この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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珍妙なお見合い

バルターとの待ち合わせ場所に向かい、彼と合流した後に俺は執事服、めぐみんはメイド服に着替えてバルターと共にダスティネス邸へ向うことになったのだが、

 

「……めぐみん、メイドさんがそんなにバタバタ歩くな。もっと静かに歩いて姿勢を正しく!」

 

メイド服を着慣れていないのか、それとも意識しないで歩いているのか分からないが、めぐみんの足音が大きいので注意すると、

 

「メイド服なんて着慣れていないのですから、そこまで言うことはないでしょう!」

 

俺がどうでも良さそうな事で注意したのがマズかったのか、めぐみんも強い口調で反論してきた。

 

「……いいか、メイドさんはメイド服を着れば良いってもんじゃない。正しい作法と仕事をしてこそのメイドさんなんだ!」

 

「なんですか!? そのメイドさんに対する異常は拘りは! もしかしてユウはカズマ並みの変態だったのですか!!?」

 

めぐみんが少し引きながら、俺のことを変態呼ばわりしてきたので少しカチンときてしまい、こちらも言い返すことにした。

 

「誰が変態だ! 俺は子供の時から友達ん家のメイドさんの仕事ぶりを見て育っただけだ! メイドさんを甘く見るんじゃねえ!!」

 

月村家やバニングス家のメイドの皆さん、昔から遊びに行くたびに本当にお世話になりました。皆様の仕事ぶりは心から尊敬しています。

 

とりあえず、めぐみんには最低限の作法だけをその場で叩き込んで、バルターと共にダスティネス邸へと赴いた。ダスティネス邸の門まで到着し使用人に案内されて玄関を開けると、ダクネスとカズマ、アクア、ダクネスの親父さんがバルターを出迎えるために待っていたようだった。

俺とめぐみんの姿を見たカズマ達は、驚きを隠せないようだった。それもそうだろう……、パーティーメンバーがバルターにくっついて見合いの場に現れたのだ。本当なら事前に打ち合わせして置きたかったんだが、こうなったらぶっつけ本番でいくしかない。しかしダクネスは、腕を組みながらバルターを睨み付け、

 

「貴様がこの私の見合い相手か! 我が名はダスティネス・フォード・ララティーナ! 私の事はダスティネス様と……」

 

そこまで言ったダクネスだったが、カズマに虫が付いていると後頭部を叩かれ、アクアも連れて三人で奥に引っ込んでいった。

 

「……娘も緊張しているようでね。つい舞い上がってしまったようだ」

 

ダクネスの親父さんはそう言って取り繕い、カズマ達が来るのを待っていた。俺とめぐみんは二人から少し離れ、

 

「ユウ、さっきのダクネスはどうしたのでしょう? 最初からお見合いを壊しに行っていましたが……」

 

「破談させるのはいいが、悪い噂が立たれても困るしな。さっきカズマが止めてたのも、そこらへんを気にしてだと思う。そこは俺達も気をつけないとな……、ダクネスの親父さんには霜降り赤ガニご馳走になったし、恩を仇で返すような真似はしたくない」

 

「……確かにあの霜降り赤ガニの味は、今でも忘れられません。私達で悪い噂を立てることなく結婚を阻止しましょう!」

 

俺とめぐみんがバルターと親父さんの後ろでコソコソ話しているうちに、カズマ達が合流し、客間へと向いながら会話のプランを考えていた。そして、客間へと到着した後に。

 

「――では、改めて自己紹介をさせて頂きます。アレクセイ・バーネス・バルターです。アレクセイ家の長男で父の領地経営を手伝っております」

 

俺とめぐみんはバルターの後ろに立ち、アクアとカズマはダクネスの隣に――といっても少し近すぎではあったが、ダクネスがおかしな事を言い出した時のためのストッパーなのだろう。ダクネスの親父さんもあまり気にしていないようだった。

そして、バルターの自己紹介を聞いたダクネスが、

 

「わたくしはダスティネス・フォード・ララティーナ。当家の細かい事情は省きますわね。成り上がり者の領主の息子でも知っていて当然なんあああっ!」

 

ダクネスがまた失礼な事を言おうとしたので、カズマが何かしたようだ。多分、足でも踏まれたんだろう。その後、ダクネスの親父さんは退室し本格的に見合いが始まったのだが……、

 

「お嬢様は、今朝からバルター様とお会いになるのを楽しみにしておりまして舞い上がっておられるのです」

 

カズマの言葉に違和感を感じてしまった。まるで見合いを成功させようとしている感じだった。そうして俺から……。

 

「バルター様もですよ。しかし、この国の懐刀と呼ばれる大貴族のお嬢様を頂くのは、御自分ではいささか力不足では無いかと不安になっておりまして、お嬢様にはもっと良い相手がいるのではないかと考えております」

 

その言葉を聞いたカズマが俺の方をじっと見て、

 

(……おい、ユウ。お前、何でそっち側にいて結婚を壊そうとしてるんだ?)

