この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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裁判とバニル編
苦労人同士の邂逅


「冒険者、サトウカズマ! アサマユウ! 貴様らには現在、国家転覆罪の容疑がかけられている! 自分と共に来てもらおうか!」

 

はやても帰り、落ち着いた生活を取り戻したと思いきや、突然冒険者ギルドへ現れた黒髪のロングの女性に犯罪者呼ばわりさせてしまった。とりあえず、事情を聞くことにしたのだが……、

 

「自分は、王国検察官のセナ。貴様らには現在、テロリストもしくは、魔王軍の手の者ではないかとの疑いが掛けられている」

 

セナの言葉にメンバー全員が慌てふためいていたが、容疑はデストロイヤーの動力源のコロナタイトがランダムテレポートで、このあたりを治める領主の屋敷に飛ばされてしまい、その屋敷が吹っ飛ばされてしまったということだった。幸いにも死傷者は出ていないらしい。……そこら辺は、やはりカズマの幸運か。

 

「何かと思えば、カズマもユウもデストロイヤ―戦の功労者ですよ? 確かにコロナタイトの転送を指示したのはカズマですが、あれだって緊急の指示で仕方なくやったことです」

 

めぐみんの言葉にギルド内からそうだそうだとの声も上がったが、国家転覆罪は主犯以外にも適用されるとのセナの言葉に静まり返ってしまった。結局、カズマはアクアとめぐみんの手のひら返しによって二人の騎士にガッチリと取り押さえられ、

 

「そういえば、なぜユウまで容疑が掛けられているのですか? コロナタイトの転送を指示したのは、カズマだけのはずです」

 

「その男は突然現れ、見たことのない魔法を使い、空まで飛べるらしいではないか。その様な者がまともな冒険者ではないと……、具体的には魔王の手下ではないかという疑いが掛けられている」

 

めぐみんの疑問にセナが答え、ギルド内がざわつく。

……なるほど、アークウィザードのスキルで冒険者をしてれば、こんな事にはならなかったんだろうが、あっちの魔法を使ってたのが裏目に出たな。

 

「一応聞くけど、大人しく付いて行かなかったらどうするつもりだ?俺の噂を知ってるんなら、抵抗されたらマズイってのは分かってると思うけど」

 

「その時は、サトウカズマのパーティーメンバー全員を拘束しろとの命令だ。なので、大人しく私達と共に来ていただきたい」

 

何気にえげつない手を使うな。まあ、それだけ危険な相手だと思われているんだろうが。

 

「……わかった。同行するから、その前にみんなと一言話させてくれ」

 

(ファルシオン、今までの記録は保存してるな?)

 

『はい、マスター。これからの指示を』

 

(お前は、めぐみんをゲスト登録して一部の機能――記録関係を引き出せるようにしろ)

 

念話でデバイスに指示を出し、みんなのところに近づく。そしてセナから見えないように、待機状態のデバイスをめぐみんに渡すと、

 

「ユウ、これは……」

 

思わず、声を出してしまいそうになっためぐみんではあったが、俺の目を見て何のことだか理解したようだった。流石は知力が高いだけはある。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくる。みんなは大人しく待っててくれ」

 

そう言って、カズマと一緒に警察署まで連行されて行った。セナは俺達を牢屋まで案内し、

 

「さあ、入るがいい。裁判が終わるまでは、ここが貴様らの部屋だ」

 

カズマは、普通の牢屋ではあったが、俺はというと鉄格子はおそらく特別製の金属、牢屋の中には対魔法用の結界が張られており、どう考えても普通の人間扱いはされていないようだった。この程度の結界なら、破ろうと思えば破れるけど。

 

「……えっと、ここまでされるのは正直傷付くんですが……、逃げたりしないんで、できれば普通の牢屋にしてくれませんか?」

 

「万が一を考えた場合の措置だ。詳しい話は明日聞く。今日はここでゆっくり過ごすがいい」

 

セナはそう言うと俺の前から立ち去っていった。

 

……まあ、ジタバタしたって始まらない。今日はもう寝ようと思っていたら、

 

「……ユウ、この結界何なのさ? キミ、モンスターか何かと間違われてるの?」

 

「クリスか。盗賊が警察署に盗みに入るなんて笑えないぞ。何しに来たんだ?」

 

「ダクネスからのお願いで、キミの脱獄の手助けだよ。アクアさんはカズマ君の所に行ってるはずだから。これから、めぐみんが街の外で爆裂魔法を撃って、警察官が出払うはずだよ」

 

クリスは盗賊だけあって、ここに忍び込むのもお手の物らしい。それよりも、あいつらは何やってるんだろう? デバイス預けたのも、俺がここを出るまでに有利な証拠をまとめておいて欲しかったんだが……、

 

