この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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魔剣使い再び

ある日の昼下がり、

 

「に゛ゃー!」

 

「何でちょむすけって私にだけ爪を立ててくるのよ!? 私、爪研ぎの柱じゃないわ!」

 

ちょむすけは相変わらずアクアに懐く気配はなく、抱きかかえているアクアに爪を立てて暴れている。

 

「アクアってさ、前世は三味線でも作ってたんじゃないか?」

 

「なによ三味線って! 私に前世なんてないわ、女神だもの!!」

 

また女神なんて言ってるアクアだが、そこは知らない振りしておこう。確かに何故かちょむすけはアクアにだけ攻撃的になるんだよな。猫に嫌われる何かがあるんだろうか?

 

「ちなみに私の前世は破壊神のはずです」

 

「破壊神って何を破壊してたんだよ?」

 

「それはもう……ありとあらゆるものを!」

 

前世の話に加わってきためぐみんだったが、破壊神って何でそうなるんだ? それとも紅魔族ってのは、前世の話はこう答えるようになってるんだろうか?

 

「……ところでユウはコップに手をかざして何をやっているのだ?」

 

「これは、こうして練習してるんだ」

 

ダクネスが俺のやってる事に疑問を持ったらしい。見せた方が良いだろうと思い、水入りのコップに手をかざし集中すると……、

 

「水が凍ったな……これって『フリーズ』じゃないよな?」

 

「俺のいたとこの魔力変換の『氷結』なんだ。ここに来る前から練習はしてたんだけど、ようやく基礎が固まったって感じだな」

 

カズマが不思議そうにコップを眺めていたが、めぐみんが、

 

「『フリーズ』が使えるのに、何故同じ属性の魔法の練習をしているのですか?」

 

「あっちだと、『氷結』持ちは珍しくてな。コイツがあると色々重宝するんだ、まあ実戦投入はもうちょい後かなあ。それにコロナタイト見つけたときにコイツが使えてたら『テレポート』で飛ばす必要も無かったかもしれないし、似たような事が起きたら今度は対処できるようにさ……」

 

「お前あれだけやれて、まだ新しい魔法覚える気かよ!?」

 

カズマは驚いていたが、俺自身は元々総合力で勝負するタイプなのだ。あいつ等(なのは達)の様に際立って目立つ素養が無い以上、色々な技能を修得してそれを効果的に運用するしかない。

 

そうして、ゆったりとした時間を過ごしていると、玄関の扉が開く音が聞えた。

 

「……む、誰か訪ねてきたようだ。私が行こう」

 

ダクネスが玄関まで向うと、

 

「カ、カズマ……大変だ! あの男がまた……」

 

ダクネスが慌てた様子で戻ってきたので、全員で玄関まで向うと……、

 

「佐藤和真、久しぶりだね。少しお邪魔してもいいか?」

 

アクアを檻に入れたときに因縁をつけてきたミツルギ……なんとかが玄関に立っていた。どうやらカズマに売り払われた魔剣も買い戻したらしく、腰に下げているのが分かった。あと、パーティーメンバーの女性二人は一緒ではないらしく姿が見えなかった。

 

ミツルギを居間に案内したのだが、前回の事があるからか全員警戒していた。

 

「……警戒されるのは仕方ないが、今日は少し話したい事があるだけだ」

 

そうしてミツルギは一呼吸置いて、口を開いた。

 

「アクア様に僕のパーティーへ入って頂こうと思っていたが、アクア様はこの駆け出しの街の方が安全だし、ご本人もここが気に入っている。用があるのは……」

 

ミツルギは俺の方をジッと見て……、

 

「浅間悠、君が欲しい」

 

ミツルギの言葉に彼以外の全員の時間が止まっていた。なんとか頑張って俺も言い返す事ができたのだが、

 

「……すいません。俺にソッチの趣味はありませんので、お引取りください。いい相手に出会える事を祈っていますよ」

 

「い、いや違う! そういう意味じゃない!!」

 

ミツルギも自分の言葉がマズかったと思ったらしく、訂正して言い直した。

 