 

(カズマこそダクネスの結婚阻止するって言ってたろ! 何でくっつけようとしてるんだ?)

 

念話を使ってるわけでも無いのに、お互い目が合った瞬間に何を思っているか感じ取っていた。

……というか、何だよ? この状況は。結婚を阻止しようとしてたダクネス側のカズマとアクアが見合いを成功させようとしていて、本来ならダクネスを貰いに来ているはずのこちら側が見合いを阻止しようとしてるっておかしいだろ……。

 

ダクネスもこちら側の意図が分かったようで、アイコンタクトでどうにかして欲しいと訴えていた。そうしている内にめぐみんから、

 

「バルター様は爆裂魔法にも耐えられない自分では、いざという時にお嬢様をお守りできないいいいっ!」

 

おかしな事を言い出しためぐみんの足を踏み、話を中断させた。

 

「バルターとやら、その者の言うとおりだ! 私を嫁にしたいのならせめて爆裂魔法に耐えてからあああっ!」

 

おそらく、ダクネスもまた足を踏まれたのだろう。もうおかしな方向に行き過ぎてて、どうしたら良いか分からん。

その後、カズマはどうにかして見合いを成功させようとしていたのだが、ダクネスが痺れを切らしたようで、

 

「もう、まどろっこしいのは止めだ! こんな事いつまでもやっていられるか!」

 

そう言って、ダクネスはドレスの裾を切裂きバルターにお前の素質を見極めてやると言って、修練場へ向った。その途中、バルターとダクネス以外の四人はお互いの事情を説明しあっていたのだが、やはりカズマ達はダクネスの見合いを成功させる為に動いていたらしい。

 

「……さっき言ったとおり、ダクネスはバルターってヤツのとこに嫁に行くのがいい。親父さんだって本気で心配して見合い話持ってきてるしな。ユウ、お前だってその位分かるだろ?」

 

「そりゃあな、けどそれは俺らが世話することじゃねぇだろ。ダクネスの望みはどうあれな。ダクネスだって親父さんの気持ちなんてとっくに分かってる。けど親父さんを必要以上に傷つけたくないから今まで逃げ回ってたんだろうし……。もうこの際、親父さんと派手に殴り合いでもして親子喧嘩しちまえばいいんだ!」

 

俺の言葉を聞いた面々は少々引いていたのだがアクアだけは……、

 

「あなたも結構凄いこと言うのね。思い切り喧嘩しなさいなんて……」

 

「……別に、やれる内にやっといた方がいいだろ。親に文句言いたくても言えないヤツだっているんだから……」

 

「ユウは小さい時から一人のでいることが多かったと言っていましたが、もしかして……」

 

めぐみんが途中で言葉を止めたが、なんとなく察しが付いたのだろう。少し悲しげな顔をしていた。

 

そして、修練場に到着してダクネスとバルターが試合を行なう事になった。最初は見合い話を断わるつもりだったバルターもダクネスの貴族らしからぬ態度に興味を示したらしく、木刀を持ってダクネスへと斬り掛かっていった。

技量では圧倒的にダクネスに勝るバルターではあったが、どれだけ木刀を打ち込まれても怯もうとしないダクネスに、負けを認めさせることはできないと思ったのか木刀を投げ捨てて、

 

「僕の負けです。技量では勝っていても、心の強さで負けました……」

 

「……なんだ、終わりか。つまらん、修行して出直して来い」

 

ダクネスがそう言うと、バルターは吹っ切れたように笑い出し、本当に惚れてしまったななどと呟いていた。ただしダクネスの性癖を知っている俺とカズマは、微妙な表情をしていた。

そうして、アクアに傷の治療を受けているダクネスから、

 

「カズマ、ユウ、お前達の容赦のなさと外道さをバルターに見せて教えてやれ」

 

何故かダクネスは俺達を指名して、試合をするように言ってきた。俺はともかくカズマは、

 

「おい、俺はコイツとやりあいたくは無いぞ。こんなラスボスみたいなヤツとやったら一瞬で終っちまう」

 

誰がラスボスだ、失礼な! 確かに何でもありだと現状戦力差がありすぎるので、

 

「じゃあ、俺は木刀と体術以外はカズマの持ってるスキルしか使わない。……この場合は初級魔法だけか。バリアジャケットもシールドも無しだから、うまく急所に当てれば仕留めれるかもな」

 

この提案にカズマとダクネスは同意し、ついでにこないだゆんゆんの訓練の時に見せた、初級魔法の使い方も禁止になった。

開始の合図と共にカズマは切りかかってきたのだが、

 

