この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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バルターとの再会と悪巧み

カズマは暖炉の前で紙に何か設計図のようなものを書いている。詳しく聞くとライターの様な火をつける道具だそうだ。借金返済のためにウィズの店に置く商品になる予定らしい。そういえばカズマは、どことなくこっちの人間でない様な雰囲気があるので、それとなく聞いてみると、

 

「コイツはデストロイヤーの中に入った時に見つけたんだ。簡単そうな道具だから再現できるかと思ってさ。現物はドサクサで落としたけど」

 

などと言ってきた。まあ、あのデストロイヤーを作れる技術力なら、ライターもどきがあったって不思議はないか。

 

「……まあいいや。ソイツを造る元手が必要なら言ってくれ。いくらかなら金は出せるから」

 

「カズマだけズルい! 私がお金貸して欲しい時は、知らない振りするのに!!」

 

アクアは俺の提案に大声で抗議してきたが、ツケなんて払わされた日には金が返ってこないから、知らない振りしているだけである。

 

「悪いな、商品が売れたら利子つけて返す」

 

「気にすんな。利子はいらないし、あの時コロナタイトのテレポートの判断をカズマに投げたのは俺だからな。この位はするって」

 

その言葉にカズマはやる気を出したようで、ひたすら設計図を書き進めていた。それからしばらくして、

 

「た、大変だ! カズマ、大変なんだ!」

 

慌てふためいた声で、純白のドレスを身に纏い、白いハイヒールを履いた長い髪を三つ編みにした令嬢の様な人物が現れた。

 

「……あんた誰?」

 

「どちら様ですか?」

 

「んんっ……!? くっ……!? 二人とも! 今はふざけている場合じゃない! そういったプレイは後にしてくれ!」

 

カズマと俺が目の前の令嬢に対して、誰なのかを問いかけた時の反応で彼女がダクネスだと分かった。

カズマやめぐみんはダクネスが領主に手篭めにされたと本気で思っているようで、何も聞かずに風呂にでも入ると良いなどと言っていたが、ダクネスは返答代わりにアルバムを突きつけてきた。中を見ると、そこには一人の男が写った写真が収められている。

 

「……何だこれ? おお? なんだこのイケメンは。ムカツク」

 

「この人は確か、領主の息子だっけ。なんでこんな写真持ってるんだ?」

 

カズマと俺が中の写真を見ての一言ではあったが、ダクネスは訝しげに眉をひそめた。

 

「……ユウ、何でコイツが領主の息子だと知っている?」

 

「デストロイヤーが来た時に、俺がギルドに行く前に会ったんだ。逃げ遅れた人の避難誘導やってた。この街から人がいなくなるまで逃げないって言ってたから、結構立派な人かもな」

 

それを聞いたダクネスはギリッと歯を鳴らし、やはりそんな人間か……、などと言っていた。何が気に入らなかったんだ?

詳しく話を聞くと写真の男はダクネスの見合い相手で、人格も申し分なくダクネスの父親もその縁談に乗り気であり、断わるのが難しい状態だそうだ。ここ最近屋敷に戻らなかったのもお見合いを阻止するためだったらしい。

ダクネスの親父さんは危険な冒険者家業を辞めさせたくて、隙あらばお見合いをセッティングしていたが、今までは全てダクネスが蹴っていたそうだ。

 

「正直言って、私は今の暮らしに満足している。この家業を続け冒険者として名が売れれば、魔王の手のものに目を付けられ、抵抗もむなしくやがて捕まり、とんでもない目に遭わされてしまうかもしれない。手枷足枷を付けられ、あられもない姿で……っ!」

 

今の生活の件はともかく、最後の妄想はどうかと思う。

 

「お前はもう引退して、嫁に行った方がいいんじゃないかな」

 

カズマの言葉に俺も同意した。

今回のお見合いはダクネスの親父さんが持ってきたものではなく、領主に何でも言うことを聞くと約束した上でのもので双方の父親が乗り気のため、断われなくなっているということらしい。これに対してめぐみんが疑問に思ったらしく、

 

「領主が一冒険者のダクネスにそこまで執着する理由はなんなんでしょうか。領主ほどの地位の人間ならその気になれば、強引にでもダクネスを妾にだってできるでしょうに」

 

その言葉にダクネスが俯き、

 

「……わ、私は本名を、ダスティネス・フォード・ララティーナと言う。その……。そこそこ大きな貴族の娘だ……」

 

その言葉に、俺達全員が驚きの声を上げてしまったが、この国の懐刀とまで言われる貴族……、それがダスティネス家らしい。

 

「普段、真面目くさった、騎士みたいな口調なのにっ! 本名はララティーナなんて可愛らしい名前なのかよ!!」

 