「クリス、そんなことすれば、こっちが不利にしかならないから、もう帰れって。俺ならやろうと思えばここ抜け出すくらいわけないからな。けど明日また来るんなら、昼に差し入れで法律関係の本をできるだけとテレポートについて詳しく書いてる本を持ってきてくれ。それとめぐみん連れて来れるんなら頼む。……まあ、明日の取調べでヘマしたら……、だけど」

 

それを聞いたクリスは任せといて…、と言って、潜伏スキルを使ってこの場から去った。よし、明日に備えて寝よう。

 

 

 

 

次の日、朝早く起きて朝食をとった後セナが現れて、取調室らしき所に連れて行かれ……、

 

「まずは、貴様の言い分を聞いてやる。その上で、裁判にするかどうかが決まる。よく考えて発言しろよ?」

 

机の上に置かれた小さいベルは、嘘を看破する魔道具で部屋に掛けられている魔法と連動して、嘘が含まれていれば鳴る仕組みらしい。そうしてセナから、

 

「まず、出身地と、冒険者になる前は何をしていたか聞こうか」

 

「出身は日本の海鳴市、それからミッドチルダって所の時空管理局で働いていました」

 

別に経歴査証はしていないので、ベルは鳴らない。

 

「ニホン、ミッドチルダ……、どれも聞いた事のない地名だがまあいい。ジクウカンリキョクというのは何だ?」

 

「簡単に言うと、警察と軍隊と裁判所が一緒になったような組織ですね。そこで、今のあなたのような仕事をしていました」

 

セナは怪訝な表情をしていたが、ベルは鳴っていないのでそれで納得したようだ。自分の知らない国からきた位の意味で捉えたらしい。

 

「では、次に冒険者になった動機を聞こうか」

 

「任務中に危険な魔法具の封印を行おうとしたら、ここで言うところのランダムテレポートに巻き込まれてしまって、転送されてしまいました。俺にとっても、この場所はどんな場所か分からずに、身分の証明をできるものもなかったので、冒険者として生活費を稼ぎつつ同僚が迎えに来るのを待っていました」

 

またしても、ベルは鳴らないので、セナから少し動揺が見られた。本当に魔王軍の手先だとでも思われていたんだろうか。……確かにそれだけ特異なことをしてしまったからな。

 

「ええとですね。空を飛ぶのも俺のいたところじゃ珍しくはないし、魔法もみんな似たようなのを使ってます。魔王軍の手先ってのは絶対にないので安心してください」

 

当然ながらベルは鳴らないので、少し安心したようにセナがため息をつき、

 

「どうやら、あなたに裁判は必要ないようです。あなたとサトウカズマは悪い噂が多いもので、……申し訳ありませんでした」

 

セナは深々と頭を下げ、今までの態度が嘘のように丁寧に接してきた。

 

「……俺の悪い噂はなんとなく想像付きますが、愚痴っぽくなりますけど一応説明していいですか?」

 

そう言って、ここに飛ばされた後の……、特に噂の発生原になっている事柄について説明すると……、

 

「……あ、あなたも大変でしたね。よく耐えていたものです……。弁護が得意な方なら何人か紹介できますが……」

 

凄まじい同情の表情で、憐れむように俺を見るセナが、そんな事を言ってきたのだが、

 

「それには及びませんよ、何とか頑張ってみますから。しかし、セナさんもお疲れ様です。公務員って周りが言うほど楽な職業じゃないですから」

 

「分かりますか! 給料は安定してるといっても、変な人の相手だってしなきゃいけないし、ここに赴任する前はアルカンレティアで、とてつもない変態の相手をしていたんですよ!!」

 

「そういうの分かります。俺も同僚が迎えに来たと思ったら、いきなり辞令が出て、ここに留まることになりましたし、なんだかんだで大変なんですよね!」

 

……なんかこの人、俺と同じものを感じる。もしかしたら、相当な苦労人なんだろうか……。容疑者と検察官の立場ではあるが、何故か友情のようなものが芽生えた気がする。セナから最後に質問があり、

 

「では、念のためもう一度聞きますが、あなたは本当に魔王軍の関係者ではないのですね?魔王の幹部と交流があるだとか、そんな事は……」

 

……ウィズのことなんて言おう? まあ、ここはウィズは伏せて話すとするか。

 

「当然、魔王軍の関係者ではありませんよ。ただ、魔王の幹部の交流に関しては、デュラハンに仲間の呪いと解いて欲しければ城に来いとも言われましたし、戦う前にお互い名乗ったりしたので、交流があると言えばあるになるかもしれません」

 

セナはさっきの雑談で、色々話した上でベルが鳴らなかったので、身の上話が本当だと信じている。この話だって嘘は言っていないので、ベルは鳴っていない。

 

「……分かりました。デュラハンに関しては、あなた達が倒していますし問題はありません。容疑者として扱ったこと、本当に申し訳ありませんでした」

 

立ち上がり、再度深々と頭を下げたセナに、

 

「そういえば、カズマの取調べはどうなったんですか? できれば一度面会したいんですが」

 