「『クリエイト・アース』ッ! 『ウインドブレス』ッ!」

 

カズマが『クリエイト・アース』で発生させた土が、『ウインドブレス』で俺の顔面に直撃した。そこまでのダメージが無いものの全て避けきることはできずに、目潰しとなって目を瞑らざるを得なくなってしまった。視界が真っ暗になったところで違和感に気付いたのだが、カズマの気配がどこにもなかった。

 

……視覚を封じての『潜伏』か。カズマはスキルの使い方が本当にうまい。

 

「伊達に世間一般でカスマさんだのクズマさんだの言われてないわね……」

 

「視覚を封じての『潜伏』……、この容赦の無さ、これこそが……!」

 

「実際に目の当たりにすると、恐ろしい事をしていますね、カズマは」

 

アクア、ダクネス、めぐみんがそれぞれ感想を言っていたのだが、確かにこのままだとこっちがジリ貧になりそうだ。

仮に俺がカズマに同じ事をやったところで、『敵感知』のあるカズマにはあまり効果は無いしな……。クラスは盗賊にしておくべきだったかな、などと考えてしまったが、とりあえずカズマの位置を捉えなきゃならないので、色々考えていた初級魔法のコンボを試してみる事にした。

 

「『クリエイト・ウォーター』、『フリーズ』」

 

『クリエイト・ウォーター』で自分の周りに水をばら撒き、間を置かず、『フリーズ』で水を凍らせる。これで準備は完了だ。

 

「……何かしらね? カズマが転ぶのでも期待してるのかしら?」

 

アクアは、カズマを滑らせてダメージを与えると思ったらしいが、俺は耳を澄まして周りに意識を向ける。そうしていると、後方からバキッっと氷の割れる音がした。

 

「そこだっ!」

 

目を瞑ったままで、音がした方へ斬りかかると、木刀同士の激突音が辺りに響いた。思った通り、カズマはそこにいたようだ。

 

「……さっきの『フリーズ』は、ワザと氷を薄く張って割れやすくしていたのですね。『潜伏』で気配は消せても氷の割れる音までは消せませんから」

 

めぐみんの言うとおり、この『フリーズ』はカズマの位置を特定するためのものである。初級魔法のうち『クリエイト・ウォーター』と『フリーズ』は応用範囲が広く使い方次第では攻撃以外でも効果があるのではないかと思っていた。

ともあれカズマの居場所は分かったので、俺はカズマの服を掴み、

 

「……カズマ、ちゃんと受身取れよ」

 

そう言うと、投げ技でカズマを地面に叩き付けた。

 

「……ぐっ!」

 

カズマはうめき声を上げていたが、俺は投げた位置から推測してある場所へ追撃の蹴りを入れようとしたのだが、カズマはヤバイと思ったらしく素早く避けたようだ。

 

「お、おい!? い、今何処に蹴り入れようとした!?」

 

カズマは震える声で、俺に何処を狙った蹴りかを聞いてきたのだが……、

 

「……股間だな」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

俺の答えに一同が驚きの声を上げていた。

 

「下手したらカズマがカズマちゃんになっちゃうわよ……」

 

「男性最大の急所に迷い無く追撃とは! 素晴らしいぞ……これは!!」

 

「カズマもカズマですが、ユウもエグ過ぎます……」

 

アクア、ダクネス、めぐみんがドン引きしながら、そんな事を言っていた。おそらくバルターは何も言えずに呆然としているのだろう。

 

俺の攻撃に警戒したカズマは距離をとった様で、その隙に『クリエイト・ウォーター』で目の土を洗い流し、視覚を回復させた。

しかしカズマは俺の足元に『フリーズ』を使い、動きを封じた。さっきの俺の足元の『フリーズ』に重ねて使った形になってしまったので普段より氷が厚くなってしまっている。

そして、カズマは木刀を俺に向かって投げつけてきた。その木刀は眉間に向って真っ直ぐに飛んできている。おそらくこれはアーチャースキルの『狙撃』か。カズマは俺が間合いの外だから攻撃が届かないと思っているみたいだが、

 

「『クリエイト・ウォーター』、『フリーズ』」

 

今度は木刀に纏わせる様に水を出し、水が放出される勢いで木刀の先よりずっと伸びた所で『フリーズ』で凍結させ、即席で長い氷の棒を作り出し、カズマの投げた木刀を紙一重で避けながら、横薙ぎをを仕掛ける。

 

「うまいわね……。あれなら多少離れてたって攻撃が届くわ!」

 

アクアの感心した声が聞え、カズマに横薙ぎが当たると思った瞬間、

 

「『スティール』ッ!!」

 