「つまり、君を僕のパーティーに迎え入れたい。実はデストロイヤーの迎撃には僕も参加していてね。君の力は良くわかっているつもりだ」

 

つまり、ミツルギは俺をスカウトしに来たらしい。聞くとミツルギのパーティーは後衛が不足しているようで、ギルドで探そうにも良い相手が見つからないのだそうだ。

 

「俺もカズマの裁判の件で忙しいし、移籍は遠慮したいんですが」

 

そう言うと、カズマ達はホッとした様な表情を見せていたが、ミツルギは続けて……、

 

「君の杖もアクア様から授かった物だろう? だったら魔王を倒すためにここに来たはずだ! なら僕と共に……」

 

「この杖は俺の元保護者から貰った物だし、俺がここにいるのは仕事だけど?」

 

「へっ!?」

 

ミツルギは目を丸くして、信じられないものを見るような雰囲気になっていた。

 

「さ、佐藤和真、これは一体!?」

 

「……えっと、説明してやるからちょっとコッチ来い」

 

カズマはミツルギを連れて、奥へと引っ込んでしまったが、

 

「……一体何なんだあの二人は、内緒話するほど仲良かったか?……」

 

「しかし、スカウトとはな。前回は喧嘩腰だったが、話し合いだけで済みそうだ」

 

「また食って掛かってきたら爆裂魔法を撃つ所です!」

 

ダクネス、めぐみんも前に会った時の騒動で、ミツルギには良い感情を持っていないらしい。というか、めぐみん……所構わず爆裂はやめような。

その後、カズマとミツルギが戻って来た。ミツルギは相変わらず不思議そうな顔をして俺を見ている。

 

「佐藤和真から聞いて君の事情は分かった。けど、それだけの力を持ちながら苦しんでいる人々を救おうとは思わないのか?」

 

どうやら、俺を自分のパーティーに入れるのを諦めた訳ではないらしい。

 

「なあ……そもそも魔王軍って何で人間攻めてるんだ?」

 

「「「「……えっ!?」」」」

 

俺の言葉が相当意外だったようで全員がポカンとしていた。

 

「その様子だと誰も疑問に思っていないみたいだけど、相手がコッチを攻めてる理由も分からずにドンパチやってる状況の方が異常だって。戦いたいから戦ってるって訳じゃ無いんだろ?」

 

「しかしですね、魔王軍に話し合いなど通じるわけが……」

 

「少なくとも、デュラハンは話し合いできただろ。……めぐみんが御破算にしたけど」

 

めぐみんが反論してきたが、ベルディアが最初にアクセルに来た時の事を言ったら黙ってしまった。

 

「……ではユウは魔王軍と戦う気はないのか?」

 

「自分から喧嘩売る気はないけど、必要になったらやる。話し合いで済むならそれで良い」

 

ダクネスも俺に対して質問してきたが、俺の答えが意外だったのか呆けてしまった。

 

「君の言う事も一理あるかもしれないが、現に王都では定期的に魔王軍が攻めて来ているし、話し合いができる状況じゃない!」

 

ミツルギは一定の理解を示したようだが、俺がここに来る前にもうどうしようもない状況にでもなっていたんだろうか?

ミツルギは続けて、

 

「君が僕の元に来れば、魔王を倒せるかもしれない! だから僕のパーティーに入って欲しい!!」

 

「だから断わるって。何で戦ってるのか分からない状況で戦う気はない」

 

このままだと、話し合いは平行線に行きそうだ。どっかで落とし所を考えないと。

 

「このままでは埒が明かないので、アクアの時と同じように何か勝負をしませんか?」

 

「……めぐみん、俺が負けたどうするつもりだ……」

 

「多分、ユウなら大抵の勝負では負けませんよ。ただし勝負の方法はこちらで決めさせてください」

 

結局こうなるのか。俺以外のメンバー全員が紙に一つずつ勝負方法を書いて、それをくじにしてミツルギが引いて決める事になった。ちなみにアイツらが何を書いたかというと、

 

・メイドさんの知識対決(カズマ)

