この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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裁判と駄女神の加護(のろい)

さて、裁判である。この世界の裁判は至ってシンプルであり、検察官が証拠を集めて弁護人がそれ反論する。裁判官が疑わしいと判断すればそれで実刑。……これが厄介な所でもある。なので昨日一晩かけて法律関係の本を読み漁っていたのだが、

 

「そんなに緊張することはないですよ。大丈夫、私達が付いていますから」

 

「本当にどうしようもない事態になったら、この私が何とかしてやる」

 

「聖職者である私の言葉には物凄い説得力があるわよ! ドンと任せればいいと思うの!」

 

めぐみん、ダクネス、アクアの言葉に軽くため息を付いていると、カズマから、

 

「なあ、あいつら自信満々だけど、何かいい作戦でもあるのか?」

 

「……昨日、俺の部屋であーだこーだ言ってる内に眠ってただけだけど」

 

カズマが俺の言葉を聞くと、顔が青ざめていくのが分かった。

 

「……お前だけが頼りだ。どうにか頼む」

 

「……やるだけ、やってみる。駄目だったら……、骨は拾ってやるから安心しろ」

 

「縁起でもないこと言うな!!!」

 

カズマは大声を出して俺に抗議してきたが、本当にやるだけやってみるとしか言えないんだからしょうがない。

 

「これより、国家転覆罪に問われている被告人、サトウカズマの裁判を始める!告発人はアレクセイ・バーネス・アルタープ!」

 

裁判長の言葉に中年の太った男が立ち上がる。コイツが領主ね……。そういえば、領主の息子にも会ったんだよな。あの人も年を取ったらああなるのか?

アルタープはパーティーの女性陣にネットリトした視線を向けていた。それに気付いたアクア達は邪なものを感じるから目潰ししたいだの、薄着でうろついているダクネスを見るカズマと同じ目だのと言っていたが、俺はというと……、

 

「なあ、アイツ無性に撃ちたいんだけど……」

 

「頼むからやめろ。問題起こしそうにないお前まで何言ってんだ!!」

 

確かにここはカズマの言うとおりなんだけど、……何でだ? アクアじゃないが、なんとなく良くないものを感じる……。まるで、アンデッドを見たときのような……?

 

そうしていると、セナが起訴状を読み上げた。コロナタイトを領主の屋敷に送りつけて、消滅させたこと。また劇物等のランダムテレポートは法律で禁じられていること。領主の命を脅かしたということで、国家転覆罪を適用するといった内容だった。セナの発言を受けて、アクアが”異議あり”などと言っていたが、ただその台詞を言ってみたかっただけらしい。……正直アクアをぶん殴りたい。昨日の寝不足で気が立ってるな……。

 

「続いては、被告人と弁護人の発言を許可する」

 

俺とカズマはお互い目を見合わせ、まずはカズマから自身の主張――自分がアクセルの街に対してどれだけ貢献してきたかを多少オーバーな感じで発言し、自分が無罪であることを主張した。次は俺だ。

 

「まず、デストロイヤー内部に突入してからコロナタイト転送までの行動を読み上げます。もし、嘘偽りがあれば魔道具のベルが鳴りますので、注意していて下さい」

 

そうして、突入時の状況を細やかに説明した。事実しか話していないのでベルは鳴らない。

 

「……というように、コロナタイトの転送に関してはあくまで緊急時での処置であり、被害者の屋敷に故意に転送したという事実はありません。過去にランダムテレポートで術者、レベルや思考、周りの人間が及ぼす影響等があるかの実験――要は”ランダムテレポートは本当に『ランダム』か”、……を検証した記録がありましたが、何の影響もないと結果が出ています」

 

俺の発言を聞いていたアクアとめぐみんは、

 

「ユウが何言ってるかさっぱりなんですけど……」

 

「簡単に言うとランダムテレポートで領主を狙うのは不可能と言っています。しかし、そんな実験結果があったのですね」

 

さらに裁判長に対して発言を続ける。

 

「そして、この事例に関して過去の事例と照らし合わせると、13年前の発火、爆発の危険性のある鉱物が採取できる鉱山で、同じく爆発寸前の鉱物をランダムテレポートでの転送を行なっており、運悪く他の地域を収める領主の屋敷付近に転送れていますが、今回のように建物に被害があっただけであり、この時は緊急性が認められて国家転覆罪にはなっておりません。よって被告人の国家転覆罪は不当とし建造物等損壊罪が妥当ではありますが、あのままデストロイヤー内にコロナタイトがあった場合の人的、物的損害と比較すると、結果として損害は軽微となりましたので無罪、または執行猶予つきの懲役が妥当と考えます」