俺の木刀はカズマの『スティール』によって奪われ、今度は俺の脳天目掛けて攻撃を仕掛けられていた。それは何とか両手で防御したものの、その隙に接近したカズマに両手を掴まれ、『ドレインタッチ』で自分の魔力が吸われているのが分かった。

 

「手から吸い取れば、そこから出る魔法だって使えないだろ? しかも力も入らないしはずだし、今回は俺の勝ちだな」

 

カズマは勝ち誇った様子で俺に語りかけてきた。確かに力が入らない。そうして魔力を殆ど吸われ崩れ落ちそうになっていまい、カズマも手を離そうとしたが、

 

「カズマ、甘いって。やるなら気絶するまでやれよ」

 

そう言って、拳を握りカズマの顎にフックを叩き込んだ。そして脳を揺らされてカズマが崩れ落ち立てなくなっていた。

 

「な、何? さっきのユウは演技だったの?」

 

「油断させて、一撃を叩き込むとは……やはり容赦がない!」

 

アクアとダクネスが何かを言っていたようだったが、カズマを油断させる為に限界近くまで魔力を吸わせたので、フラフラしながら歩いていた。

俺は大した怪我も無く、カズマもすぐにアクアに治療してもらったので回復した。しかし、

 

「さあ、今度は私とだ! どちらでもいい! 掛かって来い!!」

 

俺とカズマの試合を見て滾たぎってしまったダクネスがやる気になっていた。俺はもう魔力を吸われすぎて無理なので、カズマに押し付けようとしたのだが、やはり乗り気ではなかったので、カズマに耳打ちして俺の着ていた上着を脱いで渡した。

ダクネスは木刀すら持っておらず、素手でやるつもりだった様だったが、カズマはさっき渡した上着を手に持って、ダクネスに向っていった。

 

「『クリエイト・ウォーター』ッ!」

 

カズマは『クリエイト・ウォーター』によって上着を濡らし、重くした上でダクネスに叩きつける。それだけでは大したダメージにはならないが、武器を持っていないと思っていたダクネスには効果があった様で、一瞬動きが止まる。そこからカズマは上着でダクネスの両足首を素早く纏めて縛り、

 

「『フリーズ』ッ!」

 

そのまま『フリーズ』で凍らせて足枷を作り、動けなくした後で転ばせて立ち上がれなくする。今度はカズマは自分の着ていた服でダクネスの両手首を縛り、足首と同じ事をして完全に無力化させた。

 

「……さっきカズマに耳打ちしてたのってこれ? 初級魔法をなんて使い方してるのよ」

 

「手枷と足枷を作って無力化とは……!? 何で初級魔法をここまで使いこなせるのですか!!?」

 

アクアとめぐみんが半ば呆れながら、俺を見て話しかけてきた。ダクネスはというと、

 

「……くっ! 身動きを封じた程度で、この私が屈すると思うな! さあ、ここから何をするのか見せてみろ!!」

 

おそらく……というか絶対喜んでいるだろうダクネスに長々と付き合ってやるつもりは無いのか、カズマはそのまま『ドレインタッチ』でダクネスの体力を吸い尽くし気絶させた。丁度その時、

 

「修練場にいると聞いてちょっとした飲み物の差し入れを……」

 

そこに現れたダクネスの親父さんが飲み物が入ったかごをボトリと落とし、ダクネスの方を見ていた。今のダクネスはスカートは裂かれ、全身痣だらけで手首と足首を縛られ気絶しているのだ。そしてアクアがカズマとバルターを指差し……、

 

「あの二人がやりました」

 

その後カズマが俺を指差して、

 

「アイツの指示でやりました」

 

「よし、こいつらを処刑しろ」

 

「「「違うんです、誤解です!」」」

 

俺とカズマ、バルターは同時に叫んだ。

 

俺達の必死な説得により何とか事なきを得て、その後ダクネスがお腹にカズマの子がいるなどと言い出して一騒動あったが、お見合いは無事(?)に破談させることができた。その帰り道、

 

「カズマ、魔力少し返せ……。倒れそうなんだけど」

 

「俺だって投げられたし、顎に一撃喰らったし、今日一日くらい我慢しろ」

 

カズマはフラフラになった俺を見ながら魔力を返すのを拒否してきた。仕返しされるとでも思っているんだろうか……。

 

「……二人とも、今日の試合は素晴らしかった。カズマの外道さ、ユウの容赦の無さ……、やはりこのパーティーには得がたい仲間が揃っている! あの拘束方法はユウが考えたのだろう? また屋敷で私に……」

 

ダクネスが褒めているのか貶しているのか分からないセリフを言っていた。それを聞いた俺はやっぱりダクネスは結婚させた方が良かったんじゃないかと、少し後悔していた……。

 

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