・男らしくガチンコバトル(アクア)

・チェス対決(めぐみん)

・どちらかが根を上げるまでの訓練(ダクネス)

 

カズマとダクネスは何処か悪意を感じるチョイスだが、一応俺が勝てそうな物にしてくれたらしい。アクアだけは空気を読まずにバトルなんて記述をしていた。

 

……どうかチェス対決を引きますように。

 

そしてミツルギが引いたのは、アクアの物だった。バトルってある意味一番やりたくいないんだが……。できればもうちょっと平和的なのが良かった。

 

「……やり直しはないよな?」

 

「公平に決めたんだから諦めろ」

 

カズマからの返答を聞いて、思わずため息をついてしまった。

 

「ガチンコたってどうするんだよ? 殴り合いか?」

 

「男同士なんだから制限無しで全力でやっちゃいなさい! そうすれば友情が芽生えるはずよ!」

 

おそらくアクアは少年漫画のノリで言ってる気がする。ミツルギも同意し、街の外で戦う事になった。

途中でミツルギの名前を聞いたがまさか、”キョウヤ”だとは……面白い縁もあったもんだ。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ勝負は、どちらかが気絶するか降参するまででいいね?」

 

「……分かった。お手柔らかに頼む」

 

そうしてお互い臨戦態勢に入り……、俺は空に上がって、砲撃の準備をしたところ、

 

「「「「ちょっと待てええええ!」」」」

 

全員からストップが掛かった。

 

「……制限無しの何でもありって言わなかったっけ?」

 

「だからって空飛ぶのは無いだろ! やりたい放題じゃねえか!!」

 

カズマから飛行は駄目と言われてしまった。相手の攻撃が届かない所からだと手間掛からなくて良いんだが……。

 

「ユウはカズマと同じものを感じる時が稀にあるのですが……」

 

「……ああ、徹底して自分の有利な状況で戦おうとするからな。あれだけの力を持ちながら」

 

めぐみんとダクネスも呆れてしまったらしく、少し残念なものを見る目で俺を眺めていた。

 

「飛行は禁止な。もうちょい勝負らしくしろって」

 

カズマの言葉が全員の総意らしく、今回は飛行が禁止になってしまった。そして、仕切り直して改めて開始となり、俺はジャンプして空中に魔法陣を展開して足場にした。

 

「「「「それも却下!」」」」

 

「何でだよ! これは足場にしてるだけで飛行はしてねーぞ!」

 

またしても全員から使用禁止令が出てしまった。

 

「……なあ、勝負方法から決め直さないか? もう何でもありじゃないだろ」

 

「普通に陸で魔法使えば良いだろ! 剣でも射撃でも」

 

カズマはそう言って続けるように促してきたが、

 

「……”キョウヤ”って名前の人とあんまりやりたくはないんだよなあ。ここに来る前に挑戦してコテンパンにされたから」

 

「お前をコテンパンだと!? どんな化け物だ……」

 

ダクネスは驚いていたが、剣ではあの人には敵いません。子供の頃、剣術を教えて欲しいと頼んだ時に”うちの流派は普通の人がやるものじゃない”って言われた意味が良く分かりました。

 

ともあれ、今度は陸でミツルギを見据えて構えているのだが、ミツルギも剣を取り正眼の構えを取っている。

……魔剣グラム、持つ者の膂力を上昇させどんな物でも切裂く剣……とアクアは言っていた。まともに打ち合うのはよそう。

 

「はああああ!!」

 

ミツルギは俺に対して横薙ぎを仕掛けてきたが、

 

『Chain Bind』

 

『チェーンバインド』でミツルギを拘束して動きを止める。しかし、グラムによって上昇した膂力でバインドを砕かれそうになったので、動きを止めているうちに……、

 

「『スティンガーブレイド・エクスキューションシフト』ッ!」

 

百を超える魔力刃が一斉にミツルギに襲い掛かり、続けて……、

 

「『ブレイズキャノン・トリプルショット』ッ!」

 

砲撃を三連続で叩き込んだ。

 