「サトウカズマの取調べはこれからです。あちらは、まだ寝ていましたので、あなたから取調べを開始しました。それと面会はご遠慮願います。今の取調べ内容を教えられても困りますので」

 

確かに正論といえば正論だ。しかし、意外とカズマは神経が太いんだろうか? 普通、牢屋に入れられたら動揺して眠れなくなるもんだけど。あとは、カズマもこれをクリアしてくれれば二人とも無罪放免だ。一応、裁判になった場合の事も考えておかないと。

 

容疑が晴れて、警察署から外に出た時、

 

「ユウ、めぐみん連れてきたけど……、大丈夫だったみたいだね」

 

「警察署を堂々と出たということは、無罪確定ですか。……カズマは?」

 

クリスとめぐみんが大量の本を持って警察署の前まで来ていたのだが、俺はめぐみんの頬を引張り、

 

「ひふ、ひきはり、はひふぉふるほへふは!?(ユウ、いきなり、何をするのですか!?)」

 

「それはこっちの台詞だ。せっかくデバイス預けたのに何やってんだよ? 何で脱獄の計画なんてしてんだ。アイツを預けた意味は分かってただろ? それとカズマの取調べはこれから。何事もなければ、それでいいけど……」

 

「……分かっていましたとも、ええ、分かっていました。しかしですよ! 不当な理由で捕らえられた仲間を救い出す……、こんなに燃えるシュチュエーションで、私が何もしないわけはないでしょう!!」

 

めぐみんめ、開き直りやがった。まあ出てこれたから、この話はまた後だ。

 

「……それで、どこら辺までまとめた?」

 

「デストロイヤー内部に入ってから、コロナタイトをテレポートさせるまでの行動は一通り文章でまとめました。アクアとウィズにも協力してもらって、詳細に。ファルシオンの魔道カメラの様な映像も役立ちました」

 

……あの時、ここまで意思疎通できてて、何で脱獄なんて計画したんだか。

 

「うんとね、今回被害にあった領主は、陰湿で執念深いから権力で事実を捻じ曲げてても殺されるって、ダクネスが……」

 

俺の考えを見透かしたようなクリスが、領主について説明をしてきた。

 

「だったら、脱獄なんてのは裁判で死刑判決が出た後でいい。どうせその場で死刑執行にはならないんだし。それまでは、ルールに従って行動する。そういった行動は、あくまで最終手段だからな」

 

そうして、二人を納得させてカズマを待っていたのだが、いつまで経っても警察署から出てくる気配がないので、署内に入り事情を聞くと、

 

「サトウカズマは魔王の幹部との関係について嘘の証言がありましたので、引き続きこちらで拘留させてもらいます」

 

セナからカズマの現状について聞かされた後、抗議はしたのだが受け入れられずに、結局屋敷に戻ることになった。その夜、

 

「じゃあ、今夜もやるわよ! 幸いユウも帰ってきたし、カズマを助けに行くわよ!!」

 

「俺はパス。色々やんなきゃならないことがあるから」

 

「明日、裁判なんだから今日中にどうにかしないと、カズマが殺されちゃうわよ!」

 

アクアはカズマを助けに行く気満々らしい。とはいっても、昨日連れ帰れなかった時点で何か不手際があったんだろうが。そして、俺以外は屋敷にいなくなり、アクアは踏み台を持ち、何故かめぐみんとダクネスは覆面をして出て行った。

 

屋敷にいるのは俺一人になったので、クリスに持ってきてもらった本で、同一事例の判例や、ランダムテレポート転送先のデータ、めぐみんにまとめてもらったデストロイヤー内部での行動を頭に叩き込んでいた。そうしている内に、アクア達が帰宅し、

 

「今日も駄目だったわ……。こうなったら明日の裁判で無罪を勝ち取るわよ!」

 

アクア達は明日の裁判に備えて、作戦会議をしだした。……なぜか、俺の部屋で三人して後ろでああでもないこうでもないと話し合っている。……少し静かにして欲しい。

 

「……といった感じでいこうと思うの!」

 

「いえ、それでは甘いと思います。ここはですね……」

 

「それでは、あの領主相手には手ぬるい。こうなった場合は……」

 

アクア、めぐみん、ダクネスが部屋から出て行こうとしないので、耳栓をつけて本を読みふけっていたら、いつの間にか朝になっていた。後ろの三人は、もうグッスリと眠っていたので起こしたところ、

 

「……私達のような美女が三人も同じ部屋にいて、何もなかったわけないわよね?」

 

「まさか、カズマのように知らず知らずのうちにセクハラを……」

 

「寝ている間に緊縛プレイを……」

 

アクア、めぐみん、ダクネスが目覚めた時の一言である。睡眠不足で気が立っていたので、

 

「テメエらぁ! いい加減にしろおおおおおお!!!」

 

屋敷内に俺の声が響き渡っていた。

 

 

 

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