カズマはダクネスが貴族だったことより、可愛らしい名前だった方が気になっているらしい。アイツらしいといえばらしいけどな。

 

「ら、ララティーナと呼ぶなぁ……っ!」

 

ダクネスが顔を真っ赤にして、叫んでいた。

 

「カズマ……、本人がそう呼ぶなって言ってるんだから……」

 

俺の言葉を聞いてダクネスは安心したような顔をしていたが、

 

「……どうせだったら、もうちょい親しみを込めて、”ララちゃん”でいいんじゃないか? 呼びやすいし」

 

それを聞いた面々は一瞬固まり、

 

「ら、らら、ララちゃん……だと!?」

 

ダクネスはプルプル震えている。どうやらお気に召さなかったらしい。じゃあもう一度……。

 

「ララちゃんじゃ駄目か? ララちゃん」

 

「ら、ララちゃんと呼ぶなあああ!!!」

 

ダクネスは今度は涙目になりながら叫んでいた。この呼び方は、からかう時以外はやめておこう。慣れられてしまっても面白くないし。

 

その後、カズマは見合いを破談にする気でいるらしく、写真を破って息巻いていたが、俺はというと、

 

「ではユウ行きますよ。ゆんゆんとの約束があるのです。お弟子さんが待っていますよ」

 

めぐみんと二人でゆんゆんとの待ち合わせ場所に向った。カズマの疑いを晴らすために知恵を出し合いたいらしい。待ち合わせ場所に向う途中……、

 

「なあ、めぐ……」

 

「私を”めぐちゃん”なんて呼んだら撃ちますよ?」

 

どうやら考えを見透かされていたらしい。流石に馴れ馴れし過ぎたのだろうか?

そんな事を考えているうちに、ゆんゆんとの待ち合わせ場所に到着した。

 

「……というわけで、カズマの疑いを晴らす為の方法を考えたいのです」

 

「……つーか何で俺まで呼ばれたんだ? 相談事なら二人だけでいいだろ」

 

「ユウは、こういった事に慣れてそうなので良いアイデアが無いかと思いまして……」

 

一応、本職だからな。けど一度疑われたら、それを晴らすのは容易じゃないんだよなあ……。前回の裁判で無理にでも終わりにしておくべきだったか……。

 

「……領主さんは、評判が悪いから悪事の証拠でも見つければ……」

 

「ゆんゆん、領主の悪事と住処を壊されたことは、あくまで別件なんだ。分けて考えないと駄目なんだよ。まあそんな証拠が見つかれば、あっちは裁判どころじゃなくなるだろうけど。それに証拠が出るようなヤツなら今頃とっくに逮捕されてるって」

 

めぐみんとゆんゆんがうーんと唸りながら互いに知恵を絞っていたが、どうやら良い案が出ないようでしきりに首を傾げている。

 

「裁判で勝てたとしても、あのオッサンがこっちにちょっかい出してきそうだから、それをどうにかしないとな」

 

「ちょっかいと言えば、なんで領主は息子とダクネスを結婚させようとしているのでしょう? ダクネスの話では領主自身が求婚していたらしいですが……」

 

確かに、自分じゃ蹴られるのが分かってるから息子と見合いさせたんだろうけど、考えられる事といえば……。

めぐみんとゆんゆんの方を見ながら、これは話さない方が良いかと思った俺は開きかけた口を閉じたが、眼前の二人は俺のそんな様子を見逃さなかった。

 

「今、私達を見て一瞬迷いましたね…。何を考えたのですか?」

 

「何か思いついた事があったら話してください」

 

「お前らに言うような事じゃない。気にするな」

 

二人にはそう言ったが、引き下がる気配はなく、

 

「私ももう子供ではないのですから、話してください! 来月には14歳なのですから!」

 

「私だって一端の冒険者ですから、気づかいはいりません」

 

仕方ない。セクハラとか言うんじゃないぞ……。

 

 

 

とある一室にて、アルタープとダクネスが言い合っている。

 

「グヘヘ……、息子は視察で屋敷にはいない……。この部屋にいるのはワシとララティーナ、お前だけだ。使用人どもには見て見ぬ振りをするように言い聞かせてあるのでな」

 

「おやめください。アルタープ様!? こんな事が夫に知れたら……」

 

「今までどおりの生活をしたいのであれば、ワシの言うとおりにするのだな……」

 

「……くっ!? 私の体は好きにできても、心まで自由にできると思うなよ……」

 

そして、ダクネスはアルタープの思うままに……。

 

 

 

 

「……と言った感じなのかと思ってさ」

 

