この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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駄女神との遭遇

 冒険者ギルドへの登録を終えた俺は、ギルド内の掲示板に眼を通していた。

 何せ寝床は確保できたものの、今まで得た収入は商隊の護衛で得た10万エリスのみだ。このままでは生活するだけで無一文になるのは眼に見えている。食費に衣服、その他の雑費。人間は生きるだけでお金が掛かる。ちゃんと月々の給料があるということが、どれだけ有難いかよくわかるというものだ。

 

「つーか……、なんだこりゃ?」

 

 一応ここは駆け出しの冒険者の街と聞いていたが、駆け出しに向いているようなクエストが目に付かなかった。掲示板に張り出されているものといえば。

 

『迷子になったペットのホワイトウルフを探しています』

 

『魔法実験の練習台探してます ※強靭な体力か強い魔法抵抗力……』

 

 等々いかにもヤバそうなクエストが多く貼り出されていた。

 

 そういえば商隊の護衛をしていた時、アクセルに近づくにつれモンスターの襲撃が少なくなっていった。ということは……、このあたりのモンスターは駆除されてるってことなのか? だとしたら収入を得るどころじゃないんだが……。

 いっそ高額クエストに手を出してみるか……。けど、難易度も分からないうちにいきなりやるのは避けたい。ならまずは情報収集から始めるか。

 

 そんな考えで話やすそうな人間を探していた。誰か話しやすそうな人は……。何てのを思いながら周囲を見渡すと、目つきの悪い金髪の男が眼に入った。いかにもチンピラなので関わるのはやめておこう。

 あとは魔法使い風の帽子を被ってテーブルの上に突っ伏している少女。クエスト帰りだろうか? 疲れてるようだし声を掛けるのは不味いか……。

 そんなことを考えながらもう一度周りを見渡していると。

 

「キミ、初めて見る顔だね。新人さんかな?」

 

 銀髪のショートヘアで顔に傷のある少女が話しかけてきた。年は俺と同じか少し下くらいのように見える。

 

「実は……、今日冒険者になったばかりで、どんなクエストを受ければいいか分からなくて途方に暮れていたんですよ」

 

 苦笑いしながら、その少女へと事情を話すと、すぐに。

 

「ふーん。だったらジャイアントトードの討伐がお勧めだよ。といっても今日冒険者になったばかりだったら、まずはパーティーメンバーを見つけたほうがいいかもね。キミの職業って何?」

 

 その質問の答えとして冒険者カードを彼女に見せると、俺の顔とカードのステータスを見比べて、驚いた様な信じられない様な、そんな雰囲気で。

 

「キミ、冒険者になったばかりって言ってたけどアークウィザードなの!? だったらどこかのパーティーに入れてもらいなよ。上級職なら引く手数多だよ。しかも……、このステータス……剣士だって大丈夫だから、魔法使いの募集が無かったら、そっちでもいけるから!」

 

「少し事情がありまして、できれば暫く一人でやって行きたいと思っているのですが……」

 

そう、今の自分は管理局側では行方不明者扱いになっているはず、だったらあちらからの迎えが来るまで、あまり人とは関わらずに目立たないようにしたほうがいいのだ。

 

「そっか、なら無理強いはしないけどね。あたしはクリス。困ったことがあったら相談に乗るから声掛けてよ。パーティー組みたくなったら、あたしの友達を紹介してもいいからね!」

 

「ありがとうクリス。俺はユウ、その時はまた頼むよ」

 

それを聞くとクリスはギルドの入口に向かい外へ出て行った。

 

 クリスが言ってたジャイアントトードね……。少し調べてみるか。

 巨大なカエル型のモンスターで繁殖期になると餌の多い人里に出現し、ヤギを丸呑みにするか……。しかも農家の人や子供まで行方不明になるらしい。

 ちなみにその肉は淡白であっさりしているので食材としては喜ばれるとか。その報酬は3日以内に5匹討伐で10万エリス。カエル自体の買取りを含めると12万5千エリス。当面の生活費としては悪くないな、こいつを狩ってみるか。

 

 街の外に出て、ジャイアントトードの姿を探してみる。そう時間が掛からずにその姿を見つけることができた。

 

