこれを撃てば、爆裂魔法と同等かそれ以上の威力が出ることが分かったのだろう。そうしてカズマが魔力の塊に触れ、めぐみんへと魔力を送り込む。めぐみんは俺とカズマに対して、

 

「感謝します! これだけの魔力があれば過去最大級の爆裂魔法が放てそうです! そしてユウ、見ていて下さい! 二度とヘッポコなんて言わせません! 行きます!我が究極の破壊魔法!」

 

そうしてめぐみんは詠唱を終えると、デストロイヤーに向けて張り裂けんばかりの声で魔法を唱えた。

 

「『エクスプロージョン』―――ッッッ!」

 

 

 

 

 

デストロイヤー迎撃戦から数日後、ギルド内は異様な熱気に包まれていた。もちろんデストロイヤー討伐の打ち上げでだ。

 

「そういえば今回ダクネスは街の前でただ立ってただけねー。私はめぐみんの治療で大活躍だったけど。ユウだって結界は破壊するわ、デストロイヤーの壁ブチ破って道を作るわ、魔力を集めるわで凄かったけど」

 

……そういえば今回アクアがやった事といえば、二度目の爆裂魔法の後にめぐみんを看たくらいだよな?それで大活躍って言うのもどうかと思う。あとA.C.Sで動力部突き破るところだったのは黙っておこう。

 

「私はもちろん、日に二発も爆裂魔法を撃って大活躍でしたからね。しかも二発目はデストロイヤーを粉砕してやりましたから」

 

めぐみんは二度目の爆裂魔法の後、すぐにアクアに看てもらったが特に異常は無いらしい。一応体力回復と目に見えないダメージがあるかもという事で、治療もしてもらった。

 

「カズマさんだって大活躍だったじゃないですか!見事な指揮を執って、私に魔力を供給してくれて……」

 

いつの間にか、そこにいたウィズがカズマの功績について語っていると、

 

「……で、街を守るって駄々こねてた、お前の活躍は?」

 

「こっ、こんなっ! 新感覚はっ! ……わあああああーっ!!」

 

カズマにからかわれていたダクネスに俺はあるものが入ったジョッキを手渡す。

 

「ダクネス、……これでも飲んで少しは頭柔らかくしろ。俺のおごりだ」

 

「……なんだこれは? 少しツンとした臭いがするのだが……」

 

「お酢、一気にいけ!」

 

「言葉攻めの上に罰ゲームだと!? どこまで容赦が無いのだ!お前は!!!」

 

そう言いながらも、本当にお酢を一気飲みしたダクネスだったが、それはそれで気に入ってしまったらしく、俺達の責めを堪能していたようだった。

 




A.C.S
なのはやスバルも使ってた瞬間突撃システムですが、彼女達とは違い防御を破った後で砲撃ではなく、炎熱を纏った魔力刃でそのまま突き抜く戦法になります。彼がA.C.Sを使う場合、バリアジャケットに装甲を追加して突撃に耐えられるようにしています。
どちらかと言えばA.C.Sドライバーになってます。

SLBを使っていますが、本家とまともに撃ち合えば当たり前ですが負けます。

一応3巻分に行く前に1〜2話挟もうと思っているので、セナの出番はまだ先です。
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