「……よ、容赦ねえ……」

 

「動きを止めて、一気に殲滅とは……相変わらずの鬼畜!!」

 

「戦術的に間違ってはいませんが、複雑な気分になりますね……」

 

「あっちは大丈夫かしら? さ、流石にもう終わりよね?」

 

カズマ、ダクネス、めぐみん、アクアが少し引きながら感想を漏らしていたが、ミツルギを見ると膝をついていたものの、まだ意識があった。

 

「ま、まだまだ……だ!」

 

「意識があるか……なら続行だな」

 

「「「「……へっ!?」」」」

 

俺とミツルギ以外の全員が驚いていたが、この勝負はどちらかが気絶するか降参しなければ終了しない。

 

「悪いけど、もう終わりだ……」

 

ミツルギにそう言うと死角から後頭部に誘導弾を叩き込み気絶させた。不意打ちになったらしく、本当に意識を失ったようだ。

 

「……俺の勝ちだな」

 

そうしてみんなの所に戻ると……、

 

「やりすぎじゃないのか? もう動けなくなってたろ……」

 

「勝ったと思った瞬間が一番危ないんだ。あのまま近づいてたら最後の力でバッサリとかあったかもしれないし、降参する気も無さそうだったから気絶させた」

 

カズマが気絶したミツルギを指差して震えながら、そんな事を言っていた。とりあえず、グラムをミツルギの手から離し呼びかけて意識を回復させた。

 

「僕は……負けたのか。前回は二対一で不意打ちがあったから、今回は……と思ったんだが……」

 

「一応、そっちの魔剣を警戒して攻撃が届かない所からだったから、ああなったけど近接戦ならどうだったか……」

 

「けど……負けは負けだ。ここは大人しく引き下がろう……」

 

少し落ち込んだように見えたミツルギだったが、自分の負けを認めたらしく俺達の元から去ろうとしていた。去り際に、

 

「こないだもそうだったけど、アンタはちょっと真面目すぎるな。悪いとは言わないけど、もう少し柔軟に考えないと罠とか策略とかに引っかかって大変な目に遭うぞ。戦場にルールなんて無いんだからさ」

 

「……そうか、助言感謝するよ」

 

そして、ミツルギは去って行った。

 

 

 

 

次の日の冒険者ギルドで、

 

「アンタ、キョウヤに何したのよ! 昨日ボロボロになって帰ってきたんだから!!」

 

「せっかくパーティーに入れてあげるって言ってるのに何で断わるのよ!」

 

突如、食って掛かってきた二人組みはミツルギのパーティーの女性二人組みだった。事情を説明しても、大声をだして騒ぐだけで埒が明かない。その様子を見ていたカズマから、

 

「そんなに納得いかないなら、コイツと勝負したらどうだ? まだ昨日のくじも残ってるしな」

 

その提案を二人組みは承諾し、くじを引くと……、

 

『メイドさんの知識対決』

 

……マジか!? ここでやるの?

 

「カズマ……やるなら屋敷でやらないか? ここだと人目が……」

 

「別に良いだろ。さっさとやって片付けようぜ」

 

どことなくカズマが楽しんでいるように見えるのは気のせいだろうか……?

そしてカズマの出す問題に答えていった。当然ではあるが、あの二人組みがまともに答えられるわけも無く、俺の圧勝だったのだが……、

 

「正直引きます! ドン引きです! 何でメイドさんにそこまで詳しいのですか!?」

 

「ま、まさか、何処かのメイドを狙っているのか……お前は!?」

 

「でもメイドさんって可愛いと思うの。あの服もう一回着てみたいわ」

 

アクアはともかくめぐみんとダクネスは俺を見る目が冷たいものになっていた。だって子供の頃、色々聞いたら丁寧に教えてくれたんだ、そりゃあ覚えるさ。

 

しかし、勝負の場所が悪かったようで、この日から俺は”アクセル一のメイドマニア”と呼ばれるようになってしまった。しかも一部の男性冒険者は”先生”と呼んでくる。

もう勘弁してくれ……。

 

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