「うわっ……!? これなら行方不明者もでるかー」

 

 思わず口に出てしまった。牛どころか熊も遥かに超える体躯のカエルがそこにいた。確かにこんなのに丸呑みにされたらひとたまりもない。確か分厚い脂肪で打撃が通じないって話だが、色々試してみるか。

 

『スティンガーレイ』

 

『スティンガースナイプ』

 

 直射型と誘導制御型の射撃魔法をジャイアントトードに打ち込んでみる。すると脂肪に跳ね返されてダメージは与えられなかった。魔力弾でも駄目らしい。脂肪で跳ね返すとか結構無茶苦茶だ。

 

『スティンガーブレイド』

 

 魔力刃を射出するスティンガーブレイド、これならどうだ?

ジャイアントトードに対して射出された魔力刃はその脂肪を貫きダメージを与えていた。

魔力刃なら通る……。なら次は近接戦闘を試すか。

 

「ファルシオン。近接戦モード」

 

『セイバーモード』

 

デバイスの先から魔力の刃が構築され、まるで片手剣の様な形状へと変化したデバイスで、そのままジャイアントトードへ切り掛かる。

先ほどの射撃魔法ではダメージを与えられなかった脂肪を容易く切り裂き、1匹目のジャイアントトード討伐は成功した。

 

 なるほど、魔力弾ではなく魔力刃主体で戦闘なら、そこまで苦労なく討伐は可能だ。もしかしたら今日中にもクエスト達成できるか……? まぁ、今日は無理せずあと1~2匹狩って終わりにしよう。

 

 そうして辺りを見回しジャイアントトードを探す。すると視線の先にジャイアントトードと他の冒険者だろうか? 茶髪にジャージの自分と同じ年くらいの少年と、長い水色の髪の女性がいた。カエルの相手をしているという事は、あちらさんも冒険者らしいので、邪魔してはいけない。

 

「あのカエルはあっちの獲物か……」

 

 人の獲物を横取りするのは良くないな。そんなことをすれば後でトラブルの元になるし他を探そう。などど思いながら彼らから視線をはずそうとした時、水色の髪の女性が何やら叫びながらジャイアントトードに殴りかかっていた。

何か、『ゴッドブロー』とか聞こえて、魔力が彼女の拳を覆っていたが、嫌な予感しかしない。

 

 な、殴る? そいつ打撃通じないんですが……な、何で?

 

 一瞬呆けていた隙にその女性はジャイアントトードに丸呑みにされていた。しかも頭からパックンと咥えられて、徐々に体がカエルの口の中へと引きずり込まれている。

 

「さすがにこれはマズい。魔力刃射出!」

 

『スティンガーブレイド』

 

 ジャイアントトードに向かって射出された飛翔型の魔力刃は、その腹を貫きカエルも突然の攻撃に動けなくなってしまっている。後方からの魔法に驚いたようで、茶髪の少年もこちらを振り向いていた。

 ジャイアントトードが怯んで動きが鈍くなっている隙に斬撃で止めを刺す。そして丸呑みにされそうになった水色の髪の女性を助け出した。

 

 見るも無残とはこの事だな……。

 

 美しい水色の長髪に整った顔立ち、抜群のプロポーション。絶世の美女といっても過言ではないだろう。そんな人が体中ジャイアントトードの粘液まみれになって泣いていた。

 

「あなたが助けてくれたのね? あら……? あなたからは敬虔なアクシズ教徒の気配がするわ! ならアクシズ教団の崇める御神体であるこの女神アクアを敬いなさい!」

 

 粘液まみれのアクアと名乗った女性は、いきなりわけの分からないことを言い出した。アクシズ教? 女神? そうか、さっきジャイアントトードに殴り掛かったあたり、痛い人なんだな。よし、今日はもう帰ろう。

 

「えっと……俺は無宗教ですし、勧誘もお断りします。今日はもう帰るんでこれで失礼しますね。では、また丸呑みにされないように気をつけて」

 

 さっさと立ち去ろう。この手の人は関わると自分も痛い目に遭う。

 その予感から、回れ右をしてアクセルのある方へ振り向き、帰ろうとしたその時、凄まじい力で足首を掴まれてしまった。

 