 

ダクネスは感心したような顔で、

 

「……その様な判決があったのか。どこまで調べた?」

 

「……同一事例は一通り。それで国家転覆罪なんか相当タチ悪くない限り出てない。まあホントは無罪ってのは大げさだけど、執行猶予を落としどころにしてくれればいいからな」

 

裁判長が俺の発言を聞き、少し考え込んだ後、

 

「被告人、弁護人の言い分はよくわかりました。では検察官。被告人に国家転覆罪が適用されるべきとの証拠の提出を」

 

そして、セナの合図で証人達が姿を現す。

 

「あははは……。なんか呼び出されちゃった……」

 

困ったような顔をしたクリスを筆頭にミツルギとそのパーティーなど、見知った人間がその場へ呼ばれていたようだった。

パンツスティールの件や魔剣を手に入れて売り払った経緯などで、カズマの人格を否定するような証言が出て疑いの眼差しが向けられる中、

 

「被告人は被害者に対して恨みを持っていました。このことから被告人は事故を装い、ランダムテレポートではなく通常のテレポートによる転送で被害者宅にコロナタイトを送りつけたのでは、と――」

 

「質問、よろしいですか?」

 

挙手をして発言する旨をあらわし、裁判長もそれを認めた。

 

「コロナタイトは被害者宅のどこに転送されたのですか?」

 

「爆発の中心点は屋敷内の厨房の辺りだが……」

 

「テレポートには事前の登録が必要でしょう? 屋敷の門周辺ならともかく、入ったこともない屋敷内に通常テレポートで転送は不可能です。これはランダムテレポートによるものだという証拠では?」

 

この発言でセナは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。そして続けてめぐみんから、

 

「さっきの証人といい、これはではただのこじ付けです。もっとマシな根拠を持ってきてください!」

 

ここぞとばかりに、攻める気である。しかしセナは一枚の紙を取り出し、ベルディア戦での洪水被害や共同墓地での結界作成による悪霊騒ぎ、めぐみんの爆裂魔法による日々の被害について説明していた。その他は……、

 

「そして、パーティーメンバーの一人……、具体的にはそちらの弁護人に対して不当な仕打ち、悪評などをばら撒き苦しめています! 昨日の取調べでの本人からの証言なので間違いはありません」

 

……すまん、みんな。昨日愚痴ったのがマズかった。

 

それらの事実を突きつけられた、アクアやめぐみんは耳を塞ぎソッポを向いていた。ダクネスだけは何のことだか分かっていないようだったが。

俺の愚痴の大部分はお前に対してだったんだよ、……ダクネス。

 

その後、カズマがアンデッドにしか使えないはずの、ドレインタッチを使えるのが魔王軍の関係者である理由と説明があった。カズマも耳を塞ぎそうになっていたが、

 

「……ちょっと待ってください。カズマのドレインタッチは他の()()()から教わったものですよ。その方の名前は伏せさせてもらいますけど。……驚かれるかも知れませんが、これは事実です。ベルも鳴っていないでしょう?」

 

俺の発言に対して、法廷全体がざわついていた。ウィズはリッチーで魔王軍の幹部であると同時に冒険者の資格も持っているのだから間違った事は言っていない。セナが信じられないといった顔で口を開いた。

 

「……それこそありえません! アンデッドのスキルを使える冒険者がいるはずはない! あるとしたら、それは魔王軍の関係者のみです!!」

 

「……本当にそうでしょうか? クラスとしての冒険者は、全てのスキルを修得可能です。例えば、どこかでアンデッドのスキルを見て修得した冒険者がいても不思議ではないでしょう。それとも検察側は全冒険者のスキル全てを把握しているのですか? 可能性がある以上、そちらの主張は説得力に欠けます」

 

俺の言葉に対してパーティーメンバーのみんなはというと、

 

「ちょっとみなさん! これってデュラハンを丸め込もうとした時と同じですわよ」

 

「……ええ、口車でペースを握ろうとする……。ユウは結構腹黒いのではないでしょうか?」

 

「ある程度事実を開示して信用を得る……。これは詐欺師の常套手段だ」

 