「……つまり、息子の嫁を寝取るつもりだと!?」

 

「あ、ああ、あわわわわわ!?」

 

俺の想像した事をめぐみんとゆんゆんに説明したのだが、二人とも顔を真っ赤にしてうろたえてしまった。やっぱり、この手の話題はまだ早かったらしい。

 

「やっぱり、ダクネスのお見合いを阻止しなければ! 我が爆裂魔法で、領主を脅して……!」

 

「めぐみん、いいから落ち着け! これに関しては俺が悪かったから」

 

何とかめぐみんを宥めて、カズマの容疑を晴らす方法を考えていると、大通りに見覚えのある人が歩いていた。

 

「噂をすればなんとやら……、だな。あの人がダクネスの見合い相手だ」

 

大通りを歩いていたのは、領主の息子だった。お連れもいないようだが、何をしているのだろう? そして彼も俺に気付いたらしく、こちらに近づいてきた。

 

「あなたは確か……、デストロイヤーの時にお会いしましたね」

 

「領主の息子さんがお供も連れずにどうしたんですか? こんな所にいたら、騒ぎになりますよ」

 

話を聞くと、領主の息子――バルターは、父親に押し付けられたお見合いについて悩んでいるらしく、何とか断わりたいと考えているそうだ。俺達は俺達で事情を話していたのだが……、

 

「あなたの父親はダクネスをね、……ムグッ!?」

 

「めぐみん、ゆんゆん、ちょっとこっち来い」

 

めぐみんの口を押さえた後、めぐみんとゆんゆんを引っ張ってバルターから少し離れて、ヒソヒソ話をした。

 

「……二人とも、ここで結婚を破談の方向に持っていければ、色々うまく行くかもしれない」

 

「……えっ!? それってどういう……」

 

ゆんゆんは俺の言葉に疑問を持っていたようだが、

 

「ダクネスの事もそうだけど、こないだの裁判で次やる時は、領主側には代理人立ててくれって言ってある。順当に行けば出てくるのはバルターさんだ」

 

「つまり、私達が彼にお見合いをうまく断われる様に協力すれば、貸しも作れるうえに裁判でも手心を加えてくれる可能性が高いと?」

 

「ああ……、めぐみんその通りだ。ダクネスの結婚も阻止できて、カズマの裁判でも勝てる可能性が高くなる。これに乗らない手は無い……。カズマ達だって見合いを壊す方向に動いてるから、そう難しくはないはずだ」

 

話がまとまった俺達はバルターの元に行き、

 

「バルター様、もしよろしければお見合いの席に私も同席して、先方にすんなりお断りできるように致しましょうか? 先ほど話した通り、ダスティネス家のお嬢様は我々のパーティーメンバーで、結婚にも乗り気ではありませんし……」

 

この話にバルターも同意し、カズマ達と打ち合わせをするために一旦屋敷に戻ったのだが、

 

「……カズマ達はいませんね。ダクネスと何処かに行っているのでしょうか?」

 

「事前に言って置きたかったんだけどな……。こうなったら見合いの直前で打ち合わせるしかないか。ところでめぐみん、これから爆裂を……」

 

「……今、爆裂魔法を撃って動けなくなった私を屋敷に置いていこうと思いましたね?」

 

どうやら、この考えも見透かされていたらしい。めぐみんが来ると話がややこしい方向に行きそうな気がしたので、置いて行きたかったんだが。

 

「ユウ、紅魔族は知能がとても高いのです。ダクネスのご両親に失礼なく結婚をお断りする方向に持っていくために、私は役に立つと思いますよ」

 

……そんなこと言われたってな。ベルディア説得した時だって、一言でぶち壊されるし、デストロイヤー偵察でも撃つなって言ってるのに、爆裂魔法撃つし……。

裁判の時の資料は良くまとまってたから知能が高いのは分かるんだけど、これは性格の方の問題っぽいしな……。

 

「……ゆんゆんと一緒に屋敷で留守番で、ついでに爆裂も行けばいいだろ?」

 

「そうはいきません。私以外の全員がダクネスの結婚阻止で動いているのです。留守番はゆんゆんとちょむすけに任せておきましょう。ゆんゆんは一人でいるのは慣れていますから問題はありません!」

 

めぐみんの言葉を聞いていると、何気にゆんゆんの扱いが悪い気がする。多分これは、何を言っても付いて来るパターンだ。けどデストロイヤー偵察の時もそれで面倒なことになってるし……。

 

「心配しなくても大丈夫ですよ。私だって、お説教された時のままではないのですから……」

 

……不安はあるが、めぐみんの言葉を信じる事にして、バルターとの待ち合わせ場所に向うことにした。

 

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