「嫌ああああああ!! 置いてかないでえええええ!!」

 

「ヒキニートと一緒だとまた喰われるううううう!!」

 

「お願いだから!一緒にいてえええええ!!」

 

 泣き叫びながら、アクアさんは俺の足首をがっちりと掴んで離さない。足首が段々と痛くなってくる感覚があったが、明日、握られた部分に型が残っていそうなくらいの力強さだ。溺れる者は藁をも掴む……。そんな表現がぴったりな粘液塗れの女性だった。

 

 あと、もう一人の少年はヒキニートなんて呼ばれていた。”引きニート”じゃないよな?

 少なくとも、ここにいる時点で引き篭りではないし、収入の安定面はともかく冒険者をやっている時点でニートでもないはずだ。おそらく彼の名前なのだろう。随分と変わった名前だ。

 

 ……ここら辺じゃ普通なのか?

 

 とりあえず、アクアさんでは何を言っても埒が明かないのでヒキニートさん(?)の方を振り向きながら。

 

「すいませんヒキニートさん。お連れさんどうにかなりませんか?」

 

「初対面の人間に引きニート呼ばわりされる謂れはねえええええ!!」

 

 名前を呼んだと思っていたが怒られてしまった。ヒキニートというのはどうやら言葉通りの意味だったらしい。とりあえず謝っておこうと思っていたところで少年の方から神妙な面持ちでこちらへ話しかけて来ていた。

 

「なあ……。アクアのことは俺も謝るから、一緒にパーティー組んでもらえないか? 俺達だけだとカエルにも苦戦してしまうからさ」

 

 なんてことを提案してきた。多分苦戦したのはアクアさんがカエルぶん殴ったせいだと思うんだけど……。まぁここはやんわり断っておこう。

 

「俺はしばらくソロでやろうと思ってますんで、できれば遠慮したいんですが……」

 

「代わりのメンバーが見つかるまででいいから!! ヒキニートと2人は絶対に嫌あああああ!! パーティーに入ってくれるまで絶対に離さないからあああああ!!」

 

「ちょ……!? 力を緩めて下さい! 骨が軋んでる音がするんですが!? 痛い!? お願いですから!!」

 

「嫌よ! さっきの魔法……、多分魔法使いでしょ!? 何だったら、ヒキニートはパーティーから外してもいいわ! 私だけだったら良いでしょ!?」

 

「おいアクア! 自分だけ良い思いしようなんて何を考えてるんだ!? 俺だってこの人と一緒の方が良いに決まってるだろうが!!」

 

 目の前でケンカを始めてしまった二人だったが、俺の意見はもう耳に入らないといった状態だ。俺は単独でやっていきたいのだが、そうさせる気は無いらしい。

 

 アクアさんに関しては、もう駄々捏ねてる子供だな……。流石にもう離して欲しいし、こうなったら一時的にパーティーを組んで他のメンバーが入ったら抜けさせてもらおう。

 

「代わりのメンバーが見つかるまでですよ? それでいいですね?」

 

 そう言うと、さっきまで大声で泣いていたアクアが上機嫌になり、礼を言いながら抱きついてきた。

 

「ありがとう……! ありがとうね……! あら? あなた……、どこかで会ったかしら? 見覚えのある顔だけど……? 私も沢山の人を送ったから、そこでかも知れないわ! あの実力だもの、チート持ちでしょ?」

 

「仰っている意味が分かりません。チートって何ですか? 俺は迷ってここに来ただけですが?」

 

 カエルの粘液で生臭すぎるので、できれば離れて欲しい……。

 

「現地の冒険者か……。まあ、これからよろしくな!」

 

「はあ……、短い間だと思いますけど……」

 

 ヒキニートさん(仮)も俺がパーティーに入るという事で、見るからに上機嫌になっていた。

 こうして俺の冒険者生活一日目が終了したのだが、今日は風呂にでも入って気分を切り替えたい。

この粘液ヌルヌル状態を脱却するべく、足早に公衆浴場へと向かって行った俺であった。

 

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