「……俺としてはありがたいけど、コイツは敵に回すととんでもないんだろうな……」

 

味方のはずのアクア、めぐみん、ダクネス、カズマから散々な評価を受けていた。……もうやめようかな。

 

「……ですが、署内での取調べの時、魔王軍の者との交流はないかと訪ねた際、交流などないと言った時に魔道具が嘘を感知しました。これこそが証拠ではないでしょうか!?」

 

セナの言葉にカズマは追いつめられた表情をしていたが、

 

「俺も取調べの時、同じ質問をされましたが、その際は”ある”と答えてベルはなりませんでした」

 

またしても法廷全体がざわつき、やっぱり魔王軍の手下なんじゃ……、などどいった声も聞えてきたが、

 

「デュラハンと最初に交戦した際、仲間の一人が呪いを受けて、呪いを解くために城に来いと言われました。見方によっては城に招かれたとも言えます。そして、その一週間後に戦ったので、俺は”ある”と答えてベルが鳴りませんでした。交流があるかなんて曖昧な言葉ではなく、質問をするなら魔王軍の手下か命令を受けてやった事かと聞くべきだったのでは?」

 

「「「「これはひどい!」」」」

 

俺の横にいたカズマ達は、小さな声で見事にハモっていた。

……俺もこじ付けだって分かってるよ。けどベルが証拠になる以上、こんなのだって十分ありだ。そしてカズマに大声で主張するように促すと、

 

「俺は魔王軍の関係者なんかじゃない! テロリストでもない! 借金を背負わさせたことは頭にきたし恨みにも思ったが、それでもコロナタイトをワザと送りつけたわけじゃない! 俺は魔王軍の手先でも何でもない!」

 

カズマの言葉にベルは鳴らず、領主もセナも悔しそうな顔をしていた。裁判長は魔道具による嘘の判別は曖昧で、検察側の主張は証拠として認めずカズマの嫌疑は不十分と言おうとした所で、

 

「そいつは、魔王軍の関係者であり魔王の手先だ。さあ、その男を死刑にするのだ」

 

領主は立ち上がり、カズマを死刑にするように言ってきたが、今度はセナが、

 

「今回の事例では怪我人も死者もなく、流石に死刑を求刑するほどのことでは……」

 

その言葉を聞いた領主はセナをじっと見つめると、

 

「……いえ、そうですね。確かに死刑が妥当だと思われます……ね?」

 

「おい! ちょっと待て! 何でいきなり主張を変えた、検察官殿?」

 

「そうです、何ですか今のは! 検察官がコロコロ言う事を変えてどうするのですか!」

 

俺とめぐみんの言葉にセナは困惑している様子だったが、領主は今度は俺の方を向いて、

 

「その男は、ワシの屋敷を爆破した重罪人だ。死刑にするべきだろう?」

 

「そんなわけないでしょう。死傷者が出ていない事故ですよ? カズマはセクハラするし、言動には色々問題はあるけど」

 

俺の言葉に驚いた領主ではあったが、アクアが続けて発言した。

 

「今、そっちの女とユウに対して邪な力を感じたわ! どうやらこの中に、悪しき力を使って事実を捻じ曲げようとした人がいるわね!」

 

……どういうことだ!? セナがいきなり主張を変えたのはそれか……? ベルが鳴らないって事はアクアの言ってることは本当なのか……? ならなんで俺は主張を変えなかった?

 

数々の疑問が頭の中に浮かんでいたが、聖職者であるアクアの言葉に、場の空気が変わっていた。ベルが鳴らなかったのもアクアの発言を後押ししたようだ。

 

「この私の目は魔道具なんかより精度が高いわよ! 何を隠そうこの私は、世界に一千万の信者を有する水の女神! 女神アクアなのだから!」

 

ベルがチリーンと鳴り、静まり返る中でアクアは嘘じゃないなどと騒いでいた。そして、裁判長が判決を下そうとした時、

 

「失礼、さっきのアクアの言葉を信じるわけじゃないけど、一応最後に質問いいですか?」

 

裁判長は最後という事でそれを認めた。

 

「領主殿、さっき検察官と示し合わせたようにカズマに死刑を求刑したが、二人は最初から繋がっていたのか? それとも領主殿はカズマを権力以外で死刑にできる手立てがあったのか?」

 

俺の発言に対して法廷は騒ぎ出し、裁判長は怪訝な顔をして神聖な裁判に対する侮辱などと言っていたが、俺が質問した両名は、

 

「そんなものあるわけはないでしょう! いい加減にしてください!!」

 

検察官として侮辱されたと感じたのだろう。セナは傍目にも分かるくらいの怒りの表情で反論してきた。

 

「…………」

 

対してアルタープは無言のままだ。もうそれで答えが出ているようなものだが。嘘を言えばベルが鳴るからな。

 

「告発人、回答を……」

 

「う、うるさい! その様な質問に答える義務はない!! さっさと判決を下せ!!!」

 

裁判長からの言葉に、怒鳴り散らしていたアルタープではあったが当事者達だけではなく、傍聴人からも怪しむ声が出ていた。

 

「……裁判長、この裁判一度仕切りなおしませんか? 告発人がこの調子では裁判が進みませんし、次回は告発人は代理人を立てて裁判に臨むということで……。被告人に関しては取調べも終っていますし、こちらで責任を持つということでよろしいですか?」

 

次回は勝てると踏んで、こちらから譲歩しての提案だったのだが、

 

「……しかし、弁護側に引き渡せば逃走の可能性が……」

 

裁判長の言葉はもっともだが、そこでダクネスから、

 

「――裁判長。これを」

 

ダクネスが見せたのは紋章のような物が刻まれたペンダントだった。それを見た裁判長は驚いていたが、

 

「その男は、私が責任をもって監視する。裁判自体をなかったことにする必要はない。次回の裁判までに、魔王軍の手の者ではないと。必ず証明してみせる。そして、屋敷も弁償させよう」

 

当然、アルタープは抗議したが、ダクネスが何でも言うことを聞くとの発言で引き下がった。

 

そして、無事カズマを連れて屋敷へと戻ることができたので、簡単な打ち上げを行なっている時にアクアが、

 

「あの時、確かに邪な力を感じたのよ! 本当なんだってば!!」

 

「だったらなんで俺は何ともないんだよ? 確かにあのオッサンは何か隠してるけどさ。アクアの話だと俺とセナに何かしたんだろ?」

 

それを聞いたアクアは何かを思い出した様だったが、すぐにカズマに引っ張られていった。

 

side カズマ

 

「おい、アクア。さっきのお前の発言については信じてやる。けどな、アイツにまた余計な事したんじゃないだろうな?」

 

「カズマったら、そんな事する訳無いじゃない。ユウと私が前に天界で会ってるのは知ってるでしょ。その時に結構長い時間一緒に居たし手も繋いだりしたから、ユウは何の制限もない私の力の影響を受けちゃったままなのよ。カズマ達みたいな転生者は新しい体を得た時にそんなのは無くなっちゃうんだけど……」

 

つまり、アイツはアクアのおかげで邪な力とやらの影響を受けなかったらしい。アクアは更に続けて、

 

「つまり! 今のユウには、この偉大なる水の女神アクアの加護があるわ! こないだのサキュバスみたく直接触れられたらアウトだけど、悪魔あたりが何処か遠くで干渉してても弾いちゃうんだから! 本当は天界規定で死者の蘇生が一回きりなのも、人間に神様の力が影響しないための措置なんだけどね」

 

そうなのか。けど待てよ、アクアの影響受けてるって事は……。

 

「アクア、アイツのステータスで幸運だけが異様に低いのって、もしかしてお前の……」

 

それを聞いたアクアは少し都合が悪そうな顔で、

 

「……私のステータスの影響を、……ほんの少し、……受けちゃったかも、……ね?」

 

……あ、哀れだ。せめて知力に影響が出なかったことが救いだな。

 

side ユウ

 

カズマとアクアが居間に戻ってきてすぐに、

 

「……ユウ、お前は強く生きろ……」

 

何故かカズマは俺の肩に手を置き、同情したような顔で語りかけてきた。

 

「大丈夫だからね! 幸運が低いくらい大した事ないんだから!! 頑張りましょう!!!」

 

アクアはよくわからない慰めをしてきたが、今更幸運のことを気にしても仕方ないので、あんまり深く考えないで置こう。




この作品で彼はアクアの影響を受けていますが、
対してカズマは死ぬたびにエリス(幸運の女神)の後押しを受けるという設定です。

そのあたりは、独自設定なのであまり深く考えないで頂けると嬉しいです。
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